日本の経済状況は為替動向に大きく左右されています。
円安は輸出型大企業に有利であり、東証の主要銘柄はこうした大企業が主力ですから、円安は株価上昇につながります。
円高は逆ルートをたどり、株価の下落を招きますから、国内には「円安歓迎、円高敬遠」の空気が蔓延します。
確かに企業目線からは円高は好ましくないというのは分かりますが、消費者目線からは違った風景が見えるはずです。
円が高いということは自国通貨が評価されるということで、決して悪いことばかりではないからです。
にもかかわらず、我が国で円安が過度に選好されるのはカネの使い方に原因があるように思います。
まず、輸出型企業の為替相場から受ける影響を確認しておきましょう。
仮に、1ドル=120円として、1ドルの製品を海外に売れば、120円が入金されます。
それが1ドル=100円になると、同じモノを売っても100円しか入金できなくなります。
したがって、この企業は他の条件が同じならば、1ドル120円から100円の円高になると、売上と利益が20円落ちることになります。
一方、消費者からすれば、1ドル=120円なら、1ドルの海外製品を買うのに120円払わなければなりません。
しかし、円高になり1ドル=100円になると、同じモノが100円で買えますから、円高になると消費という面からするとずっと得になります。
つまり、カネを貯めようとするときには円安が、カネを使おうとするときには円高が有利だといえます。
ですから、円高と円安のどちらを好むかは「カネは何のためにあるのか」という考え方の違いに左右されます。
カネを貯めることを目的とする人には円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする人にとっては、円高は嬉しいはずです。
企業にも同様なことがいえます。
内部留保を貯め込むだけの企業は、円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする企業には円高は絶好のチャンスです。
ソフトバンクの孫社長や日本電産の永守社長はM&Aに積極的な経営者として有名ですが、彼らにとっては、円高は決して憂うべきことではなく、海外への絶好の投資機会と映っているはずです。
ただひたすら内部留保を貯め込むばかりでカネの使い方を知らない経営者ではこうした発想は出てきません。
「イタリア人は死ぬ時には貯蓄は0だが、日本人は死ぬ時が最高の貯蓄額になる」と言った相続コンサルタントがいます。
この言葉の真偽は定かではありませんが、日本人はカネを貯めることは上手だが使い方が下手だ、ということをうまく表現しているように思います。
政府は個人消費の沈滞が経済低迷の原因であり、個人消費の活性化に向けて低所得者向けの給付金の支給など様々な施策を打っています。
その意味からは、円高を利用して個人の消費喚起を訴えるということがあってもよさそうですが、依然として円安を望むというのは、我々日本人はまだまだ上手なカネの使い方に習熟していないのではないかという気がしてなりません。
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