日本税理士会連合会は、消費税率10%引上げの時に、軽減税率制度を導入することは、低所得者世帯に対する効果が限定的であるのに加えて、税収減収額=逸失税収額が多額であるほか、軽減税率対象品目の選定や中小企業者の事務負担、中小特例の形骸化といった観点からも問題のある制度であると反対しており、特に、事業者への事務負担の増大は、見過ごせない問題であると指摘しております。
さらに、日本税理士会連合会によりますと、軽減税率制度の導入は、標準税率と軽減税率の区別や記帳義務、コンプライアンスコストなど事業者にとっての事務負担を増大させ、軽減税率制度を導入すると、その煩雑さや錯誤は、想像に易く、実務の世界に混乱をもたらすと指摘しております。
そして、実務の視点から軽減税率の導入を考えますと、軽減税率の導入に伴う事業者の事務コストは、事業者自らが負担することになります。
例えば、軽減税率を導入した場合、標準税率と軽減税率との区分が必要になります。そして、その区分に伴う値付けや商品タグの付け替え、あるいは広告宣伝のチラシやホームページなどを改定する必要があります。
また、レジやPOSシステム、見積書・請求書の受発注システムの変更に伴うコストなども生じます。
さらに、帳簿記帳に関しては、標準税率の物品、サービスと軽減税率との区分が必要になります。
例えば、旅館の宿泊費は食事代と宿泊費を分ける必要があり、ゴルフ場などでも同様にプレー代と食事代を分ける必要が出てきます。
このような経理システムの変更のためのコストのほか、消費税等を適正に申告するためのコンプライアンスコストなども全て事業者自身の負担になり、事業者にとって過大な事務負担が発生する可能性があります。
日本税理士会連合会では、財務体質が脆弱な中小企業にこのような負担を強いるのは大変に酷であり、零細企業などは再設備投資に回す余裕がないため、事業廃止に追い込まれるおそれがあると指摘しております。
今後の税制改正の動向に注目です。
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