国税庁は2月15日、「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」とする文書を発表し、競馬や競輪の課税関係についての実務上の取り扱いを定めた所得税基本通達を改正する方針を明らかにしました。
馬券の払戻金が一時所得にあたるか雑所得にあたるかが争われた裁判の結果を受けた改正で、これまでの取り扱いと異なり、独自の予想ソフトを使用していなくても馬券の払戻金が雑所得になるケースについて規定されます。
この裁判で被告となった男性は、自動購入ソフトなどは使わず、レースごとに結果を予想して多額の利益を得ていました。
競馬の馬券の払戻金による収入は、原則的には偶発的な収入として「一時所得」と見なされ、収入に直接要した金額のみが経費と認められるため、収入に直接結び付いていないハズレ馬券の購入費用は経費にあたりません。
しかし継続的、網羅的に馬券が購入されていると認められれば「雑所得」として、ハズレ馬券も経費に当たるとされています。
最高裁では男性が得た払戻金を雑所得と認めました。
ハズレ馬券の経費を巡る税務に転機が訪れたのは、2015年の最高裁判決です。
大阪府の男性が自作の競馬予想ソフトを利用して3年間で得た配当金について、「偶発性に左右される一般の馬券購入と異なりソフトを使用して継続的に馬券を購入することによって個別のレースの当たり外れの偶然性を抑えている」として、最高裁は払戻金を雑所得と認定しました。
この判決を受けて、これまで一律に一時所得としていた払戻金の取り扱いに関する通達を改正。
通常は従来どおり一時所得として扱う原則は維持した上で、「馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して(中略)個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして(中略)経済活動の実態を有することが客観的に明らか」である時に限って雑所得と認めると明示しました。
しかし今回の裁判で、ソフトを使っていなくても払戻金が雑所得に当たる可能性が示されたことで、国税庁は再度の通達改正を余儀なくされたわけです。
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