2017年12月1日金曜日

【時事解説】商工会・商工会議所による中小企業支援

 中小企業の経営環境が厳しさを増す中、中小企業支援機関への期待が高まっています。

 中小企業支援機関の中でも商工会・商工会議所は、古くから全国の市町村において、地元に根差した中小企業支援を行っており、中小企業にとっては、幅広い相談に応じてくれる存在として認識されています。

 『中小企業白書2014年版』においては、商工会・商工会議所について聴取したアンケート調査の結果が示されており、まず、その強みについては、「地域に密着した『顔の見える』支援」、「幅広い相談に対応可能」、「小規模企業支援のノウハウを持っていること」などといった回答が多くなっています。

 一方で、商工会・商工会議所の課題については、「財源の不足」、「指導人員の不足」、「経営指導員の能力の差異」、「専門的知識の不足」などといった回答が多くなっています。

 こうした中、経営指導員の能力向上に向けて人材育成に取り組む事例もみられています。

 例えば、滋賀県商工会連合会では2009年度から県内22の商工会の職員に関する「人事制度改革」を本格的に実施し、経営指導員の能力向上に向けた取組みを推進しています。

 具体的には6段階の階級を整備してそれらに基づいた人事評価を行い、処遇や次年度に取り組む業務に反映させています。

 また、経営支援に必要な専門分野を8つ設定し、それらを年間に2分野ずつ、研修等による知識習得と現場での実践を組み合わせながらマスターしていく仕組みを構築しています。

 このように商工会・商工会議所では、経営指導員の能力向上のための研修制度の充実や、財源や人員不足を補完するための他の専門的な支援機関との連携が求められているのです。

 では商工会・商工会議所では具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

 ここでは千葉県の木更津商工会議所の経営指導員による薬局の事業展開支援の取組みについてみていきましょう。

 木更津市で「エンゼル薬局」を経営する薬剤師が仕事を通じて地域住民の健康増進に取り組む中、無農薬、無添加で育てる市観光ブルーベリー園のブルーベリーを活用することに着目し、特産品のブルーベリーを活用したゼリーである「きさポン・ブルーベリーゼリー」を開発しました。

 このゼリーは一般的な市販のゼリーに比べ、ビタミン、カルシウム、ナイアシンなどといった多くの栄養素を含んでいます。

 こうした栄養素の高さなどが評価され、このゼリーは市立小中学校11校の給食で月1回ずつ提供されるなどの販路開拓にこぎつけました。

 今後は学校給食用への販路を木更津市周辺に向けて拡大したり、高齢者用、一般用の商品を新たに開発して販路を広げたりする方針です。

 こうしたゼリーの開発及び販路開拓には、木更津商工会議所の中小企業診断士資格を保有した経営指導員の支援が深く関わっています。

 商品化にあたっては、経営指導員のサポートによってちば農商工連携事業基金を活用することができました。

 また、千葉県の経営革新計画の承認を受けることで、公的支援の幅を広げることも可能となりました。

 このように商工会・商工会議所では、事業者の事業計画策定を支援しつつ、地方自治体や他の支援機関の支援制度の活用につなげるなどして、中小企業の製品開発・販路開拓の支援を行うことで、地域の中小企業の支援において中核的な役割を果たすことが求められているのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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