2016年6月22日水曜日

雇用促進税制の本体部分の見直し

はじめに

 平成28年度税制改正では、雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(いわゆる雇用促進税制)の本体部分が改正され、対象となる増加雇用者数が特定地域基準雇用者数に限定されるとともに、適用期限が平成30年3月31日(改正前:平成28年3月31日)まで2年延長されることとなりました。


 そこで、本稿では、雇用促進税制の改正点の概要及びその実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 改正前制度の概要

 青色申告書を提出する法人で当期及び前期において離職者(いわゆる会社都合による離職者)がいないことにつき証明がされたものが、平成23年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度のうち、基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については、2人以上)及び基準雇用者割合が10%以上であることにつき証明がされ、かつ、給与等支給額が比較給与等支給額以上である事業年度において一定の事業(風俗営業等を除きます。)を行なっている場合には、40万円に基準雇用者数を乗じて計算した金額の特別税額控除ができることとされています。

 ただし、当期の法人税額の10%相当額(中小企業者等については、20%相当額)が限度とされています(措法42の12の2①)。

Ⅱ 雇用促進税制の本体部分の改正

 税額控除限度額の計算の基礎となる基準雇用者数を地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内に所在する事業者の事業所において新たに雇用され、その事業年度終了の日においてその事業所に勤務する特定地域基準雇用者数とした上、その適用期限を平成30年3月31日(改正前:平成28年3月31日)まで2年延長されます(新措法42の12)。

Ⅲ 特定地域基準雇用者数の定義

 Ⅱにおける「特定地域基準雇用者数」とは、適用年度開始の日において地域雇用開発促進法上の同意雇用開発促進地域内に所在する法人の事業所においてその適用年度に新たに雇用された「①その事業者との間で労働契約法の有期労働契約以外の労働契約を締結していること」及び「②短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の短時間労働者でないこと」の要件を満たす雇用者でその適用年度終了の日においてその事業所に勤務するものの数(その数がその事業所のみをその法人の事業所とみなした場合におけるその適用年度の基準雇用者数を超える場合には、その超える部分の数を控除した数)として証明がされた数とされます(新措法42の12⑤五)。

Ⅳ 適用年度の定義

 Ⅲにおける「適用年度」とは、平成23年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度(平成27年8月10日から平成30年3月31日までの間に「地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定(地域再生法17の2①③)」を受けた法人にあっては、その各事業年度以外の事業年度のうちその計画の認定を受けた日から同日の翌日以後2年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度を含みます。)とされます。

 ただし、設立(合併、分割又は現物出資による設立を除きます。)を含む事業年度、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度は除かれます(新措法42の12⑤一)。

Ⅴ 同意雇用開発促進地域の範囲

 Ⅱ及びⅢにおける「同意雇用開発促進地域の範囲」とは、ハローワーク地域内の求職者数に関する基準として、最近3年間の労働力人口に対する求職者数の割合が全国平均(雇用情勢が大変厳しい地域(有効求人倍率0.5以下)の場合は、全国平均の3分の2)以上であり、かつ、雇用情勢に関する基準として、最近3年間又は1年間のハローワークにおける一般又は常用有効求人倍率が全国平均の3分の2 (3分の2の値が1以上の時は1、0.67未満の時は0.67、全国平均が0.67未満の時は全国平均)以下である地域とされます(地域雇用開発促進法2②,同法10①,地域雇用開発促進規2~3)。

おわりに

 雇用促進税制の本体部分の対象事業所の範囲は、平成28年4月1日から地域内に居住する求職者の割合が相当程度に高く、かつ、その求職者の総数に比し著しく雇用機会が不足しているため、求職者がその地域内で就職することが著しく困難な状況にあり、これらの状態が相当期間にわたり継続することが見込まれる地域(28都道府県102地域:平成28年5月1日現在)とされます。

例えば、東京都、千葉県、埼玉県及び神奈川県は、同意雇用開発促進地域の範囲から除外されています。

 なお、平成28年4月1日から対象事業所の範囲が大幅に縮減されましたが、所得拡大促進税制との重複適用が可能となっております(新措法42の12の4①)。

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