中小企業において人手不足が深刻化する中、多能工化・兼任化の推進によって業務量の平準化や業務の効率化を図ることが求められています。
「中小企業白書2018年版」において、中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組みについて実施されたアンケート調査の結果についてみていきましょう。
中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組状況についてみると、回答企業の73.3%が多能工化・兼任化に取り組んでいることがわかります。
また業種別には製造業での取組割合が88.1%と他の業種に比して高くなっています。
従業員の多能工化・兼任化を進めるに当たって、併せて行った取組みの内訳をみると、「業務マニュアルの作成・整備」、「従業員のスキルの見える化」の回答割合が特に高くなっています。
「業務マニュアルの作成・整備」については、従業員に新たな業務を担当させる上での学習環境の整備としての役割を担っているものと考えられます。
また、「従業員のスキルの見える化」は、各従業員が有している能力の確認や、今後習得させるべき能力を定めるために必要なものと推察されます。
従業員の多能工化・兼任化によって得られた効果についてみると、「従業員の能力向上」と回答した割合が52.7%と最も高くなっており、以下「全体の業務平準化による、従業員の負担の軽減」35.6%、「繁忙期・繁忙部署における業務処理能力向上」35.1%の順となっています。
このように多能工化・兼任化により、業務量が平準化され従業員の負担軽減につながるとともに、他部署からの支援に回れる人材が増えることで処理能力の向上につながるなどの効果が期待されるのです。
では、中小企業におけるIT利活用にあたっては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。
そこで「中小企業白書2018年版」において、非製造業(温泉旅館)でありながら業務を見直したことで多能工化を実現し、生産性を向上させた企業として紹介された、温泉旅館の取組みについてみていきましょう。
繁忙期に従業員が休めない状況が続くという状況に対処するため、同社では2015年末に、業務効率化による従業員の負担軽減を図る取組みを開始しました。
例えばこれまで夕食時間を2部制としテーブルセッティングしていたのを廃止し、顧客が好きな時間に来る方式に変えたことで、夕食の準備時間の短縮と顧客満足度の向上を両立させることができました。
続いて、分業制だった従業員の多能工化に取組みました。
従業員に丁寧に説明を行いつつ改革を実行していった結果、仲居がレストランを手伝ったり、仲居以外のスタッフが宴会の仕事を手伝ったりなど、従業員間で互いの業務の支援を行う体制が構築されていきました。
長時間労働の是正に苦労する企業が多い旅館業の中で、同社は残業を一人当たり週2時間程度まで削減し、その上で残業手当の減少分は賞与を増やすことにより従業員に還元しています。
2017年4月からは週休2日制をほぼ導入し、各従業員が取得する年間休日を30日増やすことにも成功しました。
このように従業員に丁寧に説明を行いつつ多能工化を進めることで、従業員の能力向上や業務平準化による負担軽減を図ることが可能となるのです。
確定申告、決算対策などのご相談はこちらから。。。
0 件のコメント:
コメントを投稿