会社経営では他社にはない強みを持つことが重要です。
その強みが競合他社を引き離す武器になり、超過利潤を生みだすからです。
しかし、時代が変わると、その強みがかえって経営変革の足枷になり、苦境の原因となることがあります。
通常の経営では強みを強化することが求められますが、場合によっては強みを捨て去る勇気も必要となるのです。
携帯音楽プレーヤーの開発に関するアップルとソニーから、その教訓を読み取ってみましょう。
ジョブズは自らが創業したアップルからいったんは追い出されますが、売り上げが伸びず破産寸前になったアップルに呼び戻されます。
ジョブズは復帰後ヒット製品を連発し、瀕死の会社を救い出します。
その中にあって、アップル復活を決定づけたのはiPodの販売です。
iPodはソニーのウォークマンのような携帯音楽プレーヤーとしての単なるハード製品ではありません。
iPodのすごいところはiTunesで楽曲をダウンロードして取り込めるところにあります。
ハードとソフトが一体となって音楽聴取方法を変革し、大ブームを引き起こしたのです。
しかし、こうした製品を考えたのはジョブズが最初ではありません。
音楽関係者の中には少なからず同様な発想を持った人はいたのだそうです。
その中でも音楽のハードとソフトを一体として開発できると見られていた最有力な会社はソニーでした。
ソニーはどのような判断をしたのでしょうか。
ソニーはハードとして全世界を席巻した携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」を持ち、ソニーミュージックやソニーピクチャーズといった有力な音楽、映画ソフト部門も所有していました。
音楽のハード部分とソフト部分を一体開発できる会社としてこれほど有力な経営資源を有する会社は他に見当たりません。
では、なぜソニーがiPodのような製品を開発できなかったのでしょうか。
その一つの大きな理由が「共食いを恐れた」からだというのです。
ウォークマンのようなハードも、音楽、映画ソフトも、それぞれがトップブランドとして世の中に受け入れられています。
ここで、iPodのような画期的製品を発売すれば、iPodは売れるかもしれませんが、間違いなく音楽CDの売り上げは減少します。
これまで会社を支えてきた貴重な収益源が失われてしまうから新製品開発に踏み切れなかった、というのです。
ジョブズのモットーは「共食いを恐れるな」です。
既存の自社製品の売り上げの減少を恐れて、新製品の開発を控えても、その新製品は必ず他社が開発する。
ジョブズはこう言います。
「自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけだからね」
強力な長所を持つ会社ほど時代の流れに取り残されることが往々にしてあります。
時代の変化によってはかつての強みが弱みに変わることがあるのです。
いつまでも過去の強みに安住していてはいけません。
時代の変化を素早く読み取り、不要の強みを捨て去る勇気が必要なことをジョブズは教えてくれています。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
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