日本の企業は内部留保をためすぎ、資金を積極的に投資や賃金の増加に振り向けないから、日本経済は低成長にとどまるのだと批判されています。
また、経済の好循環を持続させるためには、企業の積極的投資増や賃金増加が不可欠だとして、政府側から経済団体に異例の働きかけが行われています。
しかし、内部留保が多いから、投資を増やせるだろうという議論の展開には違和感を覚えます。
まず、会計面の整理をしておきましょう。
新聞等を見ると、「内部留保」という言葉は「余裕資金」と混同して使われている場合が多いようですが、会計的にはその両者は明確に区別されます。
内部留保とは事業活動によって生じた利益の蓄積であり、会計的には利益剰余金として自己資本を構成します。
内部留保は貸借対照表の貸方に出てくる項目です。
これに対し、余裕資金は資産の一つとして現金預金(または有価証券)として表示されますから、借方項目になります。
したがって、内部留保と余裕資金は直接的につながるものではなく、会計的にはまったく別個に存在します。
貸借対照表の貸方は、資金の調達源泉を示し、内部留保が多ければ、自己資本が多く、財務的に安定していると評価できます。
しかし、だからといって、必ずしも余裕資金が多いということにはなりません。
内部留保による利益蓄積を固定資産や在庫につぎ込んでいれば、手持ちの現金が薄いということもあり得るのです。
このように会計的には内部留保の大きさは余裕資金の大きさを保証するものではありません。
ただ、内部留保が厚い会社は余裕資金を多額に抱えていることが多いのも事実ですので、以下では、内部留保≒余裕資金として話を進めます。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
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