与党税制協議会は、軽減税率の対象分野について8種類のパターンを提示するなど、軽減税率制度の素案を公表しました。
それによりますと、課税事業者にとって懸念されるのは、軽減税率を導入すると、標準税率と軽減税率を分けて、正確な消費税を算出する必要があることです。
同協議会では、新たに発生する区分経理事務については4案を併記しましたが、負担増が避けられないだけに、どの方式が採用されるのか注目されております。
素案では、
①(A案)区分経理に対応した請求書等保存方式
②(B案)A案に売手の請求書交付義務等を追加した方式
③(C案)事業者番号及び請求書番号を付さない税額別記請求書方式
④(D案)EU型インボイス方式の4案を併記しております。
(A案)と(B案)は既存の請求書等保存方式を活用する簡易方式で、(C案)と(D案)は商品ごとに税額を記入するインボイス(税額票)を使う方式です。
付加価値税(消費税)を導入しているEUを始めとする大部分の国では、EU型インボイス方式が採用されております。
現行の請求書等保存方式は、税率が上がるにつれ、いわゆる益税が増加するおそれがあるのに対し、納税額の計算等は請求書等の税額を用いて行うEU型インボイス方式では、「消費者が負担した消費税が納税義務者たる事業者を通じて適正に納税される」と評価されております。
しかし、インボイス方式では、事業者間取引を行っている免税事業者は、課税選択をしなければ、追加の事務負担は発生しないかわりに、取引を避けられる可能性があります。
他方、納税額の計算等は帳簿に基づき行う(A案)、(B案)は、このような免税事業者に係る問題はないものの、税率引上げや複数税率制度により、益税が拡大する可能性は高く、免税事業者にも追加事務負担が発生します。
同協議会では、「これらの点を踏まえ、関係業界も含め、国民的な議論を期待する」と示しております。
年末に向けて、事業者の事務負担増となることを含め、適正な請求書等が発行されることへの担保、免税事業者への影響といった諸々の課題が今後どうなるのか、税制改正の動向に注目です。
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