2017年5月9日火曜日

地域における事業承継支援体制の構築

 2016年12月に中小企業庁より公表された「事業承継ガイドライン」では、中小企業の事業承継に関する「身近な支援者」として下記の方々を掲げています。

 商工会議所・商工会の経営指導員は日々の巡回指導等を通じて中小企業経営者との間に信頼関係を構築している中小企業にとって身近な存在です。

 地域金融機関は、中小企業に日常的に接して経営状況を把握しており、中小企業に対してきめ細かな経営支援等を実施し得る立場にあります。

 士業専門家としては、税理士、弁護士、公認会計士、中小企業診断士などがあげられます。

 税理士は、顧問契約を通じて日常的に中小企業経営者との関わりが深く、決算支援等を通じ経営にも深く関与しています。

 弁護士は、中小企業や経営者の代理人として、事業承継を進めるにあたり、経営者と共に利害関係者への説明・説得を行い、円滑な事業承継を進める役割を担っています。

 公認会計士は、監査及び会計の専門家として事業承継の様々な場面で、広い見識に基づく支援が期待されています。

 中小企業診断士は、中小企業の様々な経営課題への対応や経営診断等に取り組んでいます。

 また上記の身近な支援者に加え、各都道府県には、事業引継ぎ支援センター、よろず支援拠点などの公的支援機関も整備されています。

 このように、中小企業経営者の周囲には、身近な支援者から公的な支援機関まで、多様な支援機関が存在していることから、中小企業経営者としては、まずは身近な支援機関に声を掛けてみることが、事業承継に向けた準備の第一歩となるのです。

 では、地域における中小企業の事業承継支援にあたっては具体的にどのような取組みが求められるのでしょうか。

 ここでは栃木県における事業承継支援の取組みについてみていきたいと思います。

 栃木県では、2015年12月に施行された「栃木県中小企業・小規模企業の振興に関する条例」の趣旨等を踏まえ、自治体(県及び市町)・商工団体・金融機関及び専門家等が連携して中小企業・小規模企業への支援策を検討・実施する体制を整え、創業から事業承継まで「オールとちぎ」で支援していくことを目的として「とちぎ地域企業応援ネットワーク」を構築しています。

 同ネットワーク内には事業承継支援プロジェクトチームが設けられ、ネットワーク内の各支援者の間で事業承継支援に関する情報共有を図っています。

 また、栃木県では、専門的・実践的分野の深い知識を有するエキスパートを大学、研究機関、民間企業などから幅広く確保・登録し、事業承継等の経営課題を抱えた中小企業に対し、商工会議所・商工会を通じて派遣する「エキスパートバンク制度」を構築して専門家派遣による事業承継支援を行っています。

 エキスパート派遣に係る旅費・謝金などは初回に限りエキスパートバンクが全額負担するため、中小企業は無料(1回)で活用できます。

 この制度ではエキスパートが直接企業を訪問することから、中小企業は自社の秘密を厳守しつつ具体的・実践的な指導を直接受けることができます。

 このように、各々の支援機関は自らの専門分野に責任をもって取り組むことはもちろん、支援機関相互の連携を図りつつ、事業承継支援を切れ目なく行う体制を構築することが求められるのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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