2014年9月30日火曜日

修繕費か取得価額か 外壁塗装等の工事費

所得税及び法人税において、賃貸ビル、事業用ビルの外壁塗装や室内の壁紙の張り替え等(以下、外壁塗装等)の工事費は、通常、修繕費として必要経費又は損金の額に算入されます。

◆事業供用後の外壁塗装等の処理
これら外壁塗装等は、通常、当該資産の価値の増加又は使用可能期間を延長させるものではなく、減価償却資産であればこそ生ずる、よごれ、さび、しみ、損傷等の現象を予防し、現状を維持することで、予定された機能を発揮させるための欠くことのできない、いわゆる機能の維持管理のための費用といえます。したがって、所得金額の計算上、金額の多寡にかかわらず、修繕費として処理されます。

◆事業供用時の外壁塗装等の処理
最近、中古ビル(賃貸ビル、事業用ビル)の市場が活況を呈しています。築15年程度を経過した中古ビルを購入し、事業の用に供するため外壁や室内をきれいにするために塗装、壁紙の張り替えをすることはよくあります。この場合の外壁塗装等は、無条件に修繕費として処理されるものなのかどうか気になるところです。


所得税、法人税では、購入した減価償却資産の取得価額は、次に掲げる①と②の金額の合計額と規定しています。
①当該資産の購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の価額
この規定からすると、中古ビルを取得し、それを事業の用に供するために支出した外壁塗装等の工事費は、修繕費ではなく、取得価額を構成すると考えられます。

◆悩ましい判断
現に事業の用に供されている賃貸ビルの取得にあたっての外壁塗装等の工事費については、微妙な問題を招来させます。このような場面に遭遇したときは、当該外壁塗装等の支出が取得価額を構成するか、それとも修繕費として処理されるかで課税所得に大きな影響を及ぼしますので、外壁塗装等の実施時期については、慎重な判断が求められます。



2014年9月29日月曜日

メーカーが野菜を生産する時代の到来

ここ1~2年、東芝や富士通、パナソニックなど、大手エレクトロニクスメーカーが野菜の生産事業に参入するようになりました。パソコンや半導体チップと同じように、ホウレンソウやリーフレタス、ベビーリーフなどを育てて出荷するというものです。

なぜ、パソコンを製造しているメーカーが野菜を生産するのか、エレクトロニクス製品と野菜は全く関係のないもののようにみえます。ところが、野菜を生産する過程には、これまで電機メーカーが蓄積した技術が数多く応用されています。

まず、野菜は畑ではなく植物工場という専用の設備で育てられます。ここでは、LEDや蛍光灯により、野菜が光合成に必要な太陽光と同じ波長の光をあて成長を促します。また、夜の時間帯は照明を消して昼と夜も人工的に作り出すことで太陽光と同じように野菜が育ちます。東芝やパナソニックは照明事業を行なっており、植物工場にはLEDをはじめとする高い照明技術が応用されています。

加えて、半導体の技術も応用されています。富士通が福島県会津若松市に構築した植物工場は、もともとは半導体工場のクリーンルームでした。半導体のチップは、製造工程でほこりや汚れが混ざると良品にならないため、室内をきれいに保つことが必要とされています。

室内をクリーンに保つ技術は、菌の侵入を制限します。そのため、雑菌による傷みが少なく長期保存ができる野菜を育てることを可能にしています。また、雑菌がついていないため、野菜を洗わずに調理できる点もメリットです。ファミリーレストランなどの外食産業で、調理時間を少しでも短くしたいと考えている事業者のニーズを満たします。

植物工場は野菜生産の方法を大きく変えるものでもあります。一例を挙げると、室内で生産するので、天候に左右されることもなく、計画的に作物を生産できるようになります。これまで、台風や干ばつ、雪害などが起こると、野菜の価格が高騰し、消費者の生活に影響を及ぼしていました。

メーカーには製品を安定的に供給する生産管理の技術があります。植物工場では生産管理のノウハウを応用し、野菜の生産量が不足、あるいは過剰にならないように数量をコントロールしています。野菜の価格が安定すれば、農家はもとより、消費者にとっても大きなメリットを受けることができます。

ただし、電機メーカーの真の狙いは、農業に参入することではありません。現在、農業では、生産性向上が課題になっています。今回、メーカーは自ら野菜の生産をはじめることで、農業の現場が抱える課題を肌で感じることが可能になります。

そして、蓄積したノウハウをもとに植物工場のシステムをはじめとする、課題を解決するためのソリューションシステムを開発し農家へ販売することで、ソリューション事業の利益を伸ばすことが可能になります。

メーカーの植物工場、野菜生産の取り組みは、自社の技術や遊休設備を従来とはまったく異なる分野に応用することで、新たなビジネスが生まれることを示しています。とくに、植物工場は、第一次産業と第二次産業という、まったく異なった分野での融合により生じたビジネスです。今後はこうした別次の産業を組み合わせて、従来の自社製品とは異なるものを生みだすところにビジネスチャンスがあるといえます。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)





2014年9月25日木曜日

教育訓練給付金の給付拡大

◆介護職等の資格取得も使える
 雇用保険の教育訓練給付は労働者や離職者が自ら費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講終了した場合、その費用の一部を支給するものです。
 平成26年10月からの給付内容が拡大され、中長期的なキャリアアップ支援の為、厚労省が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座(医療福祉、技術系等)を受講した場合に給付金の割合が上がります。


◆給付金の引き上がる講座とは
 次のうち資格試験の受験率及び合格率・就職率等の指定基準を満たす厚労省大臣が指定した講座で「専門実践教育訓練」と呼び現在の「一般教育訓練」と区別されます。
 ①業務独占資格は資格を持たず業務を行う事が法令で禁止されている資格で看護師や歯科衛生士等医療系資格や理美容、電気工事士、建築士、海技士等26種あります。
 名称独占資格は資格をもたずに業務を行う事はできるがその名称の使用は法令で禁止されている資格で、保健師、栄養士、保育士、介護福祉士等8種類あります。これらの資格取得の為の訓練を目標とした養成施設の過程(それを受講する事で公的資格を得る、受験資格を得る等する事)の訓練期間は3年以内です。
 ②専門学校の職業実践専門課程は2年間で専修学校の専門課程のうち文部科学大臣が指定したものを受講した時。
 ③専門職大学院は訓練期間が2年から3年で高度専門職業人の養成を目的としています。


◆10月からの訓練給付金はどう変わる
 一般教育訓練と専門実践教育訓練の2種類で金額や給付期間が違います。
一般教育訓練は従来通り受講者が支払った訓練経費の20%で上限は10万円、支給期間は最長1年間です。

 専門実践教育訓練は訓練経費の40%、上限は年32万円、期間は原則2年で資格に繋がるときは最長3年になります。これの支給対象者は10月1日以降に初めて受講する場合、受講開始前までに通算して2年以上雇用保険に加入している人です。10月1日以降2回目以降の受給は前回の受講開始日から次の受講開始日までに通算して10年以上、雇用保険に加入していた人です。




2014年9月21日日曜日

若年層への資産移転策目白押し

そろったばかりの各省庁の平成27年度税制改正要望には、祖父母・親世代の個人資産を次世代に譲り渡すための改正メニューがずらりと並んでいます。


資産移転の推進を目的に、住宅購入、株投資、教育、結婚、妊娠、出産、育児といったさまざまな場面で使える税優遇を取りそろえる構えです。銀行などで眠っている個人資産を何としてでも市場に回したいという国の意向がはっきりと見えます。

国土交通省は、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の延長・拡充を求めました。直系尊属から住宅取得目的の資金の贈与を受けた場合に一定額までは課税されないこの制度は、今年で期限切れになる予定でした。国交省は3年間の適用延長と、非課税枠の拡充(最大3千万円)を要望しています。

金融庁はNISA(少額投資非課税制度)について、現行の年間非課税枠の100万円から120万円への引き上げとともに、ジュニアNISAの創設を要望に盛り込んでいます。ジュニアNISAは、未成年者名義の口座で投資した株式や投信について、年間80万円までの投資分の運用益・配当金を最長5年間非課税にするもの。親や祖父母の資金拠出を想定して提言されていることからも、高齢者から未成年者への資産移転のきっかけのひとつになる政策と国が捉えていることが分かります。教育資金を一括贈与した場合の贈与税の非課税措置についても、金融庁は制度の恒久化と対象の拡充を求めています。

内閣府は金融庁とともに、資産移転に関わる税制を提案しました。信託などの機能を使って結婚や妊娠、出産、育児の費用を一括で子や孫に贈与した場合に一定額を非課税にするべきとしています。前述の教育資金一括贈与の特例と類似の制度といえそうです。また、内閣府単体で、子育てに必要な支出を所得税制上の控除対象にすることも要望しました。





2014年9月16日火曜日

配偶者の受給する各種の出産子育て期支給金と課税関係

◆配偶者の受給する雇用保険
 配偶者が退職により雇用保険金を受給している場合、この金銭給付は配偶者の所得としては雇用保険法で非課税とされているので、配偶者控除の判定においても、合計所得金額に含める必要はありません。



◆配偶者の受給する出産育児一時金
 配偶者の出産に際し、健康保険から支給される出産育児一時金は、健康保険法で非課税とされていますので、配偶者本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、合計所得金額に含める必要はありませんが、医療費控除の額の計算では、医療費を補填する保険金等に該当することになるので、医療費から差し引かなければなりません。



◆配偶者の受給する出産手当金
 出産に際して受ける産前産後休暇の給与補填金としての出産手当金も同じく健康保険法で非課税とされていますので、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、所得とはしませんが、医療費の補填を目的とするものではないので医療費から差し引く金額ともされません。



◆配偶者の受給する出産助成金その1
 市町村等の自治体から、住民の妊娠及び出産に対し、出産助成金が支給されることがあります。妊娠及び出産に係る費用の一部を支援することを目的とするものは、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、非課税所得となりますが、医療費控除の額の計算では、医療費から差し引くものに該当します。



◆配偶者の受給する出産助成金その2
 しかし、その出産助成金が妊娠及び出生の祝儀目的のものは、医療費控除の額の計算上医療費から差し引く金額とはされません。ただし、これを非課税とする法令がないことから、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定においては、非課税所得にはなりません。所得の分類としては、一時性の所得であるとともに公法人からの収入でもあるので、一時所得に該当します。



◆配偶者の受給する休業給付金・児童手当
 育児のために休業給付金の支給を受けている場合、この給付金は雇用保険法で非課税とされています。また、子育てのために児童手当・児童扶養手当の支給を受けている場合、この給付金は児童手当法・児童扶養手当法で非課税とされています。従って、これらの給付金は、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定上、合計所得金額に含める必要がありません。




2014年9月12日金曜日

「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」

国税庁は、源泉徴収時の金額を、消費税込み又は消費税抜きのどちらで判定するのかを各国税局等に示した「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」を公表しました。

それによりますと、源泉所得税の課税標準額等について、4月に引き上げられている消費税率及び地方消費税率に対応したもので、①給与所得等に対する源泉徴収、②非課税限度額の判定、③報酬・料金等所得等に対する源泉徴収を明らかにしております。


上記①では、源泉徴収義務の規定が適用される給与等が、物品または用役などの現物給与により支払われる場合において、物品または用役などの価額に消費税等の額が含まれているときは、その消費税等を含めた金額が給与等の金額になるとしました。


上記②では、所得税基本通達36-22(課税しない経済的利益・・・創業記念品等)、36-38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)に定める非課税限度額の判定にあたり、これまでは「評価を行った金額に105分の100を乗じた金額」をもって、その通達に定める非課税限度額を超えるかどうかの判定を行うこととしていました。


それを今回の通達では、「評価を行った金額から、消費税及び地方消費税の額を除いた金額」に変更しております。
つまり、従業員等に支給した食事代や創業記念品等による経済的利益は、消費税等を除いた金額によって、非課税限度額を超えるかどうかの判定をすることになります。
また、「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」の通達に定める非課税限度額についても、これに準じて取り扱うことになります。



上記③では、源泉徴収義務の規定が適用される報酬・料金等が、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額にも該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税等を含めた金額になります。
ただし、報酬・料金等の支払いを受ける者からの請求書等が、報酬・料金等の額と消費税等の額を明確に区分している場合には、その報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとしております。




2014年9月11日木曜日

日本税理士会連合会:軽減税率制度の導入に反対!

本税理士会連合会は、消費税率10%引上げの時に、軽減税率制度を導入することは、低所得者世帯に対する効果が限定的であるのに加えて、税収減収額=逸失税収額が多額であるほか、軽減税率対象品目の選定や中小企業者の事務負担、中小特例の形骸化といった観点からも問題のある制度であると反対しており、特に、事業者への事務負担の増大は、見過ごせない問題であると指摘しております。


さらに、日本税理士会連合会によりますと、軽減税率制度の導入は、標準税率と軽減税率の区別や記帳義務、コンプライアンスコストなど事業者にとっての事務負担を増大させ、軽減税率制度を導入すると、その煩雑さや錯誤は、想像に易く、実務の世界に混乱をもたらすと指摘しております。
そして、実務の視点から軽減税率の導入を考えますと、軽減税率の導入に伴う事業者の事務コストは、事業者自らが負担することになります。


例えば、軽減税率を導入した場合、標準税率と軽減税率との区分が必要になります。そして、その区分に伴う値付けや商品タグの付け替え、あるいは広告宣伝のチラシやホームページなどを改定する必要があります。
また、レジやPOSシステム、見積書・請求書の受発注システムの変更に伴うコストなども生じます。
さらに、帳簿記帳に関しては、標準税率の物品、サービスと軽減税率との区分が必要になります。


例えば、旅館の宿泊費は食事代と宿泊費を分ける必要があり、ゴルフ場などでも同様にプレー代と食事代を分ける必要が出てきます。
このような経理システムの変更のためのコストのほか、消費税等を適正に申告するためのコンプライアンスコストなども全て事業者自身の負担になり、事業者にとって過大な事務負担が発生する可能性があります。


日本税理士会連合会では、財務体質が脆弱な中小企業にこのような負担を強いるのは大変に酷であり、零細企業などは再設備投資に回す余裕がないため、事業廃止に追い込まれるおそれがあると指摘しております。


今後の税制改正の動向に注目です。




2014年9月10日水曜日

政府税制調査会:法人税の改革案を公表!

府税制調査会の法人課税専門委員会は、法人税の改革案を公表しました。
それによりますと、「法人税改革は、必ずしも単年度での税収中立である必要はない」として、法人税率引下げの減税先行を容認しております。


また、法人税の改革とあわせて、給与所得控除などの法人課税以外の税目、国際課税の見直しも含めた関連する他の税目についても、同様に見直しを行う必要があるとし、恒久減税である以上、恒久財源を用意することが鉄則であるとの考え方を示しております。


今回の法人税改革の主な目的については、
①立地競争力を高めるとともに、わが国企業の競争力を強化するために税率を引き下げること、②法人の課税ベースが狭くなり、負担が一部の黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直すこと、の2つを掲げております。


上記①においては、企業が国を選ぶ時代にあって、国内に成長分野を確保するには、「法人税率の引下げは避けて通れない課題」との基本スタンスを強調して指摘しております。

また、上記②においては、現在、すべての法人の1%に満たない資本金1億円以上の企業が、法人税収の6割以上を担っており、他方では、納税企業が全体の3割に満たないという状況を指摘しております。


課税ベースを拡大して、代わりに税率を引き下げることにより、高収益を上げる企業の税負担を緩和し、法人課税を「広く薄く」負担を求める構造にすることは、企業の成長を後押しし、新しい産業や新規開業が行われやすい環境を作ることになると指摘しております。


注目される代替財源として挙げられているのは、①租税特別措置(政策減税)の縮小・廃止、②欠損金(赤字)の繰越控除制度の見直し、③受取配当の益金不算入制度の縮小、④減価償却制度の見直し、⑤中小法人への課税強化、⑥公益法人等への課税強化、⑦外形標準課税の強化など地方法人課税の見直しなどが具体的な改革事項とされております。


加えて、国際課税の見直しや、給与所得控除などの法人課税以外の税目も検討事項として挙げられており、今後の税制改正の動向に注目です。


2014年9月9日火曜日

租税公課の債務確定 《固定資産税について》

租税公課のうち損金の額に算入される租税について、いつの時点で損金となるのか、法律上、具体的な定めはなく、単に、「債務の確定」が要件となっているにすぎません。

課税実務では、租税公課の債務確定時期について、一般的に、申告納税方式による租税と賦課課税方式の租税とに大別して、損金算入時期を具体的に明示しています。



◎申告納税方式と賦課課税方式
申告納税方式による租税については、当該納税申告書が提出された日の属する事業年度とし、更正又は決定に係る租税についてはその更正又は決定があった日の属する事業年度とされています。


一方、賦課課税方式による租税にあっては、賦課決定のあった日の属する事業年度とされています。
但し、法人がその納付すべき租税について、その納期の開始の日の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理した場合には、当該事業年度とすることも容認されています。


なお、納期が分割して定められているものについても、それぞれ納期の開始の日の属する事業年度とすることが容認されています。


◎賦課決定のあった日とは
固定資産税は賦課課税ですので、その損金算入については、賦課決定のあった日の属する事業年度ということになります。
賦課決定のあった日、といってもその日をどのように特定するか、ですが、それぞれの市町村に賦課決定日を確認するなど、いろいろな考え方なり解釈もあるかと思います。


しかし、法律上の効力発生時期は、特段の定めがない限り「到達主義」によっていると解されています。民法においてもその旨が規定されています。
ちなみに、地方税法20条4項においては、「通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には、この法律に別段の定めがある場合を除き、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律2条3項に規定する信書便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する」とあります。

したがって、「賦課決定のあった日」とは賦課決定書の到達日であり、その日をもって債務が確定したものとして、その日の属する事業年度に損金の額を算入するのが相当と考えられます。





2014年9月8日月曜日

企業は人の一生を保証できるのか

企業年金には退職後の給付が確定している確定給付型と、現役時代の拠出額のみが決まり退職後の給付は変動する確定拠出型の2種類があります。

年金は資金の拠出から年金の受給までが長期間にわたり、その間の資産の運用リスクが存在します。確定給付型と確定拠出型の違いは資産運用リスクを誰が負担するかということに帰着します。

運用リスクを企業が負うのが確定給付型、年金受給者が負うのが確定拠出型になります。

高度成長時代は年金資産の運用成績が高く、企業が年金の不足部分を補填するような状況が来るとは思いもしませんでした。

しかし、時代は変わりました。金利は下がり続け、長期金利の代表である10年物の国債金利は長らく1%を超えることがありません。

年金資産の長期間にわたる元本の確実性を考えれば、資産の多くを国債で運用するのが一番確実ですが、この金利ではとても約束した予定運用利回りを確保することはできません。

そこで、リスク商品である株式も運用に加えます。

確定給付型では、年金資産で運用不足が出る場合は企業が負担しなければなりませんが、企業業績も決して楽ではありません。

利益を確保するために経費削減を迫られるところも出てきます。

最大の経費項目は人件費ですが、退職した従業員の企業年金支払いのために、これから頑張ってもらわなければならない現役従業員の給与を削らなければならないという何とも倒錯した状況に陥ってしまうところもあります。

医療の進歩は人の寿命を引き伸ばします。

これから退職する人は百歳まで生きることも決して珍しくない時代が到来します。

一方で経済潮流の変化は激しく、一歩間違えば企業は一気にその寿命を終えてしまいます。

それは中小企業に限ったことではありません。

ナショナルフラッグとして君臨した日本航空は破綻しましたし、安定企業の代名詞であった東京電力も今や生き残りに必死です。

どんな優良企業でも企業の寿命が人間の寿命より長いとは断言できません。企業が人間の生涯にわたる保証を行えると考えるのは、企業の傲慢なのかもしれません。

退職後の経済保証をかつて所属した企業に求める時代は終わったといえそうです。

唯一、人間の生涯にわたる年金を保証できる主体は国家だけということになりますが、現在の我が国の財政状況を見ると国家にも全幅の信頼を置くことはできません。

最終的には自分しか頼りにならないと考えた方がいいでしょう。

その意味で運用を自己責任で行う確定拠出型年金がより重要になります。

確定拠出型でも現在の環境では決して高率の運用ができるわけではなく、場合によっては損が出ることもあります。

しかし、それは他の誰の責任でもなく運用資産を選択した本人の責任です。

退職者はかつて所属した企業からの自立が求められる時代に入ったことを覚悟しなければなりません。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

2014年9月5日金曜日

海外資産5千万円超は5539人

5千万円超の海外資産を持っている人に対し、財産の種類、数量、価額などを税務署に提出することを義務づけた「国外財産調書」の初年度の提出件数は5539件、国外財産の価額合計は2兆5142億円でした。


資産家の持つ海外の財産の一端を示す一定の数字がこうしたかたちで示されたのは初めてのことです。


国税庁によると、提出者の地域別では、東京が3755件で全体の67.8%を占めました。


2位以下の大阪638件(11.5%)、名古屋457件(8.3%)を大きく引き離し、日本の富裕層の東京一極集中が見て取れる結果です。


価額についてはより顕著で、東京だけで全体の83.5%を占めるに至っています。


資産の内訳は、「有価証券」が1兆5603億円で全体の62.1%を占めダントツ。


「預貯金」3770億円、「建物」1852億円、「土地」821億円、「貸付金」699億円と続きます。


今回の提出総数について国外財産調書を担当する課税総括課では、「予測を立ててはいなかったので、この数字が多いか少ないかは分からない」とすると同時に、「決してこれで100%であるとは思っていない」と述べています。


さらに、「提出義務が見込まれたが未提出だった人や、今後提出義務が見込まれる人に対しては、法定監査や行政指導などによって適切に対応を行っていく」と述べるなど、制度周知や実態把握に力を入れる考えを示しました。


具体的にはお尋ね文書の送付で提出を促していく予定で、年内には取り組みに着手するそうです



2014年9月3日水曜日

与党税制協議会:軽減税率制度の素案を公表!

与党税制協議会は、軽減税率の対象分野について8種類のパターンを提示するなど、軽減税率制度の素案を公表しました。

それによりますと、課税事業者にとって懸念されるのは、軽減税率を導入すると、標準税率と軽減税率を分けて、正確な消費税を算出する必要があることです。


同協議会では、新たに発生する区分経理事務については4案を併記しましたが、負担増が避けられないだけに、どの方式が採用されるのか注目されております。

素案では、

①(A案)区分経理に対応した請求書等保存方式

②(B案)A案に売手の請求書交付義務等を追加した方式

③(C案)事業者番号及び請求書番号を付さない税額別記請求書方式

④(D案)EU型インボイス方式の4案を併記しております。

(A案)と(B案)は既存の請求書等保存方式を活用する簡易方式で、(C案)と(D案)は商品ごとに税額を記入するインボイス(税額票)を使う方式です。

付加価値税(消費税)を導入しているEUを始めとする大部分の国では、EU型インボイス方式が採用されております。

現行の請求書等保存方式は、税率が上がるにつれ、いわゆる益税が増加するおそれがあるのに対し、納税額の計算等は請求書等の税額を用いて行うEU型インボイス方式では、「消費者が負担した消費税が納税義務者たる事業者を通じて適正に納税される」と評価されております。


しかし、インボイス方式では、事業者間取引を行っている免税事業者は、課税選択をしなければ、追加の事務負担は発生しないかわりに、取引を避けられる可能性があります。

他方、納税額の計算等は帳簿に基づき行う(A案)、(B案)は、このような免税事業者に係る問題はないものの、税率引上げや複数税率制度により、益税が拡大する可能性は高く、免税事業者にも追加事務負担が発生します。

同協議会では、「これらの点を踏まえ、関係業界も含め、国民的な議論を期待する」と示しております。


年末に向けて、事業者の事務負担増となることを含め、適正な請求書等が発行されることへの担保、免税事業者への影響といった諸々の課題が今後どうなるのか、税制改正の動向に注目です。




2014年9月2日火曜日

子会社株式の消滅損及び評価損

では、中小法人でも自力で海外に全額出資の子会社を設立するケースが多く見受けられます。

 ただ、現状において進出企業が順調に事業展開・発展しているとは言い難く、業績の進展が思わしくなく、中途で出資額を現地の法人に売却、あるいは、進出している他の本邦法人に売却し撤退するといったケースもあります。


 中には、全額出資の子会社が業績悪化等により債務超過の状態に陥り、業績の回復もままならず、結果的に解散、清算結了に至るケースもあります。

 問題は、最終的に全額出資の子会社が解散、清算結了に至り、結果として分配すべき残余財産がないときに当該子会社株式の消滅損または償却損が計上できるかです。

《子会社株式の消滅損と子会社の欠損金》

 現行の法人税法では、100%の完全支配関係にある子会社が業績悪化、そして債務超過等により解散、清算結了に至った場合、その子会社株式については株式消滅損を計上することはできません。

 しかし、当該破綻した子会社が有する未処理欠損金は、当該100%子会社株式を保有する親会社に引き継がれ、親会社の欠損金として繰越控除の対象になり、その控除期間も引き継ぎます。

 なお、この規定の適用を受けるためには、原則、50%超の支配関係が5年超継続していなければなりません。

《外国の子会社株式への適用》

 この子会社株式の消滅損、未処理欠損金の引き継ぎは、完全支配関係にある外国子会社株式にも適用されるかですが、この規定の適用は、内国法人間の完全支配関係(100%支配)を前提としていることから、外国子会社と親会社である内国法人との間には適用されません。

 したがって、子会社株式の消滅損は計上できますが、当該子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎはできません。

 また、内国法人間であれば、100%子会社が債務超過等に陥って業績の回復が見込まれない場合であっても株式の評価損は計上できませんが、外国子会社であればその時価に達する金額までは評価損を計上することができます。

 いずれにしても、子会社株式の消滅損及び子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎは、全額出資して設立した外国子会社株式には適用されない、ということです。





2014年9月1日月曜日

平成26年9月の税務

9/10
●8月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額
の納付



9/30
●7月決算法人の確定申告

<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>

●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>

●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>

●1月決算法人の中間申告
<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)

●消費税の年税額が400万円超の1月、4月、10月決算法人の3月ごとの中間申告
<消費税・地方消費税>

●消費税の年税額が4,800万円超の6月、7月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(5月決算法人は2ヶ月分)
<消費税・地方消費税>