大企業に比べて経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)に制約がある中小企業においては、大学等の教育機関や公設試験研究機関などと連携を行う産学官連携が求められます。しかしながら、多くの中小企業は産学官連携の潜在的なニーズは認識しているものの、人材面、資金面での余裕のなさを理由として具体的な連携にまで踏み込めないのが実情です。
一方で、地域金融機関は中小企業に関する情報をもつとともに、地域との密接なネットワークを有しています。2003年3月に「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」が公表されたのを契機に多くの金融機関が産学官連携に対して支援の取り組みを開始しています。
このように、地域の金融機関が産学官連携推進に向けて積極的にサポートを行う、「産学金官連携」への期待が高まっています。地域金融機関においては、中小企業に対して資金供給などの金融面の支援を行うだけでなく、金融機関がもつネットワークや企業経営に関する知識を生かした情報面の支援も求められているのです。
一方で、金融機関が中小企業への連携支援を行ううえでは課題も存在します。ちゅうごく産業創造センターが2013年度に実施した調査によると、金融機関が連携支援に関わるうえでの課題として、①金融機関内部の推進体制の整備・拡充、②中小企業(取引先)との一層の関係構築、③大学とのネットワーク強化の必要性の3点をあげています。
では、地域金融機関が産学金官連携において中小企業支援を行うには、具体的にどのようなことが求められるのでしょうか。そこで、大阪信用金庫における中小企業支援の取組みについてみていきましょう。
大阪信用金庫では、金融庁が策定した「リレーションシップバンキング機能強化に関するアクションプログラム」の要請を受け、2013年6月に「だいしん産学連携共創機構」を設立しました。これは同信金が地元中小企業と大学との橋渡し役となることを目的として設立されたものです。同機構には取引先の地元中小企業が会員企業として参加し、会員企業からの技術相談に応じるほか、会員企業と産学官連携協定を締結している大阪府立大学との間で新製品・新技術の開発による共同研究や研究シーズの交流などの支援を行っています。
大阪信用金庫では、大学との連携を強化し密接な中小企業支援を行うために同信金の職員を産学連携コーディネーターとして大阪府立大学に常駐派遣しています。このコーディネーターは、大学とのネットワークを活用しつつ会員企業の個別相談への対応を図っています。さらに2013年4月には、株式会社だいしん総合研究所を設立し中小企業へのコンサルティング機能の更なる充実を図っています。
このように地域金融機関が産学金官連携を推進しつつ中小企業支援を行うには、専門的な知識を持つ地域金融機関の職員が中小企業と大学等専門機関の「橋渡し役」となることに加え、経営トップ層のリーダーシップの下、大学も巻き込んだ組織的な対応が求められるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
0 件のコメント:
コメントを投稿