社外取締役導入の効果については、色々なことが言われていますが、大きくまとめると以下の二つに集約されるかと思います。
一つはガバナンス体制の強化です。
社外取締役は経営トップ(社長等)の暴走に歯止めをかける役割が期待されます。
トップの暴走に対する歯止めは社外取締役だけではなく、他の一般の取締役にも求められます。
ただ、従業員出身の生え抜きの社内取締役だと、「おかしい」と思っても、自分を引き上げてくれた上司であるトップに直言しにくく、取締役としての監督機能を十分に果たせないことが危惧されるのです。
その点、社外取締役は元々外部の人間ですから、トップに意見を言いやすいと考えられます。
また、トップと社内取締役は長年、同じ会社で同じ目標に向かって働いてきたのですから、価値観も同一になりやすく、一般社会とは異なる会社の常識を共有してしまう危険性があります。
その点、社外取締役は取締役会に会社とは違う社会の常識を持ち込むことが期待できます。
社外取締役には上記のような経営ガバナンス体制の強化の効果が期待されますが、ただ社外取締役を導入しさえすれば、それで強化されるというものではありません。
社外取締役を実質的に選任する経営者が、価値観が同じで自分の言うことに逆らわないようなお友達を選べば、社内取締役とほとんど変わらなくなってしまうからです。
その意味で、当然のことですが、どのような人を選ぶかが極めて重要になります。
社外取締役に期待されるもう一つの効果は、カネの使い方を変えることにあります。
社内取締役と社外取締役で違いが出てくるのは、投資決定後の剰余金の使い方です。
社外取締役は株主の代表ということをより強く意識しますから、配当や自社株買いなどの株主還元を重視するのに対し、従業員出身の社内取締役は会社の存続を第一に考え、社内留保を優先しがちになります。
社外取締役が何より重視すべき指標は、株主から預かった財産の効率性を示すROE(自己資本利益率)になります。
会社で投資に使い切れないカネが残ることは会社の本質に反するのだから、内部留保は株主に還元すべきだと考えます。
一方、従業員出身の社内取締役は、会社は株主のものであるだけではなく、従業員の生活共同体であるという意識を強く持ちます。
雇用の流動性の低い日本では、従業員のために会社の存続を第一に考えます。
そうすると、彼らの重視する指標は会社の安全性指標である自己資本比率になります。
投資に使い切れないカネを不用意に社外に流出するのではなく、まさかのために内部留保すべきだという意見が強くなるのです。
社外取締役の導入で剰余金の使い方に関する意見対立は厳しくなることが予想されます。
それは最終的に株主重視か、従業員重視かの会社観の違いに帰着します。
どちらがいいかは即断できませんが、グローバル化により日本の会社も否応なく株主重視の経営に向けて動き出しているということなのでしょう。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
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