2014年9月8日月曜日

企業は人の一生を保証できるのか

企業年金には退職後の給付が確定している確定給付型と、現役時代の拠出額のみが決まり退職後の給付は変動する確定拠出型の2種類があります。

年金は資金の拠出から年金の受給までが長期間にわたり、その間の資産の運用リスクが存在します。確定給付型と確定拠出型の違いは資産運用リスクを誰が負担するかということに帰着します。

運用リスクを企業が負うのが確定給付型、年金受給者が負うのが確定拠出型になります。

高度成長時代は年金資産の運用成績が高く、企業が年金の不足部分を補填するような状況が来るとは思いもしませんでした。

しかし、時代は変わりました。金利は下がり続け、長期金利の代表である10年物の国債金利は長らく1%を超えることがありません。

年金資産の長期間にわたる元本の確実性を考えれば、資産の多くを国債で運用するのが一番確実ですが、この金利ではとても約束した予定運用利回りを確保することはできません。

そこで、リスク商品である株式も運用に加えます。

確定給付型では、年金資産で運用不足が出る場合は企業が負担しなければなりませんが、企業業績も決して楽ではありません。

利益を確保するために経費削減を迫られるところも出てきます。

最大の経費項目は人件費ですが、退職した従業員の企業年金支払いのために、これから頑張ってもらわなければならない現役従業員の給与を削らなければならないという何とも倒錯した状況に陥ってしまうところもあります。

医療の進歩は人の寿命を引き伸ばします。

これから退職する人は百歳まで生きることも決して珍しくない時代が到来します。

一方で経済潮流の変化は激しく、一歩間違えば企業は一気にその寿命を終えてしまいます。

それは中小企業に限ったことではありません。

ナショナルフラッグとして君臨した日本航空は破綻しましたし、安定企業の代名詞であった東京電力も今や生き残りに必死です。

どんな優良企業でも企業の寿命が人間の寿命より長いとは断言できません。企業が人間の生涯にわたる保証を行えると考えるのは、企業の傲慢なのかもしれません。

退職後の経済保証をかつて所属した企業に求める時代は終わったといえそうです。

唯一、人間の生涯にわたる年金を保証できる主体は国家だけということになりますが、現在の我が国の財政状況を見ると国家にも全幅の信頼を置くことはできません。

最終的には自分しか頼りにならないと考えた方がいいでしょう。

その意味で運用を自己責任で行う確定拠出型年金がより重要になります。

確定拠出型でも現在の環境では決して高率の運用ができるわけではなく、場合によっては損が出ることもあります。

しかし、それは他の誰の責任でもなく運用資産を選択した本人の責任です。

退職者はかつて所属した企業からの自立が求められる時代に入ったことを覚悟しなければなりません。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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