2017年10月31日火曜日

経済産業省:2018年度税制改正要望を公表!

 経済産業省は、2018年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、中小企業の事業承継・再編の促進のため中小企業のM&A(親族外承継)への優遇措置の創設などを盛り込んでおり、大きく分けて、第4次産業革命に対応した「攻めの経営・投資」の強化、中小企業の生産性向上・地域経済の活性化、エネルギーの安定供給、車体課税の抜本見直し、申告納税手続きの環境整備―――の5項目となっております。

 中小企業の生産性向上・地域経済活性化では、中小企業の事業承継・再編の促進のため、中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充を盛り込んでおります。

 具体的には、親族や従業員等に株式等を贈与・相続する場合や他企業や親族外経営者等に経営を引き継ぐ場合、ファンドを経由して事業承継を行う場合など経営を引き継ぐ際の形態に応じて、税負担の軽減措置を講ずることを求めております。

 また、中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設も要望しております。

 同軽減措置の創設は、多くの中小企業・小規模事業者に影響を与えるものとして注目されており、近年、後継者不在のため事業承継が行えない、投資余力がないために事業継続をためらうといった課題を抱えるケースで、売却やM&Aにより経営資源や事業の再編・統合を図る手法が増えております。

 こうした多様な手法に対してインセンティブを与えることにより、次世代への経営引継ぎを加速させることが必要不可欠として、株式、事業の譲渡益に係る税負担の軽減、不動産の移転及び地上権等の設定に係る登録免許税の軽減の創設、不動産の所有権移転に係る不動産取得税の軽減の創設、一定の要件を満たすファンドから出資を受けた際も中小企業関連の優遇税制の適用が可能とする要件緩和などを要望しております。

 中小企業庁の委託調査によりますと、中規模法人の約3分の1が親族外承継を行っており、後継者不足の中小企業について外部人材等に対する事業承継を促進することも重要であるとの認識が強まっております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年9月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2017年10月30日月曜日

未払い残業代の解決金等その課税関係

 元従業員(被用者)からの未払い残業代請求の訴えが、突然、裁判所から送られて来ることがあります。

 多くの場合は、労働審判への申立て手続きによるもので、裁判官、労働者側、経営者側の3者が双方から提出された証拠資料等を吟味して、3回の審議で結論を出すことになっています。

◆一括支払いの和解金又は解決金

 労働審判は、個別的労使紛争が対象です。

 それ故、集団的未払い残業代の訴えのように、正確な各月の残業代を計算し、各年分の年末調整をやり直す等幾つもの諸手続きを想定していません。

 双方が合意できる金額での早期決着が眼目ですから、調停成立の文言も、「本件解決金(又は本件和解金)として〇〇〇万円の支払義務がある」といった例は散見されます。

 まさに、ザックリとした金額です。

◆名目としての解決金、和解金の実質は

 文言のニュアンスからは、当該解決金等は非課税であるかのような印象も受けますが、やはり審判所への訴えが「未払い残業代」、ということですので、在職中の給与等の追加払い、ということになり、原則、給与所得を構成するのではないかと考えます。

 この場合、未確定であった在職中の給与等の追加払いを一時に受けることから、その受けた年の「賞与」としての扱いになるのではないかと考えられます。

◆支払者(事業主)の手続き

 事業主は、当該解決金が未払い残業代に相当すれば、当然に、その支払いの際には源泉徴収義務を負い、源泉税徴収後の金額を被用者に支払います。

 なお、被用者が源泉徴収すべき税額を含めて強制執行等により未払い残業代全額の回収を求めてきた場合、事業主は解決金の全額を支払う義務を負うことになります。

 但し、その場合であっても、法的には、事業主の源泉徴収義務は免れることはできません。

 事業主は、源泉徴収義務者として解決金〇〇〇万円に相当する源泉税を計算し納付しなければなりません。

 そうすると、事業主は、二重に源泉税分を支払ったことになりますので、その分、被用者に請求することができますが、被用者が無資力の場合はその回収は困難です。

 審判所においても、未払い残業代に伴う源泉徴収税額を双方協議しておくのが望ましいように思います。



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2017年10月27日金曜日

改正労働基準法の内容と動向

◆今秋の臨時国会での審議の行方

 平成27年4月に閣議決定された改正労働基準法案は労働時間や休暇に関する企業にとって大きな影響が及びそうなものでしたが、実施の難しさからか今も継続審議中となっています。

 しかし今秋の臨時国会で働き方関連法案の同一労働同一賃金、時間外労働上限規制と併せて審議されそうな動きがあります。

 労働基準法改正で何が変わるのでしょうか。

◆改正予定の法案の内容

①中小企業における月60時間超の時間外労働割増率50%以上適用猶予の廃止・・・・中小企業では元々月60時間超えでも割増率は50%以上にすることは猶予されていましたが、割増率を上げる事は企業への影響が大きい為、平成31年4月からの実施予定は延長される可能性があります。

②著しい長時間労働に対する助言指導を強化する為の規定の新設・・・・これは時間外労働の上限規制の法案が出ていますので併せて考えられるでしょう。

③一定日数の年次有給休暇の確実な取得・・・・労働者に付与された年次有給休暇のうち「5日」については会社で時季を指定して強制的に有給取得させるというものです。
 
 欧州での有給取得率の高さは会社が有給を取る日を事前に決めているからだそうです。

 この5日については本人が年休取得したり、会社の計画的年休付与を5日以上行ったりしていれば強制的に取らせなくともよいとされています。

 また、年休管理簿の作成が義務付けされます。

④フレックスタイム制の見直し・・・・1日8時間週40時間の適用はありましたが、割増について1ヶ月単位の精算期間の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長し1ヶ月を超える枠を決める時は1週50時間を超えたら割増賃金を払う事になります。

⑤企画業務型裁量労働制の見直し・・・・「企画立案調査分析」業務の他それを活用させて裁量的にPDCAを回す業務と課題解決型提案営業も裁量労働(みなし労働)を認めるとしています。

⑥特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェショナル制度)の創設・・・・業務範囲が明確で一定の年収で高度な知識を有する業務に従事する者の労働時間の時間外、休日、深夜の割増適用除外

⑦企業単位で労使の自主的取り組み促進


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2017年10月26日木曜日

消費増税に向け徴収体制強化へ

 国税庁は来年度に向けた予算額と機構・定員の要求で、税務行政のIT化やマイナンバー制度の開始への対応として東京国税局に情報システム専担の部署を設けるとともに、滞納業務に当たる「特別機動国税徴収官」の新設を要望しました。

 新ポストの要望は、滞納のスピーディーな処分にかける国税の意気込みの表れと言えそうです。

 国際的な租税回避行為への対応や税制改正への対応などの観点から、前年より2人少ない1105人の増員要求を行いました。

 ただし併せて来年度には1052人強の定員合理化も行う方針であることから、純増要求数は前年と同じ53人となっています。

 機構要求で目を引くのが、東京国税局に新たに設ける「特別機動国税徴収官(仮称)」です。

 具体的にどのような業務に当たるかは不明ですが、一般的な徴収官の基本的な業務が滞納への対応であることや、要望目的を「調査・徴収事務の複雑化等への対応」としていることから、何らかの形で滞納者へ接触する業務に当たる役職で間違いなさそうです。

 高額であったり悪質であったりする案件へ対応する役職としては、すでに特別徴収官、通称「トッカン」が存在します。

 今回さらに新ポストを求めた背景には、より国税が徴収業務を強化していく姿勢の表れであるとともに、19年10月に控える消費再増税への〝足場固め〟の意味合いも予想されるところです。

 過去の例を見るまでもなく、消費税が上がれば滞納者は急増します。

 高額滞納や、督促に応じない納税者も増えるでしょう。

 そうした状況への備えとして、より「機動的」に動ける現場スタッフを国税が育成しようとしているということは、十分に考えられます。


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2017年10月25日水曜日

ふるさと納税の〝3割超え返礼品〟を容認

 ふるさと納税の返礼品について総務省の野田聖子大臣は、同省の規定した基準を超える返礼品についても、一定の範囲内で認める見解を示しました。

 「3割上限ルール」を順守させるとしてきた強硬姿勢を軟化させた格好です。

 9月上旬の産経新聞のインタビューで野田氏は、「ふるさと納税の良い取り組みを紹介することで、(今年4月に出したような)通知は出さなくても済む」と述べ、再度の通知は出さない方針を示しました。

 さらに翌日の定例会見でも、「総務省からのリクエストはもう届いている。あとはそれぞれの地域の首長が見識を持って、地方分権、地方主権のかたちで道筋を出してください」と語り、4月以降続けてきた各自治体への個別の働きかけを取りやめることを表明しました。

 ふるさと納税をめぐっては、各自治体が寄付金額を伸ばそうとした結果として返礼品の高額化や商品券など換金性の高いものが増え、換金目的での寄付が増加していることが指摘されてきました。

 総務省は数度にわたって「高額返礼品」の自粛を求めてきましたが効果がなかったことから、今年4月に「返礼品は寄付金額3割以下で換金性の低いものに限る」とする通知を全国に発送。従わない自治体に対しては個別に職員を送り込んで説得するといった働きかけを強めた結果、大多数の自治体が返礼品のラインアップを見直すに至っています。

 しかし、ここにきて総務省側が折れた形となっています。

 総務省による締め付けが事実上終結を迎えたことで、再び自治体間による返礼品競争の過熱が予想されます。


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2017年10月24日火曜日

企業の事業売却に税優遇

 経産省はこのほど取りまとめた2018年度税制改正に向けた要望書に、企業のM&Aに税優遇を設ける内容を盛り込みました。

 M&Aを税制面から後押しすることで、戦略的な事業買収といった「攻めの経営」を支援するとともに、後継者難に苦しむ中小企業に早期の決断を促すことが目的とみられます。

 経産省が提示した減税案は、後継者不足に悩む中小企業が他の会社や親族外経営者などに株式や事業を売却した際に、売却益にかかる所得税などを軽減するというもの。

 また事業と併せて不動産などを譲渡することもあり得るため、不動産移転にかかる登録免許税や不動産取得税についてもそれぞれ軽減するそうです。

 さらに企業が収益力の乏しい部門を切り離して主力事業に集中しやすいよう、株式と引き換えに事業を売却した際に譲渡利益や譲渡所得などにかかる法人税や所得税を軽くします。

 大企業、中小企業それぞれにM&Aにかかる税負担を軽減して、企業の新陳代謝を促します。

 今年7月に中小企業庁が発表した「事業承継5ヶ年計画」では、中小企業が利用できるM&A市場の育成や、地域の事業統合支援などを事業の柱に据えました。

 具体的には、国が運営する事業引継ぎ支援センターの体制強化や、民間の創業支援機関との連携強化を図り、年間2千件のM&A成立を目指していくとしています。


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2017年10月23日月曜日

つみたてNISAの商品急増

 来年1月に始まる「つみたてNISA」の対象になる投資信託が120本程度になるとの見通しを金融庁が示しました。

 同庁への事前相談があった商品のうち、基準に対応している商品を選んだものです。

 つみたてNISAの口座開設は今年10月からで、その際には実際の商品が出そろう見通しです。

 金融庁はつみたてNISAの対象をめぐり、税の優遇を受けられる商品の条件として販売手数料をゼロにするなど厳しい水準を示していたため、今春時点では50本程度しかラインアップがそろいませんでした。

 5千本程度の投信全体に占める割合が低いことから、金融庁の森信親長官が講演で「対象になるのは1%しかない」と証券業界に対する批判ともとれる発言をしたほどでした。

 それが数カ月で倍増した背景には、各社が条件を満たす低コストの新商品を開発したほか、既存商品の手数料引き下げを進めたことがあります。

 商品の種類も株式型だけではなく、債権など複数を組み合わせた資産複合型が増えたり、国内外の株式を組み合わせた商品も提案されたりするなど、金融庁は「幅広い商品があり、選択肢が広がりそうだ」と歓迎ムードです。

 つみたてNISAは、国内資産で運用するインデックス投信の場合、保有時にかかる信託報酬を0.5%以下にするのが条件です。

 事前相談のあった投信の信託報酬は平均0.27%で、金融庁が設定した条件を大幅に下回ったことも明らかになっています。

 国内外の資産で運用するインデックス投信も、0.75%が上限ですが平均は0.36%にとどまりました。

 証券業界にとっては設け幅の薄い商品ですが、投資初心者にとってはハードルが低くなったと言えそうです。


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2017年10月20日金曜日

厚生労働省:企業の実情も踏まえて、配偶者手当の見直しを要請!

 2017年度税制改正において、所得税・個人住民税における配偶者控除及び配偶者特別控除を見直し、配偶者控除を満額受けられる配偶者の年収上限を103万円から150万円に引き上げました。

 この見直しにより、いわゆる「103万円の壁」を解消し、就業調整を意識しなくても済む仕組みの構築が期待されますが、そのためには、税制だけでなく、社会保障制度や企業の配偶者手当などの面で総合的な取組みを進める必要があるとみられております。

 今回の改正で、「103万円」という水準が、企業の配偶者手当制度などの支給基準に援用されているとの指摘があります。

 与党の税制改正大綱では、企業に対し「今回の見直しを踏まえ、労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直し」を要望しております。

 厚生労働省(以下:厚労省)においても、企業の実情も踏まえて、配偶者手当の見直しを強く要請しております。

 また、厚労省の2015年職種別民間給与実態調査によりますと、家族手当制度がある民間事業所は76.5%で、そのうち配偶者に家族手当を支給する事業所は90.3%にのぼりました。

 有配偶女性パートタイム労働者の21.0%は、税制、社会保障制度、配偶者の勤務先で支給される「配偶者手当」などを意識し、その年収を一定額以下に抑えるために就労時間を調整する「就業調整」を行っております。

 そのため、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる配偶者手当(配偶者の収入要件がある配偶者手当)については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しが求められ、厚労省では、労使において、個々の企業の実情(共働き、単身者の増加や生涯未婚率の上昇等、企業内の従業員構成の変化や企業を取り巻く環境の変化など)も踏まえて、真摯な話し合いが進められることを期待しております。

 また、厚労省は、「配偶者手当」を含めた賃金制度の円滑な見直しにあたり、労働契約法、判例などに加え、企業事例などを踏まえ、その円滑な見直しに向けて留意する必要がある点として、

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組み
②労使の丁寧な話合い・合意
③賃金原資総額の維持
④必要な経過措置
⑤定後の新制度についての丁寧な説明

の5点を挙げております。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年9月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



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2017年10月19日木曜日

2017年度税制改正:所得拡大促進税制の見直し!

 所得拡大促進税制とは、一定の要件をすべて満たした場合、給与総額の増加分の10%を法人税額から控除できる制度ですが、2017年度税制改正において、新たに「前事業年度比2%以上の賃上げ」という要件を設定し、この要件を満たした企業には税額控除の上乗せが行われることになりました。

 平均給与等支給額が前事業年度比で2%以上増加した場合、大企業は通常の10%に2%を上乗せした12%の税額控除が受けられ、2%未満の場合は同税額控除自体が適用できなくなります。

 一方、中小企業者の場合は、これまでどおり平均給与等支給額が前事業年度より上回っていれば、10%の税額控除を適用することができます。

 さらに、前事業年度比で2%以上増加した場合、12%を上乗せした22%の税額控除を受けることができ、企業規模で控除率に差を設けて、大企業は増加給与額の12%を、中小企業者は増加給与額の22%を、それぞれ法人税額から税額控除できるようになりました。

 所得拡大促進税制の要件は、給与等支給額の総額が2012年度から一定割合以上増加していること、かつ給与等支給額の総額が前事業年度以上であること、一人当たりの平均給与等支給額が前事業年度を上回ることの3要件を満たした場合、給与等支給総額の10%を法人税額から税額控除(上限は法人税額の10%(中小企業は20%))できます。

 大企業の場合は、これらの要件のうち、平均給与等支給額が「前年度比2%以上増加」に変更されました。

 また、新設法人であっても一定の調整措置を満たせば同税額控除を適用することができましたが、改正後は、大企業では平均給与等支給額が前事業年度比で2%以上増加していなければならないため、調整措置を適用しても当期からの税額控除はできなくなります。

 そして、新設法人である資本金1億円以下の中小事業者の場合、上乗せ措置の適用要件は満たさないものの、一定の調整措置により10%の税額控除のみを適用することになりますので、該当されます方は、ご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年9月1日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年10月18日水曜日

雇われ社長(特に外資系企業)へのインセンティブボーナス

◆役員に対する給与の税法規定

 役員に対する給与の税法規定が大きく変わったのは平成18年3月でした。

 それまでは役員賞与が損金不算入(=法人税法で経費とならない)という規定でしたが、平成18年4月1日以降開始する事業年度からは「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与(H290401から業績連動給与)」だけが損金(=法人税法の経費)になるという規定に変わりました。

 「これは税務上の経費とならない」という決め方から、「これだけが経費となる」と180度変わりました。

 この改正の趣旨は、会社の利益の増減を役員報酬の改定で利益調整できないようにするということでした。

◆外資系日本子会社社長は一従業員!である

 外資系日本子会社の場合、一般的に、海外の親会社が100%株主であり、子会社役員は株式の保有がありません。

 そのため、取締役の報酬を決議する株主総会での議決権を持ちません。

 つまり、自分の役員報酬を自分で決めることはできません。

 また社員も含め年俸制が多く、日本の企業のような盆・暮れの賞与という慣習はほとんどありません。

 一方で、「個人の成績で決定される」インセンティブボーナスという制度を持つ会社は少なくありません。

 インセンティブボーナスは、一見「利益連動給与」に類似するものにも思われがちですが、親会社100%株主の同族会社には適用されません。

 また、「事前確定届出給与」も他の社員に対して定期的に賞与を支給している常態になければ適用が困難です。

 このように社長へは賞与(=インセンティブボーナス)を会社の損金として支払うことはできないのですが、海外の親会社(特に米国)は、「頑張った分をボーナスとして払えないのは納得できない!」として、日本の税法規定を理解してもらえません。

◆インセンティブボーナス支払のウルトラC

 これまでは、ボーナス分は翌年の役員報酬に反映させて、12か月で「定期同額給与」として支払うしか方法がありませんでした。

 ところが、平成27年3月16日民商第29号通知(法務省)【代表取締役が日本に住所を有しない場合の申請に関する通知】により、取締役を国外親会社の役員だけで構成させることで、日本子会社社員にインセンティブボーナスを払える環境となりました。

 これはウルトラCともいえる方法ですが、子会社に日本在住の役員がいないという事態はビジネス上大きなマイナス要因ともなりかねません。

 親会社の経営判断ですが、慎重な検討が必要です。

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2017年10月17日火曜日

時間外労働の限度に関する基準

◆法定労働時間を超えた時間外労働の基準

 法定の労働時間を超えて労働させる場合、又は法定の休日に労働させる場合には、事前に労使間で時間外労働、休日労働に関する協定(36協定)を結び労働基準監督署に届出をしておく必要があります。

 36協定を定める時には労働時間の延長の限度に関する基準があります。

 36協定は下記の基準に適合したものにするようにしなくてはなりません。

①業務区分の適合化・・・・業務の範囲の明確化、具体的業務区分が必要
②一定期間の区分・・・・1日を超えて3ヶ月以内の期間と1年間の両方を協定する
③延長時間の限度(法定の休日労働含まず)・・・・例)期間が1週間の場合、一般労働者は15時間、対象期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制の適用労働者は14時間を超えないものとする

◆適用除外

 次の事業又は業務には延長限度時間は適用されません。

①工作物の建設
②自動車の運転業務
③新技術、新商品の研究開発
④厚生労働省指定事業又は業務

◆特別条項付き協定

 臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に特別条項付き協定を結べば限度時間を超えて時間を延長する事ができます。

 要件は次の通りです。

①原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定める事
②限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情を具体的に記す
③特別の事情とは一時的、突発的であり、一年の半分を超えないことが見込まれる事
④限度時間を超える労働時間の割増賃金率を定め、法定割増率を超えるよう努める

 特別条項付き協定には限度時間の上限が無いので長時間労働になりがちとの見解もあります。

 過重労働にならぬよう安全配慮義務を考えた上で行いたいものです。


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2017年10月16日月曜日

次世代無線通信規格がもたらす変化

 次世代の超高速無線通信「第5世代(5G)」の開発が加速しています。

 5Gとはデータ通信などに用いる国際規格で、現在の規格、4Gの次に適用される予定になっています。

 5Gは4Gよりも10~100倍の高速通信が可能です。

 画質の美しさはもとより、従来実現できなかったサービスが可能になるため、新たなビジネスチャンスの宝庫として注目を集めています。

 日本のほかには、米国、欧州、中国、韓国が2020年の実用化を目途に開発を進めています。

 日本国内ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が商用化を目指し、実証実験をはじめました。

 新技術のなかでも、期待されているものの一つが立体映像の分野です。

 通信速度が速くなったことで、データ量の多い、3次元映像がインターネットで楽しめるようになります。

 具体的には、専用のヘッドセットを装着することで、スポーツ選手やアイドルを間近で見ているような体験が可能になります。

 オリンピックのサッカーならば、あたかも自分が試合会場のピッチ付近に立っているような体験ができ、選手がすぐ横を走り抜けるといった立体映像を楽しむことができます。

 また、アイドル歌手と一緒にダンスを踊る、間近で歌を聴くといった、テレビにはないネットでの映像コンテンツが実現可能になります。

 ほか、VR(バーチャルリアリティ)で月面旅行を楽しめる、スマホで冷蔵庫の中身をスーパーから確認できるなど、さまざまなことが可能になります。

 また、バスの自動運転や工事で用いる建機の遠隔操作、医療分野では遠隔治療など、新市場の創出、拡充に期待が高まっています。

 次世代の超高速無線通信「第5世代(5G)」の開発が進んでいます。

 実用化により、私たちの生活に変化をもたらすといわれています。

 映像分野はもとより、バスなどの交通分野にも変化が訪れる可能性があります。

 その中、自動運行に関する実験が既に始まっています。

 5Gは情報伝達の遅延が少ないという利点があり、自動ブレーキの精度が格段に上がるといわれています。

 将来、バスは神戸の「六甲ライナー」などと同様に、無人運転になる日が来るかもしれません。

 5Gの実用化により生まれる新市場は130兆円という試算もあり、巨大市場でのビジネスチャンスに期待が集まるのもうなずけます。

 ただ、世界では、日本以外にも米国、欧州、中国、韓国など、多数の国が5Gの開発に取り組んでいます。

 そのため、各国間で機器やサービスの覇権争いに関して激しさを増しているという現実があります。

 現在、5Gの商用化で先端を走るのは米国企業です。

 ほか、スマホのアプリケーション技術では、中国やスウェーデン、フィンランドなどの企業が進んでおり、日本は後塵を拝しています。

 競争が激化する中、日本の巻き返しを期待したいところでもあります。

 もう一つの懸念材料はテレビ離れに拍車がかかることです。

 5Gの実用化により、3次元映像の実現をはじめ、スマホなどのコンテンツが魅力を増すことが予想されます。

 その中で、テレビは従来とは異なる映像を制作するなど、舵切りにより視聴者を確保するのか。

 それとも、スマホとの協業を通して、新たな収益の形を模索するのか。

 今後、テレビの変化も注目のポイントの一つとなります。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2017年10月13日金曜日

兼業・副業による人材活用

 生産年齢人口の減少に対し、働き盛りの世代により高い生産性を発揮してもらう観点から、兼業・副業の許容に向けた議論が進んでいます。

 経済産業省は、「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」を設置し、兼業・副業の実態や優良事例の把握を行い、現状の課題及び官民がなすべき政策的方向性を検討してきました。

 2017年3月に公表された同研究会の提言などを取りまとめた報告書によると、兼業・副業のメリットとデメリットは企業側、従業員側ごとに以下の通りに整理されます。

 まず企業側のメリットとしては、「人材育成」「優秀な人材の獲得・流出防止」「新たな知識・顧客・経営資源の獲得」などがあげられます。

 また、従業員側のメリットとしては、「自身の能力・キャリア選択肢の拡大」「自己実現の追求・幸福感の向上」「創業に向けた準備期間の確保」などがあげられます。

 一方で企業側のデメリットとしては、「本業への支障」「人材流出等」「従業員の健康配慮」「情報漏洩等、様々なリスク管理」などがあげられます。

 また、従業員側のデメリットとしては、「就業時間の増加による本業への支障等」「本業・副業間でのタスク管理の困難さ」などがあげられます。

 兼業・副業にはこうしたメリット、デメリットが指摘されつつも、兼業・副業を推進することによって、
①オープンイノベーションの促進、
②自己実現・人材育成の促進を通じた一億総活躍社会の創出への貢献、
③成長産業である地方の中小企業や公益的な事業分野への人材供給の活性化
などといった政策的期待が高まっているのです。

 では兼業・副業による人材活用を推進している企業では具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。

 ここでは中小企業庁経営支援部が2017年5月に公表した「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」に掲載されている株式会社フューチャースピリッツ(事業内容:ITインフラ事業及びクラウドサービス事業)の取組みについてみていきましょう。

 同社は、2016年6月に業務時間内に自社の業務に関係のないことを行える制度である「会社公認“働かない制度”」を導入しました。

 これは事業や活動の内容、収入の有無などを記載した申請書を会社に提出し承認されると、副業を含め、月間で最大20時間を自由に使うことができるというものです。

 制度の導入に至った経緯としては、社会経済の変化のスピードが速まる中、時代の流れを掴むには 異業種人材を含む社外の人間との接触や業務外の主体的な活動によって社員の知識・能力を高めることが欠かせないとの判断に至ったことによるものです。

 制度の導入にあたっては、制度の背景や趣旨を社員に的確に理解してもらう必要性から、全社員を対象とした定例会議の場で、社長自らが直接社員に対して同制度を紹介しました。

 また、制度の運用にあたっては、社員と意思疎通を密にとることで、不公平感をできるだけ発生させないように配慮し、社長自身も制度を活用する当事者や周囲の社員の反応を把握しつつ個別にケアを行っています。

 このような兼業・副業に関する新たな制度を導入することで、社員が起業家の感覚を持ちつつ能動的に事業の創発に携わったり、社員のモチベーションが向上したりするなどの効果が期待されているのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2017年10月12日木曜日

毎年1千億円超の休眠預金発生

 預金者本人と連絡が取れなくなって10年以上が経つ「休眠預金」が、毎年1千億円超のペースで生まれていることが分かりました。

 本人などからの払い戻し請求に応じた額を除いても年間700億円以上が生まれているそうです。

 東京商工リサーチはこのほど、銀行が休眠預金の払い戻し請求に対応するために計上する「睡眠預金払戻損失引当金」の額を調査し、発表しました。

 引当金は過去の払戻実績などに基づいて、金融機関の負債の一部として会計処理されるものです。

 調査によると、107金融機関の今年3月期決算時点での「睡眠預金払戻損失引当金」の総額は、前年同期から3.4%増えて951億4800万円でした。

 この結果には、決算書の科目に同引当金の項目がないメガバンクの実態が含まれていないため、実際に積み上がった国内金融機関の休眠預金の額が1千億円を軽く超えたものであることは確実と言えます。

 また金融庁によれば、休眠預金の発生額は2014年3月期で1187億円(うち払い戻し460億円)、15年3月期で1278億円(同518億円)、16年3月期で1308億円(同565億円)と、徐々に増加していることが分かります。

 払い戻しを受けていない人も多い状況です。

 なお、昨年12月に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」が成立したことで、休眠預金は、福祉・健康増進・地方活性化などの社会的事業への活用が可能となっています。

 実際に休眠預金が助成されるのは19年秋頃となる見通しです。

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2017年10月11日水曜日

相続税申告の失敗事例集を国税庁が作成

 相続税の申告書を作成する時に誤りがちなポイントを国税庁が事例集としてまとめ、ホームページで発表しました。

 事例として挙げられているのは14のパターン。

 そのうち3例が、亡くなった人の一親等の血族か配偶者以外の人が財産を相続する時に、相続税額が20%アップする「2割加算ルール」に関するものでした。

 例えば孫養子は代襲相続でない限りは、相続税法上では2親等扱いとなり、2割加算ルールが適用されるとして、申告書に記入する際に注意するように呼び掛けています。

 他には、養子縁組をした際の基礎控除額や、生命保険契約に関する「みなし相続財産」の計算、被相続人が受け取っていなかった年金の支給を受けた時の処理などが例に挙げられています。

 国税庁は、この事例集と併せて、「相続税の申告のためのチェックシート」も活用することで、相続税の申告書を正しく作成してほしいとしています。

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2017年10月10日火曜日

内閣府:大法人の国税・地方税の電子申告を義務化へ!

 内閣府の規制改革推進会議・行政手続部会は、「規制改革推進に関する第1次答申」を公表し、行政手続コスト(事業者の作業時間)を20%削減(取組期間は3年、事項によっては5年まで許容)する目標を明らかにしました。

 また、国税、地方税について、大法人の電子申告利用率を100%とする数値目標も設定しました。

 そして、規制改革の一つに「税・社会保険関係事務のIT化・ワンストップ化」を挙げ、従業員の所得税(年末調整)、住民税(特別徴収税額通知)及び社会保険に関係する事務は、企業にとって大きな負担であり、より生産性を高めていく上での制約要因ともなっていると指摘しております。

 企業及び従業員双方にとって合理的な制度を構築すべく、プロセス全体を見直し、最適な制度設計に向けて検討を行い、規制改革項目を取りまとめました。

 具体的には、
①所得税に係る年末調整手続きの電子化の推進
②住民税の特別徴収税額通知の電子化等
③社会保険関連手続きの見直し
を掲げました。

 前項①では、源泉徴収義務者の事務負担も踏まえ、書面により提出する年末調整関係書類について、電磁的な方法による提出を可能とすべく、関係者の意見も踏まえて、結論を得るとしました。

 前項②では、特別徴収税額通知の正本の電子交付を行っていない市区町村に対し、電子交付の導入の意義・効果に関する助言など電子交付の推進に必要な支援を行い、特別徴収税額通知の従業員への交付について、事業者に電子的に送信して従業員が取得することや、マイナポータルを利用して事業者を経由せずに従業員が取得できるようにするなどの可能性を検討し、できるだけ早期に結論を得るとしました。

 なお、行政手続簡素化においては、電子化が必要である手続きについて、添付書類も含め、電子化の徹底を図ること、事業者が提出した情報について、同じ内容の情報を再び求めない、同じ情報は一度だけを原則とすること、同じ目的又は同じ内容の申請・届出等について、可能な限り同じ様式で提出できるようにするとしております。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年8月17日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年10月6日金曜日

えっ、納税までクレジットカード対応?

◆給与の源泉税もクレジットカード払い

 平成29年6月12日(月)から、e-Tax(国税電子申告・納税システム)から「国税クレジットカードお支払サイト」へのアクセスが可能となりました。

 源泉所得税の申告・納付は、銀行に出向いて窓口で納付するよりも、インターネットバンキングで納付する方が楽ですので、税理士自身e-Taxを使い、関与先にも利用を勧めている方も多いでしょう。

 6月下旬に源泉税の納付の際に、いつもと画面が違い、「あぁ、クレジットカード納付がいよいよ始まったのだな」と気づかれたかもしれません。

◆クレジットカード払いの利便点

 出張の際の新幹線や航空券の購入、ホテルの宿泊代の支払いはもちろん、毎月の電気、ガス、電話代にいたるまでクレジットカード払いができるようになっています。

 クレジットカードの請求書に添付される「ご利用明細書」等は、
①その書類の作成者の氏名又は名称、
②課税資産の譲渡等を行った年月日、
③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、
④課税資産の譲渡等の対価の額、
⑤その書類の交付を受ける者の氏名又は名称
が記載されていることが一般的ですので、消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。

 その意味で、会計帳簿の記帳の観点からも、クレジットカード払いには利便性があると言えます。

◆経理の本音(会社の電話代等一部のものの支払いにクレジットカードは使わないで!)

 このように利便性の高いクレジットカード利用ですが、経理担当の目から見ると(=経理をチェックする税理士もしかり)、支払に充ててほしくない使途先があります。

 具体的にいうと、電話代などの実際の利用に比べて支払いが2か月近く遅れる支払です。

 電話代の請求は、通常利用月の翌月に請求書が発行され、口座振替の場合は翌月末日等、大体はひと月遅れで精算されます。

 これがクレジットカード払いとなると、約ふた月遅れとなり、決算確定の最終金額の数字確認が遅れる場合もままあります。

 利用によるポイントが付いたり、資金の後払いとなったりと、お得感の大きいクレジットカード払いですが、実際の運用に際しては、経理担当者等の意見も聞いて、会社全体として賢く使ってほしいものです。

 そう言い忘れていました、国税のクレジットカード払いは、このシステムの受託業者への手数料が発生しますので、お得感はその分目減りします。


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2017年10月5日木曜日

退職後の競業禁止規定

◆退職後に競業を禁止することはできるか

 最近、退職者が同業他社に就職し、自社のノウハウを他社で使ったり、自社の顧客を奪ってしまったという相談が増加しています。

 また、そのような事態を防ぐために、就業規則や誓約書で、退職後、転職や独立により競業行為を行ってはならないという規定、すなわち競業禁止規定を置いている企業も多くなっています。

 では、このような規定により退職後の競業を阻止することはできるのでしょうか。

◆有効となるケースは限定的

 まず、在職中の従業員は、労働契約の付随的義務として、当然に競業禁止義務を負うと考えられています。

 これに対し、退職後については、就業規則や誓約書・合意書などに明確な規定がなければ競業を禁止することはできません。

 また、規定があったとしても、有効になるケースは限定されています。

 このような規定は、退職者について、憲法で保障された職業選択の自由や営業の自由を制限するという側面があるためです。

◆どのような場合に有効となるか

 では、どのような場合に有効となるのでしょうか。

 判例では、概ね以下の基準により合理性が認められる場合に限り有効となるとされています。

①守るべき企業の利益があるか
 一般的知識ではなく、製造技術や顧客情報など重要な利益であることを要する

②退職者の在職中の地位・職務内容
 対象者は①の企業の利益を守るために必要な範囲の者に限定されていることが望ましい

③競業が禁止される期間や地域
 期間や地域が制限されているほど有効になりやすい。
 期間は1年以下にしておくことがお勧めである

④十分な代償措置があるか
 競業禁止により不利益を被る代わりに、代償金支給や退職金の上積みなどの代償措置があることも重要(在職中の給与も考慮される)

 以上のような視点で自社の競業禁止規定を見直すと、不必要に広範な内容となっていることも多いのではないでしょうか。

 いざというときに慌てないよう、この機会に是非自社の規定を見直してみてください。



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2017年10月4日水曜日

退職した従業員に係る未払賃金等の課税関係

 ブラック企業対策と称して低価格の相談料で労働問題を専門に扱う弁護士等が急増しているそうです。

 この傾向を受けて、円満退社した元従業員から未払い残業代及び慰謝料の支払請求を受け、和解、裁判等、示談及び協議等(以下単に「和解等」といいます。)により解決するケースも増加しているようです。

 ここでは、和解等による解決金としてこれら金員が発生する場合の課税関係とその実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 未払い残業代等の課税関係

1 元従業員の取扱い

 和解等によって支払を受ける金員は、その性質によって課税関係が異なります。

 和解金の発生の要因が雇用関係に基づくものであり、労務の対価としての性格を有するものであれば、「給与所得」又は「退職所得」とされます。

 このうち、和解調書において「時間外労働の実態及び未払い残業代を支払うことを認める」と記載されていれば、その未払い残業代は各支給日の属する年分の給与所得として課税されます(所基通36-9)。

 そこで、元従業員においては、各支給日の属する各年分における年末調整のやり直し又は所得税の申告書等(期限後申告書及び修正申告書)の提出が必要となります(所基通190-4)。

 なお、未払い残業代について、遅延損害金が支払われる場合には、その遅延損害金は、その支払われた日の属する年分の「雑所得」として課税対象とされます。

2 法人の取扱い

 和解等によって元従業員に対して支出する金員で、その支出の要因が雇用関係に基づくものであり、その労務の対価として支払われるものであれば、使用人給与としてその賠償すべき金額が確定した日(いわゆる和解の成立した日)の属する事業年度の損金の額とされます(法法22③二)。

Ⅱ 慰謝料の課税関係

1 元従業員の取扱い

 和解金の性質が、「心身に加えられた損害に基因するもの(所令3 0①一)」及び「相当の見舞金(所令30①三)」に該当するものであれば、所得税は課されません。

 ただし、和解金名目の金員であっても、元従業員の未払い残業代に相当する金員については、その実態に応じて「給与所得」として課税対象とされます。

 また、未払い残業代のうちに、セクシャルハラスメント等の慰謝料に該当する部分が含まれている場合には、所得税は課税されません。

 なお、非課税とされる見舞金等の額に該当するか否かの判断は、心身に加えられた損害の程度等を考慮して社会通念上相当と認められる範囲内の金額に限られますので、相当の見舞金を超える部分は、「一時所得」又は「雑所得」として課税対象とされます。

2 法人の取扱い

 法人が元従業員に対して支払う和解金は、和解等によって、その賠償すべき金額が確定した日(いわゆる和解の成立した日)の属する事業年度の損金の額に算入します。

Ⅲ 源泉所得税の課税関係

1 元従業員の取扱い

 和解金として支払われた損害賠償金の金員でも、その支払を受ける者において給与等として課税されるものである場合には、その支払者はその支払の際に所得税の源泉徴収を行わなければなりません(所法28①,同法183①,所基通161-46)。

 この場合において、法人において、下記2に掲げる年末調整が行われていない場合(源泉徴収票の摘要欄に年末調整未済と記載されている場合)には、各支給日の属する各年分の給与所得の申告が必要となります。

 その際、法人より各年分の源泉徴収票が本人に交付されますので、その源泉徴収票を添付して確定申告(期限後申告等)することとなります。

 なお、源泉徴収票の作成日において未払残業代があり、法人において未徴収の源泉徴収税額がある場合には、源泉徴収票の源泉徴収税額の欄は、その未徴収税額が内書き表示されています。

2 法人の取扱い

 法人は、各年分の未払残業代についてその支払の際に源泉徴収を行い、その支給の日の属する月の翌月10日までに国に納付します(所法183①)。

 この場合において、原則として、法人において本来、未払残業代が支払われるべきであった年分の年末調整をやり直さなければなりません(所基通190-4)。

おわりに

 法人が退職した元従業員から未払い残業代及び慰謝料の支払請求を受け、和解等による解決を行う場合、和解調書への記載方法等にかかわらず、課税庁サイドにおいては、その過程である訴状の内容、答弁書の内容、準備書面の内容などの裁判資料を基として、和解金の発生源泉に沿った事実認定を行い、実態に沿った課税がなされることとなりますので、留意して下さい。

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2017年10月3日火曜日

7月31日より地域未来投資促進税制が開始!

 すでに、地域未来投資促進税制が7月31日より開始しております。

 地域未来投資促進税制は、地域未来投資促進法を税制面から支援するために創設されました。

 地域経済は、企業収益や雇用が好調な一方、設備投資が力強さを欠くなど課題もあります。

 そこで地域未来投資促進法によって、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、地域経済を牽引する事業(以下、地域経済牽引事業)を促進し、地域の成長発展の基盤強化を図るため、事業者等が作成する当該事業に係る計画を承認し、計画に係る事業を支援します。

 地域経済牽引事業とは、「先端技術を活かした成長ものづくり分野」(医療機器、航空機など)や「第4次産業革命関連分野」(IoT、ビックデータ、AIなど)、「食関連・地域商社」(農水産品の海外市場獲得等)などが該当します。

 具体的な例として、経産省では、「飯田航空宇宙プロジェクト(長野県飯田市)」や「地域商社によるアジア圏への農水産物輸出支援事業(福岡県福岡市)」などを挙げております。

 そして、国が定めた基本方針に基づいて市町村及び都道府県が共同で、地域経済牽引事業の促進に関する基本計画を作成して国が同意し、地域経済牽引事業を行おうとする事業者などがこの基本計画に基づき、地域経済牽引事業計画を作成して都道府県等の承認を受けた場合には、承認された事業計画に対する設備投資に対する税制措置や財政・金融面の支援措置、規制の特例措置などが受けられます。

 設備投資に対する税制支援措置では、青色申告法人が地域経済牽引事業計画に基づき、特定地域中核事業等を新設し、同施設等を構成する機械装置、器具備品、その他附属設備並びに構築物を取得し、事業の用に供した場合には、取得価額100億円を限度として、機械装置・器具備品については40%(建物等・構築物の場合は20%)の特別償却又は4%(同2%)の税額控除が選択適用できます。

 なお、固定資産税等を減免した地方公共団体には減収が補てんされます。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年8月17日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年10月2日月曜日

2017年度税制改正:オープンイノベーション型の運用改善!

 オープンイノベーション型とは、特別研究機関等、大学等、その他の民間企業等との共同・委託研究等の費用又は中小企業者に支払う知的財産権の使用料がある場合、企業が負担したこれらの特別試験研究費の一定割合を法人税から控除できる仕組みをいいます。

 そして、2017年度税制改正において、研究開発税制は総額型の対象となる試験研究費にビックデータ等を活用した「第4次産業革命型のサービス開発」が追加されるなどの見直しが行われ、オープンイノベーション型の運用改善も行われました。

 控除額は、特別試験研究費の額に、相手方が大学・特別研究機関等であれば30%、相手方が民間企業等であれば20%をそれぞれ乗じた額(控除上限は法人税額の5%)となります。

 同制度を適用するためには、契約書等に一定の事項を記載することや、相手方による認定・確認等の手続きが必要となりますので、その詳細は経済産業省が公表している「特別試験研究費税額控除制度ガイドライン」をご確認ください。

 また、2017年度税制改正において運用の改善が図られるのは、

①対象費用の追加・変更の柔軟化

②対象費用の額の確認方法の簡素化

③対象費目の拡大

の3点です。

 上記①は、契約変更があった場合、これまではその契約変更日以後に生じた費用しか対象にできませんでしたが、契約変更前に生じた費用であっても、その契約に係るものであることが明らかであり、その費用発生と契約変更日が同一事業年度であれば対象となります。

 上記②は、対象費用の額の確認について、これまでは費用内訳(明細書)と領収書等の突合が必要とされていましたが、領収書等との突合までは求めないことを明確化しました。

 上記③は、これまで共同・委託研究において、相手方に支払う費用については対象費目が限定されており、間接経費(光熱費や修繕費など)が含まれていませんでしたが、対象範囲を「当該研究に要した費用の総額」とすることで、その研究に必要な間接経費も含むものとしました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年8月7日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



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