1.わが国における「物納制度」
わが国の物納制度は、相続税の納税義務者のための物納制度ではなく、徴税側の国のための物納制度として構築されているといっても過言ではありません。平成18年の物納関係の政省令及び通達改正により、相続により多くの金銭以外の財産を取得したにもかかわらず、相続税の納付は、金銭納付を原則としています。
わが国の物納制度は、相続税の納税義務者のための物納制度ではなく、徴税側の国のための物納制度として構築されているといっても過言ではありません。平成18年の物納関係の政省令及び通達改正により、相続により多くの金銭以外の財産を取得したにもかかわらず、相続税の納付は、金銭納付を原則としています。
物納許可限度額の算定は、相続財産に含まれている金銭納付可能財産(現金・預貯金の額、換価容易な財産)のみではなく、当該相続財産を取得した相続人固有の金銭納付可能財産(生活費3か月、事業資金1か月の当座の資金は、残します。)も含めて「金銭納付可能財産」として当該金額を控除して「金銭で納付することが困難な額」を算定し、当該算定額を基に物納許可限度額が算出される仕組みとなっています。
この仕組みは、相続人固有の金銭納付可能財産も含めて相続税額の納付に当てなければ、物納許可限度額の算出もできず、相続税額に係る物納もできない仕組みとなっています。
2.物納に係る担税力
物納に係る担税力は、相続した相続財産の中に見出すものであり、すでに所得税等で担税力を行使された後の剰余金に再び担税力を課し、物納許可額を縮小することは、二重負担及び財産権の侵害(憲法29)に抵触するおそれがあります。また相続税納税のために生活設計に破綻をきたす可能性(例えば、相続人の固有資金による自宅のバリアフリー化の断念など)もあります。
2.物納に係る担税力
物納に係る担税力は、相続した相続財産の中に見出すものであり、すでに所得税等で担税力を行使された後の剰余金に再び担税力を課し、物納許可額を縮小することは、二重負担及び財産権の侵害(憲法29)に抵触するおそれがあります。また相続税納税のために生活設計に破綻をきたす可能性(例えば、相続人の固有資金による自宅のバリアフリー化の断念など)もあります。
3.当面の対策
平成27年の相続税増税は、制度を緩和することなく改正されたことから金銭納付が原則として物で取得した相続財産であれば物納に頼らざるを得ない場合もあります。そのときに、どのように相続及び相続税問題に対処するかを考えることでしょう。
平成27年の相続税増税は、制度を緩和することなく改正されたことから金銭納付が原則として物で取得した相続財産であれば物納に頼らざるを得ない場合もあります。そのときに、どのように相続及び相続税問題に対処するかを考えることでしょう。
相続を規定している民法第5編相続、いわゆる相続法においては、相続は、①事前に計画できるもの、②自由に分割できるもの、③家庭裁判所が紛争等を処理する等の支援するもの、と規定しています(民法906~908)。
従って、物納が完成するように相続開始前から金銭納付困難な相続人には、金銭よりも金銭以外の財産に係る相続とそれに伴う物納を計画し、それを遺言等で固めておくことが必要です。
物納申請件数は、平成17年までは年間3,000件程度あったものが平成18年以降年間100件程度に激減しています。この物納申請の激減は、物納を取り扱うべき税理士が、平成18年の物納制度の改正について、物納は使えないと諦めたところに原因があったような感じがします。
相続は、相続税納付のために存在するものではなく、むしろ被相続人の愛情の発露としての死後の相続人の扶養義務の履行にあると考えて相続法に従って遺産を自由に計画し、分割し、その過程で物納等の納税戦略を樹立すべきだと考えています。
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