2014年8月29日金曜日

教育資金の一括贈与対象の5割は小学生以下(贈与税、相続税)

信託協会のアンケート調査によると、教育資金一括贈与の非課税制度を利用した人の8割がその資金を「大学・短期大学・高等専門学校の学費」に充てたいと考えているとのことですが、贈与した時点で「子ども」がまだ小学生以下であるケースは半数近くだったそうです。


贈与した人の「子ども」が通っている学校で最も多かったのは小学校。
大学・短期大学・高等専門学校、高等学校、中学校、幼稚園・保育園と続きます。
小学校と幼稚園・保育園、「まだ通っていない」を合わせると約5割。
子どもが小学生以下のうちに多くの人が大学の学費を譲り渡していることが垣間見えます。


 教育資金一括贈与の非課税制度は、直系尊属から30歳未満の孫などへ教育目的の資金をまとめて贈与する場合、受贈者1人につき1500万円まで贈与税を非課税にするというもの。
「直系尊属からの贈与」なので、ひ孫や玄孫(やしゃご)のほか、親から子への贈与も対象となります。


信託協会では、平成18年度の税制改正からこの制度の創設をたびたび要望してきました。高齢者が持つ「タンス預金」などの金融資産を〝教育に役立てる〟という動機付けで若年層に移動させ、〝経済活性化に役立てる〟といった現政権の狙いもあり、制度は25年度にスタート。27年末までの贈与に適用される時限措置ですが、信託協会は適用期間の延長を提言しています。





2014年8月28日木曜日

戻るの?戻らないの? 粉飾決算で納付した法人税

《粉飾決算で納付した税金は戻るのか?》

 今年も、個人学習塾大手の「リソー教育」、ゲームソフト制作会社「インデックス」と粉飾決算の報道が絶えません。

 皆さん、このようなニュースを耳にするたびに、次のように思わないでしょうか?
 「粉飾決算で過大に計上した利益に対する法人税は戻ってくるのかしら?」と。

 粉飾決算は会社法上も適法でなく、企業会計の基準にも反するものです。

 いくら税金を納め過ぎの状態でも、「更正の請求をしても戻ってくるのかな?」と思うのは分からなくもありません。

(1)税務署が「減額更正をしないことができる」

 結論を申し上げますと、税金(法人税)は戻ってきます。
 ただし、税法もさすがに不正のものに対しては、簡単に税金を戻してくれません。
 納税額が過大である場合には、税務署長は税額を更正して、その過納額を還付するというのが通常の流れですが、仮装経理(粉飾決算等)による過納額の場合には、税務署長は、その会社が「修正の経理」(判例では前期損益修正損等を計上)を行った事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、減額更正をしないことができるという法人税法の規定があります。
 「架空売上を会計上直してから、税金は考えてあげるよ」ということなのです。

(2)更正事業年度から5年間は税額控除

 また、「修正の経理」を行って、更正の請求を行えば、すぐに、その過納額の全額を戻してくれるというわけではありません。
 更正事業年度開始の日から5年間は、その各事業年度の法人税額が順次控除する形になります。
 ただし、粉飾決算の発覚により、経営が傾き、会社を解散する場合、会社更正法の更正手続開始などがあった場合には、税額控除しきれなかった金額は還付されることになります。

(3)過年度遡及会計と「修正の経理」の関係は?
 
 大手の会社では「過年度遡及会計」を採用している場合があります。
 この場合、過去の誤謬の訂正による影響額は、株主資本変動計算書の期首の繰越利益剰余金と貸借対照表の資産・負債で訂正してしまうので、過年度修正の前期損益修正損などは損益計算書の特別損益には計上されませんが、この場合も「修正の経理」として取り扱われることになります。





2014年8月26日火曜日

離婚後の子をめぐるトラブル

《養育費負担がある場合の扶養控除》


(1)生計一親族の判定(養育費の負担)


 国税庁ホームページの質疑応答事例には、子がある夫妻が離婚した後の「扶養控除(所得税)」を、生活が別となった元夫・元妻のどちらに適用できるかという事例が紹介されています。
 元妻が子を引き取り、元夫が養育費を負担しているケースでは、その養育費の支払いが、①扶養義務の履行として、②「成人に達するまで」など一定の年齢に限って行われるものであるときは、その養育費を負担した期間については、子は元夫の「生計を一にしているもの」として、元夫は扶養控除の対象とすることができます。


 ただし、養育費と慰謝料・財産分与の金額が明らかに区分できない場合には、この例には当てはまりません。
 また、子が元夫の控除対象扶養親族に該当するとともに、元妻の控除対象扶養親族にも該当することになる場合には、扶養控除はいずれか一方のみに適用されることになります。


(2)「扶養控除」の取り合いになった事例

 このようなケースでは、別れた元夫婦が子をどちらの控除対象扶養親族とするかという話し合いを持たずに、両者が各々の控除扶養親族として申告を行ってしまうこともあるようです。
 争いになった事例として、平成19年の国税不服審判所の裁決例があります。
 別れた元夫婦が各自の勤務先に扶養控除等申告書を提出し、長女を各々の控除扶養親族として平成18年分の年末調整を受けていたというものです。
 このケースでは元妻が扶養控除等申告書を職場に平成17年12月に提出し、元夫が平成18年1月に提出していることから、長女は、先に扶養控除等申告書を提出した元妻の控除対象扶養親族と判断されました。


(3)「決められない場合」の判定方法は2つ


 所得税法施行令には、2以上の居住者が同一人を自己の扶養親族として申告書等に記載した場合の規定があります。

 ① 既に片方の居住者が申告書等の記載により扶養親族としている場合→その居住者の扶養親族
 ② ①によっても、いずれの扶養親族とするか定められない場合→合計所得金額の大きい方の居住者の扶養親族
 

 上記の裁決では、①の段階で判定ができたため、元夫の所得の方が大きいという事実は考慮されませんでした。




2014年8月22日金曜日

国税庁:2013年度査察白書を公表!

国税庁は、2013年度査察白書を公表しました。

 それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より5件少ない185件、脱税総額は前年度を29.4%下回る約145億円となりました。


 2014年3月までの1年間(2013年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は185件となりました。

 継続事案を含む185件(前年度191件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち63.8%(同67.5%)に当たる118件(同129件)を検察庁に告発しました。

 この告発率63.8%は、前年度から3.7ポイント減少しました。

 告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは前年度より7件少ない4件にとどまりました。

 近年、脱税額3億円以上の大型事案が減少傾向にあります。

 告発分の脱税総額は前年度を約58億円下回る約117億円、1件当たり平均の脱税額は同3,600万円減の9,900万円と、1978年度(9,500万円)以来35年ぶりに1億円を下回りました。

また、告発分を税目別にみてみますと、法人税が前年度から15件減の64件で全体の64%、脱税総額では約54億円で46%を占めました。

 所得税は、同4件減の18件(脱税総額約20億円)と減少しましたが、消費税は、同4件増の16件(同約9億円)、源泉所得税は、同8件増の14件(同約15億円)とともに増加しており、源泉所得税は過去最高の告発件数でした。

 消費税の脱税額のうち約3億円は、消費税還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものでした。

 告発件数の多かった業種・取引をみてみますと、1位は「クラブ・バー」が12件で2年連続のトップ、次いで「不動産業」が9件、前年度11件で「クラブ・バー」とともにトップでした出会い系サイトなどの「情報提供サービス業」と「建設業」、「保険業」が各5件、「広告代理業」と「人材派遣業」がともに4件と続きました。

 なかでも、「クラブ・バー」は、ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していながら、未納付のものが多い結果となりました。





2014年8月21日木曜日

子ども版「NISA」創設へ

政府は、少額投資非課税制度(NISA)の〝子ども版〟を平成28年に創設する方針です。投資にあまりなじみのない親世代の投資促進を狙うものです。

 いわゆる「子ども版NISA」は、日本証券業協会などが創設を求めていたもので、今後は金融庁が年末の税制改正大綱に向けて与党と調整します。投資上限は現行の大人版と同じ100万円。祖父母や両親が孫や子どもの名義で投資すれば、子どもが受け取る配当や将来の売却益を非課税にする制度です。利用対象者は0歳~18歳となる見通し。NISA口座への譲渡以外に贈与があり、合わせて年間110万円を超えた場合は贈与税がかかることになりそうです。

 子ども版NISAは引き出し時の制限をかけるのが特徴です。災害や両親の不慮の事故などを除いては、18歳までは原則として非課税では引き出せないようにする方針となっています。

 金融庁の発表では、今年3月末時点で30歳以下の投資割合は全体の10.9%と、若年層の利用が低い実態が明らかになっています。政府は子ども版NISA創設で若年層の需要拡大につなげたい意向です。加えて、1600兆円の個人金融資産の大半を持つ60歳以上の祖父母にも利用を促します。

 また、通常のNISAも拡大策が検討されています。非課税枠を200万円~300万円に引き上げる案が浮上しています。現在5年間の非課税期間も段階的に延長していく予定です。




2014年8月20日水曜日

年金・物価下落でも給付抑制

1.制度維持のため、年金削減の方向性
 厚労省は、公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年抑制する仕組みを来年度から導入する方針を発表しました。現行のルールではデフレ下では年金を削減できない仕組みになっています。最近は増税を背景に物価が上昇しているので現状でも年金額の抑制はされます。しかし今後、物価上昇率が低い時に給付を抑制できない現行制度のままでは給付額を抑えられないので、年金制度維持のためには毎年の抑制が必要になると試算をしています。
 
2.マクロ経済スライド発動
 年金制度の運営方法は賦課方式と積み立て方式があり、公的年金は賦課方式でその時々に必要な費用を現役世代が払った保険料で賄います。多くの国が採用している方式ですが高齢者が増え現役が少ない人口構成では将来受け取る年金額が減るということになります。積み立て方式は債券、株などに投資して増やす方式で企業年金等が採用していますが、経済の影響を受けやすく、運用がうまくいかないと積立額は減り、年金額も減ります。
 年金額は物価の変動に合わせて毎年の給付を調整する物価スライドと年金の増加を物価の伸びより抑えて給付を減額するマクロ経済スライドという方式があります。 2004年にマクロ経済スライドを導入したものの、今まではデフレ下で使えない状況であったため発動されていませんでした。今回、物価上昇を受け2015年度からこの方式を発動し、そして毎年0.9%を削減する方向で検討をしています。
 
3.受給者にも負担を求める
 公的年金の財政検証では約30年後の会社員の年金水準は現役世代の50%を割り込む事もあるといいます(現在は60%程度)。現役世代の保険料は毎年労使で0.354%ずつ引き上げられています。年金額を抑制し、受給者にも負担を求めるという事になります。世代間格差の原因は現在の受取額が想定よりも多くなったのでそのつけを現役が払う事になるというのですが、「そんな事いわれてもね」と思う方も多いでしょう。
 しかし、年金財政の健全化は長期にわたり行っていく必要があり、不信感から現役が消費より貯蓄に走ると経済は沈みがちになるという問題もはらんでいます。

2014年8月19日火曜日

《社会保険診療報酬と消費税転嫁-H24.11.27 神戸地裁判決》

1.社会保険診療報酬と消費税の転嫁の問題
 平成24年11月、兵庫県の4つの医療法人が、現行消費税法の仕入税額控除制度は憲法違反であるとして、国家賠償を求めていた裁判の判決が神戸地裁で出ています。医療機関の収入である社会保険診療報酬は、社会政策的な配慮から消費税は非課税とされています。一方で、非課税売上のために行った仕入に係る消費税額は、消費税の計算上控除することは認められていません。この控除できない仕入税額は、当然コストとなるため、一般企業では、売価に転嫁することで回収を図ることになります。
 
2.医療機関は「転嫁をしたくてもできない」
 医療機関の場合、社会保険診療報酬は公定価格であるため、この転嫁を自由に行うことはできません。医療機関では、多額の控除対象外消費税が生ずるケースがよく見受けられますが、これは、消費税の仕組み自体が法の下の平等・財産権の侵害など憲法に違反しているのではないかというのが医療法人側の主張でした。消費税の非課税制度・仕入税額控除と診療報酬制度は、個々の制度としては合理的であったとしても、これらが組み合わさった結果、医療機関には、一般企業に比べて、不公平な「負担」が生じているということなのです。
 
3.地裁「法的負担でない」「報酬改定で考慮済」
 この主張に対する裁判所の判断はNOでした。理由を噛み砕いて言えば、�消費税の仕入税額控除制度は、「税負担の累積防止」という計算技術的なものであり、消費税法では、仕入税額を「事業者の法的負担」とは位置付けていない、�医療法人と一般企業では、確かに「転嫁方法の区別」が生じているが、診療報酬改定により一定の考慮がなされているため、立法裁量として許容できる範囲であるということでした。
 
4.EUでは課税選択制度(オプション)がある
 EUでは上記のような議論を、医業特有の問題とは捉えていません。EUの付加価値税では「仕入税額控除権」という請求権があり、課税適状となった時点で行使することができます。非課税売上に対応する仕入税額が控除できず、事業者が不利益を被る場合には、その売上を非課税とする取扱いを放棄して、課税取引を選択することで、仕入税額控除権の行使ができる制度(課税選択制度)が設けられています。

消費税の経理処理-保険料は全額非課税?-

平成元年は消費税元年でもありました。
それから既に25年余り経ちすかっり馴染んだ「税」となりました。


導入当初税収への影響や事業者の事務負担の軽減等から様々な特例や経過措置が講じられました。


また、消費税の課税対象となる取引かどうか或いは政策的な配慮から、一部の取引の消費税の「課税」、「非課税」、「不課税」について消費税の課税に「馴染む」、「馴染まない」で振り分けられたとの説明も受けました。


その後、導入当初の様々な特例や経過措置は廃止や縮減がされ、消費税率アップ(3%から5%へ)の際に「非課税」の項目が追加されたりして、現在に至っています。
ただ、導入当初「馴染む」、「馴染まない」で「非課税」や「不課税」に振り分けられたものがまだ残っているようです。


①保険料と代理店手数料

 ライフネット生命が保険料と保険代理店の代理店手数料を公表し、保険業界に波紋が広がっております。


従来、保険業界では保険料と代理店手数料を公表することはなく、全てを保険料としてきました。


しかし、中立で適切な保険を勧めていることを売りにしてきた乗合代理店(複数の保険会社の代理店をしている比較的大手の代理店)が、手数料の多寡により勧める保険を判断しているのではないか、という疑念は以前よりありました。
 ライフネット生命は代理店手数料が他社より安いため、乗合代理店が積極的に取り扱わない現状に業を煮やしての公表でした。


②保険料は全額非課税か?

 保険料は万が一の時に「保険金」を支払うという役務の提供を受ける為の金銭の支払ですから、基本的に課税取引となりますが、限定列挙で非課税とすると規定されているため、非課税取引とされております。

しかし保険料の中身は保険金の支払い等に充てる保険料と、保険代理店の代理店手数料とで構成されております。

保険代理店の代理店手数料は課税取引ですが、現状の多くの保険会社は保険料と代理店手数料を区分することなく、一括して保険料として契約しているため、課税取引を区分して特定できないということで、支払保険料の全てが非課税取引として処理されております。


③従来からの問題と今後の問題

 そこで従来から問題となっていたのは、代理店手数料を含む保険料は、全額非課税取引とされ、課税仕入として預かり消費税から控除できないにもかかわらず、保険代理店の売上は、課税売上として消費税を課税している現状は、消費税の2重取りではないのかという指摘でした。

 今後、業界として代理店手数料を明らかにするようになると、従来控除できなかった、代理店手数料に係る消費税は、控除できるようになってくると思いますが、一方、代理店手数料の金額が公表されることにより、同じ保険でも代理店により保険料が異なる等、保険業界の価格競争に混乱が生じるなど、新たな問題が出てくるかもしれません。




2014年8月18日月曜日

★事務所だより8月号★

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◆消費税の経理処理 保険料は全額非課税?
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◆保険料と代理店手数料
ライフネット生命が保険料と保険代理店の代理店手数料を公表し、保険業界に
波紋が広がっております。従来、保険業界では保険料と代理店手数料を公表する
ことはなく、全てを保険料としてきました。しかし、中立で適切な保険を勧めて
いることを売りにしてきた乗合代理店(複数の保険会社の代理店をしている比較
的大手の代理店)が、手数料の多寡により勧める保険を判断しているのではない
か、という疑念は以前よりありました。
ライフネット生命は代理店手数料が他社より安いため、乗合代理店が積極的に
取り扱わない現状に業を煮やしての公表でした。

◆保険料は全額非課税か?
保険料は万が一の時に「保険金」を支払うという役務の提供を受ける為の金銭
の支払ですから、基本的に課税取引となりますが、限定列挙で非課税とすると規
定されているため、非課税取引とされております。しかし保険料の中身は保険金
の支払い等に充てる保険料と、保険代理店の代理店手数料とで構成されておりま
す。保険代理店の代理店手数料は課税取引ですが、現状の多くの保険会社は、保
険料と代理店手数料を区分することなく、一括して保険料として契約しているた
め、課税取引を区分して特定できないということで、支払保険料の全てが非課税
取引として処理されております。

◆従来からの問題と今後の問題
そこで従来から問題となっていたのは、代理店手数料を含む保険料は、全額非
課税取引とされ、課税仕入として預かり消費税から控除できないにもかかわらず
、保険代理店の売上は、課税売上として消費税を課税している現状は、消費税の
2重取りではないのかという指摘でした。
今後、業界として代理店手数料を明らかにするようになると、従来控除できな
かった、代理店手数料に係る消費税は、控除できるようになってくると思います
が、一方、代理店手数料の金額が公表されることにより、同じ保険でも代理店に
より保険料が異なる等、保険業界の価格競争に混乱が生じるなど、新たな問題が
出てくるかもしれません。

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山本孝広税理士事務所
ytzj@outlook.jp
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成年後見人の選任をしたときの税務(所得税・相続税)

お盆休みも終わり、連休疲れ、Uターンラッシュの疲れで今朝の目覚めや通勤が辛かった人も多いのではないですか。
次の連休「敬老の日」まで、がんばりましょう。


認知症・障害者の方が相続人の場合

①相続人に認知症や障害者の方がいる場合
 遺産分割協議には相続人全員の合意が必要です。これは相続人の中に認知症の方や障害者の方がいる場合でも同様です。
 ただし、その方が意思能力(正しい判断能力)を有していないときは、遺産分割協議は有効に成立しません。
このような場合、家庭裁判所に「後見開始の審判」の手続きをとり、成年後見人を選任することとなります。
 成年後見人は意思能力を欠いた相続人の代理人となり、分割協議に出席し、必要な署名等を行うことになります。(一般に、後見人は、その相続人の不利益にならないように、法定相続分程度の遺産を取得できるよう協議を進めるようです)

②所得税・相続税の障害者控除の適用
 成年後見制度における成年被後見人(家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者)については、H24.8の名古屋国税局文書照会で所得税法上、障害者控除の適用となる「特別障害者」に該当することとされています。

 また、相続税法上の障害者控除の適用となる「特別障害者」については、所得税法上の障害者控除の対象となる「特別障害者」に該当する者と規定しているため、介護認定が低く、障害者手帳の交付を受けていない方でも、「特別障害者」として所得税・相続税の障害者控除の適用を受けることができます。

③「納税管理人の届出」を後見人宛てに
 成年後見制度は「自己の財産の管理・処分」を「することができない(後見相
当)」「常に援助が必要である(保佐相当)」「援助が必要である(補助相当)」という判断能力の程度により3種類に分かれています。

 財産管理委任契約(見守り契約)を締結する場合には、「納税管理人の届出書」を納税地(本人)の所轄税務署に提出し、申告書等の送付先・連絡先を成年後見人宛にすることで、税金関係も後見人に対応してもらうことができます。
 また、成年被後見人・被保佐人は会社法により取締役になることができません。
 取締役の方に成年後見人が付いた場合には、直ちに役員変更を行わなければなりません。






2014年8月15日金曜日

相続税-日本独特の課税方式-

お盆休み故郷で過ごされている人もいらっしゃることと思います。

親族が集まるこの時期に相続が話題となることもあるのではないですか。


日本の相続税の課税方式は、他の先進諸国とは異なり、少し特殊であるらしいです。

相続税は、死亡した人の財産を相続等により取得した相続人に課される税金です。

相続で財産が親から子等に移るだけなのになぜ税金がかかるのか改めて考えると不思議ですね。

相続税を課税する目的持つ機能について、その一つに「所得税の補完機能」が挙げられます。

被相続人が生前において受けた税制上の特典などにより蓄積した財産を「相続」という機を捉えて精算をするいわば所得税を補完する機能です。

もう一つは「富の集中抑制機能」です。

相続により相続人が得た財産の増加に対し税を課すことで、相続をした者としなかった者との間の財産の均衡を図り、富の過度の集中を抑制する機能です。

次に相続税の課税方式について、課税方式には①被相続人の遺産総額に応じて課税する「遺産課税方式」と②個々の相続人が取得した遺産額に応じて課税する「遺産取得課税方式」があります。

前者①は英米が採用、後者②は仏独が採用しています。

「遺産課税方式」の特徴は、被相続人の所得税補完機能の観点から作為的な遺産分割による租税回避を防止しやすく、遺産分割に関係なく遺産の総額によって相続税額が決まるため、徴税が容易であることです。

「遺産取得課税方式」の特徴は、各相続人が相続した財産の価額に応じて、それぞれ超過累進税率が適用されるため、富の集中化の抑制機能があり、相続人間の取得財産額に応じた税負担の公平が保てます。

冒頭で触れました、日本の相続税の課税方式が特殊であるとする理由について、そもそも日本の相続税は明治38年に「遺産課税方式」で導入されましたが、昭和25年に「遺産取得課税方式」に改められ、昭和33年に税額の計算に当たり「遺産課税方式」の要素が一部取り入れられ、現在までその方式がとられているところです。


二つの課税方式の長所(短所?)を取り入れた方式となっているようです。



2014年8月13日水曜日

「ふるさと納税(改正案)」

お盆休みをふるさとで過ごす方の帰省ラッシュが各地でピークを迎えつつあります。
一方、朝の横浜駅の混雑はいつもほどではないようです。
「税金」、「ふるさと」のキーワードから連想されるのが「ふるさと納税」です。
「ふるさと納税」制度は、自治体に寄附した金額を所得税と住民税の寄附金控除の対象とするもので、控除に上限はあるものの、上手に利用すれば、自己負担2,000円でふるさと納税先の自治体の特産品(通常2,000円以上のもの)が貰える割安感お得感が魅力の1つとなっています。
 
「ふるさと納税」制度が導入されて以降、この特産品の魅力もあってか制度の適用を受ける方の数も順調に伸びているようですが、①控除に上限があること、②サラリーマンにとって不慣れな確定申告の手続が必要であること、③確定申告を選択したことで少額の副収入を加算しなくてはならなくなり特産品の割安感お得感が減ってしまうことなどで、この制度の利用をためらっている方もいるようです。
 
この度の改正案は、①控除の上限を2倍にする、②住民税の控除に一本化する、③ふるさと納税を受けた自治体から居住地の自治体に連絡をさせることで確定申告の手続を不要にするなどです。
 
この改正で、上記のような理由で制度の利用をためらっている方の利用も促進されるのではないでしょうか。



2014年8月12日火曜日

相続税-相続(生前)対策・・・贈与の特例-


相続の生前対策は、まず「財産の贈与」が挙げられます。

暦年課税の贈与には毎年110万円の基礎控除がありますので、長期的な計画で贈与を行えば効果的です。

また、贈与税にはこの暦年課税の贈与以外に、次の特例がありますので、この特例の活用も検討されてみてはいかがでしょう。


1 贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦で、例えば、夫から妻へ、妻の居住用不動産の贈与又は居住用不動産の取得資金の贈与をした場合には2,000万円の控除があります。

また、この特例を受けた贈与は、相続開始3年以内の贈与であっても相続財産に加算する必要はありません。

なお、贈与財産は金銭より不動産の方が評価等の関係で有利となる場合があります。

2 子又は孫への住宅取得等資金の贈与の非課税

子又は孫への住宅取得等資金の贈与には、500万円(省エネ住宅は1,000万円。いずれも平成26年中の贈与の場合です。)までが非課税になります。

ただし、①受贈者が贈与の年の1月1日現在で20歳以上であること、②取得した住宅等の1/2以上が居住用であること、③その物件が国内にあること、④床面積が50㎡以上240㎡以下であること、⑤中古住宅取得の場合建築後20年以内(耐火建造物は25年以内)であること、⑥贈与年の翌年の3月15日までに取得し入居することなどが要件です。

この特例を受けた贈与についても、相続開始3年以内の贈与であっても相続財産に加算する必要はありません。

3 子又は孫への教育資金の一括贈与の非課税

30歳未満の子又は孫の教育資金に充てるために金銭を拠出して金融機関に信託等した場合に、その信託受益権の価額のうち1,500万円までは贈与税が課税されません。

教育資金とは、学校に支払われる入学金、授業料、施設使用料などのことで、学校以外(学習塾、スポーツ文化芸術活動、その他教育向上のための活動)の者に支払われる同様の支払も含まれます。(学校以外の者への支払は500万円が限度となります。)

なお、この特例は、①受贈者が30歳になったとき、②受贈者が死亡したとき、③資金が0円になったときに終了し、①または③の場合は、その日に贈与があったものとして贈与税が課税されますが、②の場合は、贈与税は課税されません。



2014年8月8日金曜日

相続(生前)対策-『相続時精算課税』と『暦年課税』

相続(生前)対策の1つに『財産の贈与』があります。


その『財産の贈与』に対する課税方法には、『相続時精算課税制度』と『暦年課税制度』の2つの制度があることは皆さんご存知と思います。


どちらの制度を選択した方が有利かは一概には申し上げられませんが、それぞれの制度のメリット・デメリットを知ることで、ご自身の状況にあった制度を選択することができると思います。


なお、相続時精算課税制度は贈与者毎に選択することができますが、一旦これを選択すると暦年課税制度への選択替えはできませんので注意が必要です。


 『相続時精算課税制度』
《メリット》
 ①2,500万円までは、贈与税を支払わずに贈与ができる。
 ②2,500万円を超えた部分の贈与税率は一律20%である。
 ③贈与時の評価額(金額)が相続時に適用されるので将来値上がりが見込   まれる財産を贈与すると有効である。
 
《デメリット》
 ①受贈者に制限がある。
 ②受贈者が贈与者より先に死亡すると、二重課税や三重課税になることがあ る。
 ③贈与時の評価額(金額)より値下がりすると不利になる。
 ④毎年の税制改正に対応し難い。


 『暦年課税制度』
《メリット》
 ①受贈者に制限がない。
 ②3年を経過した贈与は相続財産に取り込まれない。
 ③推定相続人以外への贈与は相続財産に取り込まれない。
 ④毎年の税制改正への対応が容易である。 


《デメリット》
 ①基礎控除(現行110万円)が低いので多額の贈与がし難い。
 ②税率の累進カーブが急なので多額の贈与は税負担が重い。


以上は一般的なものですので、この他にも、ケース毎にメリット、デメリットがあると思われます。


毎年1回定期的に財産の状態を把握することも相続(生前)対策の1つだと思います。




2014年8月6日水曜日

遺産分割協議-争いが起きる原因-


は各地で花火大会が開催されます。
最近の花火は、ハート型やスマイル型などもあるようですね。




産分割協議で争いになる原因は主に「遺産隠しの疑い」、「特別受益」、「寄与分」の3つといわれます。


の中の「遺産隠しの疑い」ついて


続人等が亡くなった人の財産の全てを正確に把握することは難しいこともあります。


居している親族であれば、生前の生活状況等でわかる部分もありますが、長い間別居している親族にとっては、相当困難なことだと思います。


産分割協議で、くなった人と同居していた親族等が示す財産の一覧を別居していた他の親族等が信用すれば争いも起こらないのでしょうが、それに疑いを持つと、分割協議が整わず長引いてしまいます。


っとも、同居親族といえども、亡くなった人の財産の全てを把握できている場合ばかりではありません。


続税の申告を済ませた後の税務署の調査で、申告漏れの財産を指摘され、修正申告と追徴税額の納税をすることもよくあるようです。


ースは色々ですが中には、税務調査で申告漏れを指摘された財産の存在を相続人等が全く知らなかったケースもあります。


し不謹慎ですが「税務調査に感謝」というところでしょうか。


産分割で相続人や親族の間で「火花を散らす」ことにはなりたくないものです。





2014年8月5日火曜日

相続税の申告までの流れ

8月になりました。
猛烈に暑い日が続いていますので、体調には十分気を遣い体を労わりましょう。


本日のテーマは、「相続税の申告までの流れ」についてです。


相続税の申告までの大まかな流れは、①相続人の確認、②遺言の有無の確認、③遺産と債務の確認、④遺産の評価、⑤遺産の分割、⑥申告と納税です。


相続人の確認
 被相続人と相続人の本籍地から戸籍謄本を取り寄せて相続人を確定します。


②遺言書の有無の確認
 遺言書があれば遺言書を開封する前に家庭裁判所で検認を受けます。
  公正証書による遺言は検認を受ける必要はありません。


③遺産と債務の確認
 遺産と債務を調べてその目録等の一覧表を作ります。
 葬式費用は遺産から控除しますので、領収書等が必要です。


④遺産の評価
 遺産の評価は、相続税法と財産評価基本通達により評価します。


⑤遺産の分割
 遺言書がない場合等には、相続人全員で遺産の分割協議をし、遺産分割協議書を作成します。


 相続人のなかに未成年者がいる場合には、その未成年者について家庭裁判所で特別代理人の選任を受け、特別代理人がその未成年者に代わって遺産の分割協議を行います。


 期限までに分割できなかったときは民法の規定による法定相続分で相続財産を取得したものとして相続税の申告をすることになります。


⑥申告と納税
  相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行います。


 申告書の提出先、納税先はいずれも被相続人の住所地を所轄する税務署で、相続人の住所地ではありませんので注意が必要です。


 相続税の納付は、申告書の提出期限までに金銭で納めるのが原則です。


  相続税の納税が一括でできない場合、金銭により分割で納付する「延納」や相続で取得した財産で納める「物納」という制度があります。


 この「延納」、「物納」を希望する場合は、申告書の提出期限までに税務署に申請書などを提出して許可を受ける必要があります。


 10ヶ月はあっという間です。



2014年8月4日月曜日

相続税と贈与税


関東は梅雨明けしたとたん体に堪えるほどの猛暑日が続きましたが、今週になってその暑さも少し和らいだような感じがします。

皆様いかがお過ごしですか。


平成27年1月から相続税、贈与税が改正されることは先日からお伝えしているとおりで、皆様もご承知のことと思います。


相続対策の1つとして生前贈与のご相談を受けますが、皆様一様に「贈与税は高い。」とおっしゃいます。


相続税と贈与税の税率は、10%から55%の8段階であることは同じですが、相続税の最高税率55%が課税財産の金額6億円超で適用になるのに対して、贈与税は4千5百万円超で適用になります。

(改正後の税率で、贈与税は特例税率の場合)


例えば、1千万円を推定相続人に生前贈与した場合の贈与税は、暦年課税で贈与税率30%が適用になりますから177万円となります。

(式:(1,000万円-110万円)×30%-90万円)


一方、法定相続人1人当たりの課税財産1千万円の場合の適用相続税率は10%ですから相続税額は100万円となります。


このケースでは、贈与税の方が税負担が重くなっています。


しかし、仮に1人当たりの課税財産が1億円超2億円以下の適用相続税率40%のケースではどうでしょうか。

このケースでの課税財産1千万円の差は相続税額400万円の差となります。


同じ1千万円でも上記贈与税177万円よりも圧倒的に相続税の方が税負担が重くなります。


では、この贈与税と相続税の負担額の分岐点は何処にあるのでしょう。


上記贈与税額177万円の場合、贈与財産に対する割合は17.7%ですから、法定相続人1人当たりの課税財産が3千万円超5千万円以下の場合の適用相続税率20%辺りが分岐点と考えられます。


この間の課税財産1千万円の差は相続税200万円の差となります。

上記贈与税177万円の分岐点は課税財産約3千9百万円となります。


意外に分岐点が低いと思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。