消費税率8%への引き上げと同時にスタートした「すまい給付金」が、制度開始から半年で、8730件(7710戸)に対して合計19億7484万1千円が給付されたことが分かりました。
住宅ローン利用者の消費増税による負担を少なからず抑えたことが分かります。
なお、給付を受けた「件数」と「戸数」が異なるのは、持分保有者単位での申請となるためです。
国土交通省によると、新築では、申請は1万1614件、給付は8323件で7340戸、給付額は18億7562万7千円。
中古では申請600件、給付407件で370戸、給付額9921万4千円でした。
住宅ローン利用者の負担軽減制度である住宅ローン減税は平成26年4月の消費税増税に合わせ、拡充されました。
しかし、住宅ローン減税は納めている所得税等から控除する仕組みであるため、収入が低い人ほど効果が薄くなります。
そこですまい給付金制度は、住宅ローン減税拡充の負担軽減効果を十分に受けられない収入層が対象とされています。
給付金を受けられるのは、住宅を取得して登記上の持分を保有するとともにそこに居住する収入が一定以下の人。
住宅ローンを利用せずに即金で住宅を取得した人でも、50歳以上で収入額の目安が650万円以下の人は対象になります。
給付額は、収入額の目安(都道府県民税の所得割額)で決まる「給付基礎額」に不動産の「持ち分割合」を乗じて決定。
具体的には、消費税率8%時は、扶養家族が1人の住宅購入者の場合、年収425万円以下の人は30万円、425万円超475万円以下は20万円、475万円超510万円以下は10万円。
消費税率が10%に引き上げられたときは、給付対象の上限が775万円以下の人になるとともに、最大給付額が50万円になります。
平成26年4月以降に引き渡される住宅から、29年12月までに引き渡されて入居が完了した住宅までに適用されます。
2014年12月25日木曜日
2014年12月22日月曜日
【時事解説】公的年金の改革と経済への影響
公的年金の改革が本格的にはじまろうとしています。以前から、公的年金については、改革について多くの議論がなされてきました。現在、改革として、パートで働く主婦や高齢者などを対象に年金の仕組みを変えることで働く人を増やし、結果、保険料が増えるようにルールを変えようといった議論が進められています。なかでも、目玉は公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革にあります。
GPIFとは厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理と運用を行う独立行政法人です。国民年金と厚生年金の積立金は2013年3月末で約132兆円になっており、そのうちの約127兆円をGPIFが運用しています。現在、運用の方針が大きく変わろうとしています。
これまでは、運用の額の大きさや年金の積立金ということから、比較的安全でリスクが少ないといわれる、国債などの国内債券を中心に運用してきました。ところが、今の年金制度を維持するには、利回りは1.7%が必要ですが、国債では目標の利回りには届かない可能性が濃くなりました。
もちろん、好景気になれば金利が上がるので利回りも改善します。ただし、金利が上がると、今度は国債の価格が下がり、資産の総額が減ることになります。
そこで、国債の割合を減らし、より高い利回りを期待できる日本株への投資を増やす方針が打ち出されました。10月31日、GPIFは株式と債券の比率を50%ずつにする方針を打ち出しました。加え、国内資産を60%、海外を40%と海外資産の比率をも高めます。結果、これまで60%を占めていた国内債券は35%にまで引き下げられることになりました。
GPIFの改革は一見、経済にはあまり関係ないようにもみえます。ところが、実際は、株価に大きな影響を与えます。改革により、GPIFが株式運用の割合を増やせば、それだけ株式市場に多くのお金が流れ込み、株価を押し上げる効果があります。国内株式への組み入れ比率を1%高めるだけで、株式市場には1兆円超の買い余力が発生するという推計も出ています。
もちろん一気に買うわけではなく、徐々に買っていくので、短期間で日経平均株価が何倍にもなるわけではありません。ただ、日銀の量的追加緩和などの影響などもあり、日経平均株価は、10月の半ばではおよそ1万5,000円でしたが、11月21日は1万7,357円と2,000円以上も高くなっています。
その一方で、今回の改革に対して心配の声もあがっています。第一は、株式の比率を高めることが正しいのかという点です。株価が上がっている今はよいのですが、今後、株価が下がったときに、しっかりと損を回避する(株をタイミングよく売る)ことができるのか、不安視する専門家もいます。
加え、現在の年金制度は女性の就労が現在よりも大幅に増えることを前提としています。本当に、女性の就労増加を実現できるのか、という心配も出ています。こうした前提が崩れたときに、運用に行き詰まりが出ないか危惧されます。
結局は、冒頭で触れた通り、女性や高齢者などを含めて労働者の数を確実に増やしていくこと、さらには、少子高齢化の進展に合わせて、年金の支給額を変えていくような、制度の見直しなどもあわせて改革が進められるかどうか、ここに改革の成否があります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
GPIFとは厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理と運用を行う独立行政法人です。国民年金と厚生年金の積立金は2013年3月末で約132兆円になっており、そのうちの約127兆円をGPIFが運用しています。現在、運用の方針が大きく変わろうとしています。
これまでは、運用の額の大きさや年金の積立金ということから、比較的安全でリスクが少ないといわれる、国債などの国内債券を中心に運用してきました。ところが、今の年金制度を維持するには、利回りは1.7%が必要ですが、国債では目標の利回りには届かない可能性が濃くなりました。
もちろん、好景気になれば金利が上がるので利回りも改善します。ただし、金利が上がると、今度は国債の価格が下がり、資産の総額が減ることになります。
そこで、国債の割合を減らし、より高い利回りを期待できる日本株への投資を増やす方針が打ち出されました。10月31日、GPIFは株式と債券の比率を50%ずつにする方針を打ち出しました。加え、国内資産を60%、海外を40%と海外資産の比率をも高めます。結果、これまで60%を占めていた国内債券は35%にまで引き下げられることになりました。
GPIFの改革は一見、経済にはあまり関係ないようにもみえます。ところが、実際は、株価に大きな影響を与えます。改革により、GPIFが株式運用の割合を増やせば、それだけ株式市場に多くのお金が流れ込み、株価を押し上げる効果があります。国内株式への組み入れ比率を1%高めるだけで、株式市場には1兆円超の買い余力が発生するという推計も出ています。
もちろん一気に買うわけではなく、徐々に買っていくので、短期間で日経平均株価が何倍にもなるわけではありません。ただ、日銀の量的追加緩和などの影響などもあり、日経平均株価は、10月の半ばではおよそ1万5,000円でしたが、11月21日は1万7,357円と2,000円以上も高くなっています。
その一方で、今回の改革に対して心配の声もあがっています。第一は、株式の比率を高めることが正しいのかという点です。株価が上がっている今はよいのですが、今後、株価が下がったときに、しっかりと損を回避する(株をタイミングよく売る)ことができるのか、不安視する専門家もいます。
加え、現在の年金制度は女性の就労が現在よりも大幅に増えることを前提としています。本当に、女性の就労増加を実現できるのか、という心配も出ています。こうした前提が崩れたときに、運用に行き詰まりが出ないか危惧されます。
結局は、冒頭で触れた通り、女性や高齢者などを含めて労働者の数を確実に増やしていくこと、さらには、少子高齢化の進展に合わせて、年金の支給額を変えていくような、制度の見直しなどもあわせて改革が進められるかどうか、ここに改革の成否があります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年12月18日木曜日
マイカー通勤者の通勤手当の非課税限度額改定
◆円安と消費税アップで改定
給与計算の非課税項目の通勤手当の非課税限度額が改定されました。10月に発表されましたが4月に遡って適用されます。改定されたのはマイカー通勤に対する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。限度額引き上げは平成26年3月31日以前に支払われた通勤手当や、3月までに支払われるべき手当が4月に入って支払われたものは対象になりません。
4月に遡ったのは消費税が上がった事や円安の影響があった為とみられます。
◆年末調整での精算は
自動車や自転車等の交通用具を使用し、通勤している人に対して
①今までは改正前の非課税額を適用して源泉徴収していましたが、改正後の非課税額で新たに非課税となった金額を計算します。
②源泉徴収簿の年末調整欄余白に「非課税となる通勤手当○○円」と表示して新たに非限度額課税となった部分の金額を記入します。
③源泉徴収簿の年調欄の給与・手当の欄には総支給金額から新たに非課税となった部分の金額を差し引いた後の総支給額を記入します。
このようにして改正後の非課税になった部分の金額を本年の給与総額から差し引いた後の総額を基に年末調整を行います。
◆自動車や自転車等の通勤者の非課税限度額
(片道の通勤距離 改正後の金額)
ア、55㎞以上 31,600円
イ、45㎞以上55㎞未満 28,000円
ウ、35㎞以上45㎞未満 24,400円
エ、25㎞以上35㎞未満 18,700円
オ、15㎞以上25㎞未満 12,900円
カ、10㎞以上15㎞未満 7,100円
キ、 2㎞以上10㎞未満 4,200円
ク、 2㎞未満 全額課税
交通機関を利用している人に支給する通勤手当の1カ月当たりの合理的な運賃等の額の限度額100,000円に変更はありません。
給与計算の非課税項目の通勤手当の非課税限度額が改定されました。10月に発表されましたが4月に遡って適用されます。改定されたのはマイカー通勤に対する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。限度額引き上げは平成26年3月31日以前に支払われた通勤手当や、3月までに支払われるべき手当が4月に入って支払われたものは対象になりません。
4月に遡ったのは消費税が上がった事や円安の影響があった為とみられます。
◆年末調整での精算は
自動車や自転車等の交通用具を使用し、通勤している人に対して
①今までは改正前の非課税額を適用して源泉徴収していましたが、改正後の非課税額で新たに非課税となった金額を計算します。
②源泉徴収簿の年末調整欄余白に「非課税となる通勤手当○○円」と表示して新たに非限度額課税となった部分の金額を記入します。
③源泉徴収簿の年調欄の給与・手当の欄には総支給金額から新たに非課税となった部分の金額を差し引いた後の総支給額を記入します。
このようにして改正後の非課税になった部分の金額を本年の給与総額から差し引いた後の総額を基に年末調整を行います。
◆自動車や自転車等の通勤者の非課税限度額
(片道の通勤距離 改正後の金額)
ア、55㎞以上 31,600円
イ、45㎞以上55㎞未満 28,000円
ウ、35㎞以上45㎞未満 24,400円
エ、25㎞以上35㎞未満 18,700円
オ、15㎞以上25㎞未満 12,900円
カ、10㎞以上15㎞未満 7,100円
キ、 2㎞以上10㎞未満 4,200円
ク、 2㎞未満 全額課税
交通機関を利用している人に支給する通勤手当の1カ月当たりの合理的な運賃等の額の限度額100,000円に変更はありません。
2014年12月15日月曜日
空き家放置で税優遇の対象外に
取り壊して更地にすると固定資産税が6倍に跳ね上がることから、空き家が廃屋同然となっていても解体せずに放置する所有者が多いのが現状です。
こうした問題への国の取り組み方針を規定した「空き家対策特措法」が成立しました。
空き家の所有者特定に固定資産税の課税情報を活用することや、行政代執行による取り壊しを認めるなど、自治体の権限を強化する内容となっています。
倒壊の危険性がある空き家に自治体が対応する際、これまでは所有者の特定に難航して対策に時間がかかってしまうことが多くありました。
新法では、固定資産税の課税情報を利用して、迅速に所有者特定を行えるようにしています。
また、空き家への立ち入り調査も可能となるほか、所有者に対して改善を促したにもかかわらず、無視して放置を続けた場合には行政代執行による解体も認めました。
解体費用は取り壊し後に改めて所有者に請求することとしています。
行政代執行による解体はこれまでも条例によって自治体単位で行われてきましたが、同法によって自治体は国の〝お墨付き〟を得た形です。
政府は、特に危険だと認定された「特定空き家」については、固定資産税の優遇対象から除外するという方針も示しています。
今回成立した法では、空き家対策を実施するための「必要な税制上の措置」を講じると明記。
周辺に危険を及ぼす可能性の高い空き家を特に「特定空き家」として指定し、固定資産税の住宅用地の特例から除外します。
早ければ平成28年からの実施を目指しています。
自治体の権限強化に加えて税制面でも処分を促すことで、空き家対策を円滑に行えるようになるとしています。
こうした問題への国の取り組み方針を規定した「空き家対策特措法」が成立しました。
空き家の所有者特定に固定資産税の課税情報を活用することや、行政代執行による取り壊しを認めるなど、自治体の権限を強化する内容となっています。
倒壊の危険性がある空き家に自治体が対応する際、これまでは所有者の特定に難航して対策に時間がかかってしまうことが多くありました。
新法では、固定資産税の課税情報を利用して、迅速に所有者特定を行えるようにしています。
また、空き家への立ち入り調査も可能となるほか、所有者に対して改善を促したにもかかわらず、無視して放置を続けた場合には行政代執行による解体も認めました。
解体費用は取り壊し後に改めて所有者に請求することとしています。
行政代執行による解体はこれまでも条例によって自治体単位で行われてきましたが、同法によって自治体は国の〝お墨付き〟を得た形です。
政府は、特に危険だと認定された「特定空き家」については、固定資産税の優遇対象から除外するという方針も示しています。
今回成立した法では、空き家対策を実施するための「必要な税制上の措置」を講じると明記。
周辺に危険を及ぼす可能性の高い空き家を特に「特定空き家」として指定し、固定資産税の住宅用地の特例から除外します。
早ければ平成28年からの実施を目指しています。
自治体の権限強化に加えて税制面でも処分を促すことで、空き家対策を円滑に行えるようになるとしています。
2014年12月11日木曜日
3府省庁:教育資金一括贈与の非課税措置の拡充を要望!
3府省庁(内閣府、文部科学省及び金融庁)は、2015年度税制改正要望を公表しました。
それによりますと、文部科学省と金融庁は、教育資金一括贈与に係る非課税措置の拡充を、内閣府は、結婚や子育て資金の支援にも拡大することを要望しております。
具体的に、文科省と金融庁は、
①時限措置である同非課税措置の恒久化
②非課税対象範囲の拡大や口座開設手続きの簡素化
③直系尊属(祖父母等)以外から贈与を受けた場合にも贈与税非課税の対象にすることの3点を共同要望しております。
一方、内閣府では、対象を教育資金の支援だけでなく結婚・子育て支援へも拡大し、そのための贈与を目的に設定する信託に係る贈与税の非課税措置等の創設を金融庁と共同で要望しております。
子や孫の結婚・妊娠・出産・育児を支援し、少子化問題に対応するために、信託の機能を活用し、結婚・妊娠・出産・育児に係る払出しを行う信託スキームを使って、一括して子・孫へ贈与した場合、一定額に対して贈与税を非課税とするものです。
さらに、少子化対策に資する事業を行う公益法人等へ信託財産の一部を寄附する制度とする場合には、その寄付相当額につき、贈与税非課税での払出しを可能とすることも求めております。
2013年度税制改正で創設された教育資金贈与の非課税措置は、祖父母等が、子・孫名義の金融機関の口座等に、一定の教育資金を一括して拠出した場合、子・孫ごとに1,500万円までは贈与税を非課税とする特例で、2015年12月末までの時限措置となっております。
信託協会によりますと、2014年6月末現在、教育資金贈与信託の契約件数が7万6,851件、信託財産設定額合計は5,193億円にのぼっているそうです。
また、同協会の信託受益者向けアンケート調査結果によりますと、教育資金贈与の非課税措置の改善期待として、「領収書等の記載事項の簡略化」や「教育資金に該当する対象範囲の拡大」とともに「対象範囲を子供の結婚・出産や育児費用へ拡大」などの回答もありました。
今後の税制改正の動向に注目です。
それによりますと、文部科学省と金融庁は、教育資金一括贈与に係る非課税措置の拡充を、内閣府は、結婚や子育て資金の支援にも拡大することを要望しております。
具体的に、文科省と金融庁は、
①時限措置である同非課税措置の恒久化
②非課税対象範囲の拡大や口座開設手続きの簡素化
③直系尊属(祖父母等)以外から贈与を受けた場合にも贈与税非課税の対象にすることの3点を共同要望しております。
一方、内閣府では、対象を教育資金の支援だけでなく結婚・子育て支援へも拡大し、そのための贈与を目的に設定する信託に係る贈与税の非課税措置等の創設を金融庁と共同で要望しております。
子や孫の結婚・妊娠・出産・育児を支援し、少子化問題に対応するために、信託の機能を活用し、結婚・妊娠・出産・育児に係る払出しを行う信託スキームを使って、一括して子・孫へ贈与した場合、一定額に対して贈与税を非課税とするものです。
さらに、少子化対策に資する事業を行う公益法人等へ信託財産の一部を寄附する制度とする場合には、その寄付相当額につき、贈与税非課税での払出しを可能とすることも求めております。
2013年度税制改正で創設された教育資金贈与の非課税措置は、祖父母等が、子・孫名義の金融機関の口座等に、一定の教育資金を一括して拠出した場合、子・孫ごとに1,500万円までは贈与税を非課税とする特例で、2015年12月末までの時限措置となっております。
信託協会によりますと、2014年6月末現在、教育資金贈与信託の契約件数が7万6,851件、信託財産設定額合計は5,193億円にのぼっているそうです。
また、同協会の信託受益者向けアンケート調査結果によりますと、教育資金贈与の非課税措置の改善期待として、「領収書等の記載事項の簡略化」や「教育資金に該当する対象範囲の拡大」とともに「対象範囲を子供の結婚・出産や育児費用へ拡大」などの回答もありました。
今後の税制改正の動向に注目です。
2014年12月9日火曜日
みなし相続財産とならないもの
◆本来の相続財産とみなし相続財産
死亡した者に係る給与等で未支給のものは本来の相続財産として相続税が課され、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定した退職手当金等は、みなし相続財産として相続税が課されます。
なお、相続により取得するものについては所得税を課さないと法律は規定し、相続税の課されるものについては、所得税の課税をしない、と二重課税の回避の趣旨が通達で明示されています。
また、別の通達では、相続税の課されない死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等については、一時所得として所得税を課すとしています。
◆相続不課税で一時所得となるもの
被相続人の死亡後3年を超えて支給額が確定した退職手当金等は、みなし相続財産の規定外になるので、相続税課税対象外になるとともに、その支給を受けるものの直接の所得となり、一時所得に分類されて、課税されます。
また、年金を受給していた者が死亡し、その死亡時点で未支給となっていた1~2ヶ月分の年金が、請求によって配偶者等の指定した口座に振り込まれた場合、これも、受給した配偶者等の一時所得となります。
この未支給年金請求権については、遺族が自己の固有の権利として請求するものであることが、国民年金法・厚生年金法に明記されており、かつ、相続財産とみなすとの規定がないので、相続税の課税対象にはなりません。
◆歯科医師会の死亡共済金も
昨年、平成25年12月12日に、歯科医師会共済制度に基づく死亡共済金は相続財産ではなく、遺族の一時所得に該当するとの判決がありました。
この共済金の受給権は、死亡した会員が指定していた者(指定した者がいない場合は法定相続人)にあり、被相続人の財産としての本来の相続財産ではありません。また、みなし相続財産にも該当しません。
ちなみに、この共済掛金の性質は、中途返戻金のないいわゆる掛け捨てであり、火災や重度の障害に対しても共済金が支払われることになっており、掛金の内、死亡共済金の原資として積み立てられる直接の個別対応関係がないので、一時所得の収入金額から控除する額はゼロとされています。
死亡した者に係る給与等で未支給のものは本来の相続財産として相続税が課され、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定した退職手当金等は、みなし相続財産として相続税が課されます。
なお、相続により取得するものについては所得税を課さないと法律は規定し、相続税の課されるものについては、所得税の課税をしない、と二重課税の回避の趣旨が通達で明示されています。
また、別の通達では、相続税の課されない死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等については、一時所得として所得税を課すとしています。
◆相続不課税で一時所得となるもの
被相続人の死亡後3年を超えて支給額が確定した退職手当金等は、みなし相続財産の規定外になるので、相続税課税対象外になるとともに、その支給を受けるものの直接の所得となり、一時所得に分類されて、課税されます。
また、年金を受給していた者が死亡し、その死亡時点で未支給となっていた1~2ヶ月分の年金が、請求によって配偶者等の指定した口座に振り込まれた場合、これも、受給した配偶者等の一時所得となります。
この未支給年金請求権については、遺族が自己の固有の権利として請求するものであることが、国民年金法・厚生年金法に明記されており、かつ、相続財産とみなすとの規定がないので、相続税の課税対象にはなりません。
◆歯科医師会の死亡共済金も
昨年、平成25年12月12日に、歯科医師会共済制度に基づく死亡共済金は相続財産ではなく、遺族の一時所得に該当するとの判決がありました。
この共済金の受給権は、死亡した会員が指定していた者(指定した者がいない場合は法定相続人)にあり、被相続人の財産としての本来の相続財産ではありません。また、みなし相続財産にも該当しません。
ちなみに、この共済掛金の性質は、中途返戻金のないいわゆる掛け捨てであり、火災や重度の障害に対しても共済金が支払われることになっており、掛金の内、死亡共済金の原資として積み立てられる直接の個別対応関係がないので、一時所得の収入金額から控除する額はゼロとされています。
2014年12月5日金曜日
パチンコ税、携帯電話税の導入見送り
パチンコや携帯電話の利用者に負担を求める新税の創設について、来年度税制改正には盛り込まない方針を政府・与党が固めました。「消費税の再増税と同時並行は困難」というのが理由です。
パチンコ税は、客が出玉を直接換金することを合法化したうえで、客が受け取った現金に税金を課すというもの。この場合、所得税に該当することから、年間の勝ち負けを通算する必要が出てくるなど導入には課題がたくさんありました。さらに、パチンコ客による景品交換所での換金が古物商への販売行為とみなされて課税されることになれば、新税は一般の中古リサイクルショップなどにも課税対象が広がる可能性があります。
刑法では賭博は禁じられていますが、現在のパチンコは〝グレーゾーン〟に位置づけられていて、店が利用者に景品を渡し、利用者は景品交換所(古物商)で景品を販売して現金を得る「三店方式」で法の抜け道をつくっています。
今回は導入が見送られましたが、税収は1%で200億円との試算もあることから、政府・与党は、今後はカジノを含めた統合型リゾート(IR)推進法案の審議を見守りながら、協議を継続させるとしています。
携帯電話税については、台数ごとに課税する案が浮上していました。今年自民党有志議員が結成した「携帯電話問題懇談会」の会長である中山泰秀衆院議員は、「公共の電波は資源。有限の資源を使用しているのだから税金を払うべき」と課税根拠を語っていました。しかし、そもそも携帯電話各社が莫大な額の電波利用料を国に払っていて、端末使用者からも徴収することになると「二重取り」になる可能性があります。さらに自動車所有者のような公的登録制度がないため、納税者の特定が難しいことも指摘されていました。
パチンコ税は、客が出玉を直接換金することを合法化したうえで、客が受け取った現金に税金を課すというもの。この場合、所得税に該当することから、年間の勝ち負けを通算する必要が出てくるなど導入には課題がたくさんありました。さらに、パチンコ客による景品交換所での換金が古物商への販売行為とみなされて課税されることになれば、新税は一般の中古リサイクルショップなどにも課税対象が広がる可能性があります。
刑法では賭博は禁じられていますが、現在のパチンコは〝グレーゾーン〟に位置づけられていて、店が利用者に景品を渡し、利用者は景品交換所(古物商)で景品を販売して現金を得る「三店方式」で法の抜け道をつくっています。
今回は導入が見送られましたが、税収は1%で200億円との試算もあることから、政府・与党は、今後はカジノを含めた統合型リゾート(IR)推進法案の審議を見守りながら、協議を継続させるとしています。
携帯電話税については、台数ごとに課税する案が浮上していました。今年自民党有志議員が結成した「携帯電話問題懇談会」の会長である中山泰秀衆院議員は、「公共の電波は資源。有限の資源を使用しているのだから税金を払うべき」と課税根拠を語っていました。しかし、そもそも携帯電話各社が莫大な額の電波利用料を国に払っていて、端末使用者からも徴収することになると「二重取り」になる可能性があります。さらに自動車所有者のような公的登録制度がないため、納税者の特定が難しいことも指摘されていました。
2014年12月3日水曜日
誤りやすい事例 年末調整の留意点
年末調整の時期となりました。年末調整とは、給与の支払を受ける人の一人一人について、毎月(日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続きです。
◆昨年と比べて変わった点
平成26年分については、大きな改正点はありませんでしたが、昨年から創設された復興特別所得税の計算がありますのでその留意が必要です。
そのため、年末調整において年税額を計算する際にも、復興特別所得税を含めた年税額[年調年税額=年調所得税額×102.1%(100円未満切り捨て)]を算出する必要があります。
以下、誤りやすい事項について3例ほど検討したいと思います。
◆遺族年金の受給と合計所得金額の判定
扶養親族に該当するかどうかを判定する場合の合計所得金額には、所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得は含まれないことになっています。
したがって、非課税所得である遺族年金を含めないところで扶養親族を判定することに注意して下さい。
◆給与の支払日が年の中途で変更された場合
これまで前月21日から当月20日までの勤務分に係る給与が当月末支給から翌月5日に変更になった場合、11月21日から12月20日までの給与は翌年1月5日に支払われることになります。
この1月5日に支払われる12月分の給与は、本年の給与に係る年末調整の対象に含めなければならないかどうかですが、結論は、計算対象には含めない、です。
その理由は、年末調整は、その年中に支払うべきことが確定した給与が対象で、確定した給与とは、契約又は慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日、と解されていることにあります。
◆親族等が契約者となっている保険契約等
妻や子が契約者となっている生命保険契約等であっても、その妻や子に所得がなく給与の支払を受ける夫がその保険料を負担している場合には、その保険料又は掛金は夫の生命保険料控除の対象になります。
但し、保険金等の受取人が給与の支払を受ける人又はその配偶者その他の親族でなければなりません。
◆昨年と比べて変わった点
平成26年分については、大きな改正点はありませんでしたが、昨年から創設された復興特別所得税の計算がありますのでその留意が必要です。
そのため、年末調整において年税額を計算する際にも、復興特別所得税を含めた年税額[年調年税額=年調所得税額×102.1%(100円未満切り捨て)]を算出する必要があります。
以下、誤りやすい事項について3例ほど検討したいと思います。
◆遺族年金の受給と合計所得金額の判定
扶養親族に該当するかどうかを判定する場合の合計所得金額には、所得税法やその他の法令の規定によって非課税とされる所得は含まれないことになっています。
したがって、非課税所得である遺族年金を含めないところで扶養親族を判定することに注意して下さい。
◆給与の支払日が年の中途で変更された場合
これまで前月21日から当月20日までの勤務分に係る給与が当月末支給から翌月5日に変更になった場合、11月21日から12月20日までの給与は翌年1月5日に支払われることになります。
この1月5日に支払われる12月分の給与は、本年の給与に係る年末調整の対象に含めなければならないかどうかですが、結論は、計算対象には含めない、です。
その理由は、年末調整は、その年中に支払うべきことが確定した給与が対象で、確定した給与とは、契約又は慣習により支給日が定められている給与についてはその支給日、支給日が定められていない給与についてはその支給を受けた日、と解されていることにあります。
◆親族等が契約者となっている保険契約等
妻や子が契約者となっている生命保険契約等であっても、その妻や子に所得がなく給与の支払を受ける夫がその保険料を負担している場合には、その保険料又は掛金は夫の生命保険料控除の対象になります。
但し、保険金等の受取人が給与の支払を受ける人又はその配偶者その他の親族でなければなりません。
2014年12月1日月曜日
「生活に通常必要でない資産」に係る税制改正(所得税法改正)
《法学博士・税理士右山昌一郎》
平成26年も年末を迎えて終わろうとしています。年末に当たって平成26年度税制改正の中から「生活に通常必要でない資産」に係る改正、すなわち、ゴルフ会員権やリゾート会員権等(以下「ゴルフ会員権等」といいます。)に係る譲渡損失の金額が損益通算の対象から除外された改正及びこれらの資産の災害等から生じた損失の金額が雑損控除の対象外となった改正について、その経緯も交えながら述べてみたいと思います。
特にゴルフ会員権については「ゴルフ会員権に係る名義変更料は、ゴルフ会員権の取得費を構成するか否か」の訴訟で私は約10年間税理士補佐人としてその訴訟に携わり平成17年2月1日・最高裁第三小法廷において完全勝訴判決を得たなつかしい思い出があります。
1.ゴルフ会員権等の改正の経緯
(1) 「生活に通常必要でない資産」の経緯
「生活に通常必要でない資産」は改正前においては、次のように規定(以下「旧法」といいます。)されていました。
「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」
旧法では対象物件を不動産と規定しています。ゴルフ会員権等は権利であることから平成26年度税制改正においては、旧法の「不動産」を「資産」に改正して、まず「生活に通常必要でない資産」の中に「ゴルフ会員権等」を挿入した経緯があります。
(2) ゴルフ会員権等の譲渡損失に係る損益通算の経緯
ゴルフ会員権等の譲渡損失の金額に係る損益通算については、所得税法69条が旧法の規定をそのまま引き継いでいます。その理由は、同規定の中に「生活に通常必要でない資産に係る損失の金額」は、他の生活に通常必要でない資産(例えば、美術工芸品等で1個又は1組の価額が30万円超のもの)の所得の金額から控除し、控除しきれないものは生じなかったものとみなす、という規定を踏襲することにして除外しているからです(新所法69②)。
(3) ゴルフ会員権等の災害等損失に係る雑損控除の経緯
ゴルフ会員権等の災害等損失に係る雑損控除の適用については、(2)と同様に旧法に「生活に通常必要でない資産の災害による損失の金額」は除外すると規定していることからその規定を踏襲し、改正後においてはゴルフ会員権等の災害等損失を雑損控除の対象外にしたということができます。
(4) 留意点
今回のゴルフ会員権等の損失の金額に係る損益通算からの除外及び雑損控除からの除外については、別荘が早期(昭和37年)に「生活に通常必要でない資産」に規定されて以降毎年ゴルフ会員権等の損失の金額の取扱いについて均衡上から問題となっていました。
私としては、ゴルフ会員権等の損失の金額に係る平成26年規制は、やや遅きに失したものといえます。
さらに今回の改正においては、損益通算及び雑損控除の条文を改正せず、生活に通常必要でない資産の条文(所令178①二)のみを改正し規制したこととその適用は、平成26年4月1日以後の譲渡等としたことには注意する必要があります。
平成26年も年末を迎えて終わろうとしています。年末に当たって平成26年度税制改正の中から「生活に通常必要でない資産」に係る改正、すなわち、ゴルフ会員権やリゾート会員権等(以下「ゴルフ会員権等」といいます。)に係る譲渡損失の金額が損益通算の対象から除外された改正及びこれらの資産の災害等から生じた損失の金額が雑損控除の対象外となった改正について、その経緯も交えながら述べてみたいと思います。
特にゴルフ会員権については「ゴルフ会員権に係る名義変更料は、ゴルフ会員権の取得費を構成するか否か」の訴訟で私は約10年間税理士補佐人としてその訴訟に携わり平成17年2月1日・最高裁第三小法廷において完全勝訴判決を得たなつかしい思い出があります。
1.ゴルフ会員権等の改正の経緯
(1) 「生活に通常必要でない資産」の経緯
「生活に通常必要でない資産」は改正前においては、次のように規定(以下「旧法」といいます。)されていました。
「通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産」
旧法では対象物件を不動産と規定しています。ゴルフ会員権等は権利であることから平成26年度税制改正においては、旧法の「不動産」を「資産」に改正して、まず「生活に通常必要でない資産」の中に「ゴルフ会員権等」を挿入した経緯があります。
(2) ゴルフ会員権等の譲渡損失に係る損益通算の経緯
ゴルフ会員権等の譲渡損失の金額に係る損益通算については、所得税法69条が旧法の規定をそのまま引き継いでいます。その理由は、同規定の中に「生活に通常必要でない資産に係る損失の金額」は、他の生活に通常必要でない資産(例えば、美術工芸品等で1個又は1組の価額が30万円超のもの)の所得の金額から控除し、控除しきれないものは生じなかったものとみなす、という規定を踏襲することにして除外しているからです(新所法69②)。
(3) ゴルフ会員権等の災害等損失に係る雑損控除の経緯
ゴルフ会員権等の災害等損失に係る雑損控除の適用については、(2)と同様に旧法に「生活に通常必要でない資産の災害による損失の金額」は除外すると規定していることからその規定を踏襲し、改正後においてはゴルフ会員権等の災害等損失を雑損控除の対象外にしたということができます。
(4) 留意点
今回のゴルフ会員権等の損失の金額に係る損益通算からの除外及び雑損控除からの除外については、別荘が早期(昭和37年)に「生活に通常必要でない資産」に規定されて以降毎年ゴルフ会員権等の損失の金額の取扱いについて均衡上から問題となっていました。
私としては、ゴルフ会員権等の損失の金額に係る平成26年規制は、やや遅きに失したものといえます。
さらに今回の改正においては、損益通算及び雑損控除の条文を改正せず、生活に通常必要でない資産の条文(所令178①二)のみを改正し規制したこととその適用は、平成26年4月1日以後の譲渡等としたことには注意する必要があります。
2014年11月27日木曜日
《コラム》資産の損失と似て非なる取壊し費用
相続税の増税に備えた対策の一環として、金融緩和の継続と相まって、借入金による中古賃貸不動産の建替えも盛んのようです。
これら賃貸に供されている建物の建替えに伴う「取壊し等」により生じた損失、いわゆる資産損失については、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。取壊し等には、除却、滅失等も含まれます。
◆資産損失の金額の計算
必要経費に算入される資産損失の金額は、その資産の原価ベースによる価額、いわゆる簿価を基礎として計算することとされており、建物については、損失の生じた日にその資産の譲渡があったものとみなして、その固定資産の取得に要した金額及び設備費並びに改良費の額の合計額からその資産の償却費の額の累計額を控除した金額です。
◆貸付規模と資産損失の必要経費
不動産所得の起因となる建物の取壊し等による資産損失が全額必要経費に算入されるかどうかは、取壊し時の不動産の貸付が事業的規模か、それ以外(業務的規模)か、どうかによって異なってきます。
事業的規模の場合には、その資産損失の全額を必要経費に算入することができ、不動産所得が赤字の場合は他の所得との損益通算、さらに、青色申告であれば純損失の繰越控除の適用があります。
一方、業務的規模の場合には、その年分の不動産所得(その資産損失を控除する前)の金額が限度になり、不動産所得が赤字であれば、その部分の金額は切り捨てられることになります。
なお、事業的規模かどうかは、①アパート等については、独立した室数10以上、②独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であれば、反証がない限り事業的規模とされ、また、事業税が課税されていれば事業的規模として取り扱われています。
◆取壊し費用と必要経費
建物の取壊しには、当然、取壊しのための諸費用がかかります。この取壊し費用も取壊しによって生じる損失、除却損と同様、不動産の貸付規模によって必要経費に算入される金額の範囲が異なるかどうかです。
資産損失は、あくまで資産の取壊し、除却、滅失による資産そのものの損失、原則、未償却残高相当額であることから、取壊し費用はその範疇には入りません。したがって、不動産の貸付の規模にかかわらず、業務供用部分については、全額必要経費に算入されます。
これら賃貸に供されている建物の建替えに伴う「取壊し等」により生じた損失、いわゆる資産損失については、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入されます。取壊し等には、除却、滅失等も含まれます。
◆資産損失の金額の計算
必要経費に算入される資産損失の金額は、その資産の原価ベースによる価額、いわゆる簿価を基礎として計算することとされており、建物については、損失の生じた日にその資産の譲渡があったものとみなして、その固定資産の取得に要した金額及び設備費並びに改良費の額の合計額からその資産の償却費の額の累計額を控除した金額です。
◆貸付規模と資産損失の必要経費
不動産所得の起因となる建物の取壊し等による資産損失が全額必要経費に算入されるかどうかは、取壊し時の不動産の貸付が事業的規模か、それ以外(業務的規模)か、どうかによって異なってきます。
事業的規模の場合には、その資産損失の全額を必要経費に算入することができ、不動産所得が赤字の場合は他の所得との損益通算、さらに、青色申告であれば純損失の繰越控除の適用があります。
一方、業務的規模の場合には、その年分の不動産所得(その資産損失を控除する前)の金額が限度になり、不動産所得が赤字であれば、その部分の金額は切り捨てられることになります。
なお、事業的規模かどうかは、①アパート等については、独立した室数10以上、②独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であれば、反証がない限り事業的規模とされ、また、事業税が課税されていれば事業的規模として取り扱われています。
◆取壊し費用と必要経費
建物の取壊しには、当然、取壊しのための諸費用がかかります。この取壊し費用も取壊しによって生じる損失、除却損と同様、不動産の貸付規模によって必要経費に算入される金額の範囲が異なるかどうかです。
資産損失は、あくまで資産の取壊し、除却、滅失による資産そのものの損失、原則、未償却残高相当額であることから、取壊し費用はその範疇には入りません。したがって、不動産の貸付の規模にかかわらず、業務供用部分については、全額必要経費に算入されます。
2014年11月25日火曜日
【時事解説】ぶつからない車、技術の最先端とこれから
最近、「ぶつからない車」が話題です。こうした車には、自動ブレーキ機能といって、車両や障害物を認識して衝突を回避する機能が搭載されています。種類も豊富で、「メルセデス・ベンツSクラス」のような超高級車から、「ムーヴ」(ダイハツ工業)や「ワゴンR」(スズキ)といった軽自動車に至るまで、さまざまな新型車が自動ブレーキを搭載するようになりました。国土交通省によると、自動ブレーキ装着車の国内向け生産台数は、2011年は約4万6,000台でしたが、2013年には19万7,000台と約5倍近くまで増加したといいます。
ただし、ぶつからない車といっても、自動車メーカーにより機能、性能が多少異なります。どの車種も障害物を検知して自動でブレーキをかける点は共通していますが、人物を検知できるか、雨天でも性能が劣らないか、時速30㎞よりも早いスピードでも検知できるかなど、グレードにより性能や機能にバラツキがみられます。
加え、課題もいくつか残されています。第一は安全性です。自動ブレーキといっても、まだ完璧なものではありません。2013年11月、自動車メーカーの試乗会では、自動ブレーキを装着している車が障害物を倒して金網に激突した事故が生じました。原因は、事故を起こした車の自動ブレーキは、時速30km以下で作動するようになっているのですが、運転者は係員の説明をよく聞かずに時速30kmを超えるスピードで走らせたため、自動ブレーキが作動しなかったといいます。まだまだ、課題の多いぶつからない車ですが、ビジネスの面で市場規模の拡大には大きな期待が寄せられています。
今後も「ぶつからない車」は販売台数の伸びが予想され、ビジネスチャンスへの期待が高まっています。なかでも、自動車の販売そのものの伸びはもとより、センサーやカメラの分野での成長が期待されています。
自動ブレーキ機能は、障害物などを検知するのに、センサーやカメラを用いています。主なものを挙げると、遠方の障害物でも検知できる「ミリ波レーダー」、人間も検知できる「ステレオカメラ」、価格が安い「赤外線レーダー」などになります。
それぞれ、一長一短があり、ミリ波レーダーは遠方の障害物を検知でき、悪天候にも強いといった点が特徴ですが、コストがかかるのが欠点です。
ステレオカメラは人間を検知できるといった点で優れていますが、一方で、悪天候に弱い、逆光のとき性能が落ちるなどの欠点を有しています。そして、赤外線レーダーは冒頭で触れた事故のように、時速30km以下でないと機能しないといった欠点があります。
市場としては、こうしたセンサーやカメラを製造しているメーカーだけでなく、検知したデータをもとに、どのように車を制御するかといった制御技術を有している企業にも成長が期待できます。
そして、さらに、この先自動ブレーキの性能が高まると、次は自動運転が技術革新の中心になると言われています。高速道路での手放し運転や自動車庫入れ機能は、自動車メーカーの多くは既に開発に成功しています。2020年、東京オリンピックのとき、選手村から競技会場までの限られた区域のなかで、自動運転が実現するようです。そうなると、自動車産業には、ますます多くのビジネスチャンスが生まれる可能性が高まります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
ただし、ぶつからない車といっても、自動車メーカーにより機能、性能が多少異なります。どの車種も障害物を検知して自動でブレーキをかける点は共通していますが、人物を検知できるか、雨天でも性能が劣らないか、時速30㎞よりも早いスピードでも検知できるかなど、グレードにより性能や機能にバラツキがみられます。
加え、課題もいくつか残されています。第一は安全性です。自動ブレーキといっても、まだ完璧なものではありません。2013年11月、自動車メーカーの試乗会では、自動ブレーキを装着している車が障害物を倒して金網に激突した事故が生じました。原因は、事故を起こした車の自動ブレーキは、時速30km以下で作動するようになっているのですが、運転者は係員の説明をよく聞かずに時速30kmを超えるスピードで走らせたため、自動ブレーキが作動しなかったといいます。まだまだ、課題の多いぶつからない車ですが、ビジネスの面で市場規模の拡大には大きな期待が寄せられています。
今後も「ぶつからない車」は販売台数の伸びが予想され、ビジネスチャンスへの期待が高まっています。なかでも、自動車の販売そのものの伸びはもとより、センサーやカメラの分野での成長が期待されています。
自動ブレーキ機能は、障害物などを検知するのに、センサーやカメラを用いています。主なものを挙げると、遠方の障害物でも検知できる「ミリ波レーダー」、人間も検知できる「ステレオカメラ」、価格が安い「赤外線レーダー」などになります。
それぞれ、一長一短があり、ミリ波レーダーは遠方の障害物を検知でき、悪天候にも強いといった点が特徴ですが、コストがかかるのが欠点です。
ステレオカメラは人間を検知できるといった点で優れていますが、一方で、悪天候に弱い、逆光のとき性能が落ちるなどの欠点を有しています。そして、赤外線レーダーは冒頭で触れた事故のように、時速30km以下でないと機能しないといった欠点があります。
市場としては、こうしたセンサーやカメラを製造しているメーカーだけでなく、検知したデータをもとに、どのように車を制御するかといった制御技術を有している企業にも成長が期待できます。
そして、さらに、この先自動ブレーキの性能が高まると、次は自動運転が技術革新の中心になると言われています。高速道路での手放し運転や自動車庫入れ機能は、自動車メーカーの多くは既に開発に成功しています。2020年、東京オリンピックのとき、選手村から競技会場までの限られた区域のなかで、自動運転が実現するようです。そうなると、自動車産業には、ますます多くのビジネスチャンスが生まれる可能性が高まります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年11月22日土曜日
【時事解説】親族外承継の後継者に求める能力
『2014年版中小企業白書』では、中小企業の事業承継について第三者承継に着目した分析を行っています。ここでいう第三者承継とは、経営者の親族以外の社内の役員や従業員に事業承継を行う内部昇格と、社外から後継者を招いて経営者とする外部招へいを合わせた親族外の第三者への事業承継をいいます。
同白書によると、我が国の事業承継の形態としては、依然として親族内への承継(親族内承継)が一番多いものの、長期的には親族内承継の全体に占める割合は低下しており、その反面、第三者承継や買収(事業売却)が占める割合が上昇しており、とくに2007年以降、第三者承継に買収を加えた事業承継形態の割合が、親族内承継を上回っています。
企業規模ごとの内訳の推移をみると、内部昇格については構成比に大きな変化はないものの、外部招へいについては、従業員10人未満の規模の小さな企業が占める割合が、近年上昇してきています。この背景には、少子化が進む中で、従業員数が少ない規模の小さな企業が、自社の中で後継者を確保することができずに、社外にまで後継者を求めている動きがあることが推察されます。
社外の第三者への事業承継を検討している者が、後継者候補にどのような素養や能力を期待しているかについてみると、「経営に対する意欲が高いこと」を挙げる者の割合が高くなっています。
さらに、親族内承継のケースと比べて事業を承継することの正統性に乏しい親族外承継の後継者においては、事業承継にあたり従業員や取引先・金融機関などの支持・理解を確保することも求められるのです。
では、実際に親族外による事業承継を行ったA社の取組みについてみていきましょう。
A社は、業務用洗剤・石鹸の製造とクリーニング用諸材料の卸売業という2つの事業を主力とする企業です。
A社の現社長は、取引先金融機関の勤務を経て当初は出向の形でA社に入社。入社後は「従業員が意見を出しやすい開かれた組織」をつくることを目指した取組みを始めました。そのためには外部から来た自分を理解してもらう必要があると考え、従業員や取引先等とのコミュニケーションにおいて「逃げない、隠さない、嘘をつかない」ことを心掛けました。
こうした取組みはこれまでのオーナー一族のトップダウン型の組織運営とは異なったものでしたが、次第に従業員にその考え方が浸透し、人心を掌握していきました。その後先代経営者が体調を崩したことを契機に、先代経営者から現社長に対し社長就任の要請があり、入社から3年経過後にA社の社長に就任しました。
社長就任後はカリスマ創業者ではなく創業者一族でもない自分が経営するには、プロパーの責任者クラスの人材を役員に昇格させて、一体となって経営する必要があると考え、役員の数を増やしました。また、経営会議においては将来のビジョンを伝えるとともに、開かれた組織づくりを意識しつつ幅広く権限委譲を行うことで、会社経営を担う中核的な人材の育成を図っていきました。
このように親族外承継の後継者においては、トップダウンではなく、個々の従業員の力を引き出し、組織的に企業を運営していく能力がより一層求められるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
同白書によると、我が国の事業承継の形態としては、依然として親族内への承継(親族内承継)が一番多いものの、長期的には親族内承継の全体に占める割合は低下しており、その反面、第三者承継や買収(事業売却)が占める割合が上昇しており、とくに2007年以降、第三者承継に買収を加えた事業承継形態の割合が、親族内承継を上回っています。
企業規模ごとの内訳の推移をみると、内部昇格については構成比に大きな変化はないものの、外部招へいについては、従業員10人未満の規模の小さな企業が占める割合が、近年上昇してきています。この背景には、少子化が進む中で、従業員数が少ない規模の小さな企業が、自社の中で後継者を確保することができずに、社外にまで後継者を求めている動きがあることが推察されます。
社外の第三者への事業承継を検討している者が、後継者候補にどのような素養や能力を期待しているかについてみると、「経営に対する意欲が高いこと」を挙げる者の割合が高くなっています。
さらに、親族内承継のケースと比べて事業を承継することの正統性に乏しい親族外承継の後継者においては、事業承継にあたり従業員や取引先・金融機関などの支持・理解を確保することも求められるのです。
では、実際に親族外による事業承継を行ったA社の取組みについてみていきましょう。
A社は、業務用洗剤・石鹸の製造とクリーニング用諸材料の卸売業という2つの事業を主力とする企業です。
A社の現社長は、取引先金融機関の勤務を経て当初は出向の形でA社に入社。入社後は「従業員が意見を出しやすい開かれた組織」をつくることを目指した取組みを始めました。そのためには外部から来た自分を理解してもらう必要があると考え、従業員や取引先等とのコミュニケーションにおいて「逃げない、隠さない、嘘をつかない」ことを心掛けました。
こうした取組みはこれまでのオーナー一族のトップダウン型の組織運営とは異なったものでしたが、次第に従業員にその考え方が浸透し、人心を掌握していきました。その後先代経営者が体調を崩したことを契機に、先代経営者から現社長に対し社長就任の要請があり、入社から3年経過後にA社の社長に就任しました。
社長就任後はカリスマ創業者ではなく創業者一族でもない自分が経営するには、プロパーの責任者クラスの人材を役員に昇格させて、一体となって経営する必要があると考え、役員の数を増やしました。また、経営会議においては将来のビジョンを伝えるとともに、開かれた組織づくりを意識しつつ幅広く権限委譲を行うことで、会社経営を担う中核的な人材の育成を図っていきました。
このように親族外承継の後継者においては、トップダウンではなく、個々の従業員の力を引き出し、組織的に企業を運営していく能力がより一層求められるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年11月18日火曜日
微妙に異なる会計と税務 開業費の「特別に支出する」
◆微妙に異なる会計と税務の「開業費」
個人でも会社でも開業に際しては少なからず準備費用がかかります。このような費用を「開業費」といいます。
「開業費」は、会計でも、税務でも、開業年度において一時の費用・損金とすることに問題はありませんが、その支出の効果が開業後にも及ぶことから「繰延資産」として資産に計上することも構わないこととされています。
ただ、この「繰延資産」として計上する場合には、「開業費」の会計と費用の定義に微妙な違いがあることに留意しなければなりません。
◆会計上は経常費も「開業費」扱い
財務諸表等規則ガイドラインでは「開業費」は、「土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始までに支出した開業準備のための費用」と定義されています。
中小企業会計指針でも「開業準備のために支出した金額」とされ、会社成立から開業までに生じた、開業準備のため直接に支出する費用と理解されています。
◆法人税では経常費は「開業費」とされない
一方、法人税では「開業費」は「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」とされ、「特別に支出する」ものに限定されています。
「特別に支出」については、昔の通達では「法人が開業準備のために特別に支出した広告宣伝費、接待費、旅費、調査費」を指し、「法人の成立後営業開始までの間に支出した費用であっても、支払利子、使用人給料、借家料、電気ガス、水道料金等のような経常費的な性格を有する費用はこれに含まれない」と示されていました。
これは、法人税の場合、「開業費」は任意償却ですので、期をまたいだ利益調整の道具に使われることを避けるため、「特別な支出」に限ることとしたと理解されています。
現在でも、この内容は解釈として引き継がれ、法人税務では経常費は「開業費」から除かれるものとして取り扱われています。
◆所得税では「特別」ならば、経常費OK
これに対して所得税では、経常的な費用であっても、その支出が開業準備のために特別に支出したものならば、開業費に計上できるものとして取り扱われます。
個人でも会社でも開業に際しては少なからず準備費用がかかります。このような費用を「開業費」といいます。
「開業費」は、会計でも、税務でも、開業年度において一時の費用・損金とすることに問題はありませんが、その支出の効果が開業後にも及ぶことから「繰延資産」として資産に計上することも構わないこととされています。
ただ、この「繰延資産」として計上する場合には、「開業費」の会計と費用の定義に微妙な違いがあることに留意しなければなりません。
◆会計上は経常費も「開業費」扱い
財務諸表等規則ガイドラインでは「開業費」は、「土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始までに支出した開業準備のための費用」と定義されています。
中小企業会計指針でも「開業準備のために支出した金額」とされ、会社成立から開業までに生じた、開業準備のため直接に支出する費用と理解されています。
◆法人税では経常費は「開業費」とされない
一方、法人税では「開業費」は「法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」とされ、「特別に支出する」ものに限定されています。
「特別に支出」については、昔の通達では「法人が開業準備のために特別に支出した広告宣伝費、接待費、旅費、調査費」を指し、「法人の成立後営業開始までの間に支出した費用であっても、支払利子、使用人給料、借家料、電気ガス、水道料金等のような経常費的な性格を有する費用はこれに含まれない」と示されていました。
これは、法人税の場合、「開業費」は任意償却ですので、期をまたいだ利益調整の道具に使われることを避けるため、「特別な支出」に限ることとしたと理解されています。
現在でも、この内容は解釈として引き継がれ、法人税務では経常費は「開業費」から除かれるものとして取り扱われています。
◆所得税では「特別」ならば、経常費OK
これに対して所得税では、経常的な費用であっても、その支出が開業準備のために特別に支出したものならば、開業費に計上できるものとして取り扱われます。
2014年11月11日火曜日
おさえておきたい贈与税改正 今年と来年の精算課税の違い
◆H27年以後の贈与の相続時精算課税の改正
平成26年も終盤にさし掛かり、来年(平成27年)から贈与税の税率改正があとをお聞き及びの方の中には、親族間の資産移転を今年にするか、来年にするかお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
今回のコラムでは、来年(平成27年)以降の贈与から適用される相続時精算課税制度の改正点について確認していきます。
◆いままでの相続時精算課税制度
相続時精算課税の適用対象者は、超過累進税率が適用される暦年課税方式の贈与税にかえて、一律20%の税率と特別控除2,500万円がある相続時精算課税制度の適用を受けることができます。
この制度の適用を受けることができる受贈者・贈与者の要件は次のとおりです。
(1)受贈者の要件
贈与者の推定相続人(直系卑属に限る)のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者であること
(2)贈与者の要件
贈与をした年の1月1日において65歳以上である者であること
また、相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」を納税地の所轄税務署長まで提出しなければなりません。
◆H27年以後の贈与の精算課税制度
この受贈者・贈与者の要件が平成27年1月1日以後の贈与から、次のとおり適用範囲が拡充されることになりました。
(1)受贈者の要件
贈与者の孫は、改正前は子の代襲相続人として贈与者の推定相続人になったケースでのみが精算課税の適用対象でしたが、改正後は、その年の1月1日において20歳以上である「孫」であれば、精算課税の適用を受けることができるようになりました。
(2)贈与者の要件
改正前の「65歳」の年齢要件が「60歳」に引き下げられました。
この改正により、平成27年からは60歳を迎えたばかりの祖父母が、20歳以上の子・孫の両者に相続時精算課税を適用することができることとなります。具体的には、平成27年以後であれば、昭和30年1月2日以前に生また祖父母が、平成7年1月2日以前に生まれ孫に贈与するケースでも、この制度の適用を受けることができます。
平成26年も終盤にさし掛かり、来年(平成27年)から贈与税の税率改正があとをお聞き及びの方の中には、親族間の資産移転を今年にするか、来年にするかお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
今回のコラムでは、来年(平成27年)以降の贈与から適用される相続時精算課税制度の改正点について確認していきます。
◆いままでの相続時精算課税制度
相続時精算課税の適用対象者は、超過累進税率が適用される暦年課税方式の贈与税にかえて、一律20%の税率と特別控除2,500万円がある相続時精算課税制度の適用を受けることができます。
この制度の適用を受けることができる受贈者・贈与者の要件は次のとおりです。
(1)受贈者の要件
贈与者の推定相続人(直系卑属に限る)のうち、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である者であること
(2)贈与者の要件
贈与をした年の1月1日において65歳以上である者であること
また、相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」を納税地の所轄税務署長まで提出しなければなりません。
◆H27年以後の贈与の精算課税制度
この受贈者・贈与者の要件が平成27年1月1日以後の贈与から、次のとおり適用範囲が拡充されることになりました。
(1)受贈者の要件
贈与者の孫は、改正前は子の代襲相続人として贈与者の推定相続人になったケースでのみが精算課税の適用対象でしたが、改正後は、その年の1月1日において20歳以上である「孫」であれば、精算課税の適用を受けることができるようになりました。
(2)贈与者の要件
改正前の「65歳」の年齢要件が「60歳」に引き下げられました。
この改正により、平成27年からは60歳を迎えたばかりの祖父母が、20歳以上の子・孫の両者に相続時精算課税を適用することができることとなります。具体的には、平成27年以後であれば、昭和30年1月2日以前に生また祖父母が、平成7年1月2日以前に生まれ孫に贈与するケースでも、この制度の適用を受けることができます。
2014年11月10日月曜日
赤字申告法人6年連続7割超
平成25事務年度の赤字申告企業の割合は6年連続の「7割超」でした。赤字申告割合が5割だった四半世紀前と比べて、利益を上げられずに苦しんでいる経営者が多いことがうかがえます。
昭和40年代に4割以下だった赤字申告法人割合は、50年に4割を超えました。55年以降は5割超、平成5年以降は6割超、そして20年以降は7割超の状態が続いています。先ごろ国税庁が公表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、平成25事務年度の赤字申告企業は全体の70.9%でした。わずか40年で、「黒字6割、赤字4割」から「黒字3割、赤字7割」にまでなっているのです。
25事務年度の法人税の申告件数は277万1千件。その申告所得金額総額は53兆2780億円、申告税額総額は10兆9403億円でした。前年度からそれぞれ8兆906億円、9298億円増加。21事務年度(申告所得金額33兆8310億円、申告税額8兆7296億円)からは4年連続でその額を増やしています。赤字申告法人の割合が6年連続で7割を超えているとはいえ、割合が過去最低だった22事務年度(74.8%)からは3年連続で〝改善〟していることも所得金額・申告税額の上昇につながりました。
政府は法人税率の引き下げに向けて議論を進めていますが、この減税策で喜べるのは3割の黒字申告法人だけという状態が続いています。7割の会社にとって〝無関係〟ともいえる法人税率引き下げで他の増税策が設けられてしまうようでは、経済に大打撃を与えかねません。
昭和40年代に4割以下だった赤字申告法人割合は、50年に4割を超えました。55年以降は5割超、平成5年以降は6割超、そして20年以降は7割超の状態が続いています。先ごろ国税庁が公表した「法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、平成25事務年度の赤字申告企業は全体の70.9%でした。わずか40年で、「黒字6割、赤字4割」から「黒字3割、赤字7割」にまでなっているのです。
25事務年度の法人税の申告件数は277万1千件。その申告所得金額総額は53兆2780億円、申告税額総額は10兆9403億円でした。前年度からそれぞれ8兆906億円、9298億円増加。21事務年度(申告所得金額33兆8310億円、申告税額8兆7296億円)からは4年連続でその額を増やしています。赤字申告法人の割合が6年連続で7割を超えているとはいえ、割合が過去最低だった22事務年度(74.8%)からは3年連続で〝改善〟していることも所得金額・申告税額の上昇につながりました。
政府は法人税率の引き下げに向けて議論を進めていますが、この減税策で喜べるのは3割の黒字申告法人だけという状態が続いています。7割の会社にとって〝無関係〟ともいえる法人税率引き下げで他の増税策が設けられてしまうようでは、経済に大打撃を与えかねません。
2014年11月8日土曜日
【時事解説】競争から提携へ
先般、東京電力と中部電力が火力発電分野の提携に基本合意したとの新聞報道がありました。同じ電力業界におけるライバルですから、その両社が共同で事業を行おうとすることに意外な感じを持った方もいたのではないかと想像します。
しかし、考えてみれば、原発問題や電力の自由化等で業界環境が厳しいことは誰の目にも明らかなのですから、これまでとは違う発想でコスト削減に取り組むのは当然のことです。東京電力と中部電力はそれぞれの地元で圧倒的シェアを握るガリバー企業です。こうした大企業ですら、こうした大胆な改革に取り組もうとしているのですから、体力の劣る中小企業も考えなければなりません。
人口はあらゆる消費の基礎になります。人口が増えていれば消費は増加しますから、マーケットは拡大します。マーケットが拡大しているときには、多少経費はかかろうとも、拡大するマーケットから自社の売上をできるだけ多く獲得することに最大限の力を注ぐべきです。競争することにより、お互いが強くなれる時代といえます。
しかし、そうした古き良き時代は過ぎ去り、我が国は人口減少時代に突入しました。人口が減れば、マーケットは確実に縮小します。全体のマーケット縮小に歯止めをかけることは一企業の努力でできるものではありません。企業としては経費削減にさらなる努力が求められます。経費削減も単体企業でできることはもう既に十分にやっているはずですから、今度は企業の枠を超えた複数の企業による共同での経費削減という段階に入っているのではないかと思います。
同じ地域で、同種の事業を行っている企業が複数ある場合、それらの企業が共同することにより経費節減できる余地があるかもしれないのです。究極的な経費節減手法は合併や持株会社化などの経営統合です。経営統合すれば、人事、経理などの間接部門の効率化や営業力の強化も可能です。
しかし、経営統合は容易ではありません。特に、非上場企業では会社の支配権の問題がからみます。一方の企業のオーナーが経営権を完全に譲ることを決めていれば、話は簡単です。しかし、参加する企業それぞれが経営権を維持しようとすると、株式シェアや役職ポストの問題もあり、経営統合は簡単ではありません。
経営統合を行おうとすると、その合意は大変難しいのですが、各社の経営面には手を触れず、東京電力と中部電力のようにある特定の事業に絞り共同化するというのは非上場企業にとっても有力な選択肢です。
これからの経営環境は楽観できません。というより、益々厳しくなると考えた方がいいでしょう。自社の現状を踏まえ、将来を展望したとき、単独での事業継続が難しいと判断されれば、企業の枠を超えた経営の効率化も本格的に検討すべき時に来たといえると思います。
「昨日の敵が今日の友」です。難しい時代ですが、大胆な発想の転換が求められます。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
しかし、考えてみれば、原発問題や電力の自由化等で業界環境が厳しいことは誰の目にも明らかなのですから、これまでとは違う発想でコスト削減に取り組むのは当然のことです。東京電力と中部電力はそれぞれの地元で圧倒的シェアを握るガリバー企業です。こうした大企業ですら、こうした大胆な改革に取り組もうとしているのですから、体力の劣る中小企業も考えなければなりません。
人口はあらゆる消費の基礎になります。人口が増えていれば消費は増加しますから、マーケットは拡大します。マーケットが拡大しているときには、多少経費はかかろうとも、拡大するマーケットから自社の売上をできるだけ多く獲得することに最大限の力を注ぐべきです。競争することにより、お互いが強くなれる時代といえます。
しかし、そうした古き良き時代は過ぎ去り、我が国は人口減少時代に突入しました。人口が減れば、マーケットは確実に縮小します。全体のマーケット縮小に歯止めをかけることは一企業の努力でできるものではありません。企業としては経費削減にさらなる努力が求められます。経費削減も単体企業でできることはもう既に十分にやっているはずですから、今度は企業の枠を超えた複数の企業による共同での経費削減という段階に入っているのではないかと思います。
同じ地域で、同種の事業を行っている企業が複数ある場合、それらの企業が共同することにより経費節減できる余地があるかもしれないのです。究極的な経費節減手法は合併や持株会社化などの経営統合です。経営統合すれば、人事、経理などの間接部門の効率化や営業力の強化も可能です。
しかし、経営統合は容易ではありません。特に、非上場企業では会社の支配権の問題がからみます。一方の企業のオーナーが経営権を完全に譲ることを決めていれば、話は簡単です。しかし、参加する企業それぞれが経営権を維持しようとすると、株式シェアや役職ポストの問題もあり、経営統合は簡単ではありません。
経営統合を行おうとすると、その合意は大変難しいのですが、各社の経営面には手を触れず、東京電力と中部電力のようにある特定の事業に絞り共同化するというのは非上場企業にとっても有力な選択肢です。
これからの経営環境は楽観できません。というより、益々厳しくなると考えた方がいいでしょう。自社の現状を踏まえ、将来を展望したとき、単独での事業継続が難しいと判断されれば、企業の枠を超えた経営の効率化も本格的に検討すべき時に来たといえると思います。
「昨日の敵が今日の友」です。難しい時代ですが、大胆な発想の転換が求められます。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
2014年11月6日木曜日
経済産業省:2015年度税制改正要望を公表!
経済産業省は、2015年度税制改正要望を公表しました。
それによりますと、法人実効税率を、国際的に遜色ない水準に引き下げることを目指し、来年度から法人実効税率の引下げを開始し、数年で20%台まで引き下げることを求めております。
法人実効税率の引下げは、キャッシュフローの増加や資本コストの低下を通じて、賃金引上げ等の消費の増大・設備投資の増加等を促し、経済成長をもたらすとしております。
財源については、租税特別措置の見直しを挙げ、租税特別措置のうち政策減税(インセンティブ措置)は、期限が到来した措置については、経済社会環境の変化に応じて必要性と効果を検証し、メリハリのある見直しを行うことが重要とした上で、
①利用実績が極端に少ない措置等の廃止
②政策的重要性が高い措置の拡充・延長
③インセンティブ措置ではなく、租税特別措置になじまないものの本則化
を提案しております。
また、地域経済再生、中小企業・小規模事業者の活性化の観点から、中小企業者等に係る法人税の軽減税率については、法人実効税率の引下げの検討状況を踏まえつつ、その引下げを目指すことを要望しております。
その他、車体課税の抜本的見直しとして、
①消費税率10%への引上げ時に自動車取得税の廃止
②エコカー減税について対象車の基準を2020年度燃費基準へ切替え、軽減措置の拡充を図った上で恒久化し、当分の間税率(旧暫定税率)について廃止を前提に、税制の一層のグリーン化を図る
③自動車税の環境性能割の導入・グリーン化特例の拡充
④環境性能に優れた軽自動車に対する軽課措置の導入等を図る
ことなどを要望しております。
さらに、個人事業者が保有する事業用資産に係る事業承継時の負担を軽減するための措置の創設を図ることや、地方の創生に向けた取組みとして、地方の創生と人口減少の克服に向け、地方における企業拠点の機能強化等のための支援措置について、まち・ひと・しごと創生本部と連携しつつ検討すること、中心市街地活性化のための税制措置、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長などを盛り込んでおります。
今後の税制改正の動向に注目です。
それによりますと、法人実効税率を、国際的に遜色ない水準に引き下げることを目指し、来年度から法人実効税率の引下げを開始し、数年で20%台まで引き下げることを求めております。
法人実効税率の引下げは、キャッシュフローの増加や資本コストの低下を通じて、賃金引上げ等の消費の増大・設備投資の増加等を促し、経済成長をもたらすとしております。
財源については、租税特別措置の見直しを挙げ、租税特別措置のうち政策減税(インセンティブ措置)は、期限が到来した措置については、経済社会環境の変化に応じて必要性と効果を検証し、メリハリのある見直しを行うことが重要とした上で、
①利用実績が極端に少ない措置等の廃止
②政策的重要性が高い措置の拡充・延長
③インセンティブ措置ではなく、租税特別措置になじまないものの本則化
を提案しております。
また、地域経済再生、中小企業・小規模事業者の活性化の観点から、中小企業者等に係る法人税の軽減税率については、法人実効税率の引下げの検討状況を踏まえつつ、その引下げを目指すことを要望しております。
その他、車体課税の抜本的見直しとして、
①消費税率10%への引上げ時に自動車取得税の廃止
②エコカー減税について対象車の基準を2020年度燃費基準へ切替え、軽減措置の拡充を図った上で恒久化し、当分の間税率(旧暫定税率)について廃止を前提に、税制の一層のグリーン化を図る
③自動車税の環境性能割の導入・グリーン化特例の拡充
④環境性能に優れた軽自動車に対する軽課措置の導入等を図る
ことなどを要望しております。
さらに、個人事業者が保有する事業用資産に係る事業承継時の負担を軽減するための措置の創設を図ることや、地方の創生に向けた取組みとして、地方の創生と人口減少の克服に向け、地方における企業拠点の機能強化等のための支援措置について、まち・ひと・しごと創生本部と連携しつつ検討すること、中心市街地活性化のための税制措置、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長などを盛り込んでおります。
今後の税制改正の動向に注目です。
2014年11月1日土曜日
政党交付金の支出 17%増の356億7400万円
総務省が公表した平成25年分の政党交付金使途等報告書によると、支出総額は356億7400万円(前年比16.8%増)に膨らみ、使い残しの基金残高は147億円でした。平成25年7月の参院選で政治活動費が大幅に増えたことが支出増の要因のひとつのようです。
平成24年末に政権奪還を果たした自民党が4年ぶりに支出額トップに返り咲きました。自民党は政党交付金収入が150億5900万円で、支出が143億7900万円(前年比20.2%増)。民主党は収入が77億7500万円で、繰越金54億4700万円を取り崩し、支出が132億2200万円(同2.2%増)となりました。
交付金総額は318億7100万円。年内に使い切らなかった交付金は基金として翌年に繰り越すことができ、24年末の繰越金総額(185億9300万円)を加えて504億6400万円の支出が可能でした。25年末の繰越総額は147億8300万円(前年比38億1千万円減)で、政党別では民主党の100億7700万円が最多でした。
支出総額の内訳を見ると、政治活動費が前年比34.1%増の201億2千万円に上りました。このうちテレビコマーシャルなどの宣伝事業費は前年(28億5600万円)の約4倍となる115億9700万円。事務所費などの経常経費は前年とほぼ同水準の155億5400万円でした。
特に政権の座に返り咲いた自民党が宣伝事業費38億3千万円を支出しており、前年の39倍に膨らんでいます。
政治資金問題に詳しいジャーナリストは「政党交付金を多くもらっている政党ともらっていない政党では選挙で差が出てくる。交付金があるかぎり公正な選挙にならない。しかも使途の記載の必要がないので、国民は税金が何に使われたか分かりようもない。チェック機能が少なからず働いている地方議会の政務活動費に比べても規制は明らかに緩い」と批判します。
平成24年末に政権奪還を果たした自民党が4年ぶりに支出額トップに返り咲きました。自民党は政党交付金収入が150億5900万円で、支出が143億7900万円(前年比20.2%増)。民主党は収入が77億7500万円で、繰越金54億4700万円を取り崩し、支出が132億2200万円(同2.2%増)となりました。
交付金総額は318億7100万円。年内に使い切らなかった交付金は基金として翌年に繰り越すことができ、24年末の繰越金総額(185億9300万円)を加えて504億6400万円の支出が可能でした。25年末の繰越総額は147億8300万円(前年比38億1千万円減)で、政党別では民主党の100億7700万円が最多でした。
支出総額の内訳を見ると、政治活動費が前年比34.1%増の201億2千万円に上りました。このうちテレビコマーシャルなどの宣伝事業費は前年(28億5600万円)の約4倍となる115億9700万円。事務所費などの経常経費は前年とほぼ同水準の155億5400万円でした。
特に政権の座に返り咲いた自民党が宣伝事業費38億3千万円を支出しており、前年の39倍に膨らんでいます。
政治資金問題に詳しいジャーナリストは「政党交付金を多くもらっている政党ともらっていない政党では選挙で差が出てくる。交付金があるかぎり公正な選挙にならない。しかも使途の記載の必要がないので、国民は税金が何に使われたか分かりようもない。チェック機能が少なからず働いている地方議会の政務活動費に比べても規制は明らかに緩い」と批判します。
2014年10月28日火曜日
税務調査と更正・決定
◆申告納税方式とは
具体的には、納付すべき税額は納税者自身の申告によって確定することを原則として、申告に誤りがあると認められる場合又は申告がない場合には、税務署長は前者については「更正」によって、後者については「決定」によって課税標準等又は税額等を確定する方式のことです。
しかし、税務署長が納税者の申告内容を更正、また、申告義務を決定するには、調査なくしてはできません。
◆税務調査の意義
税務調査ですが、具体的には質問検査権の行使であり、納税者を含む関係者への質問、帳簿書類その他の物件の検査、物件の提示若しくは提出を求め、収集した証拠を評価、検証し、その結果として、課税要件事実を充足しているかどうか、すなわち、課税標準等又は税額等を認定する一連の判断過程といえます。
◆当該職員の所轄以外の調査の可否
条文では、調査官を当該職員と規定し、当該職員の調査について、当該職員の所轄以外での質問検査権の行使を制限していませんので、当該職員は所轄以外でも調査はできるものと思われます。
しかし、一方、調査による更正又は決定は、原則、納税者の納税地を所轄する税務署長以外はできません。ですので、当該職員が所轄以外の納税者又は無申告者を調査して、非違事項を認定しても当該職員の税務署長は「更正」又は「決定」はできませんので、事実上、所轄以外での調査はあり得ないことになります。
◆例外的に納税地選択による決定等
当該職員が申告義務を疑って、無申告者の個人事業主の所轄内の事業所に調査に入り、申告義務有りと認定したところ、当該事業主の住所が所轄以外であることが判明した場合ですが、原則、住所が納税地ですので住所地での期限後申告を指導・勧奨することはできても、当該職員の税務署での期限後申告又は決定はできません。
この場合ですが、当該職員は、事業主に対し強制的ではありませんが、事業主が法律上の規定を熟知していないことをいいことに、当該職員の所轄する事業所を納税地とする申請書を提出させて、決定又は期限後申告を勧奨させることもあるようです。
個人の場合は、住所が納税地ですので、安易に調査官の指摘に従うことのないよう留意が必要です。
具体的には、納付すべき税額は納税者自身の申告によって確定することを原則として、申告に誤りがあると認められる場合又は申告がない場合には、税務署長は前者については「更正」によって、後者については「決定」によって課税標準等又は税額等を確定する方式のことです。
しかし、税務署長が納税者の申告内容を更正、また、申告義務を決定するには、調査なくしてはできません。
◆税務調査の意義
税務調査ですが、具体的には質問検査権の行使であり、納税者を含む関係者への質問、帳簿書類その他の物件の検査、物件の提示若しくは提出を求め、収集した証拠を評価、検証し、その結果として、課税要件事実を充足しているかどうか、すなわち、課税標準等又は税額等を認定する一連の判断過程といえます。
◆当該職員の所轄以外の調査の可否
条文では、調査官を当該職員と規定し、当該職員の調査について、当該職員の所轄以外での質問検査権の行使を制限していませんので、当該職員は所轄以外でも調査はできるものと思われます。
しかし、一方、調査による更正又は決定は、原則、納税者の納税地を所轄する税務署長以外はできません。ですので、当該職員が所轄以外の納税者又は無申告者を調査して、非違事項を認定しても当該職員の税務署長は「更正」又は「決定」はできませんので、事実上、所轄以外での調査はあり得ないことになります。
◆例外的に納税地選択による決定等
当該職員が申告義務を疑って、無申告者の個人事業主の所轄内の事業所に調査に入り、申告義務有りと認定したところ、当該事業主の住所が所轄以外であることが判明した場合ですが、原則、住所が納税地ですので住所地での期限後申告を指導・勧奨することはできても、当該職員の税務署での期限後申告又は決定はできません。
この場合ですが、当該職員は、事業主に対し強制的ではありませんが、事業主が法律上の規定を熟知していないことをいいことに、当該職員の所轄する事業所を納税地とする申請書を提出させて、決定又は期限後申告を勧奨させることもあるようです。
個人の場合は、住所が納税地ですので、安易に調査官の指摘に従うことのないよう留意が必要です。
2014年10月27日月曜日
【時事解説】Google参入でスマホはどう変わるか
グーグルは現在、スマートフォンの開発に取り組んでいます。同社は検索エンジンなど、インターネットの常識を壊す、画期的なサービスを提供してきた会社です。今回も同様で、新しいスマートフォンは、業界の常識を根本から覆す可能性があります。
今回、グーグルが打ち出したコンセプトとは、「自作のスマートフォン」です。モジュールといわれる、レゴ(ブロック)を薄くしたような板をユーザー自身がベースフレーム(外枠)に載せて自分独自のスマートフォンをこしらえるというものです。
一つのモジュールには、スマートフォンに必要な機能(カメラ、メモリ、2次電池、センサーなど)を一つ備えています。
ユーザーは、利用の場面に応じてベースフレームに必要なモジュールを載せて使います。たとえば、旅行に行くときは、カメラを載せ、バッテリーを一つ多く載せる。旅行から帰り、家でゲームでもしながら過ごしたいといったときは、カメラを外し、ゲームに関するモジュールを載せる、といったことが可能になります。
これまでのスマートフォンや携帯電話は、通信事業者がメーカーと協力して、製品の機能を決めていました。開発にあたっては、少しでも数多く売るために、商品のターゲットとなるユーザーのニーズを把握し、ユーザーの最大公約数に合わせて、機能を決めることがよくあります。多めに機能を搭載すれば、それだけたくさんの人に買ってもらえるからです。
ところが、このようなスマートフォンはとかく機能が過剰になり、ユーザーにとって要らない機能がたくさん増えることになります。
スマートフォンは、ユーザーにより、使い方はさまざまです。音楽が好きな人もいれば、外に出て、風景を残しておきたいという人、あるいはビジネス用として、メールやスケジュール管理にのみ利用する人もいます。なかには、スマートフォンはLINEやフェイスブック、ツイッターなどのSNSができれば十分で、さほど機能や性能にはこだわらないという人もいます。
グーグルが開発する、「自作スマートフォン」は、ユーザーが必要と感じる機能だけを選べるので、操作がシンプルになり使い勝手がよくなります。加えて、不要な機能を落とすことで、価格も安くできます。実際、記者発表で、グーグルは価格について50ドル~だと公表していました。
とくに、注目したいのはグーグルの携帯電話は、スマートフォンのアプリ(アプリケーションソフト)のように、今後、モジュールが第三者により開発され発売されることが予想されます。結果、モジュールを開発し販売するという新しい市場が生まれる可能性もあります。
近年の製品開発は、携帯電話を開発して売るという単純なことだけではなく、一つの商品を開発することで、アプリやモジュールといった関連市場が生まれ、その市場にも利益が多く生まれるところに特徴があります。かつて、iPhoneがヒット商品になったときも、本体だけでなく、アプリや音楽の販売ストアなど、関連するソフトの市場が活性化しています。現代の商品開発は、メインとなる商品の機能や性能だけでなく、製品の周辺にどれだけ利益を生み出せる市場が誕生するか、こうした視点も重要になっています。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
今回、グーグルが打ち出したコンセプトとは、「自作のスマートフォン」です。モジュールといわれる、レゴ(ブロック)を薄くしたような板をユーザー自身がベースフレーム(外枠)に載せて自分独自のスマートフォンをこしらえるというものです。
一つのモジュールには、スマートフォンに必要な機能(カメラ、メモリ、2次電池、センサーなど)を一つ備えています。
ユーザーは、利用の場面に応じてベースフレームに必要なモジュールを載せて使います。たとえば、旅行に行くときは、カメラを載せ、バッテリーを一つ多く載せる。旅行から帰り、家でゲームでもしながら過ごしたいといったときは、カメラを外し、ゲームに関するモジュールを載せる、といったことが可能になります。
これまでのスマートフォンや携帯電話は、通信事業者がメーカーと協力して、製品の機能を決めていました。開発にあたっては、少しでも数多く売るために、商品のターゲットとなるユーザーのニーズを把握し、ユーザーの最大公約数に合わせて、機能を決めることがよくあります。多めに機能を搭載すれば、それだけたくさんの人に買ってもらえるからです。
ところが、このようなスマートフォンはとかく機能が過剰になり、ユーザーにとって要らない機能がたくさん増えることになります。
スマートフォンは、ユーザーにより、使い方はさまざまです。音楽が好きな人もいれば、外に出て、風景を残しておきたいという人、あるいはビジネス用として、メールやスケジュール管理にのみ利用する人もいます。なかには、スマートフォンはLINEやフェイスブック、ツイッターなどのSNSができれば十分で、さほど機能や性能にはこだわらないという人もいます。
グーグルが開発する、「自作スマートフォン」は、ユーザーが必要と感じる機能だけを選べるので、操作がシンプルになり使い勝手がよくなります。加えて、不要な機能を落とすことで、価格も安くできます。実際、記者発表で、グーグルは価格について50ドル~だと公表していました。
とくに、注目したいのはグーグルの携帯電話は、スマートフォンのアプリ(アプリケーションソフト)のように、今後、モジュールが第三者により開発され発売されることが予想されます。結果、モジュールを開発し販売するという新しい市場が生まれる可能性もあります。
近年の製品開発は、携帯電話を開発して売るという単純なことだけではなく、一つの商品を開発することで、アプリやモジュールといった関連市場が生まれ、その市場にも利益が多く生まれるところに特徴があります。かつて、iPhoneがヒット商品になったときも、本体だけでなく、アプリや音楽の販売ストアなど、関連するソフトの市場が活性化しています。現代の商品開発は、メインとなる商品の機能や性能だけでなく、製品の周辺にどれだけ利益を生み出せる市場が誕生するか、こうした視点も重要になっています。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
2014年10月24日金曜日
産学金官連携による中小企業支援
大企業に比べて経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)に制約がある中小企業においては、大学等の教育機関や公設試験研究機関などと連携を行う産学官連携が求められます。しかしながら、多くの中小企業は産学官連携の潜在的なニーズは認識しているものの、人材面、資金面での余裕のなさを理由として具体的な連携にまで踏み込めないのが実情です。
一方で、地域金融機関は中小企業に関する情報をもつとともに、地域との密接なネットワークを有しています。2003年3月に「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」が公表されたのを契機に多くの金融機関が産学官連携に対して支援の取り組みを開始しています。
このように、地域の金融機関が産学官連携推進に向けて積極的にサポートを行う、「産学金官連携」への期待が高まっています。地域金融機関においては、中小企業に対して資金供給などの金融面の支援を行うだけでなく、金融機関がもつネットワークや企業経営に関する知識を生かした情報面の支援も求められているのです。
一方で、金融機関が中小企業への連携支援を行ううえでは課題も存在します。ちゅうごく産業創造センターが2013年度に実施した調査によると、金融機関が連携支援に関わるうえでの課題として、①金融機関内部の推進体制の整備・拡充、②中小企業(取引先)との一層の関係構築、③大学とのネットワーク強化の必要性の3点をあげています。
では、地域金融機関が産学金官連携において中小企業支援を行うには、具体的にどのようなことが求められるのでしょうか。そこで、大阪信用金庫における中小企業支援の取組みについてみていきましょう。
大阪信用金庫では、金融庁が策定した「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」の要請を受け、2013年6月に「だいしん産学連携共創機構」を設立しました。これは同信金が地元中小企業と大学との橋渡し役となることを目的として設立されたものです。同機構には取引先の地元中小企業が会員企業として参加し、会員企業からの技術相談に応じるほか、会員企業と産学官連携協定を締結している大阪府立大学との間で新製品・新技術の開発による共同研究や研究シーズの交流などの支援を行っています。
大阪信用金庫では、大学との連携を強化し密接な中小企業支援を行うために同信金の職員を産学連携コーディネーターとして大阪府立大学に常駐派遣しています。このコーディネーターは、大学とのネットワークを活用しつつ会員企業の個別相談への対応を図っています。さらに2013年4月には、株式会社だいしん総合研究所を設立し中小企業へのコンサルティング機能の更なる充実を図っています。
このように地域金融機関が産学金官連携を推進しつつ中小企業支援を行うには、専門的な知識を持つ地域金融機関の職員が中小企業と大学等専門機関の「橋渡し役」となることに加え、経営トップ層のリーダーシップの下、大学も巻き込んだ組織的な対応が求められるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
一方で、地域金融機関は中小企業に関する情報をもつとともに、地域との密接なネットワークを有しています。2003年3月に「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」が公表されたのを契機に多くの金融機関が産学官連携に対して支援の取り組みを開始しています。
このように、地域の金融機関が産学官連携推進に向けて積極的にサポートを行う、「産学金官連携」への期待が高まっています。地域金融機関においては、中小企業に対して資金供給などの金融面の支援を行うだけでなく、金融機関がもつネットワークや企業経営に関する知識を生かした情報面の支援も求められているのです。
一方で、金融機関が中小企業への連携支援を行ううえでは課題も存在します。ちゅうごく産業創造センターが2013年度に実施した調査によると、金融機関が連携支援に関わるうえでの課題として、①金融機関内部の推進体制の整備・拡充、②中小企業(取引先)との一層の関係構築、③大学とのネットワーク強化の必要性の3点をあげています。
では、地域金融機関が産学金官連携において中小企業支援を行うには、具体的にどのようなことが求められるのでしょうか。そこで、大阪信用金庫における中小企業支援の取組みについてみていきましょう。
大阪信用金庫では、金融庁が策定した「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」の要請を受け、2013年6月に「だいしん産学連携共創機構」を設立しました。これは同信金が地元中小企業と大学との橋渡し役となることを目的として設立されたものです。同機構には取引先の地元中小企業が会員企業として参加し、会員企業からの技術相談に応じるほか、会員企業と産学官連携協定を締結している大阪府立大学との間で新製品・新技術の開発による共同研究や研究シーズの交流などの支援を行っています。
大阪信用金庫では、大学との連携を強化し密接な中小企業支援を行うために同信金の職員を産学連携コーディネーターとして大阪府立大学に常駐派遣しています。このコーディネーターは、大学とのネットワークを活用しつつ会員企業の個別相談への対応を図っています。さらに2013年4月には、株式会社だいしん総合研究所を設立し中小企業へのコンサルティング機能の更なる充実を図っています。
このように地域金融機関が産学金官連携を推進しつつ中小企業支援を行うには、専門的な知識を持つ地域金融機関の職員が中小企業と大学等専門機関の「橋渡し役」となることに加え、経営トップ層のリーダーシップの下、大学も巻き込んだ組織的な対応が求められるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年10月23日木曜日
わかりづらい税法用語 「生計を一にする」とは?
◆「生計(せいけい)を一(いつ)にする」
税務の話題の中で「生計を一にする」という表現をよく耳にすると思います。
これは、所得税法、法人税法、相続税法、租税特別措置法などの主要な法令の約40の条文に用いられる税法用語です。
特に所得税法では、雑損控除や医療費控除などの所得控除の要件を構成するとともに、控除対象配偶者、扶養親族などの定義規定、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例など約20の法令で使われます。
これほど頻繁に税法に登場する「生計を一にする」という用語ですが、実は具体的な定義を定めた規定はありません。
所得税基本通達などに、単身赴任者や生活費・学費の仕送りを受けている者は同一の家屋に起居していなくも「生計を一にする」として取扱うなどの、わずかな例が示されているのみで、実務でも判断に迷うものの一つとなっています。
◆消費段階で同一の財布のもとで生活
判例によれば、「生計を一にする」とは、日常生活の糧を共通にしていること、すなわち消費段階で同一の財布のもとで生活していることと解され、これを社会通念に照らして判断されることとなります。
この場合、同一の家屋で起居している親族が「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」という状況証拠が出てこない限りは、これらの親族は、通常は「共通の財布」で生活しているものと推定されます。
◆「明らかに互いに独立した生活」の判断
「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」のかどうかは、次のような事項を経済的側面と物理的側面の双方から総合的な見地で判断することになります。
(1)不動産登記の状況(区分所有の場合、独立性が高い)
(2)家賃等の支払いの有無
(3)生活費の負担の状況
(4)家屋の居住状況(玄関、台所、風呂が共有であったり、自由に往来が可能な構造であったりする場合には、独立性が低い)
(5)電気・ガス等のメーター設置状況、電話の使用状況
(6)住民票・国民健康保険上の世帯状況等
◆このような曖昧な概念なのに…
様々なライフスタイルが考えられる現代では「生計を一」の適用範囲も拡大化することが考えられますが、「生計を一にする」こととなったときに、納税者に有利となる規定ばかりでなく、不利となる規定もあるだけに、扱いづらいものとなっています。
税務の話題の中で「生計を一にする」という表現をよく耳にすると思います。
これは、所得税法、法人税法、相続税法、租税特別措置法などの主要な法令の約40の条文に用いられる税法用語です。
特に所得税法では、雑損控除や医療費控除などの所得控除の要件を構成するとともに、控除対象配偶者、扶養親族などの定義規定、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例など約20の法令で使われます。
これほど頻繁に税法に登場する「生計を一にする」という用語ですが、実は具体的な定義を定めた規定はありません。
所得税基本通達などに、単身赴任者や生活費・学費の仕送りを受けている者は同一の家屋に起居していなくも「生計を一にする」として取扱うなどの、わずかな例が示されているのみで、実務でも判断に迷うものの一つとなっています。
◆消費段階で同一の財布のもとで生活
判例によれば、「生計を一にする」とは、日常生活の糧を共通にしていること、すなわち消費段階で同一の財布のもとで生活していることと解され、これを社会通念に照らして判断されることとなります。
この場合、同一の家屋で起居している親族が「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」という状況証拠が出てこない限りは、これらの親族は、通常は「共通の財布」で生活しているものと推定されます。
◆「明らかに互いに独立した生活」の判断
「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」のかどうかは、次のような事項を経済的側面と物理的側面の双方から総合的な見地で判断することになります。
(1)不動産登記の状況(区分所有の場合、独立性が高い)
(2)家賃等の支払いの有無
(3)生活費の負担の状況
(4)家屋の居住状況(玄関、台所、風呂が共有であったり、自由に往来が可能な構造であったりする場合には、独立性が低い)
(5)電気・ガス等のメーター設置状況、電話の使用状況
(6)住民票・国民健康保険上の世帯状況等
◆このような曖昧な概念なのに…
様々なライフスタイルが考えられる現代では「生計を一」の適用範囲も拡大化することが考えられますが、「生計を一にする」こととなったときに、納税者に有利となる規定ばかりでなく、不利となる規定もあるだけに、扱いづらいものとなっています。
2014年10月20日月曜日
ふるさと納税で「お礼」合戦が過熱
生まれ故郷や応援する自治体に寄付をすることで、自分の住む自治体で所得税や個人住民税の税額控除を受けられる「ふるさと納税制度」の「お礼」合戦が過熱しています。
この制度は納税者が思い入れのある自治体に寄付の形で貢献でき、その結果、地方間の税収格差が是正できるとしてスタートしました。寄付をしてくれた人に特産品など「お礼」を贈る自治体が多いことから、納税者の間で認知度が高まっています。
こうした状況下で京都・宮津市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上寄付した人に対して、日本三景の一つである天橋立を臨む住宅分譲地を無償譲渡する制度を設けました。しかし、総務省から「土地の譲渡は『特別の利益』に当たり、寄付者が税控除を受けられない可能性がある」と指摘を受けたため、その制度の中止を9月下旬に発表しました。
市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上の寄付をした人に750万円相当の住宅分譲地を「お礼」としてプレゼントするサービスを始めようとしていたのですが、所得税法では「寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの」については寄付金としての税控除を受けられないと定められていて、「土地」は高額での換金が可能であることから特典の範囲を逸脱するかもしれないとの指摘を受けました。
一定額以上の寄付に応じてその土地の特産品を贈ることにしている自治体は多く、その種類は肉や米などの食材からイベントチケットや温泉旅館の優待券まで多岐にわたります。利用者が増えるにつれて特典も高額化の傾向にあります。300万円以上の寄付を対象にブランド牛1頭分の牛肉をプレゼントする自治体も登場しました。これによって「持つ地方」と「持たざる地方」の新たな税収格差が生まれる可能性も否定できません。
特典について総務省に名指しで指摘を受けたのは今回の宮津市が初めてですが、自治体による「お礼」合戦の過熱化を懸念する声は各所から挙がっています。
この制度は納税者が思い入れのある自治体に寄付の形で貢献でき、その結果、地方間の税収格差が是正できるとしてスタートしました。寄付をしてくれた人に特産品など「お礼」を贈る自治体が多いことから、納税者の間で認知度が高まっています。
こうした状況下で京都・宮津市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上寄付した人に対して、日本三景の一つである天橋立を臨む住宅分譲地を無償譲渡する制度を設けました。しかし、総務省から「土地の譲渡は『特別の利益』に当たり、寄付者が税控除を受けられない可能性がある」と指摘を受けたため、その制度の中止を9月下旬に発表しました。
市は、ふるさと納税制度を利用して1千万円以上の寄付をした人に750万円相当の住宅分譲地を「お礼」としてプレゼントするサービスを始めようとしていたのですが、所得税法では「寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの」については寄付金としての税控除を受けられないと定められていて、「土地」は高額での換金が可能であることから特典の範囲を逸脱するかもしれないとの指摘を受けました。
一定額以上の寄付に応じてその土地の特産品を贈ることにしている自治体は多く、その種類は肉や米などの食材からイベントチケットや温泉旅館の優待券まで多岐にわたります。利用者が増えるにつれて特典も高額化の傾向にあります。300万円以上の寄付を対象にブランド牛1頭分の牛肉をプレゼントする自治体も登場しました。これによって「持つ地方」と「持たざる地方」の新たな税収格差が生まれる可能性も否定できません。
特典について総務省に名指しで指摘を受けたのは今回の宮津市が初めてですが、自治体による「お礼」合戦の過熱化を懸念する声は各所から挙がっています。
2014年10月18日土曜日
「法人税減税に対する企業の意識調査」結果を公表!
帝国データバンクは、「法人税減税に対する企業の意識調査」結果(有効回答数1万571社)を公表しました。
それによりますと、法人課税の実効税率が20%台まで引き下げられた場合、減税分の使い道として最も可能性が高い項目を尋ねたところ、「内部留保」が20.5%で最も高く、「社員に還元」17.3%、「人員の増強」14.0%となり、人的投資に使うとする企業は合わせて3割を超えました。
また、「設備投資の増強」14.9%と「研究開発投資の拡大」5.1%を合わせますと20.0%が資本投資に使用すると回答し、「人的投資」と「資本投資」の合計で5割超となり、半数超の企業が前向きで積極的な投資を想定していることが分かりました。
前回調査時(2013年9月)と比べますと、積極投資を行う企業は1.8ポイント増加し、「人員の増強」(前回12.4%)と「社員に還元」(同16.1%)といった人的投資に充てると考える企業が増加しました。
また、「設備投資の増強」と回答した企業が想定する設備投資額の増加額については、「1,000万円~5,000万円未満」が34.0%で最多、次いで、「1,000万円未満」(24.1%)、「1億円以上」(18.4%)、「5,000万円~1億円未満」(14.7%)と続きました。
設備投資の増強を考えている企業では、平均4,353万円の設備投資が見込まれており、帝国データバンクでは、法人税減税による企業の設備投資は総額で6.2兆円増加すると推計しております。
一方、法人税減税の代替財源として議論の俎上にあがっている「外形標準課税の拡大」については反対が41.0%、「租税特別措置の見直し」と「税制優遇措置の段階的縮小」は賛成が、それぞれ40.8%、43.3%となりました。
租税特別措置や税制優遇措置の見直しに賛成している企業に限定しますと、外形標準課税の拡大にも賛成する企業は、4割近くに達しており、特に大企業でその傾向が強くなっております。
それによりますと、法人課税の実効税率が20%台まで引き下げられた場合、減税分の使い道として最も可能性が高い項目を尋ねたところ、「内部留保」が20.5%で最も高く、「社員に還元」17.3%、「人員の増強」14.0%となり、人的投資に使うとする企業は合わせて3割を超えました。
また、「設備投資の増強」14.9%と「研究開発投資の拡大」5.1%を合わせますと20.0%が資本投資に使用すると回答し、「人的投資」と「資本投資」の合計で5割超となり、半数超の企業が前向きで積極的な投資を想定していることが分かりました。
前回調査時(2013年9月)と比べますと、積極投資を行う企業は1.8ポイント増加し、「人員の増強」(前回12.4%)と「社員に還元」(同16.1%)といった人的投資に充てると考える企業が増加しました。
また、「設備投資の増強」と回答した企業が想定する設備投資額の増加額については、「1,000万円~5,000万円未満」が34.0%で最多、次いで、「1,000万円未満」(24.1%)、「1億円以上」(18.4%)、「5,000万円~1億円未満」(14.7%)と続きました。
設備投資の増強を考えている企業では、平均4,353万円の設備投資が見込まれており、帝国データバンクでは、法人税減税による企業の設備投資は総額で6.2兆円増加すると推計しております。
一方、法人税減税の代替財源として議論の俎上にあがっている「外形標準課税の拡大」については反対が41.0%、「租税特別措置の見直し」と「税制優遇措置の段階的縮小」は賛成が、それぞれ40.8%、43.3%となりました。
租税特別措置や税制優遇措置の見直しに賛成している企業に限定しますと、外形標準課税の拡大にも賛成する企業は、4割近くに達しており、特に大企業でその傾向が強くなっております。
2014年10月15日水曜日
平成27年からの贈与税計算 「特例贈与財産」とは
◆平成27年からは「特例贈与」と「一般贈与」
平成27年からは相続税・贈与税の税制がガラリと変わります。
相続税は小規模宅地等の特例制度が拡充されるとはいえ、基礎控除額の引き下げ・税率改定と課税強化の方向が鮮明です。
一方、贈与税は最高税率を引き上げつつも、世代間の早期の資産移転を図るため、「特例贈与」(その年1月1日において20歳以上の者が直系尊属から受けた贈与)により取得した財産(「特例贈与財産」)には、「特例贈与」でない贈与により取得した財産(「一般贈与財産」)よりも、緩和した税率が適用されることになりました。
◆平成27年からの贈与税の速算表
そのため、平成27年からの贈与については、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の2種類の速算法が用いられます。
【H27.1.1以後の贈与 一般贈与財産用】
①200万円以下 10%(控除額)なし
②300万円以下 15%(控除額)10万円
③400万円以下 20%(控除額)25万円
④600万円以下 30%(控除額)65万円
⑤1,000万円以下 40%(控除額)125万円
⑥1,500万円以下 45%(控除額)175万円
⑦3,000万円以下 50%(控除額)250万円
⑧3,000万円超 55%(控除額)400万円
【H27.1.1以後の贈与 特例贈与財産用】
①200万円以下 10%(控除額)なし
②400万円以下 15%(控除額)10万円
③600万円以下 20%(控除額)30万円
④1,000万円以下 30%(控除額)90万円
⑤1,500万円以下 40%(控除額)190万円
⑥3,000万円以下 45%(控除額)265万円
⑦4,500万円以下 50%(控除額)415万円
⑧4,500万円超 55%(控除額)640万円
◆同一年で「特例」・「一般」がある場合
また、同じ年で「一般贈与財産」と「特例贈与財産」を取得する場合には、贈与税額の計算は次のとおりとなります。
(1) 合計贈与価額
一般贈与財産の価額+特例贈与財産の価額
(2) (1)-基礎控除110万円
(3) (2)×一般税率×(一般贈与財産の価額/合計贈与価額)
(4) (2)×特例税率×(特例贈与財産の価額/合計贈与価額)
(5) (3)+(4)=納付税額
平成27年からは相続税・贈与税の税制がガラリと変わります。
相続税は小規模宅地等の特例制度が拡充されるとはいえ、基礎控除額の引き下げ・税率改定と課税強化の方向が鮮明です。
一方、贈与税は最高税率を引き上げつつも、世代間の早期の資産移転を図るため、「特例贈与」(その年1月1日において20歳以上の者が直系尊属から受けた贈与)により取得した財産(「特例贈与財産」)には、「特例贈与」でない贈与により取得した財産(「一般贈与財産」)よりも、緩和した税率が適用されることになりました。
◆平成27年からの贈与税の速算表
そのため、平成27年からの贈与については、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の2種類の速算法が用いられます。
【H27.1.1以後の贈与 一般贈与財産用】
①200万円以下 10%(控除額)なし
②300万円以下 15%(控除額)10万円
③400万円以下 20%(控除額)25万円
④600万円以下 30%(控除額)65万円
⑤1,000万円以下 40%(控除額)125万円
⑥1,500万円以下 45%(控除額)175万円
⑦3,000万円以下 50%(控除額)250万円
⑧3,000万円超 55%(控除額)400万円
【H27.1.1以後の贈与 特例贈与財産用】
①200万円以下 10%(控除額)なし
②400万円以下 15%(控除額)10万円
③600万円以下 20%(控除額)30万円
④1,000万円以下 30%(控除額)90万円
⑤1,500万円以下 40%(控除額)190万円
⑥3,000万円以下 45%(控除額)265万円
⑦4,500万円以下 50%(控除額)415万円
⑧4,500万円超 55%(控除額)640万円
◆同一年で「特例」・「一般」がある場合
また、同じ年で「一般贈与財産」と「特例贈与財産」を取得する場合には、贈与税額の計算は次のとおりとなります。
(1) 合計贈与価額
一般贈与財産の価額+特例贈与財産の価額
(2) (1)-基礎控除110万円
(3) (2)×一般税率×(一般贈与財産の価額/合計贈与価額)
(4) (2)×特例税率×(特例贈与財産の価額/合計贈与価額)
(5) (3)+(4)=納付税額
2014年10月11日土曜日
【時事解説】捨てる勇気
会社経営では他社にはない強みを持つことが重要です。
その強みが競合他社を引き離す武器になり、超過利潤を生みだすからです。
しかし、時代が変わると、その強みがかえって経営変革の足枷になり、苦境の原因となることがあります。
通常の経営では強みを強化することが求められますが、場合によっては強みを捨て去る勇気も必要となるのです。
携帯音楽プレーヤーの開発に関するアップルとソニーから、その教訓を読み取ってみましょう。
ジョブズは自らが創業したアップルからいったんは追い出されますが、売り上げが伸びず破産寸前になったアップルに呼び戻されます。
ジョブズは復帰後ヒット製品を連発し、瀕死の会社を救い出します。
その中にあって、アップル復活を決定づけたのはiPodの販売です。
iPodはソニーのウォークマンのような携帯音楽プレーヤーとしての単なるハード製品ではありません。
iPodのすごいところはiTunesで楽曲をダウンロードして取り込めるところにあります。
ハードとソフトが一体となって音楽聴取方法を変革し、大ブームを引き起こしたのです。
しかし、こうした製品を考えたのはジョブズが最初ではありません。
音楽関係者の中には少なからず同様な発想を持った人はいたのだそうです。
その中でも音楽のハードとソフトを一体として開発できると見られていた最有力な会社はソニーでした。
ソニーはどのような判断をしたのでしょうか。
ソニーはハードとして全世界を席巻した携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を持ち、ソニーミュージックやソニーピクチャーズといった有力な音楽、映画ソフト部門も所有していました。
音楽のハード部分とソフト部分を一体開発できる会社としてこれほど有力な経営資源を有する会社は他に見当たりません。
では、なぜソニーがiPodのような製品を開発できなかったのでしょうか。
その一つの大きな理由が「共食いを恐れた」からだというのです。
ウォークマンのようなハードも、音楽、映画ソフトも、それぞれがトップブランドとして世の中に受け入れられています。
ここで、iPodのような画期的製品を発売すれば、iPodは売れるかもしれませんが、間違いなく音楽CDの売り上げは減少します。
これまで会社を支えてきた貴重な収益源が失われてしまうから新製品開発に踏み切れなかった、というのです。
ジョブズのモットーは「共食いを恐れるな」です。
既存の自社製品の売り上げの減少を恐れて、新製品の開発を控えても、その新製品は必ず他社が開発する。
ジョブズはこう言います。
「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」
強力な長所を持つ会社ほど時代の流れに取り残されることが往々にしてあります。
時代の変化によってはかつての強みが弱みに変わることがあるのです。
いつまでも過去の強みに安住していてはいけません。
時代の変化を素早く読み取り、不要の強みを捨て去る勇気が必要なことをジョブズは教えてくれています。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
その強みが競合他社を引き離す武器になり、超過利潤を生みだすからです。
しかし、時代が変わると、その強みがかえって経営変革の足枷になり、苦境の原因となることがあります。
通常の経営では強みを強化することが求められますが、場合によっては強みを捨て去る勇気も必要となるのです。
携帯音楽プレーヤーの開発に関するアップルとソニーから、その教訓を読み取ってみましょう。
ジョブズは自らが創業したアップルからいったんは追い出されますが、売り上げが伸びず破産寸前になったアップルに呼び戻されます。
ジョブズは復帰後ヒット製品を連発し、瀕死の会社を救い出します。
その中にあって、アップル復活を決定づけたのはiPodの販売です。
iPodはソニーのウォークマンのような携帯音楽プレーヤーとしての単なるハード製品ではありません。
iPodのすごいところはiTunesで楽曲をダウンロードして取り込めるところにあります。
ハードとソフトが一体となって音楽聴取方法を変革し、大ブームを引き起こしたのです。
しかし、こうした製品を考えたのはジョブズが最初ではありません。
音楽関係者の中には少なからず同様な発想を持った人はいたのだそうです。
その中でも音楽のハードとソフトを一体として開発できると見られていた最有力な会社はソニーでした。
ソニーはどのような判断をしたのでしょうか。
ソニーはハードとして全世界を席巻した携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を持ち、ソニーミュージックやソニーピクチャーズといった有力な音楽、映画ソフト部門も所有していました。
音楽のハード部分とソフト部分を一体開発できる会社としてこれほど有力な経営資源を有する会社は他に見当たりません。
では、なぜソニーがiPodのような製品を開発できなかったのでしょうか。
その一つの大きな理由が「共食いを恐れた」からだというのです。
ウォークマンのようなハードも、音楽、映画ソフトも、それぞれがトップブランドとして世の中に受け入れられています。
ここで、iPodのような画期的製品を発売すれば、iPodは売れるかもしれませんが、間違いなく音楽CDの売り上げは減少します。
これまで会社を支えてきた貴重な収益源が失われてしまうから新製品開発に踏み切れなかった、というのです。
ジョブズのモットーは「共食いを恐れるな」です。
既存の自社製品の売り上げの減少を恐れて、新製品の開発を控えても、その新製品は必ず他社が開発する。
ジョブズはこう言います。
「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」
強力な長所を持つ会社ほど時代の流れに取り残されることが往々にしてあります。
時代の変化によってはかつての強みが弱みに変わることがあるのです。
いつまでも過去の強みに安住していてはいけません。
時代の変化を素早く読み取り、不要の強みを捨て去る勇気が必要なことをジョブズは教えてくれています。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
2014年10月10日金曜日
東京都:固定資産税等の「みなす課税」を実施!
東京都は、すでに2014年度の固定資産税・都市計画税の納税通知書を発送済みですが、その中で都内の一部納税者に対し「みなす課税」を実施していることが分かりました。
みなす課税とは、地方税法に定められた土地区画整理事業を執行している市区町村で適用される課税の仕組みで、各地で実施されております。
原則、固定資産の所有者は、毎年1月1日現在の登記簿や土地補充課税台帳、家屋補充課税台帳に所有者として登記、登録されている人ですが、土地区画整理事業等の施行中の土地で、仮換地等の指定があった場合や仮使用地がある場合には、それらを使用・収益することができることとなった日から換地処分の公告がある日や換地計画の認可の公告がある日までの間は、以下の者を所有者とみなすことができるとしております。
①仮換地等にあっては、その仮換地等に対応する従前の土地について登記簿・土地補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者
②仮使用地にあっては、土地区画整理法による土地区画整理事業の施行者以外の仮使用地の使用者、を所有者とみなすことができるとされている。
したがいまして、これら仮換地等について、みなす所有者に対して課税される場合があります。
また、換地処分・換地計画の認可の公告があった日から換地・保留地を取得した者が登記簿にその所有者として登記される日までの間は、その換地・保留地を取得した者をもってその所有者としてみなすことができます。
なお、みなす所有者に対して課税されるまでの間は、従前の土地の使用や収益の有無にかかわらず、仮換地等に対応する従前の土地について賦課期日現在の登記簿等に所有者として登記等されている人に対して課税されます。
つまり、土地区画整理事業等は、従前の所有土地について区画や形質の変更をともなうため、事業執行期間中は登記簿に登録された内容と異なる使用実態になります。
今回、東京都のみなす課税の対象となったのは、練馬区土支田中央地区、足立区上沼田南地区・佐野六木地区・花畑北部地区、葛飾区南水元地区、江戸川区篠崎駅東部地区・西部地区、瑞江駅西部地区の4区8地区で、これら地域の詳細は、東京都HPで確認できます。
みなす課税とは、地方税法に定められた土地区画整理事業を執行している市区町村で適用される課税の仕組みで、各地で実施されております。
原則、固定資産の所有者は、毎年1月1日現在の登記簿や土地補充課税台帳、家屋補充課税台帳に所有者として登記、登録されている人ですが、土地区画整理事業等の施行中の土地で、仮換地等の指定があった場合や仮使用地がある場合には、それらを使用・収益することができることとなった日から換地処分の公告がある日や換地計画の認可の公告がある日までの間は、以下の者を所有者とみなすことができるとしております。
①仮換地等にあっては、その仮換地等に対応する従前の土地について登記簿・土地補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者
②仮使用地にあっては、土地区画整理法による土地区画整理事業の施行者以外の仮使用地の使用者、を所有者とみなすことができるとされている。
したがいまして、これら仮換地等について、みなす所有者に対して課税される場合があります。
また、換地処分・換地計画の認可の公告があった日から換地・保留地を取得した者が登記簿にその所有者として登記される日までの間は、その換地・保留地を取得した者をもってその所有者としてみなすことができます。
なお、みなす所有者に対して課税されるまでの間は、従前の土地の使用や収益の有無にかかわらず、仮換地等に対応する従前の土地について賦課期日現在の登記簿等に所有者として登記等されている人に対して課税されます。
つまり、土地区画整理事業等は、従前の所有土地について区画や形質の変更をともなうため、事業執行期間中は登記簿に登録された内容と異なる使用実態になります。
今回、東京都のみなす課税の対象となったのは、練馬区土支田中央地区、足立区上沼田南地区・佐野六木地区・花畑北部地区、葛飾区南水元地区、江戸川区篠崎駅東部地区・西部地区、瑞江駅西部地区の4区8地区で、これら地域の詳細は、東京都HPで確認できます。
2014年10月8日水曜日
信託協会:「相続に関する意識調査」結果を公表!
信託協会は、40歳以上の子供がいる既婚者を対象に実施した「相続に関する意識調査」結果を公表しました。
それによりますと、「相続税改正」の認知度が5割であるのに対し、「贈与税改正」の認知度は3割を下回ったことが分かりました。
調査結果(有効回答数3,927人)によりますと、相続財産を「受け取る可能性がある」人は全体の45.2%と半数に近く、男女ともに40代、50代ではその割合が6~7割となりました。ただし、「受け取る可能性がある」人で、対策を「してもらっている」人は19.9%となりました。
具体的な相続対策は、「生前における定期的・計画的な贈与」が62.4%で最も多く、次いで「生命保険の活用」(25.7%)、「遺言書の作成」(25.5%)などが続きました。
相続対策をしてもらっている人は、約2割ですが、「受け取る可能性がある」人の50.9%は「相続対策の必要性を感じている」と回答しております。
そして、必要な対策として43.3%が「遺言書の作成」を挙げております。
同様に、必要な対策として「納税資金の確保」を挙げている人が26.0%いますが、具体的な対策で「納税資金の確保」をしてもらっている人は8.8%となっております。
2015年1月から課税強化される「相続税改正」を「知っている」との回答は50.9%、課税が緩和される「贈与税改正」の認知度は27.3%となりました。
また、「教育資金贈与税非課税制度」(2015年12月31日まで)については、「知っていた」との回答が56.3%となりました。
認知度が5割を超えた「教育資金贈与税非課税制度」ですが、「今後の利用意向」では全体で41.9%となり、40代では男(57.7%)女(57.6%)でした。
制度を利用した(したい)理由としては、「より良い教育を受けさせてあげたい」(42.0%)、「金銭面で希望する進学を諦めさせたくない」(39.9%)、「贈与税の優遇措置が受けられる」(35.4%)などが上位となりました。
今後の動向に注目です。
それによりますと、「相続税改正」の認知度が5割であるのに対し、「贈与税改正」の認知度は3割を下回ったことが分かりました。
調査結果(有効回答数3,927人)によりますと、相続財産を「受け取る可能性がある」人は全体の45.2%と半数に近く、男女ともに40代、50代ではその割合が6~7割となりました。ただし、「受け取る可能性がある」人で、対策を「してもらっている」人は19.9%となりました。
具体的な相続対策は、「生前における定期的・計画的な贈与」が62.4%で最も多く、次いで「生命保険の活用」(25.7%)、「遺言書の作成」(25.5%)などが続きました。
相続対策をしてもらっている人は、約2割ですが、「受け取る可能性がある」人の50.9%は「相続対策の必要性を感じている」と回答しております。
そして、必要な対策として43.3%が「遺言書の作成」を挙げております。
同様に、必要な対策として「納税資金の確保」を挙げている人が26.0%いますが、具体的な対策で「納税資金の確保」をしてもらっている人は8.8%となっております。
2015年1月から課税強化される「相続税改正」を「知っている」との回答は50.9%、課税が緩和される「贈与税改正」の認知度は27.3%となりました。
また、「教育資金贈与税非課税制度」(2015年12月31日まで)については、「知っていた」との回答が56.3%となりました。
認知度が5割を超えた「教育資金贈与税非課税制度」ですが、「今後の利用意向」では全体で41.9%となり、40代では男(57.7%)女(57.6%)でした。
制度を利用した(したい)理由としては、「より良い教育を受けさせてあげたい」(42.0%)、「金銭面で希望する進学を諦めさせたくない」(39.9%)、「贈与税の優遇措置が受けられる」(35.4%)などが上位となりました。
今後の動向に注目です。
2014年10月6日月曜日
減給処分はどこまでできるか
◆問題社員を減給したい
従業員が会社で不祥事を起こし、その人に減給の制裁を課す場合、どの程度の範囲で減給額を決めるのでしょうか。労働基準法第91条は「就業規則で、減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1日の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」と規定しています。「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」とは1回の精算事案に対する減給額は平均賃金の1日分の半額以内でなければならないと言う意味です。
又、「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは1賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額がその月の賃金支払期における賃金の10分の1以内でなければならないと言う意味です。すなわち1賃金支払期(通常は1ヶ月)のうちに従業員が何回も減給制裁に当たる行為を行い、減給額が多額にわたる場合でも、その月の賃金からの減給額はその月の賃金総額の10分の1の範囲内に留めなくてはならないと言う事になります。
◆違法行為が1つなら1日分の半額まで
労働者の制裁に当たる行為が1つである限り非違行為(非行、違法行為)が重大なものであっても減給額はあくまでも平均賃金の1日の半額以下に留めておく必要があります。平均賃金とはその算定事由が発生した直前の賃金締切日以前3ヶ月間の賃金の総額を総日数で除した額を言います。
◆減額処分が軽いと感じる時は
労働者の非違行為が重大なものでも平均賃金の1日分の半額しか減給できないのは納得しがたいと言う考え方もあります。労働基準法は従業員を働かせながら受け取る権利のある賃金からの減給処分は第91条の範囲に留めましょうと言う趣旨であり、その減給額では少なすぎると言うことであれば他の処分を併せて行うことになります。就業規則に例えば出勤停止期間等が規定されていればそちらも併せて行うことも考えられます。減給の制裁は他の処分までも禁じている訳ではありません。
従業員が会社で不祥事を起こし、その人に減給の制裁を課す場合、どの程度の範囲で減給額を決めるのでしょうか。労働基準法第91条は「就業規則で、減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1日の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」と規定しています。「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」とは1回の精算事案に対する減給額は平均賃金の1日分の半額以内でなければならないと言う意味です。
又、「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは1賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額がその月の賃金支払期における賃金の10分の1以内でなければならないと言う意味です。すなわち1賃金支払期(通常は1ヶ月)のうちに従業員が何回も減給制裁に当たる行為を行い、減給額が多額にわたる場合でも、その月の賃金からの減給額はその月の賃金総額の10分の1の範囲内に留めなくてはならないと言う事になります。
◆違法行為が1つなら1日分の半額まで
労働者の制裁に当たる行為が1つである限り非違行為(非行、違法行為)が重大なものであっても減給額はあくまでも平均賃金の1日の半額以下に留めておく必要があります。平均賃金とはその算定事由が発生した直前の賃金締切日以前3ヶ月間の賃金の総額を総日数で除した額を言います。
◆減額処分が軽いと感じる時は
労働者の非違行為が重大なものでも平均賃金の1日分の半額しか減給できないのは納得しがたいと言う考え方もあります。労働基準法は従業員を働かせながら受け取る権利のある賃金からの減給処分は第91条の範囲に留めましょうと言う趣旨であり、その減給額では少なすぎると言うことであれば他の処分を併せて行うことになります。就業規則に例えば出勤停止期間等が規定されていればそちらも併せて行うことも考えられます。減給の制裁は他の処分までも禁じている訳ではありません。
2014年10月4日土曜日
低迷する所得拡大促進税制の認知度
経済産業省の調査によると、平成25、26年度のいずれかで賃上げをし、かつ黒字となって法人税を納めた中小企業のうち、所得拡大促進税制を「知らなかった」と答えた企業が半数に上ることが分かりました。将来を見越して増員、賃上げに踏み切る企業が税額控除制度を見逃していたというのでは問題です。
経産省は国内の中小企業と小規模事業者3万社に対して6月にアンケートを実施。回答を寄せた1万380社の結果について発表しました。この中で、平成25年度または26年度のいずれかに賃上げをして、法人税を納付した企業は4964社(48%)。そのうち、所得拡大促進税制を利用した企業は全体で6.3%にとどまりました。
もっとも注目すべきは制度の認知度。100人超の企業では「利用した」と「知っていたが利用しなかった」を合わせると54.9%と、半数以上が少なくとも制度を「知っていた」ということになりますが、20人以下の企業では27.7%で3割にも満たないのです。さらに言えば、20人以下の企業では「知らなかった」に「分からない」を加えると72.3%の企業が、賃上げをして、かつ黒字であるにもかかわらず、本制度を知らず、もしくは理解しなかったため、控除を見逃して法人税を納めていたことになります。
所得拡大促進税制は、平成25年4月1日から28年3月31日までに始まる事業年度に一定条件のもと従業員への賃金を増額した企業は、その支給増加額の10%(中小企業は20%)が税額控除できる制度です。26年度改正で適用期限が平成30年3月末まで延長されました。
さらに、これまで雇用者給与等支給増加額(賃上げ額)の基準雇用者等給与支給額(給与)に対する割合は、26年度は「2%以上」に大幅に引き下げられました。これに加え、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を上回っていること、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を上回っていること――の3つが新しい条件です。
経産省は国内の中小企業と小規模事業者3万社に対して6月にアンケートを実施。回答を寄せた1万380社の結果について発表しました。この中で、平成25年度または26年度のいずれかに賃上げをして、法人税を納付した企業は4964社(48%)。そのうち、所得拡大促進税制を利用した企業は全体で6.3%にとどまりました。
もっとも注目すべきは制度の認知度。100人超の企業では「利用した」と「知っていたが利用しなかった」を合わせると54.9%と、半数以上が少なくとも制度を「知っていた」ということになりますが、20人以下の企業では27.7%で3割にも満たないのです。さらに言えば、20人以下の企業では「知らなかった」に「分からない」を加えると72.3%の企業が、賃上げをして、かつ黒字であるにもかかわらず、本制度を知らず、もしくは理解しなかったため、控除を見逃して法人税を納めていたことになります。
所得拡大促進税制は、平成25年4月1日から28年3月31日までに始まる事業年度に一定条件のもと従業員への賃金を増額した企業は、その支給増加額の10%(中小企業は20%)が税額控除できる制度です。26年度改正で適用期限が平成30年3月末まで延長されました。
さらに、これまで雇用者給与等支給増加額(賃上げ額)の基準雇用者等給与支給額(給与)に対する割合は、26年度は「2%以上」に大幅に引き下げられました。これに加え、雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を上回っていること、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を上回っていること――の3つが新しい条件です。
2014年10月3日金曜日
平成26年10月の税務
10/10
●9月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
10/15
●特別農業所得者への予定納税基準額等の通知
10/31
●8月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●2月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、5月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の7月、8月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(6月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第3期分)
●9月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
10/15
●特別農業所得者への予定納税基準額等の通知
10/31
●8月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●2月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、5月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の7月、8月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(6月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第3期分)
2014年9月30日火曜日
修繕費か取得価額か 外壁塗装等の工事費
所得税及び法人税において、賃貸ビル、事業用ビルの外壁塗装や室内の壁紙の張り替え等(以下、外壁塗装等)の工事費は、通常、修繕費として必要経費又は損金の額に算入されます。
◆事業供用後の外壁塗装等の処理
これら外壁塗装等は、通常、当該資産の価値の増加又は使用可能期間を延長させるものではなく、減価償却資産であればこそ生ずる、よごれ、さび、しみ、損傷等の現象を予防し、現状を維持することで、予定された機能を発揮させるための欠くことのできない、いわゆる機能の維持管理のための費用といえます。したがって、所得金額の計算上、金額の多寡にかかわらず、修繕費として処理されます。
◆事業供用時の外壁塗装等の処理
最近、中古ビル(賃貸ビル、事業用ビル)の市場が活況を呈しています。築15年程度を経過した中古ビルを購入し、事業の用に供するため外壁や室内をきれいにするために塗装、壁紙の張り替えをすることはよくあります。この場合の外壁塗装等は、無条件に修繕費として処理されるものなのかどうか気になるところです。
所得税、法人税では、購入した減価償却資産の取得価額は、次に掲げる①と②の金額の合計額と規定しています。
①当該資産の購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の価額
この規定からすると、中古ビルを取得し、それを事業の用に供するために支出した外壁塗装等の工事費は、修繕費ではなく、取得価額を構成すると考えられます。
◆悩ましい判断
現に事業の用に供されている賃貸ビルの取得にあたっての外壁塗装等の工事費については、微妙な問題を招来させます。このような場面に遭遇したときは、当該外壁塗装等の支出が取得価額を構成するか、それとも修繕費として処理されるかで課税所得に大きな影響を及ぼしますので、外壁塗装等の実施時期については、慎重な判断が求められます。
◆事業供用後の外壁塗装等の処理
これら外壁塗装等は、通常、当該資産の価値の増加又は使用可能期間を延長させるものではなく、減価償却資産であればこそ生ずる、よごれ、さび、しみ、損傷等の現象を予防し、現状を維持することで、予定された機能を発揮させるための欠くことのできない、いわゆる機能の維持管理のための費用といえます。したがって、所得金額の計算上、金額の多寡にかかわらず、修繕費として処理されます。
◆事業供用時の外壁塗装等の処理
最近、中古ビル(賃貸ビル、事業用ビル)の市場が活況を呈しています。築15年程度を経過した中古ビルを購入し、事業の用に供するため外壁や室内をきれいにするために塗装、壁紙の張り替えをすることはよくあります。この場合の外壁塗装等は、無条件に修繕費として処理されるものなのかどうか気になるところです。
所得税、法人税では、購入した減価償却資産の取得価額は、次に掲げる①と②の金額の合計額と規定しています。
①当該資産の購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
②当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の価額
この規定からすると、中古ビルを取得し、それを事業の用に供するために支出した外壁塗装等の工事費は、修繕費ではなく、取得価額を構成すると考えられます。
◆悩ましい判断
現に事業の用に供されている賃貸ビルの取得にあたっての外壁塗装等の工事費については、微妙な問題を招来させます。このような場面に遭遇したときは、当該外壁塗装等の支出が取得価額を構成するか、それとも修繕費として処理されるかで課税所得に大きな影響を及ぼしますので、外壁塗装等の実施時期については、慎重な判断が求められます。
2014年9月29日月曜日
メーカーが野菜を生産する時代の到来
ここ1~2年、東芝や富士通、パナソニックなど、大手エレクトロニクスメーカーが野菜の生産事業に参入するようになりました。パソコンや半導体チップと同じように、ホウレンソウやリーフレタス、ベビーリーフなどを育てて出荷するというものです。
なぜ、パソコンを製造しているメーカーが野菜を生産するのか、エレクトロニクス製品と野菜は全く関係のないもののようにみえます。ところが、野菜を生産する過程には、これまで電機メーカーが蓄積した技術が数多く応用されています。
まず、野菜は畑ではなく植物工場という専用の設備で育てられます。ここでは、LEDや蛍光灯により、野菜が光合成に必要な太陽光と同じ波長の光をあて成長を促します。また、夜の時間帯は照明を消して昼と夜も人工的に作り出すことで太陽光と同じように野菜が育ちます。東芝やパナソニックは照明事業を行なっており、植物工場にはLEDをはじめとする高い照明技術が応用されています。
加えて、半導体の技術も応用されています。富士通が福島県会津若松市に構築した植物工場は、もともとは半導体工場のクリーンルームでした。半導体のチップは、製造工程でほこりや汚れが混ざると良品にならないため、室内をきれいに保つことが必要とされています。
室内をクリーンに保つ技術は、菌の侵入を制限します。そのため、雑菌による傷みが少なく長期保存ができる野菜を育てることを可能にしています。また、雑菌がついていないため、野菜を洗わずに調理できる点もメリットです。ファミリーレストランなどの外食産業で、調理時間を少しでも短くしたいと考えている事業者のニーズを満たします。
植物工場は野菜生産の方法を大きく変えるものでもあります。一例を挙げると、室内で生産するので、天候に左右されることもなく、計画的に作物を生産できるようになります。これまで、台風や干ばつ、雪害などが起こると、野菜の価格が高騰し、消費者の生活に影響を及ぼしていました。
メーカーには製品を安定的に供給する生産管理の技術があります。植物工場では生産管理のノウハウを応用し、野菜の生産量が不足、あるいは過剰にならないように数量をコントロールしています。野菜の価格が安定すれば、農家はもとより、消費者にとっても大きなメリットを受けることができます。
ただし、電機メーカーの真の狙いは、農業に参入することではありません。現在、農業では、生産性向上が課題になっています。今回、メーカーは自ら野菜の生産をはじめることで、農業の現場が抱える課題を肌で感じることが可能になります。
そして、蓄積したノウハウをもとに植物工場のシステムをはじめとする、課題を解決するためのソリューションシステムを開発し農家へ販売することで、ソリューション事業の利益を伸ばすことが可能になります。
メーカーの植物工場、野菜生産の取り組みは、自社の技術や遊休設備を従来とはまったく異なる分野に応用することで、新たなビジネスが生まれることを示しています。とくに、植物工場は、第一次産業と第二次産業という、まったく異なった分野での融合により生じたビジネスです。今後はこうした別次の産業を組み合わせて、従来の自社製品とは異なるものを生みだすところにビジネスチャンスがあるといえます。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
なぜ、パソコンを製造しているメーカーが野菜を生産するのか、エレクトロニクス製品と野菜は全く関係のないもののようにみえます。ところが、野菜を生産する過程には、これまで電機メーカーが蓄積した技術が数多く応用されています。
まず、野菜は畑ではなく植物工場という専用の設備で育てられます。ここでは、LEDや蛍光灯により、野菜が光合成に必要な太陽光と同じ波長の光をあて成長を促します。また、夜の時間帯は照明を消して昼と夜も人工的に作り出すことで太陽光と同じように野菜が育ちます。東芝やパナソニックは照明事業を行なっており、植物工場にはLEDをはじめとする高い照明技術が応用されています。
加えて、半導体の技術も応用されています。富士通が福島県会津若松市に構築した植物工場は、もともとは半導体工場のクリーンルームでした。半導体のチップは、製造工程でほこりや汚れが混ざると良品にならないため、室内をきれいに保つことが必要とされています。
室内をクリーンに保つ技術は、菌の侵入を制限します。そのため、雑菌による傷みが少なく長期保存ができる野菜を育てることを可能にしています。また、雑菌がついていないため、野菜を洗わずに調理できる点もメリットです。ファミリーレストランなどの外食産業で、調理時間を少しでも短くしたいと考えている事業者のニーズを満たします。
植物工場は野菜生産の方法を大きく変えるものでもあります。一例を挙げると、室内で生産するので、天候に左右されることもなく、計画的に作物を生産できるようになります。これまで、台風や干ばつ、雪害などが起こると、野菜の価格が高騰し、消費者の生活に影響を及ぼしていました。
メーカーには製品を安定的に供給する生産管理の技術があります。植物工場では生産管理のノウハウを応用し、野菜の生産量が不足、あるいは過剰にならないように数量をコントロールしています。野菜の価格が安定すれば、農家はもとより、消費者にとっても大きなメリットを受けることができます。
ただし、電機メーカーの真の狙いは、農業に参入することではありません。現在、農業では、生産性向上が課題になっています。今回、メーカーは自ら野菜の生産をはじめることで、農業の現場が抱える課題を肌で感じることが可能になります。
そして、蓄積したノウハウをもとに植物工場のシステムをはじめとする、課題を解決するためのソリューションシステムを開発し農家へ販売することで、ソリューション事業の利益を伸ばすことが可能になります。
メーカーの植物工場、野菜生産の取り組みは、自社の技術や遊休設備を従来とはまったく異なる分野に応用することで、新たなビジネスが生まれることを示しています。とくに、植物工場は、第一次産業と第二次産業という、まったく異なった分野での融合により生じたビジネスです。今後はこうした別次の産業を組み合わせて、従来の自社製品とは異なるものを生みだすところにビジネスチャンスがあるといえます。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年9月25日木曜日
教育訓練給付金の給付拡大
◆介護職等の資格取得も使える
雇用保険の教育訓練給付は労働者や離職者が自ら費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講終了した場合、その費用の一部を支給するものです。
平成26年10月からの給付内容が拡大され、中長期的なキャリアアップ支援の為、厚労省が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座(医療福祉、技術系等)を受講した場合に給付金の割合が上がります。
◆給付金の引き上がる講座とは
次のうち資格試験の受験率及び合格率・就職率等の指定基準を満たす厚労省大臣が指定した講座で「専門実践教育訓練」と呼び現在の「一般教育訓練」と区別されます。
①業務独占資格は資格を持たず業務を行う事が法令で禁止されている資格で看護師や歯科衛生士等医療系資格や理美容、電気工事士、建築士、海技士等26種あります。
名称独占資格は資格をもたずに業務を行う事はできるがその名称の使用は法令で禁止されている資格で、保健師、栄養士、保育士、介護福祉士等8種類あります。これらの資格取得の為の訓練を目標とした養成施設の過程(それを受講する事で公的資格を得る、受験資格を得る等する事)の訓練期間は3年以内です。
②専門学校の職業実践専門課程は2年間で専修学校の専門課程のうち文部科学大臣が指定したものを受講した時。
③専門職大学院は訓練期間が2年から3年で高度専門職業人の養成を目的としています。
◆10月からの訓練給付金はどう変わる
一般教育訓練と専門実践教育訓練の2種類で金額や給付期間が違います。
一般教育訓練は従来通り受講者が支払った訓練経費の20%で上限は10万円、支給期間は最長1年間です。
専門実践教育訓練は訓練経費の40%、上限は年32万円、期間は原則2年で資格に繋がるときは最長3年になります。これの支給対象者は10月1日以降に初めて受講する場合、受講開始前までに通算して2年以上雇用保険に加入している人です。10月1日以降2回目以降の受給は前回の受講開始日から次の受講開始日までに通算して10年以上、雇用保険に加入していた人です。
雇用保険の教育訓練給付は労働者や離職者が自ら費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講終了した場合、その費用の一部を支給するものです。
平成26年10月からの給付内容が拡大され、中長期的なキャリアアップ支援の為、厚労省が専門的・実践的な教育訓練として指定した講座(医療福祉、技術系等)を受講した場合に給付金の割合が上がります。
◆給付金の引き上がる講座とは
次のうち資格試験の受験率及び合格率・就職率等の指定基準を満たす厚労省大臣が指定した講座で「専門実践教育訓練」と呼び現在の「一般教育訓練」と区別されます。
①業務独占資格は資格を持たず業務を行う事が法令で禁止されている資格で看護師や歯科衛生士等医療系資格や理美容、電気工事士、建築士、海技士等26種あります。
名称独占資格は資格をもたずに業務を行う事はできるがその名称の使用は法令で禁止されている資格で、保健師、栄養士、保育士、介護福祉士等8種類あります。これらの資格取得の為の訓練を目標とした養成施設の過程(それを受講する事で公的資格を得る、受験資格を得る等する事)の訓練期間は3年以内です。
②専門学校の職業実践専門課程は2年間で専修学校の専門課程のうち文部科学大臣が指定したものを受講した時。
③専門職大学院は訓練期間が2年から3年で高度専門職業人の養成を目的としています。
◆10月からの訓練給付金はどう変わる
一般教育訓練と専門実践教育訓練の2種類で金額や給付期間が違います。
一般教育訓練は従来通り受講者が支払った訓練経費の20%で上限は10万円、支給期間は最長1年間です。
専門実践教育訓練は訓練経費の40%、上限は年32万円、期間は原則2年で資格に繋がるときは最長3年になります。これの支給対象者は10月1日以降に初めて受講する場合、受講開始前までに通算して2年以上雇用保険に加入している人です。10月1日以降2回目以降の受給は前回の受講開始日から次の受講開始日までに通算して10年以上、雇用保険に加入していた人です。
2014年9月21日日曜日
若年層への資産移転策目白押し
出そろったばかりの各省庁の平成27年度税制改正要望には、祖父母・親世代の個人資産を次世代に譲り渡すための改正メニューがずらりと並んでいます。
資産移転の推進を目的に、住宅購入、株投資、教育、結婚、妊娠、出産、育児といったさまざまな場面で使える税優遇を取りそろえる構えです。銀行などで眠っている個人資産を何としてでも市場に回したいという国の意向がはっきりと見えます。
国土交通省は、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の延長・拡充を求めました。直系尊属から住宅取得目的の資金の贈与を受けた場合に一定額までは課税されないこの制度は、今年で期限切れになる予定でした。国交省は3年間の適用延長と、非課税枠の拡充(最大3千万円)を要望しています。
金融庁はNISA(少額投資非課税制度)について、現行の年間非課税枠の100万円から120万円への引き上げとともに、ジュニアNISAの創設を要望に盛り込んでいます。ジュニアNISAは、未成年者名義の口座で投資した株式や投信について、年間80万円までの投資分の運用益・配当金を最長5年間非課税にするもの。親や祖父母の資金拠出を想定して提言されていることからも、高齢者から未成年者への資産移転のきっかけのひとつになる政策と国が捉えていることが分かります。教育資金を一括贈与した場合の贈与税の非課税措置についても、金融庁は制度の恒久化と対象の拡充を求めています。
内閣府は金融庁とともに、資産移転に関わる税制を提案しました。信託などの機能を使って結婚や妊娠、出産、育児の費用を一括で子や孫に贈与した場合に一定額を非課税にするべきとしています。前述の教育資金一括贈与の特例と類似の制度といえそうです。また、内閣府単体で、子育てに必要な支出を所得税制上の控除対象にすることも要望しました。
資産移転の推進を目的に、住宅購入、株投資、教育、結婚、妊娠、出産、育児といったさまざまな場面で使える税優遇を取りそろえる構えです。銀行などで眠っている個人資産を何としてでも市場に回したいという国の意向がはっきりと見えます。
国土交通省は、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の延長・拡充を求めました。直系尊属から住宅取得目的の資金の贈与を受けた場合に一定額までは課税されないこの制度は、今年で期限切れになる予定でした。国交省は3年間の適用延長と、非課税枠の拡充(最大3千万円)を要望しています。
金融庁はNISA(少額投資非課税制度)について、現行の年間非課税枠の100万円から120万円への引き上げとともに、ジュニアNISAの創設を要望に盛り込んでいます。ジュニアNISAは、未成年者名義の口座で投資した株式や投信について、年間80万円までの投資分の運用益・配当金を最長5年間非課税にするもの。親や祖父母の資金拠出を想定して提言されていることからも、高齢者から未成年者への資産移転のきっかけのひとつになる政策と国が捉えていることが分かります。教育資金を一括贈与した場合の贈与税の非課税措置についても、金融庁は制度の恒久化と対象の拡充を求めています。
内閣府は金融庁とともに、資産移転に関わる税制を提案しました。信託などの機能を使って結婚や妊娠、出産、育児の費用を一括で子や孫に贈与した場合に一定額を非課税にするべきとしています。前述の教育資金一括贈与の特例と類似の制度といえそうです。また、内閣府単体で、子育てに必要な支出を所得税制上の控除対象にすることも要望しました。
2014年9月16日火曜日
配偶者の受給する各種の出産子育て期支給金と課税関係
◆配偶者の受給する雇用保険
配偶者が退職により雇用保険金を受給している場合、この金銭給付は配偶者の所得としては雇用保険法で非課税とされているので、配偶者控除の判定においても、合計所得金額に含める必要はありません。
◆配偶者の受給する出産育児一時金
配偶者の出産に際し、健康保険から支給される出産育児一時金は、健康保険法で非課税とされていますので、配偶者本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、合計所得金額に含める必要はありませんが、医療費控除の額の計算では、医療費を補填する保険金等に該当することになるので、医療費から差し引かなければなりません。
◆配偶者の受給する出産手当金
出産に際して受ける産前産後休暇の給与補填金としての出産手当金も同じく健康保険法で非課税とされていますので、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、所得とはしませんが、医療費の補填を目的とするものではないので医療費から差し引く金額ともされません。
◆配偶者の受給する出産助成金その1
市町村等の自治体から、住民の妊娠及び出産に対し、出産助成金が支給されることがあります。妊娠及び出産に係る費用の一部を支援することを目的とするものは、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、非課税所得となりますが、医療費控除の額の計算では、医療費から差し引くものに該当します。
◆配偶者の受給する出産助成金その2
しかし、その出産助成金が妊娠及び出生の祝儀目的のものは、医療費控除の額の計算上医療費から差し引く金額とはされません。ただし、これを非課税とする法令がないことから、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定においては、非課税所得にはなりません。所得の分類としては、一時性の所得であるとともに公法人からの収入でもあるので、一時所得に該当します。
◆配偶者の受給する休業給付金・児童手当
育児のために休業給付金の支給を受けている場合、この給付金は雇用保険法で非課税とされています。また、子育てのために児童手当・児童扶養手当の支給を受けている場合、この給付金は児童手当法・児童扶養手当法で非課税とされています。従って、これらの給付金は、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定上、合計所得金額に含める必要がありません。
配偶者が退職により雇用保険金を受給している場合、この金銭給付は配偶者の所得としては雇用保険法で非課税とされているので、配偶者控除の判定においても、合計所得金額に含める必要はありません。
◆配偶者の受給する出産育児一時金
配偶者の出産に際し、健康保険から支給される出産育児一時金は、健康保険法で非課税とされていますので、配偶者本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、合計所得金額に含める必要はありませんが、医療費控除の額の計算では、医療費を補填する保険金等に該当することになるので、医療費から差し引かなければなりません。
◆配偶者の受給する出産手当金
出産に際して受ける産前産後休暇の給与補填金としての出産手当金も同じく健康保険法で非課税とされていますので、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、所得とはしませんが、医療費の補填を目的とするものではないので医療費から差し引く金額ともされません。
◆配偶者の受給する出産助成金その1
市町村等の自治体から、住民の妊娠及び出産に対し、出産助成金が支給されることがあります。妊娠及び出産に係る費用の一部を支援することを目的とするものは、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定などでは、非課税所得となりますが、医療費控除の額の計算では、医療費から差し引くものに該当します。
◆配偶者の受給する出産助成金その2
しかし、その出産助成金が妊娠及び出生の祝儀目的のものは、医療費控除の額の計算上医療費から差し引く金額とはされません。ただし、これを非課税とする法令がないことから、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定においては、非課税所得にはなりません。所得の分類としては、一時性の所得であるとともに公法人からの収入でもあるので、一時所得に該当します。
◆配偶者の受給する休業給付金・児童手当
育児のために休業給付金の支給を受けている場合、この給付金は雇用保険法で非課税とされています。また、子育てのために児童手当・児童扶養手当の支給を受けている場合、この給付金は児童手当法・児童扶養手当法で非課税とされています。従って、これらの給付金は、本人の所得計算及び控除対象配偶者の判定上、合計所得金額に含める必要がありません。
2014年9月12日金曜日
「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」
国税庁は、源泉徴収時の金額を、消費税込み又は消費税抜きのどちらで判定するのかを各国税局等に示した「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて」を公表しました。
それによりますと、源泉所得税の課税標準額等について、4月に引き上げられている消費税率及び地方消費税率に対応したもので、①給与所得等に対する源泉徴収、②非課税限度額の判定、③報酬・料金等所得等に対する源泉徴収を明らかにしております。
上記①では、源泉徴収義務の規定が適用される給与等が、物品または用役などの現物給与により支払われる場合において、物品または用役などの価額に消費税等の額が含まれているときは、その消費税等を含めた金額が給与等の金額になるとしました。
上記②では、所得税基本通達36-22(課税しない経済的利益・・・創業記念品等)、36-38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)に定める非課税限度額の判定にあたり、これまでは「評価を行った金額に105分の100を乗じた金額」をもって、その通達に定める非課税限度額を超えるかどうかの判定を行うこととしていました。
それを今回の通達では、「評価を行った金額から、消費税及び地方消費税の額を除いた金額」に変更しております。
つまり、従業員等に支給した食事代や創業記念品等による経済的利益は、消費税等を除いた金額によって、非課税限度額を超えるかどうかの判定をすることになります。
また、「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」の通達に定める非課税限度額についても、これに準じて取り扱うことになります。
上記③では、源泉徴収義務の規定が適用される報酬・料金等が、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額にも該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税等を含めた金額になります。
ただし、報酬・料金等の支払いを受ける者からの請求書等が、報酬・料金等の額と消費税等の額を明確に区分している場合には、その報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとしております。
それによりますと、源泉所得税の課税標準額等について、4月に引き上げられている消費税率及び地方消費税率に対応したもので、①給与所得等に対する源泉徴収、②非課税限度額の判定、③報酬・料金等所得等に対する源泉徴収を明らかにしております。
上記①では、源泉徴収義務の規定が適用される給与等が、物品または用役などの現物給与により支払われる場合において、物品または用役などの価額に消費税等の額が含まれているときは、その消費税等を含めた金額が給与等の金額になるとしました。
上記②では、所得税基本通達36-22(課税しない経済的利益・・・創業記念品等)、36-38の2(食事の支給による経済的利益はないものとする場合)に定める非課税限度額の判定にあたり、これまでは「評価を行った金額に105分の100を乗じた金額」をもって、その通達に定める非課税限度額を超えるかどうかの判定を行うこととしていました。
それを今回の通達では、「評価を行った金額から、消費税及び地方消費税の額を除いた金額」に変更しております。
つまり、従業員等に支給した食事代や創業記念品等による経済的利益は、消費税等を除いた金額によって、非課税限度額を超えるかどうかの判定をすることになります。
また、「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」の通達に定める非課税限度額についても、これに準じて取り扱うことになります。
上記③では、源泉徴収義務の規定が適用される報酬・料金等が、消費税の課税資産の譲渡等の対価の額にも該当するときの源泉徴収の対象とする金額は、原則として、消費税等を含めた金額になります。
ただし、報酬・料金等の支払いを受ける者からの請求書等が、報酬・料金等の額と消費税等の額を明確に区分している場合には、その報酬・料金等の額を源泉徴収の対象とする金額として差し支えないとしております。
2014年9月11日木曜日
日本税理士会連合会:軽減税率制度の導入に反対!
日本税理士会連合会は、消費税率10%引上げの時に、軽減税率制度を導入することは、低所得者世帯に対する効果が限定的であるのに加えて、税収減収額=逸失税収額が多額であるほか、軽減税率対象品目の選定や中小企業者の事務負担、中小特例の形骸化といった観点からも問題のある制度であると反対しており、特に、事業者への事務負担の増大は、見過ごせない問題であると指摘しております。
さらに、日本税理士会連合会によりますと、軽減税率制度の導入は、標準税率と軽減税率の区別や記帳義務、コンプライアンスコストなど事業者にとっての事務負担を増大させ、軽減税率制度を導入すると、その煩雑さや錯誤は、想像に易く、実務の世界に混乱をもたらすと指摘しております。
そして、実務の視点から軽減税率の導入を考えますと、軽減税率の導入に伴う事業者の事務コストは、事業者自らが負担することになります。
例えば、軽減税率を導入した場合、標準税率と軽減税率との区分が必要になります。そして、その区分に伴う値付けや商品タグの付け替え、あるいは広告宣伝のチラシやホームページなどを改定する必要があります。
また、レジやPOSシステム、見積書・請求書の受発注システムの変更に伴うコストなども生じます。
さらに、帳簿記帳に関しては、標準税率の物品、サービスと軽減税率との区分が必要になります。
例えば、旅館の宿泊費は食事代と宿泊費を分ける必要があり、ゴルフ場などでも同様にプレー代と食事代を分ける必要が出てきます。
このような経理システムの変更のためのコストのほか、消費税等を適正に申告するためのコンプライアンスコストなども全て事業者自身の負担になり、事業者にとって過大な事務負担が発生する可能性があります。
日本税理士会連合会では、財務体質が脆弱な中小企業にこのような負担を強いるのは大変に酷であり、零細企業などは再設備投資に回す余裕がないため、事業廃止に追い込まれるおそれがあると指摘しております。
今後の税制改正の動向に注目です。
さらに、日本税理士会連合会によりますと、軽減税率制度の導入は、標準税率と軽減税率の区別や記帳義務、コンプライアンスコストなど事業者にとっての事務負担を増大させ、軽減税率制度を導入すると、その煩雑さや錯誤は、想像に易く、実務の世界に混乱をもたらすと指摘しております。
そして、実務の視点から軽減税率の導入を考えますと、軽減税率の導入に伴う事業者の事務コストは、事業者自らが負担することになります。
例えば、軽減税率を導入した場合、標準税率と軽減税率との区分が必要になります。そして、その区分に伴う値付けや商品タグの付け替え、あるいは広告宣伝のチラシやホームページなどを改定する必要があります。
また、レジやPOSシステム、見積書・請求書の受発注システムの変更に伴うコストなども生じます。
さらに、帳簿記帳に関しては、標準税率の物品、サービスと軽減税率との区分が必要になります。
例えば、旅館の宿泊費は食事代と宿泊費を分ける必要があり、ゴルフ場などでも同様にプレー代と食事代を分ける必要が出てきます。
このような経理システムの変更のためのコストのほか、消費税等を適正に申告するためのコンプライアンスコストなども全て事業者自身の負担になり、事業者にとって過大な事務負担が発生する可能性があります。
日本税理士会連合会では、財務体質が脆弱な中小企業にこのような負担を強いるのは大変に酷であり、零細企業などは再設備投資に回す余裕がないため、事業廃止に追い込まれるおそれがあると指摘しております。
今後の税制改正の動向に注目です。
2014年9月10日水曜日
政府税制調査会:法人税の改革案を公表!
政府税制調査会の法人課税専門委員会は、法人税の改革案を公表しました。
それによりますと、「法人税改革は、必ずしも単年度での税収中立である必要はない」として、法人税率引下げの減税先行を容認しております。
また、法人税の改革とあわせて、給与所得控除などの法人課税以外の税目、国際課税の見直しも含めた関連する他の税目についても、同様に見直しを行う必要があるとし、恒久減税である以上、恒久財源を用意することが鉄則であるとの考え方を示しております。
今回の法人税改革の主な目的については、
①立地競争力を高めるとともに、わが国企業の競争力を強化するために税率を引き下げること、②法人の課税ベースが狭くなり、負担が一部の黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直すこと、の2つを掲げております。
上記①においては、企業が国を選ぶ時代にあって、国内に成長分野を確保するには、「法人税率の引下げは避けて通れない課題」との基本スタンスを強調して指摘しております。
また、上記②においては、現在、すべての法人の1%に満たない資本金1億円以上の企業が、法人税収の6割以上を担っており、他方では、納税企業が全体の3割に満たないという状況を指摘しております。
課税ベースを拡大して、代わりに税率を引き下げることにより、高収益を上げる企業の税負担を緩和し、法人課税を「広く薄く」負担を求める構造にすることは、企業の成長を後押しし、新しい産業や新規開業が行われやすい環境を作ることになると指摘しております。
注目される代替財源として挙げられているのは、①租税特別措置(政策減税)の縮小・廃止、②欠損金(赤字)の繰越控除制度の見直し、③受取配当の益金不算入制度の縮小、④減価償却制度の見直し、⑤中小法人への課税強化、⑥公益法人等への課税強化、⑦外形標準課税の強化など地方法人課税の見直しなどが具体的な改革事項とされております。
加えて、国際課税の見直しや、給与所得控除などの法人課税以外の税目も検討事項として挙げられており、今後の税制改正の動向に注目です。
それによりますと、「法人税改革は、必ずしも単年度での税収中立である必要はない」として、法人税率引下げの減税先行を容認しております。
また、法人税の改革とあわせて、給与所得控除などの法人課税以外の税目、国際課税の見直しも含めた関連する他の税目についても、同様に見直しを行う必要があるとし、恒久減税である以上、恒久財源を用意することが鉄則であるとの考え方を示しております。
今回の法人税改革の主な目的については、
①立地競争力を高めるとともに、わが国企業の競争力を強化するために税率を引き下げること、②法人の課税ベースが狭くなり、負担が一部の黒字法人に偏っている現在の負担構造を見直すこと、の2つを掲げております。
上記①においては、企業が国を選ぶ時代にあって、国内に成長分野を確保するには、「法人税率の引下げは避けて通れない課題」との基本スタンスを強調して指摘しております。
また、上記②においては、現在、すべての法人の1%に満たない資本金1億円以上の企業が、法人税収の6割以上を担っており、他方では、納税企業が全体の3割に満たないという状況を指摘しております。
課税ベースを拡大して、代わりに税率を引き下げることにより、高収益を上げる企業の税負担を緩和し、法人課税を「広く薄く」負担を求める構造にすることは、企業の成長を後押しし、新しい産業や新規開業が行われやすい環境を作ることになると指摘しております。
注目される代替財源として挙げられているのは、①租税特別措置(政策減税)の縮小・廃止、②欠損金(赤字)の繰越控除制度の見直し、③受取配当の益金不算入制度の縮小、④減価償却制度の見直し、⑤中小法人への課税強化、⑥公益法人等への課税強化、⑦外形標準課税の強化など地方法人課税の見直しなどが具体的な改革事項とされております。
加えて、国際課税の見直しや、給与所得控除などの法人課税以外の税目も検討事項として挙げられており、今後の税制改正の動向に注目です。
2014年9月9日火曜日
租税公課の債務確定 《固定資産税について》
租税公課のうち損金の額に算入される租税について、いつの時点で損金となるのか、法律上、具体的な定めはなく、単に、「債務の確定」が要件となっているにすぎません。
課税実務では、租税公課の債務確定時期について、一般的に、申告納税方式による租税と賦課課税方式の租税とに大別して、損金算入時期を具体的に明示しています。
◎申告納税方式と賦課課税方式
申告納税方式による租税については、当該納税申告書が提出された日の属する事業年度とし、更正又は決定に係る租税についてはその更正又は決定があった日の属する事業年度とされています。
一方、賦課課税方式による租税にあっては、賦課決定のあった日の属する事業年度とされています。
但し、法人がその納付すべき租税について、その納期の開始の日の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理した場合には、当該事業年度とすることも容認されています。
なお、納期が分割して定められているものについても、それぞれ納期の開始の日の属する事業年度とすることが容認されています。
◎賦課決定のあった日とは
固定資産税は賦課課税ですので、その損金算入については、賦課決定のあった日の属する事業年度ということになります。
賦課決定のあった日、といってもその日をどのように特定するか、ですが、それぞれの市町村に賦課決定日を確認するなど、いろいろな考え方なり解釈もあるかと思います。
しかし、法律上の効力発生時期は、特段の定めがない限り「到達主義」によっていると解されています。民法においてもその旨が規定されています。
ちなみに、地方税法20条4項においては、「通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には、この法律に別段の定めがある場合を除き、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律2条3項に規定する信書便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する」とあります。
したがって、「賦課決定のあった日」とは賦課決定書の到達日であり、その日をもって債務が確定したものとして、その日の属する事業年度に損金の額を算入するのが相当と考えられます。
課税実務では、租税公課の債務確定時期について、一般的に、申告納税方式による租税と賦課課税方式の租税とに大別して、損金算入時期を具体的に明示しています。
◎申告納税方式と賦課課税方式
申告納税方式による租税については、当該納税申告書が提出された日の属する事業年度とし、更正又は決定に係る租税についてはその更正又は決定があった日の属する事業年度とされています。
一方、賦課課税方式による租税にあっては、賦課決定のあった日の属する事業年度とされています。
但し、法人がその納付すべき租税について、その納期の開始の日の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理した場合には、当該事業年度とすることも容認されています。
なお、納期が分割して定められているものについても、それぞれ納期の開始の日の属する事業年度とすることが容認されています。
◎賦課決定のあった日とは
固定資産税は賦課課税ですので、その損金算入については、賦課決定のあった日の属する事業年度ということになります。
賦課決定のあった日、といってもその日をどのように特定するか、ですが、それぞれの市町村に賦課決定日を確認するなど、いろいろな考え方なり解釈もあるかと思います。
しかし、法律上の効力発生時期は、特段の定めがない限り「到達主義」によっていると解されています。民法においてもその旨が規定されています。
ちなみに、地方税法20条4項においては、「通常の取扱いによる郵便又は信書便によって第1項に規定する書類を発送した場合には、この法律に別段の定めがある場合を除き、その郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律2条3項に規定する信書便物は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定する」とあります。
したがって、「賦課決定のあった日」とは賦課決定書の到達日であり、その日をもって債務が確定したものとして、その日の属する事業年度に損金の額を算入するのが相当と考えられます。
2014年9月8日月曜日
企業は人の一生を保証できるのか
企業年金には退職後の給付が確定している確定給付型と、現役時代の拠出額のみが決まり退職後の給付は変動する確定拠出型の2種類があります。
年金は資金の拠出から年金の受給までが長期間にわたり、その間の資産の運用リスクが存在します。確定給付型と確定拠出型の違いは資産運用リスクを誰が負担するかということに帰着します。
運用リスクを企業が負うのが確定給付型、年金受給者が負うのが確定拠出型になります。
高度成長時代は年金資産の運用成績が高く、企業が年金の不足部分を補填するような状況が来るとは思いもしませんでした。
しかし、時代は変わりました。金利は下がり続け、長期金利の代表である10年物の国債金利は長らく1%を超えることがありません。
年金資産の長期間にわたる元本の確実性を考えれば、資産の多くを国債で運用するのが一番確実ですが、この金利ではとても約束した予定運用利回りを確保することはできません。
そこで、リスク商品である株式も運用に加えます。
確定給付型では、年金資産で運用不足が出る場合は企業が負担しなければなりませんが、企業業績も決して楽ではありません。
利益を確保するために経費削減を迫られるところも出てきます。
最大の経費項目は人件費ですが、退職した従業員の企業年金支払いのために、これから頑張ってもらわなければならない現役従業員の給与を削らなければならないという何とも倒錯した状況に陥ってしまうところもあります。
医療の進歩は人の寿命を引き伸ばします。
これから退職する人は百歳まで生きることも決して珍しくない時代が到来します。
一方で経済潮流の変化は激しく、一歩間違えば企業は一気にその寿命を終えてしまいます。
それは中小企業に限ったことではありません。
ナショナルフラッグとして君臨した日本航空は破綻しましたし、安定企業の代名詞であった東京電力も今や生き残りに必死です。
どんな優良企業でも企業の寿命が人間の寿命より長いとは断言できません。企業が人間の生涯にわたる保証を行えると考えるのは、企業の傲慢なのかもしれません。
退職後の経済保証をかつて所属した企業に求める時代は終わったといえそうです。
唯一、人間の生涯にわたる年金を保証できる主体は国家だけということになりますが、現在の我が国の財政状況を見ると国家にも全幅の信頼を置くことはできません。
最終的には自分しか頼りにならないと考えた方がいいでしょう。
その意味で運用を自己責任で行う確定拠出型年金がより重要になります。
確定拠出型でも現在の環境では決して高率の運用ができるわけではなく、場合によっては損が出ることもあります。
しかし、それは他の誰の責任でもなく運用資産を選択した本人の責任です。
退職者はかつて所属した企業からの自立が求められる時代に入ったことを覚悟しなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
年金は資金の拠出から年金の受給までが長期間にわたり、その間の資産の運用リスクが存在します。確定給付型と確定拠出型の違いは資産運用リスクを誰が負担するかということに帰着します。
運用リスクを企業が負うのが確定給付型、年金受給者が負うのが確定拠出型になります。
高度成長時代は年金資産の運用成績が高く、企業が年金の不足部分を補填するような状況が来るとは思いもしませんでした。
しかし、時代は変わりました。金利は下がり続け、長期金利の代表である10年物の国債金利は長らく1%を超えることがありません。
年金資産の長期間にわたる元本の確実性を考えれば、資産の多くを国債で運用するのが一番確実ですが、この金利ではとても約束した予定運用利回りを確保することはできません。
そこで、リスク商品である株式も運用に加えます。
確定給付型では、年金資産で運用不足が出る場合は企業が負担しなければなりませんが、企業業績も決して楽ではありません。
利益を確保するために経費削減を迫られるところも出てきます。
最大の経費項目は人件費ですが、退職した従業員の企業年金支払いのために、これから頑張ってもらわなければならない現役従業員の給与を削らなければならないという何とも倒錯した状況に陥ってしまうところもあります。
医療の進歩は人の寿命を引き伸ばします。
これから退職する人は百歳まで生きることも決して珍しくない時代が到来します。
一方で経済潮流の変化は激しく、一歩間違えば企業は一気にその寿命を終えてしまいます。
それは中小企業に限ったことではありません。
ナショナルフラッグとして君臨した日本航空は破綻しましたし、安定企業の代名詞であった東京電力も今や生き残りに必死です。
どんな優良企業でも企業の寿命が人間の寿命より長いとは断言できません。企業が人間の生涯にわたる保証を行えると考えるのは、企業の傲慢なのかもしれません。
退職後の経済保証をかつて所属した企業に求める時代は終わったといえそうです。
唯一、人間の生涯にわたる年金を保証できる主体は国家だけということになりますが、現在の我が国の財政状況を見ると国家にも全幅の信頼を置くことはできません。
最終的には自分しか頼りにならないと考えた方がいいでしょう。
その意味で運用を自己責任で行う確定拠出型年金がより重要になります。
確定拠出型でも現在の環境では決して高率の運用ができるわけではなく、場合によっては損が出ることもあります。
しかし、それは他の誰の責任でもなく運用資産を選択した本人の責任です。
退職者はかつて所属した企業からの自立が求められる時代に入ったことを覚悟しなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
2014年9月5日金曜日
海外資産5千万円超は5539人
5千万円超の海外資産を持っている人に対し、財産の種類、数量、価額などを税務署に提出することを義務づけた「国外財産調書」の初年度の提出件数は5539件、国外財産の価額合計は2兆5142億円でした。
資産家の持つ海外の財産の一端を示す一定の数字がこうしたかたちで示されたのは初めてのことです。
国税庁によると、提出者の地域別では、東京が3755件で全体の67.8%を占めました。
2位以下の大阪638件(11.5%)、名古屋457件(8.3%)を大きく引き離し、日本の富裕層の東京一極集中が見て取れる結果です。
価額についてはより顕著で、東京だけで全体の83.5%を占めるに至っています。
資産の内訳は、「有価証券」が1兆5603億円で全体の62.1%を占めダントツ。
「預貯金」3770億円、「建物」1852億円、「土地」821億円、「貸付金」699億円と続きます。
今回の提出総数について国外財産調書を担当する課税総括課では、「予測を立ててはいなかったので、この数字が多いか少ないかは分からない」とすると同時に、「決してこれで100%であるとは思っていない」と述べています。
さらに、「提出義務が見込まれたが未提出だった人や、今後提出義務が見込まれる人に対しては、法定監査や行政指導などによって適切に対応を行っていく」と述べるなど、制度周知や実態把握に力を入れる考えを示しました。
具体的にはお尋ね文書の送付で提出を促していく予定で、年内には取り組みに着手するそうです
資産家の持つ海外の財産の一端を示す一定の数字がこうしたかたちで示されたのは初めてのことです。
国税庁によると、提出者の地域別では、東京が3755件で全体の67.8%を占めました。
2位以下の大阪638件(11.5%)、名古屋457件(8.3%)を大きく引き離し、日本の富裕層の東京一極集中が見て取れる結果です。
価額についてはより顕著で、東京だけで全体の83.5%を占めるに至っています。
資産の内訳は、「有価証券」が1兆5603億円で全体の62.1%を占めダントツ。
「預貯金」3770億円、「建物」1852億円、「土地」821億円、「貸付金」699億円と続きます。
今回の提出総数について国外財産調書を担当する課税総括課では、「予測を立ててはいなかったので、この数字が多いか少ないかは分からない」とすると同時に、「決してこれで100%であるとは思っていない」と述べています。
さらに、「提出義務が見込まれたが未提出だった人や、今後提出義務が見込まれる人に対しては、法定監査や行政指導などによって適切に対応を行っていく」と述べるなど、制度周知や実態把握に力を入れる考えを示しました。
具体的にはお尋ね文書の送付で提出を促していく予定で、年内には取り組みに着手するそうです
2014年9月3日水曜日
与党税制協議会:軽減税率制度の素案を公表!
与党税制協議会は、軽減税率の対象分野について8種類のパターンを提示するなど、軽減税率制度の素案を公表しました。
それによりますと、課税事業者にとって懸念されるのは、軽減税率を導入すると、標準税率と軽減税率を分けて、正確な消費税を算出する必要があることです。
同協議会では、新たに発生する区分経理事務については4案を併記しましたが、負担増が避けられないだけに、どの方式が採用されるのか注目されております。
素案では、
①(A案)区分経理に対応した請求書等保存方式
②(B案)A案に売手の請求書交付義務等を追加した方式
③(C案)事業者番号及び請求書番号を付さない税額別記請求書方式
④(D案)EU型インボイス方式の4案を併記しております。
(A案)と(B案)は既存の請求書等保存方式を活用する簡易方式で、(C案)と(D案)は商品ごとに税額を記入するインボイス(税額票)を使う方式です。
付加価値税(消費税)を導入しているEUを始めとする大部分の国では、EU型インボイス方式が採用されております。
現行の請求書等保存方式は、税率が上がるにつれ、いわゆる益税が増加するおそれがあるのに対し、納税額の計算等は請求書等の税額を用いて行うEU型インボイス方式では、「消費者が負担した消費税が納税義務者たる事業者を通じて適正に納税される」と評価されております。
しかし、インボイス方式では、事業者間取引を行っている免税事業者は、課税選択をしなければ、追加の事務負担は発生しないかわりに、取引を避けられる可能性があります。
他方、納税額の計算等は帳簿に基づき行う(A案)、(B案)は、このような免税事業者に係る問題はないものの、税率引上げや複数税率制度により、益税が拡大する可能性は高く、免税事業者にも追加事務負担が発生します。
同協議会では、「これらの点を踏まえ、関係業界も含め、国民的な議論を期待する」と示しております。
年末に向けて、事業者の事務負担増となることを含め、適正な請求書等が発行されることへの担保、免税事業者への影響といった諸々の課題が今後どうなるのか、税制改正の動向に注目です。
それによりますと、課税事業者にとって懸念されるのは、軽減税率を導入すると、標準税率と軽減税率を分けて、正確な消費税を算出する必要があることです。
同協議会では、新たに発生する区分経理事務については4案を併記しましたが、負担増が避けられないだけに、どの方式が採用されるのか注目されております。
素案では、
①(A案)区分経理に対応した請求書等保存方式
②(B案)A案に売手の請求書交付義務等を追加した方式
③(C案)事業者番号及び請求書番号を付さない税額別記請求書方式
④(D案)EU型インボイス方式の4案を併記しております。
(A案)と(B案)は既存の請求書等保存方式を活用する簡易方式で、(C案)と(D案)は商品ごとに税額を記入するインボイス(税額票)を使う方式です。
付加価値税(消費税)を導入しているEUを始めとする大部分の国では、EU型インボイス方式が採用されております。
現行の請求書等保存方式は、税率が上がるにつれ、いわゆる益税が増加するおそれがあるのに対し、納税額の計算等は請求書等の税額を用いて行うEU型インボイス方式では、「消費者が負担した消費税が納税義務者たる事業者を通じて適正に納税される」と評価されております。
しかし、インボイス方式では、事業者間取引を行っている免税事業者は、課税選択をしなければ、追加の事務負担は発生しないかわりに、取引を避けられる可能性があります。
他方、納税額の計算等は帳簿に基づき行う(A案)、(B案)は、このような免税事業者に係る問題はないものの、税率引上げや複数税率制度により、益税が拡大する可能性は高く、免税事業者にも追加事務負担が発生します。
同協議会では、「これらの点を踏まえ、関係業界も含め、国民的な議論を期待する」と示しております。
年末に向けて、事業者の事務負担増となることを含め、適正な請求書等が発行されることへの担保、免税事業者への影響といった諸々の課題が今後どうなるのか、税制改正の動向に注目です。
2014年9月2日火曜日
子会社株式の消滅損及び評価損
今では、中小法人でも自力で海外に全額出資の子会社を設立するケースが多く見受けられます。
ただ、現状において進出企業が順調に事業展開・発展しているとは言い難く、業績の進展が思わしくなく、中途で出資額を現地の法人に売却、あるいは、進出している他の本邦法人に売却し撤退するといったケースもあります。
中には、全額出資の子会社が業績悪化等により債務超過の状態に陥り、業績の回復もままならず、結果的に解散、清算結了に至るケースもあります。
問題は、最終的に全額出資の子会社が解散、清算結了に至り、結果として分配すべき残余財産がないときに当該子会社株式の消滅損または償却損が計上できるかです。
《子会社株式の消滅損と子会社の欠損金》
現行の法人税法では、100%の完全支配関係にある子会社が業績悪化、そして債務超過等により解散、清算結了に至った場合、その子会社株式については株式消滅損を計上することはできません。
しかし、当該破綻した子会社が有する未処理欠損金は、当該100%子会社株式を保有する親会社に引き継がれ、親会社の欠損金として繰越控除の対象になり、その控除期間も引き継ぎます。
なお、この規定の適用を受けるためには、原則、50%超の支配関係が5年超継続していなければなりません。
《外国の子会社株式への適用》
この子会社株式の消滅損、未処理欠損金の引き継ぎは、完全支配関係にある外国子会社株式にも適用されるかですが、この規定の適用は、内国法人間の完全支配関係(100%支配)を前提としていることから、外国子会社と親会社である内国法人との間には適用されません。
したがって、子会社株式の消滅損は計上できますが、当該子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎはできません。
また、内国法人間であれば、100%子会社が債務超過等に陥って業績の回復が見込まれない場合であっても株式の評価損は計上できませんが、外国子会社であればその時価に達する金額までは評価損を計上することができます。
いずれにしても、子会社株式の消滅損及び子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎは、全額出資して設立した外国子会社株式には適用されない、ということです。
ただ、現状において進出企業が順調に事業展開・発展しているとは言い難く、業績の進展が思わしくなく、中途で出資額を現地の法人に売却、あるいは、進出している他の本邦法人に売却し撤退するといったケースもあります。
中には、全額出資の子会社が業績悪化等により債務超過の状態に陥り、業績の回復もままならず、結果的に解散、清算結了に至るケースもあります。
問題は、最終的に全額出資の子会社が解散、清算結了に至り、結果として分配すべき残余財産がないときに当該子会社株式の消滅損または償却損が計上できるかです。
《子会社株式の消滅損と子会社の欠損金》
現行の法人税法では、100%の完全支配関係にある子会社が業績悪化、そして債務超過等により解散、清算結了に至った場合、その子会社株式については株式消滅損を計上することはできません。
しかし、当該破綻した子会社が有する未処理欠損金は、当該100%子会社株式を保有する親会社に引き継がれ、親会社の欠損金として繰越控除の対象になり、その控除期間も引き継ぎます。
なお、この規定の適用を受けるためには、原則、50%超の支配関係が5年超継続していなければなりません。
《外国の子会社株式への適用》
この子会社株式の消滅損、未処理欠損金の引き継ぎは、完全支配関係にある外国子会社株式にも適用されるかですが、この規定の適用は、内国法人間の完全支配関係(100%支配)を前提としていることから、外国子会社と親会社である内国法人との間には適用されません。
したがって、子会社株式の消滅損は計上できますが、当該子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎはできません。
また、内国法人間であれば、100%子会社が債務超過等に陥って業績の回復が見込まれない場合であっても株式の評価損は計上できませんが、外国子会社であればその時価に達する金額までは評価損を計上することができます。
いずれにしても、子会社株式の消滅損及び子会社が有する未処理欠損金の引き継ぎは、全額出資して設立した外国子会社株式には適用されない、ということです。
2014年9月1日月曜日
平成26年9月の税務
9/10
●8月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額
の納付
9/30
●7月決算法人の確定申告
<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>
●1月決算法人の中間申告
<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、4月、10月決算法人の3月ごとの中間申告
<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の6月、7月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(5月決算法人は2ヶ月分)
<消費税・地方消費税>
●8月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額
の納付
9/30
●7月決算法人の確定申告
<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告
<消費税・地方消費税>
●1月決算法人の中間申告
<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、4月、10月決算法人の3月ごとの中間申告
<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の6月、7月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(5月決算法人は2ヶ月分)
<消費税・地方消費税>
2014年8月29日金曜日
教育資金の一括贈与対象の5割は小学生以下(贈与税、相続税)
信託協会のアンケート調査によると、教育資金一括贈与の非課税制度を利用した人の8割がその資金を「大学・短期大学・高等専門学校の学費」に充てたいと考えているとのことですが、贈与した時点で「子ども」がまだ小学生以下であるケースは半数近くだったそうです。
贈与した人の「子ども」が通っている学校で最も多かったのは小学校。
大学・短期大学・高等専門学校、高等学校、中学校、幼稚園・保育園と続きます。
小学校と幼稚園・保育園、「まだ通っていない」を合わせると約5割。
子どもが小学生以下のうちに多くの人が大学の学費を譲り渡していることが垣間見えます。
教育資金一括贈与の非課税制度は、直系尊属から30歳未満の孫などへ教育目的の資金をまとめて贈与する場合、受贈者1人につき1500万円まで贈与税を非課税にするというもの。
「直系尊属からの贈与」なので、ひ孫や玄孫(やしゃご)のほか、親から子への贈与も対象となります。
信託協会では、平成18年度の税制改正からこの制度の創設をたびたび要望してきました。高齢者が持つ「タンス預金」などの金融資産を〝教育に役立てる〟という動機付けで若年層に移動させ、〝経済活性化に役立てる〟といった現政権の狙いもあり、制度は25年度にスタート。27年末までの贈与に適用される時限措置ですが、信託協会は適用期間の延長を提言しています。
贈与した人の「子ども」が通っている学校で最も多かったのは小学校。
大学・短期大学・高等専門学校、高等学校、中学校、幼稚園・保育園と続きます。
小学校と幼稚園・保育園、「まだ通っていない」を合わせると約5割。
子どもが小学生以下のうちに多くの人が大学の学費を譲り渡していることが垣間見えます。
教育資金一括贈与の非課税制度は、直系尊属から30歳未満の孫などへ教育目的の資金をまとめて贈与する場合、受贈者1人につき1500万円まで贈与税を非課税にするというもの。
「直系尊属からの贈与」なので、ひ孫や玄孫(やしゃご)のほか、親から子への贈与も対象となります。
信託協会では、平成18年度の税制改正からこの制度の創設をたびたび要望してきました。高齢者が持つ「タンス預金」などの金融資産を〝教育に役立てる〟という動機付けで若年層に移動させ、〝経済活性化に役立てる〟といった現政権の狙いもあり、制度は25年度にスタート。27年末までの贈与に適用される時限措置ですが、信託協会は適用期間の延長を提言しています。
2014年8月28日木曜日
戻るの?戻らないの? 粉飾決算で納付した法人税
《粉飾決算で納付した税金は戻るのか?》
今年も、個人学習塾大手の「リソー教育」、ゲームソフト制作会社「インデックス」と粉飾決算の報道が絶えません。
皆さん、このようなニュースを耳にするたびに、次のように思わないでしょうか?
「粉飾決算で過大に計上した利益に対する法人税は戻ってくるのかしら?」と。
粉飾決算は会社法上も適法でなく、企業会計の基準にも反するものです。
いくら税金を納め過ぎの状態でも、「更正の請求をしても戻ってくるのかな?」と思うのは分からなくもありません。
(1)税務署が「減額更正をしないことができる」
結論を申し上げますと、税金(法人税)は戻ってきます。
ただし、税法もさすがに不正のものに対しては、簡単に税金を戻してくれません。
納税額が過大である場合には、税務署長は税額を更正して、その過納額を還付するというのが通常の流れですが、仮装経理(粉飾決算等)による過納額の場合には、税務署長は、その会社が「修正の経理」(判例では前期損益修正損等を計上)を行った事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、減額更正をしないことができるという法人税法の規定があります。
「架空売上を会計上直してから、税金は考えてあげるよ」ということなのです。
(2)更正事業年度から5年間は税額控除
また、「修正の経理」を行って、更正の請求を行えば、すぐに、その過納額の全額を戻してくれるというわけではありません。
更正事業年度開始の日から5年間は、その各事業年度の法人税額が順次控除する形になります。
ただし、粉飾決算の発覚により、経営が傾き、会社を解散する場合、会社更正法の更正手続開始などがあった場合には、税額控除しきれなかった金額は還付されることになります。
(3)過年度遡及会計と「修正の経理」の関係は?
大手の会社では「過年度遡及会計」を採用している場合があります。
この場合、過去の誤謬の訂正による影響額は、株主資本変動計算書の期首の繰越利益剰余金と貸借対照表の資産・負債で訂正してしまうので、過年度修正の前期損益修正損などは損益計算書の特別損益には計上されませんが、この場合も「修正の経理」として取り扱われることになります。
今年も、個人学習塾大手の「リソー教育」、ゲームソフト制作会社「インデックス」と粉飾決算の報道が絶えません。
皆さん、このようなニュースを耳にするたびに、次のように思わないでしょうか?
「粉飾決算で過大に計上した利益に対する法人税は戻ってくるのかしら?」と。
粉飾決算は会社法上も適法でなく、企業会計の基準にも反するものです。
いくら税金を納め過ぎの状態でも、「更正の請求をしても戻ってくるのかな?」と思うのは分からなくもありません。
(1)税務署が「減額更正をしないことができる」
結論を申し上げますと、税金(法人税)は戻ってきます。
ただし、税法もさすがに不正のものに対しては、簡単に税金を戻してくれません。
納税額が過大である場合には、税務署長は税額を更正して、その過納額を還付するというのが通常の流れですが、仮装経理(粉飾決算等)による過納額の場合には、税務署長は、その会社が「修正の経理」(判例では前期損益修正損等を計上)を行った事業年度の確定申告書を提出するまでの間は、減額更正をしないことができるという法人税法の規定があります。
「架空売上を会計上直してから、税金は考えてあげるよ」ということなのです。
(2)更正事業年度から5年間は税額控除
また、「修正の経理」を行って、更正の請求を行えば、すぐに、その過納額の全額を戻してくれるというわけではありません。
更正事業年度開始の日から5年間は、その各事業年度の法人税額が順次控除する形になります。
ただし、粉飾決算の発覚により、経営が傾き、会社を解散する場合、会社更正法の更正手続開始などがあった場合には、税額控除しきれなかった金額は還付されることになります。
(3)過年度遡及会計と「修正の経理」の関係は?
大手の会社では「過年度遡及会計」を採用している場合があります。
この場合、過去の誤謬の訂正による影響額は、株主資本変動計算書の期首の繰越利益剰余金と貸借対照表の資産・負債で訂正してしまうので、過年度修正の前期損益修正損などは損益計算書の特別損益には計上されませんが、この場合も「修正の経理」として取り扱われることになります。
2014年8月26日火曜日
離婚後の子をめぐるトラブル
《養育費負担がある場合の扶養控除》
(1)生計一親族の判定(養育費の負担)
国税庁ホームページの質疑応答事例には、子がある夫妻が離婚した後の「扶養控除(所得税)」を、生活が別となった元夫・元妻のどちらに適用できるかという事例が紹介されています。
元妻が子を引き取り、元夫が養育費を負担しているケースでは、その養育費の支払いが、①扶養義務の履行として、②「成人に達するまで」など一定の年齢に限って行われるものであるときは、その養育費を負担した期間については、子は元夫の「生計を一にしているもの」として、元夫は扶養控除の対象とすることができます。
ただし、養育費と慰謝料・財産分与の金額が明らかに区分できない場合には、この例には当てはまりません。
また、子が元夫の控除対象扶養親族に該当するとともに、元妻の控除対象扶養親族にも該当することになる場合には、扶養控除はいずれか一方のみに適用されることになります。
(2)「扶養控除」の取り合いになった事例
このようなケースでは、別れた元夫婦が子をどちらの控除対象扶養親族とするかという話し合いを持たずに、両者が各々の控除扶養親族として申告を行ってしまうこともあるようです。
争いになった事例として、平成19年の国税不服審判所の裁決例があります。
別れた元夫婦が各自の勤務先に扶養控除等申告書を提出し、長女を各々の控除扶養親族として平成18年分の年末調整を受けていたというものです。
このケースでは元妻が扶養控除等申告書を職場に平成17年12月に提出し、元夫が平成18年1月に提出していることから、長女は、先に扶養控除等申告書を提出した元妻の控除対象扶養親族と判断されました。
(3)「決められない場合」の判定方法は2つ
所得税法施行令には、2以上の居住者が同一人を自己の扶養親族として申告書等に記載した場合の規定があります。
① 既に片方の居住者が申告書等の記載により扶養親族としている場合→その居住者の扶養親族
② ①によっても、いずれの扶養親族とするか定められない場合→合計所得金額の大きい方の居住者の扶養親族
上記の裁決では、①の段階で判定ができたため、元夫の所得の方が大きいという事実は考慮されませんでした。
(1)生計一親族の判定(養育費の負担)
国税庁ホームページの質疑応答事例には、子がある夫妻が離婚した後の「扶養控除(所得税)」を、生活が別となった元夫・元妻のどちらに適用できるかという事例が紹介されています。
元妻が子を引き取り、元夫が養育費を負担しているケースでは、その養育費の支払いが、①扶養義務の履行として、②「成人に達するまで」など一定の年齢に限って行われるものであるときは、その養育費を負担した期間については、子は元夫の「生計を一にしているもの」として、元夫は扶養控除の対象とすることができます。
ただし、養育費と慰謝料・財産分与の金額が明らかに区分できない場合には、この例には当てはまりません。
また、子が元夫の控除対象扶養親族に該当するとともに、元妻の控除対象扶養親族にも該当することになる場合には、扶養控除はいずれか一方のみに適用されることになります。
(2)「扶養控除」の取り合いになった事例
このようなケースでは、別れた元夫婦が子をどちらの控除対象扶養親族とするかという話し合いを持たずに、両者が各々の控除扶養親族として申告を行ってしまうこともあるようです。
争いになった事例として、平成19年の国税不服審判所の裁決例があります。
別れた元夫婦が各自の勤務先に扶養控除等申告書を提出し、長女を各々の控除扶養親族として平成18年分の年末調整を受けていたというものです。
このケースでは元妻が扶養控除等申告書を職場に平成17年12月に提出し、元夫が平成18年1月に提出していることから、長女は、先に扶養控除等申告書を提出した元妻の控除対象扶養親族と判断されました。
(3)「決められない場合」の判定方法は2つ
所得税法施行令には、2以上の居住者が同一人を自己の扶養親族として申告書等に記載した場合の規定があります。
① 既に片方の居住者が申告書等の記載により扶養親族としている場合→その居住者の扶養親族
② ①によっても、いずれの扶養親族とするか定められない場合→合計所得金額の大きい方の居住者の扶養親族
上記の裁決では、①の段階で判定ができたため、元夫の所得の方が大きいという事実は考慮されませんでした。
2014年8月22日金曜日
国税庁:2013年度査察白書を公表!
国税庁は、2013年度査察白書を公表しました。
それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より5件少ない185件、脱税総額は前年度を29.4%下回る約145億円となりました。
2014年3月までの1年間(2013年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は185件となりました。
継続事案を含む185件(前年度191件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち63.8%(同67.5%)に当たる118件(同129件)を検察庁に告発しました。
この告発率63.8%は、前年度から3.7ポイント減少しました。
告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは前年度より7件少ない4件にとどまりました。
近年、脱税額3億円以上の大型事案が減少傾向にあります。
告発分の脱税総額は前年度を約58億円下回る約117億円、1件当たり平均の脱税額は同3,600万円減の9,900万円と、1978年度(9,500万円)以来35年ぶりに1億円を下回りました。
また、告発分を税目別にみてみますと、法人税が前年度から15件減の64件で全体の64%、脱税総額では約54億円で46%を占めました。
所得税は、同4件減の18件(脱税総額約20億円)と減少しましたが、消費税は、同4件増の16件(同約9億円)、源泉所得税は、同8件増の14件(同約15億円)とともに増加しており、源泉所得税は過去最高の告発件数でした。
消費税の脱税額のうち約3億円は、消費税還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものでした。
告発件数の多かった業種・取引をみてみますと、1位は「クラブ・バー」が12件で2年連続のトップ、次いで「不動産業」が9件、前年度11件で「クラブ・バー」とともにトップでした出会い系サイトなどの「情報提供サービス業」と「建設業」、「保険業」が各5件、「広告代理業」と「人材派遣業」がともに4件と続きました。
なかでも、「クラブ・バー」は、ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していながら、未納付のものが多い結果となりました。
それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より5件少ない185件、脱税総額は前年度を29.4%下回る約145億円となりました。
2014年3月までの1年間(2013年度)に、全国の国税局が査察に着手した件数は185件となりました。
継続事案を含む185件(前年度191件)を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、うち63.8%(同67.5%)に当たる118件(同129件)を検察庁に告発しました。
この告発率63.8%は、前年度から3.7ポイント減少しました。
告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは前年度より7件少ない4件にとどまりました。
近年、脱税額3億円以上の大型事案が減少傾向にあります。
告発分の脱税総額は前年度を約58億円下回る約117億円、1件当たり平均の脱税額は同3,600万円減の9,900万円と、1978年度(9,500万円)以来35年ぶりに1億円を下回りました。
また、告発分を税目別にみてみますと、法人税が前年度から15件減の64件で全体の64%、脱税総額では約54億円で46%を占めました。
所得税は、同4件減の18件(脱税総額約20億円)と減少しましたが、消費税は、同4件増の16件(同約9億円)、源泉所得税は、同8件増の14件(同約15億円)とともに増加しており、源泉所得税は過去最高の告発件数でした。
消費税の脱税額のうち約3億円は、消費税還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)のものでした。
告発件数の多かった業種・取引をみてみますと、1位は「クラブ・バー」が12件で2年連続のトップ、次いで「不動産業」が9件、前年度11件で「クラブ・バー」とともにトップでした出会い系サイトなどの「情報提供サービス業」と「建設業」、「保険業」が各5件、「広告代理業」と「人材派遣業」がともに4件と続きました。
なかでも、「クラブ・バー」は、ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していながら、未納付のものが多い結果となりました。
2014年8月21日木曜日
子ども版「NISA」創設へ
政府は、少額投資非課税制度(NISA)の〝子ども版〟を平成28年に創設する方針です。投資にあまりなじみのない親世代の投資促進を狙うものです。
いわゆる「子ども版NISA」は、日本証券業協会などが創設を求めていたもので、今後は金融庁が年末の税制改正大綱に向けて与党と調整します。投資上限は現行の大人版と同じ100万円。祖父母や両親が孫や子どもの名義で投資すれば、子どもが受け取る配当や将来の売却益を非課税にする制度です。利用対象者は0歳~18歳となる見通し。NISA口座への譲渡以外に贈与があり、合わせて年間110万円を超えた場合は贈与税がかかることになりそうです。
子ども版NISAは引き出し時の制限をかけるのが特徴です。災害や両親の不慮の事故などを除いては、18歳までは原則として非課税では引き出せないようにする方針となっています。
金融庁の発表では、今年3月末時点で30歳以下の投資割合は全体の10.9%と、若年層の利用が低い実態が明らかになっています。政府は子ども版NISA創設で若年層の需要拡大につなげたい意向です。加えて、1600兆円の個人金融資産の大半を持つ60歳以上の祖父母にも利用を促します。
また、通常のNISAも拡大策が検討されています。非課税枠を200万円~300万円に引き上げる案が浮上しています。現在5年間の非課税期間も段階的に延長していく予定です。
いわゆる「子ども版NISA」は、日本証券業協会などが創設を求めていたもので、今後は金融庁が年末の税制改正大綱に向けて与党と調整します。投資上限は現行の大人版と同じ100万円。祖父母や両親が孫や子どもの名義で投資すれば、子どもが受け取る配当や将来の売却益を非課税にする制度です。利用対象者は0歳~18歳となる見通し。NISA口座への譲渡以外に贈与があり、合わせて年間110万円を超えた場合は贈与税がかかることになりそうです。
子ども版NISAは引き出し時の制限をかけるのが特徴です。災害や両親の不慮の事故などを除いては、18歳までは原則として非課税では引き出せないようにする方針となっています。
金融庁の発表では、今年3月末時点で30歳以下の投資割合は全体の10.9%と、若年層の利用が低い実態が明らかになっています。政府は子ども版NISA創設で若年層の需要拡大につなげたい意向です。加えて、1600兆円の個人金融資産の大半を持つ60歳以上の祖父母にも利用を促します。
また、通常のNISAも拡大策が検討されています。非課税枠を200万円~300万円に引き上げる案が浮上しています。現在5年間の非課税期間も段階的に延長していく予定です。
2014年8月20日水曜日
年金・物価下落でも給付抑制
1.制度維持のため、年金削減の方向性
厚労省は、公的年金の給付水準を物価動向にかかわらず毎年抑制する仕組みを来年度から導入する方針を発表しました。現行のルールではデフレ下では年金を削減できない仕組みになっています。最近は増税を背景に物価が上昇しているので現状でも年金額の抑制はされます。しかし今後、物価上昇率が低い時に給付を抑制できない現行制度のままでは給付額を抑えられないので、年金制度維持のためには毎年の抑制が必要になると試算をしています。
2.マクロ経済スライド発動
年金制度の運営方法は賦課方式と積み立て方式があり、公的年金は賦課方式でその時々に必要な費用を現役世代が払った保険料で賄います。多くの国が採用している方式ですが高齢者が増え現役が少ない人口構成では将来受け取る年金額が減るということになります。積み立て方式は債券、株などに投資して増やす方式で企業年金等が採用していますが、経済の影響を受けやすく、運用がうまくいかないと積立額は減り、年金額も減ります。
年金額は物価の変動に合わせて毎年の給付を調整する物価スライドと年金の増加を物価の伸びより抑えて給付を減額するマクロ経済スライドという方式があります。 2004年にマクロ経済スライドを導入したものの、今まではデフレ下で使えない状況であったため発動されていませんでした。今回、物価上昇を受け2015年度からこの方式を発動し、そして毎年0.9%を削減する方向で検討をしています。
3.受給者にも負担を求める
公的年金の財政検証では約30年後の会社員の年金水準は現役世代の50%を割り込む事もあるといいます(現在は60%程度)。現役世代の保険料は毎年労使で0.354%ずつ引き上げられています。年金額を抑制し、受給者にも負担を求めるという事になります。世代間格差の原因は現在の受取額が想定よりも多くなったのでそのつけを現役が払う事になるというのですが、「そんな事いわれてもね」と思う方も多いでしょう。
しかし、年金財政の健全化は長期にわたり行っていく必要があり、不信感から現役が消費より貯蓄に走ると経済は沈みがちになるという問題もはらんでいます。
2014年8月19日火曜日
《社会保険診療報酬と消費税転嫁-H24.11.27 神戸地裁判決》
1.社会保険診療報酬と消費税の転嫁の問題
平成24年11月、兵庫県の4つの医療法人が、現行消費税法の仕入税額控除制度は憲法違反であるとして、国家賠償を求めていた裁判の判決が神戸地裁で出ています。医療機関の収入である社会保険診療報酬は、社会政策的な配慮から消費税は非課税とされています。一方で、非課税売上のために行った仕入に係る消費税額は、消費税の計算上控除することは認められていません。この控除できない仕入税額は、当然コストとなるため、一般企業では、売価に転嫁することで回収を図ることになります。
2.医療機関は「転嫁をしたくてもできない」
医療機関の場合、社会保険診療報酬は公定価格であるため、この転嫁を自由に行うことはできません。医療機関では、多額の控除対象外消費税が生ずるケースがよく見受けられますが、これは、消費税の仕組み自体が法の下の平等・財産権の侵害など憲法に違反しているのではないかというのが医療法人側の主張でした。消費税の非課税制度・仕入税額控除と診療報酬制度は、個々の制度としては合理的であったとしても、これらが組み合わさった結果、医療機関には、一般企業に比べて、不公平な「負担」が生じているということなのです。
3.地裁「法的負担でない」「報酬改定で考慮済」
この主張に対する裁判所の判断はNOでした。理由を噛み砕いて言えば、�消費税の仕入税額控除制度は、「税負担の累積防止」という計算技術的なものであり、消費税法では、仕入税額を「事業者の法的負担」とは位置付けていない、�医療法人と一般企業では、確かに「転嫁方法の区別」が生じているが、診療報酬改定により一定の考慮がなされているため、立法裁量として許容できる範囲であるということでした。
4.EUでは課税選択制度(オプション)がある
EUでは上記のような議論を、医業特有の問題とは捉えていません。EUの付加価値税では「仕入税額控除権」という請求権があり、課税適状となった時点で行使することができます。非課税売上に対応する仕入税額が控除できず、事業者が不利益を被る場合には、その売上を非課税とする取扱いを放棄して、課税取引を選択することで、仕入税額控除権の行使ができる制度(課税選択制度)が設けられています。
消費税の経理処理-保険料は全額非課税?-
平成元年は消費税元年でもありました。
それから既に25年余り経ちすかっり馴染んだ「税」となりました。
導入当初税収への影響や事業者の事務負担の軽減等から様々な特例や経過措置が講じられました。
また、消費税の課税対象となる取引かどうか或いは政策的な配慮から、一部の取引の消費税の「課税」、「非課税」、「不課税」について消費税の課税に「馴染む」、「馴染まない」で振り分けられたとの説明も受けました。
その後、導入当初の様々な特例や経過措置は廃止や縮減がされ、消費税率アップ(3%から5%へ)の際に「非課税」の項目が追加されたりして、現在に至っています。
ただ、導入当初「馴染む」、「馴染まない」で「非課税」や「不課税」に振り分けられたものがまだ残っているようです。
①保険料と代理店手数料
ライフネット生命が保険料と保険代理店の代理店手数料を公表し、保険業界に波紋が広がっております。
従来、保険業界では保険料と代理店手数料を公表することはなく、全てを保険料としてきました。
しかし、中立で適切な保険を勧めていることを売りにしてきた乗合代理店(複数の保険会社の代理店をしている比較的大手の代理店)が、手数料の多寡により勧める保険を判断しているのではないか、という疑念は以前よりありました。
ライフネット生命は代理店手数料が他社より安いため、乗合代理店が積極的に取り扱わない現状に業を煮やしての公表でした。
②保険料は全額非課税か?
保険料は万が一の時に「保険金」を支払うという役務の提供を受ける為の金銭の支払ですから、基本的に課税取引となりますが、限定列挙で非課税とすると規定されているため、非課税取引とされております。
しかし保険料の中身は保険金の支払い等に充てる保険料と、保険代理店の代理店手数料とで構成されております。
保険代理店の代理店手数料は課税取引ですが、現状の多くの保険会社は保険料と代理店手数料を区分することなく、一括して保険料として契約しているため、課税取引を区分して特定できないということで、支払保険料の全てが非課税取引として処理されております。
③従来からの問題と今後の問題
そこで従来から問題となっていたのは、代理店手数料を含む保険料は、全額非課税取引とされ、課税仕入として預かり消費税から控除できないにもかかわらず、保険代理店の売上は、課税売上として消費税を課税している現状は、消費税の2重取りではないのかという指摘でした。
今後、業界として代理店手数料を明らかにするようになると、従来控除できなかった、代理店手数料に係る消費税は、控除できるようになってくると思いますが、一方、代理店手数料の金額が公表されることにより、同じ保険でも代理店により保険料が異なる等、保険業界の価格競争に混乱が生じるなど、新たな問題が出てくるかもしれません。
それから既に25年余り経ちすかっり馴染んだ「税」となりました。
導入当初税収への影響や事業者の事務負担の軽減等から様々な特例や経過措置が講じられました。
また、消費税の課税対象となる取引かどうか或いは政策的な配慮から、一部の取引の消費税の「課税」、「非課税」、「不課税」について消費税の課税に「馴染む」、「馴染まない」で振り分けられたとの説明も受けました。
その後、導入当初の様々な特例や経過措置は廃止や縮減がされ、消費税率アップ(3%から5%へ)の際に「非課税」の項目が追加されたりして、現在に至っています。
ただ、導入当初「馴染む」、「馴染まない」で「非課税」や「不課税」に振り分けられたものがまだ残っているようです。
①保険料と代理店手数料
ライフネット生命が保険料と保険代理店の代理店手数料を公表し、保険業界に波紋が広がっております。
従来、保険業界では保険料と代理店手数料を公表することはなく、全てを保険料としてきました。
しかし、中立で適切な保険を勧めていることを売りにしてきた乗合代理店(複数の保険会社の代理店をしている比較的大手の代理店)が、手数料の多寡により勧める保険を判断しているのではないか、という疑念は以前よりありました。
ライフネット生命は代理店手数料が他社より安いため、乗合代理店が積極的に取り扱わない現状に業を煮やしての公表でした。
②保険料は全額非課税か?
保険料は万が一の時に「保険金」を支払うという役務の提供を受ける為の金銭の支払ですから、基本的に課税取引となりますが、限定列挙で非課税とすると規定されているため、非課税取引とされております。
しかし保険料の中身は保険金の支払い等に充てる保険料と、保険代理店の代理店手数料とで構成されております。
保険代理店の代理店手数料は課税取引ですが、現状の多くの保険会社は保険料と代理店手数料を区分することなく、一括して保険料として契約しているため、課税取引を区分して特定できないということで、支払保険料の全てが非課税取引として処理されております。
③従来からの問題と今後の問題
そこで従来から問題となっていたのは、代理店手数料を含む保険料は、全額非課税取引とされ、課税仕入として預かり消費税から控除できないにもかかわらず、保険代理店の売上は、課税売上として消費税を課税している現状は、消費税の2重取りではないのかという指摘でした。
今後、業界として代理店手数料を明らかにするようになると、従来控除できなかった、代理店手数料に係る消費税は、控除できるようになってくると思いますが、一方、代理店手数料の金額が公表されることにより、同じ保険でも代理店により保険料が異なる等、保険業界の価格競争に混乱が生じるなど、新たな問題が出てくるかもしれません。
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