2019年2月28日木曜日

国税庁:2017事務年度の無申告者に対する実地調査を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の無申告者に対する実地調査を公表しました。

 それによりますと、高額・悪質と見込まれた無申告者に対する実地調査は7,779件(前事務年度7,612件)行われ、調査の結果、申告漏れ所得金額の総額は1,662億円(前事務年度1,406億円)にのぼりました。

 また、追徴税額は、総額で207億円(同146億円)、1件あたりでは267万円(同192万円)にのぼりました。

 2017事務年度は、実地調査(特別・一般)全体が4万9,735件行われていますので、全体の約16%が無申告者に対する調査となり、実地調査(同)全体の申告漏れ所得金額5,080億円の約33%が無申告者に対するものになりました。

 そして、1件あたりの申告漏れ所得金額は2,136万円となり、前事務年度の1,847万円から15.6%増加し、実地調査(特別・一般)全体の1件あたり申告漏れ所得金額は1,021万円にのぼりました。

 また、消費税の無申告者に対しては、2017事務年度において実地調査(特別・一般)9,400件(前事務年度8,816件)行われ、追徴税額は155億円、1件あたりでは165万円にのぼりました。

 2017事務年度の消費税に係る実地調査(同)全体は2万8,415件行われていますので、全体の約33%が無申告者に対する調査となり、消費税の実地調査(同)全体の追徴税額250億円の約66%が無申告者に対するものとなりました。

 調査事例では、会社員が副業で行っていたアフィリエイトによる所得が無申告のケースがあり、会社員Aは、副業で自身のHPに企業広告などを掲載してアフィリエイト収入を得ていましたが、勤務先に副業が見つかると給与等が減額される恐れがあることから無申告でした。

 その結果、Aに対して、所得税6年分の申告漏れ所得金額約5,300万円について、重加算税込みの約800万円の追徴税額が課されました。

 無申告者は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすことになり、国税当局の的確かつ厳格な対応が求められております。

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2019年2月27日水曜日

株式の取得費がわからない場合は?

 個人投資家のうち、相続などで取得した株式を売ったというケースがあります。

 年末調整で所得税の納税が完了している給与所得者であっても、給与所得等以外の所得が、「一般口座」や「源泉徴収なしの特定口座」の譲渡益を含めて20万円以上の場合等は確定申告が必要ですので、該当されます方はご注意ください。

 株式を売却した場合の所得金額は、譲渡価額-(取得費+委託手数料等)で計算しますが、所有期間が長いほど実際の取得費がわからないケースは多く、取得費(取得価額)がいくらになるのか疑問に思うところです。

 取得費は、株式等を取得したときに支払った払込代金や購入代金ですが、購入手数料(購入手数料に係る消費税も含まれる)のほか、購入時の名義書換料などその株式等を取得するために要した費用も含まれます。

 譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古いなどのため取得費がわからない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることも認められます。

 例えば、ある銘柄の株式等を500万円で譲渡した場合に取得費が不明なときは、売却代金の5%相当額である25万円を取得費とすることができます。

 これは、実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。

 また、国税当局が認めた実際の取得費を確認する下記の合理的な方法もあります。

①証券会社などの金融商品取引業者等から送られてくる取引報告書等
②取引した金融商品取引業者等の顧客勘定元帳(10年間保存義務あり)
③記帳や預金通帳などでの本人の手控え
④上記がなければ、名義書換日を調べて取得時期を把握し、その時期の相場を基に取得価額を算定するなどがあります。

 なお、相続(限定承認に係るものを除く)、遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く)又は贈与により取得した場合は、被相続人、遺贈者又は贈与者の取得費を引き継ぎます。

 さらに、相続で取得した上場株式を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合は、相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算することができる「取得費加算の特例」がありますので、該当されます方は、あわせてご確認ください。

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2019年2月26日火曜日

扶養控除等の是正について

◆扶養控除等の是正(扶養是正)とは

 所得者の方が確定申告や年末調整で配偶者控除や扶養控除の適用を受けていたけれども、実は所得要件などが誤っており、正しくは控除が受けられなかったということがあります。

 そのような場合は、気付いた段階でただちに年末調整の再計算や修正申告を行って納税する必要があります。

 しかし、是正せずそのままにしておくと、税務署から「扶養控除等の控除誤りの是正について」という通知が送られてきたり、電話や臨場による税務調査で是正を求められたりします。

 これを一般に「扶養是正」と呼んでいます。

◆扶養是正にはどのようなものがあるか

①所得超過

 最も誤りが多いのが、この所得超過です。

 配偶者や扶養親族に一定の所得金額があるにもからわらず、所得者本人がその金額を把握していなかったことによるものです。

②重複控除

 他の所得者と重複して控除を受けていたというものです。例えば、共働きの夫婦がどちらも同じ子供を扶養親族として控除していたようなケースです。

③年齢相違

 特定扶養親族や老人扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点の年齢がそれぞれ、19歳以上23歳未満、70歳以上という条件がありますが、そのような年齢の条件に合致しない人を控除の対象としていたというものです。

④その他

 扶養控除の対象となる親族は、6親等内の血族及び3親等内の姻族ですが、それ以外の親族を扶養の対象としていた場合や、白色事業専従者を扶養の対象としたケースなどがあります。

 また、夫と離縁した人が寡婦控除を受けるには、扶養親族や生計を一にする子がいることが要件(死別の場合や寡夫の場合は条件が違いますのでご留意ください)ですが、その要件に当てはまらないというケースもあります。

◆是正のしかた

 年末調整を行っている方は、源泉徴収義務者である勤務先で年末調整の再計算を行ってもらい、追加で納付する税金を源泉徴収義務者経由で納税します。

 確定申告を行っている方は、所轄の税務署に修正申告書の提出と納税を行います。

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2019年2月25日月曜日

活用していますか?小規模企業共済・倒産防止共済

 中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済制度」と「中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)」の2つの共済制度は、節税や将来への備えとして活用している企業も多いと思います。

 まだ活用していないという企業様向けにメリットと留意点を整理してみましょう。

◆退職金を積み立てる小規模企業共済

 小規模企業共済は、積立てによる退職金制度で、卸売業・小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む法人は従業員数5人以下、その他の業種は従業員数20人以下などといった加入要件がありますが、小規模法人の役員や個人事業主を対象としています。

 掛金は月額1千円~7万円まで5百円単位で自由に設定でき、加入後も増額・減額が可能です。

 メリットとして、支払った掛金の全額をその年の課税所得から所得控除できることがあげられます。

 同様に、1年以内に前納した掛金も所得控除することができます。

 また、契約者貸付制度があり、掛金の範囲内で事業資金を低金利で借りることが可能です。

 掛金納付月数が240か月未満で任意解約した場合は元本割れすること、共済金受取時には所得として課税の対象となることには留意が必要です。

◆取引先の倒産に備える倒産防止共済

 中小企業倒産防止共済制度は、取引先が倒産した際に連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。

 資本金などの上限がありますが、1年以上事業を継続している中小企業者であることが加入要件となっています。

 積立総額800万円を上限とし、掛金は月額5千円から20万円まで5千円単位で自由に設定でき、途中で増額・減額が可能です。

 取引先が倒産した場合、無担保・無保証人ですぐに借入れができる、支払った掛金の全額を損金もしくは必要経費に計上できるというメリットがあります。

 一方で、納付月数が40か月未満で解約すると元本割れとなること、共済金受取時には益金もしくは事業所得として課税の対象となることに留意が必要です。

 制度の内容をよく理解して上手に活用していきましょう。

2019年2月22日金曜日

カネは使うためにあるのか、貯めるためにあるのか

 日本の経済状況は為替動向に大きく左右されています。

 円安は輸出型大企業に有利であり、東証の主要銘柄はこうした大企業が主力ですから、円安は株価上昇につながります。

 円高は逆ルートをたどり、株価の下落を招きますから、国内には「円安歓迎、円高敬遠」の空気が蔓延します。

 確かに企業目線からは円高は好ましくないというのは分かりますが、消費者目線からは違った風景が見えるはずです。

 円が高いということは自国通貨が評価されるということで、決して悪いことばかりではないからです。

 にもかかわらず、我が国で円安が過度に選好されるのはカネの使い方に原因があるように思います。

 まず、輸出型企業の為替相場から受ける影響を確認しておきましょう。

 仮に、1ドル=120円として、1ドルの製品を海外に売れば、120円が入金されます。

 それが1ドル=100円になると、同じモノを売っても100円しか入金できなくなります。

 したがって、この企業は他の条件が同じならば、1ドル120円から100円の円高になると、売上と利益が20円落ちることになります。

 一方、消費者からすれば、1ドル=120円なら、1ドルの海外製品を買うのに120円払わなければなりません。

 しかし、円高になり1ドル=100円になると、同じモノが100円で買えますから、円高になると消費という面からするとずっと得になります。

 つまり、カネを貯めようとするときには円安が、カネを使おうとするときには円高が有利だといえます。

 ですから、円高と円安のどちらを好むかは「カネは何のためにあるのか」という考え方の違いに左右されます。

 カネを貯めることを目的とする人には円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする人にとっては、円高は嬉しいはずです。

 企業にも同様なことがいえます。

 内部留保を貯め込むだけの企業は、円高は好ましくありませんが、カネを使おうとする企業には円高は絶好のチャンスです。

 ソフトバンクの孫社長や日本電産の永守社長はM&Aに積極的な経営者として有名ですが、彼らにとっては、円高は決して憂うべきことではなく、海外への絶好の投資機会と映っているはずです。

 ただひたすら内部留保を貯め込むばかりでカネの使い方を知らない経営者ではこうした発想は出てきません。

 「イタリア人は死ぬ時には貯蓄は0だが、日本人は死ぬ時が最高の貯蓄額になる」と言った相続コンサルタントがいます。

 この言葉の真偽は定かではありませんが、日本人はカネを貯めることは上手だが使い方が下手だ、ということをうまく表現しているように思います。

 政府は個人消費の沈滞が経済低迷の原因であり、個人消費の活性化に向けて低所得者向けの給付金の支給など様々な施策を打っています。

 その意味からは、円高を利用して個人の消費喚起を訴えるということがあってもよさそうですが、依然として円安を望むというのは、我々日本人はまだまだ上手なカネの使い方に習熟していないのではないかという気がしてなりません。

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2019年2月21日木曜日

国税庁:2017事務年度の法人税等の申告事績を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の法人税等の申告事績を公表しました。

 それによりますと、2018年6月末現在の法人数は、前年度から0.9%増の310万6千法人となり、そのうち2017年度内に決算期を迎えて、2018年7月末までに申告した法人は、同1.2%増の289万6千法人となりました。

 その申告所得金額は同11.5%増の70兆7,677億円となり、申告税額の総額も同11.0%増の12兆4,730億円となりました。

 また、法人の黒字申告件数は、99万件(前年対比4.1%増)で、黒字申告割合は前年度を1.0ポイント上回る34.2%となりました。

 黒字申告割合は、2014年度以降、4年連続で30%台となり、黒字法人の申告1件あたりでは、前年度と比べて7.1%増の7,150万円となりました。

 一方、申告欠損金額は、同15.1%増の13兆7,101億円となり、赤字申告1件あたりの欠損金額も同15.3%増の719万円となりました。

 なお、2018年6月末現在の連結法人数は、親法人が1,821法人(前年対比2.6%増)、子法人が1万3,442法人(同6.0%増)の計1万5,263法人(同5.6%増)となりました。

 このうち、2018年7月末までに申告した親法人は1,760件(同4.7%増)となり、その黒字申告割合は前年度に比べて3.1ポイント上昇の66.3%。申告所得金額は同29.4%増の14兆1,789億円と大幅に増加し、申告欠損金額は同31.5%減の9,064億円となりました。

 また、連結納税での申告書に添付された個々の親法人・子法人の決算内容の届出書をみてみますと、届出件数1万4,590件(前年対比5.4%増)のうち、黒字分は67.8%にあたる9,899件(同7.1%増)となり、赤字分は4691件となりました。

 これによりますと、もし連結納税でなければ、黒字申告割合は7割近くに達し、総個別所得金額も17兆61億円(同29.8%増)にのぼり、企業グループ内の個々の法人の所得と欠損を通算して所得が計算できる連結納税の効果は大きいものと思われます。

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2019年2月20日水曜日

国税庁:住宅ローン減税における申告ミスの多い事例を公表!

 国税庁は、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除等の適用誤りに関するお知らせ」と題して、住宅ローン減税における申告ミスの多い事例をホームページ上で紹介しております。

 これは、会計検査院から所得税の「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」と贈与税の「住宅取得等資金の贈与の特例」のいずれも申告している場合等に関して、納税者の申告誤りが多く見受けられると指摘を受け、国税庁で申告書の見直しを行ったところ、2013年から2016年分までの所得税の申告書を提出した人のうち、最大約1万4,500人が住宅ローン控除で申告誤りがあり、税金を控除しすぎていることが判明しました。

 具体的には、
①住宅ローン控除と贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例について、合わせて適用を受けた場合の住宅ローン控除の控除額の計算誤り
②住宅ローン控除と居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例との重複適用
③贈与税の住宅取得等資金の贈与の特例のうち、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用における所得要件の確認もれ
の3ケースです。

 上記①は、住宅ローン控除の控除額の計算上、贈与の特例の適用を受けた受贈額を家屋の取得価額等から差し引く必要があるにもかかわらず、その減算をしていなかったケースで約1万2,600人に申告誤りがありました。

 上記②は、居住用財産を譲渡した場合などの譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、一定期間はその家屋について住宅ローン控除の適用を受けられないのに適用を受けていたもので、約1,800人に申告誤りがありました。

 上記③は、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例は、適用を受ける年分の合計所得金額が2,000万円超である者は適用できないのに適用を受けていたケースで、約100人に申告誤りがありました。

 是正を要すると見込まれる納税者に対しては、所轄の税務署から文書を送り、申告誤りの是正と不足分の税額の納付を求め、自主的に修正申告すれば一部の年には延滞税はかかりますが、加算税は免除か軽減される場合が多いです。

 該当されます方はご確認ください。

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国税庁:2017事務年度の個人に対する所得税調査を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の個人に対する所得税調査を公表しました。

 それによりますと、前事務年度(64万7千件)に比べて3.8%減の62万3千件行われました。

 そして、そのうち約62%にあたる38万4千件(前事務年度40万件)から同1.7%増の9,038億円(同8,884億円)の申告漏れ所得を見つけました。

 その追徴税額は同7.6%増の1,196億円(同1,112億円)となり、1件平均145万円(同137万円)の申告漏れに対し19万円(同17万円)を追徴しました。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前事務年度に比べて1.5%増の5万件を実施し、そのうち約87%にあたる4万4千件から同12.9%増の総額5,080億円の申告漏れ所得をみつけて、同17.8%増の887億円を追徴しました。

 件数は、全体の8.0%となり、申告漏れ所得金額は全体の56.2%を占め、調査1件あたりの申告漏れは1,021万円となりました。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、前年度比9.4%増の2万3千件行われ、そのうち1万7千件から同5.3%減の814億円の申告漏れをみつけて、60億円を追徴し、1件あたり平均申告漏れは351万円となりました。

 さらに、簡易な接触は同4.7%減の55万件行われ、そのうち32万4千件から同10.8%減の3,143億円の申告漏れをみつけて、249億円を追徴し、1件あたりの平均申告漏れは57万円となりました。

 所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して、深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行う一方で、実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による簡易な接触で済ませる模様です。

 なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な業種は、キャバクラ(2,897万円)が1位となり、以下、風俗業(1,974万円)、不動産代理仲介(1,774万円)の順に続きました。

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2019年2月19日火曜日

労働条件通知がメールでも可能に

◆労働条件通知書は書面以外でも可

 企業が労働者に向けて提示する労働条件ですが、労働基準法第15条では書面による通知をするとされていました。

 しかし2019年4月から、労働条件の通知を書面だけでなく電子メールやFAXで知らせても良いようになります。

 既に社内ITを実用化しているところも多いと思いますが、新年度からFAXや電子メール等でも通知を可能にするよう、規制を緩和する事になりました。

 書面として印刷できればよいと判断されたので、企業にとって印刷、郵送のコストを抑え利便性も高まるでしょう。

◆労働基準法の施行規則改正

 働き方改革関連法に基づく省令で労働基準法施行規則第5条第4項に追加されました。

 「法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
(1)ファクシミリを利用してする送信の方法
(2)電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)」

◆本人の希望が前提

 今回の改正は労働者がFAXや電子メール等での通知を希望する事が条件なので本人に通知方法を確認してから行い、FAXやメールでの通知を希望しない時は今まで通り書面での通知となります。

 電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メール本文か添付ファイルかどちらでもよいか等)や本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否等、まだ詳細は明らかになっていません。

 新年度に施行されるまでに何らかの基準が示されるかもしれません。

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2019年2月18日月曜日

働き方改革法と企業の意識

 人材採用のエン・ジャパン株式会社は、人事担当者向けの総合サイトで、経営者や人事担当者に向けて「働き方改革法案について」のアンケート調査を行いました(回答648通)。

 それを基に企業が「働き方改革法案」に対してどこまで認識があるか、どう感じているかの実態が見えてきました。

1、「働き方改革法案」の認知度
 「働き方改革法案を知っているか」という問いには「概要を知っている」74%、「内容を含め知っている」21%と認知度は95%に達しています。

2、経営への支障度合い
 「働き方改革法案」が施行される事で経営に支障が出るかという問いには「大きな障害が出る」9%「やや支障が出る」38%とあり、企業規模が大きくなるにつれて「支障が出る」と回答する割合が増加しています。

3、経営に支障が出そうな法案について
 「経営に支障が出る」と回答した方への「支障が出そうな法案はどれか」という問いに対しては「時間外労働(残業)の上限規制」66%がもっとも多く、次に「年次有給休暇の取得義務」54%、「同一労働同一賃金の義務化」43%と続きます。業種別にみると広告、出版、マスコミ関連の「時間外労働の上限規制」80%、「年次有給休暇取得の義務化」70%、商社の「時間外労働の上限規制」74%が目立っています。

◆働き方改革の時間外労働の上限規制とは

 残業時間は月45時間、年360時間を原則とするが年720時間までは延長が可能であり、繁忙期は単月で100時間未満の残業を例外的に認めるという内容です(2019年4月施行、中小企業は20年から)。

 年次有給休暇取得義務は年に5日は有給休暇を消化させる義務が生じます(19年4月施行)。

 働き方については、各人が家庭の事情や自身の体調、結婚、出産等を抱えて仕事をしているので国が柔軟に多様化した対応策を示す事が必要と言う意見もあれば、中小企業には厳しいかもしれないがよい制度とする肯定的な意見もある一方で、残業の上限規制や有給の義務化は生産性が下がり、人員を増やせば人件費に跳ね返りコスト削減のため無理をしかねないのではなど、否定的な意見もあります。

2019年2月15日金曜日

確定申告でマイナンカード不要に

 2月18日から始まる2018年分の確定申告シーズンに向け、国税庁はサイト上に特集ページを開設しました。

 スマートフォン・タブレット用の申告書作成コーナーが新しくなったほか、今年から導入される「ID・パスワード方式」によってマイナンバーカードを取得せずに申告書を自宅から送信できるようになっています。

 一般納税者が申告書を送信する際は、これまで送信者のマイナンバーカードと、それを読み込むICカードリーダライタが必要でしたが、新たな方式では、税務署で職員による対面の本人確認を行っておけば、カードやリーダライタを必要とせず電子申告を行うことが可能となります。

 同方式について国税庁は「マイナンバーカードおよびICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な対応」としていますが、国民の間に根強いマイナンバー不要論に拍車がかかるおそれもありそうです。

 なお、会計事務所が顧問先の申告書を代理送信する際にはID・パスワード方式は利用できず、従来どおり日税連が発行する電子証明書が必要となります。

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2019年2月14日木曜日

国税庁:2017事務年度の富裕層に対する所得税調査を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の富裕層に対する所得税調査を公表しました。

 それによりますと、前事務年度比24.6%増の5,219件の富裕層に対する実地調査が実施し、同51.9%増の申告漏れ所得金額670億円を把握しました。

 調査件数の約82%にあたる4,269件(前年対比25.3%増)から何らかの非違をみつけ、加算税を含め177億円(同39.4%増)を追徴し、1件あたりの申告漏れ所得金額は1,283万円(同21.7%増)、追徴税額339万円(同11.5%増)となり、追徴税額は所得税全体の実地調査(特別・一般)1件あたり178万円と比べて約1.9倍にのぼりました。

 国税当局では富裕層の海外投資等にも注目しており、同期間中に海外投資を行っていた862件(前年対比61.7%増)に対して調査を実施し、約83%にあたる713件(同49.2%増)から269億円(同96.4%増)の申告漏れ所得金額を把握、71億円(同73.2%増)追徴し、1件あたりの申告漏れ所得金額は3,119万円(同21.1%増)にのぼりました。

 調査事例をみてみますと、国内外の仮想通貨取引に係る事案があり、調査対象者Aは、仮想通貨の取引による利益について自主的に修正申告書を提出しましたが、部内資料等から修正申告書の内容を大きく上回る利益を得ていることが想定され、調査の結果、Aは多数の仮想通貨取引所に本人及び妻名義の取引口座を開設し、自身で開発した仮想通貨の自動売買プログラムを使用して多額の利益を得ていた事実が把握されました。

 Aは、インターネット情報で、仮想通貨取引の利益は申告する必要があることを知り、本人名義のうち、一部の仮想通貨取引の利益は修正申告しましたが、妻名義などで行った仮想通貨取引による利益は修正申告書に含めていなかったことを認めました。

 その結果、Aに対して、所得税1年分の申告漏れ所得金額約5,000万円について、追徴税額(重加算税を含む)約2,400万円が課されました。

 国税庁では、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約に基づく自動情報交換資料などの情報を活用して、海外取引・海外資産関連収入の的確な把握及び積極的な調査に取り組んでいます。

2019年2月13日水曜日

教育資金贈与特例がマイナスの見直し

 30歳未満の子や孫への教育資金の一括贈与を1500万円まで非課税にする「教育資金目的の一括贈与」の特例について、2019年3月末とされていた期限が2年間延長されるとともに、適用対象が狭められます。

 現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることのみが条件となっていますが、大綱ではこれに収入要件を加えました。

 現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることだけが条件となっていますが、大綱では所得1千万円という収入要件を加えました。

 自分の収入の中で学ぶことが可能な人は非課税特例の対象外にするということのようです。

 また贈与された資金の使い道も限定されます。

 特例ではスポーツジムやピアノなど趣味の習い事も適用対象とされているのですが、23歳以上の人については、19年7月以降は趣味の習い事には使えなくなります。

 ただし厚生労働省が認める職業訓練や資格取得の講座は認められることとなります。

 さらにこれまでと異なり、贈与者の死亡前3年以内に特例を適用していると、相続税が課税される「持ち戻し」の対象となるよう改められます。

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2019年2月12日火曜日

消費税還付や海外取引に国税ギラリ

 消費税調査や海外取引法人への法人税調査で発覚する申告漏れ所得と追徴税額が、ここ数年で急速に増えています。

 国税庁によると、平成29年度の消費税調査による追徴税額の総額は748億円で、5年前の474億円と比べて57.8%増にもなりました。

 また、29年度の法人税調査で把握された申告漏れ所得は9996億円で5年前から4億円の微増でしたが、海外取引にかかる申告漏れ所得に限れば5年前の2452億円から3670億円へと49.7%増でした。

 消費税や海外取引にからむ不正としては、インターネットで海外旅行客向けのツアーを販売するA社が、ソフトウェア取得の対価を消費税の課税仕入れとして多額の還付申告をしたケースがあります。

 実際には取得の事実はなく、無申告法人に虚偽の契約書を作成させ、申告の際の添付資料にしていました。

 また、自動車部品の卸売業を営むB社は租税回避地に100%子会社を設立。子会社は決算書で、グループ会社への売上割合が本来は55%であるにもかかわらず、45%として申告していました。

 この虚偽申告は、「外国子会社合算税制」の適用を免れるためのものです。外国子会社の売上の過半がグループ会社以外の第三者取引によるものでなければ外国子会社合算税制の対象となりますが、B社の子会社の第三者取引割合は45%(100%グループ会社への売上55%)であるため、B社は子会社の売上も合算して法人税を納めなければなりませんでした。

 広告代理店業を営むE社は、自社所有の社員専用宿舎の空き部屋を民泊として観光客などに貸し出し、代表者が個人名義で代金を受け取っていましたが、申告除外していました。

 税務署は代表者が使用するパソコン内の民泊仲介サイトのアカウント情報から取引履歴を確認。

 税務申告の際に民泊収入を含めず、消費税額を圧縮していた事実を把握しました。

2019年2月8日金曜日

不動産所得の事業的規模とされる判断基準とは?

 アパートやマンションを賃貸して得た不動産所得は、その貸付が事業的規模と認められるか否かによって、所得税の取扱いが異なります。

 事業的規模と認められますと、事業専従者給与の経費算入や65万円の青色申告特別控除が可能なほか、業務用資産の取壊し、除却など損失の全額の経費算入、賃料収入などが回収不能となった場合の貸倒損失がその年分の必要経費になります。

 例えば、家賃が回収不能なことが明らかとなったとき、事業的規模でない場合には、収入として計上した年の所得から、なかったものとして取り扱われますが、事業的規模であれば、その未回収家賃をその年の必要経費として計上して、所得から差し引くことができます。

 事業的規模とされる判断基準ですが、一般的には、貸付資産の規模や賃貸料の収入状況などの要素を総合的に勘案して判断します。

 実務的には、独立家屋の貸付はおおむね5棟以上、貸間・アパートなどは独立した室数がおおむね10室以上という形式的な基準(いわゆる5棟10室基準)が設けられております。

 物件を共有している場合は共有物件全体で判断し、貸室と貸家の両方を所有している場合は貸室2室を貸家1棟として、駐車場は5台分を貸室1室にそれぞれ換算して、基準を満たせば事業的規模となります。

 したがいまして、50台(10室相当)以上の駐車場業であれば事業として認められますが、50台以下であっても、管理状況や関与する人員などによって事業として認められるケースがあります。

 あくまでも5棟10室基準は簡便な判定方法であり、実際には実態を総合的に勘案して判断します。

 なお、事業的規模になりますと、各都道府県が課税する個人事業税の対象となり、青色申告特別控除額(65万円の控除)を差し引く前の所得から、290万円を差し引いた残額の5%が課税されます。

 また、事業的規模の不動産オーナーで、各種特典を受けるためには家賃収入や経費などを帳簿に記帳する必要があり、作成した帳簿は原則7年間の保存義務がありますので、該当されます方はご注意ください。

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2019年2月7日木曜日

法人が受け取る生命保険金

 契約者を法人、被保険者を経営者とする法人契約の生命保険は、退職金等の準備や経営者の万が一に備えるといった保障目的からの加入が考えられますが、支払った保険料の一部もしくは全部を経費として損金計上できることから節税目的で加入される法人も多いと思います。

 支払った保険料の分だけ利益が圧縮され法人税を抑えることができますが、一方で生命保険金を受け取った際に生じる課税関係についても把握しておく必要があります。

◆保険金受取の会計処理

 法人が受け取る生命保険金は、所得の計算上全額益金に計上します。

 このとき、当該保険に係る支払保険料のうち資産計上している金額があれば損金に振り替えます。

 法人が経営者の遺族へ退職金を支払う場合、適正額と認められる部分は損金に計上することができます。

 また、弔慰金についても一定の金額までは、損金に算入することができます。

 したがって、計算上では受取保険金の額から退職金及び弔慰金の額を控除した残額に対し法人税がかかると考えることができます。

◆遺族が死亡退職金を受け取った場合

 経営者の死亡によって遺族が死亡退職金を受け取る場合、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。

 ただし、死亡退職金等については相続税法上、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が設けられているため、実際には死亡退職金等の額から非課税限度額を控除した残額に相続税が課税されることとなります。

 また、経営者の死亡後3年を超えて支給が確定した退職金を遺族が受け取った場合には、一時所得として所得税の課税対象となります。

 一般には節税商品と認識されている法人契約の生命保険ですが、後々の課税関係を理解した上で、万が一の時の保障のため、確実な資産運用のためなど目的を明確にして商品選びをすることが重要であるといえます。

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2019年2月6日水曜日

プロジェクトの成功要因

 経営の重要課題を解決するために、しばしばプロジェクトチームが活用されていますが、次の様なトラブルが生じて暗礁に乗り上げてしまうことがあります。

・プロジェクトに取り組むメンバー間に深刻な意見の違いが生じて、進捗できない。
・大きな失敗が生じ、そのリカバリーのため、予算が大幅に超過した。

 このような障害を未然に防止し、プロジェクトを成功に導くには、どのような対処策があるでしょうか。

◆プロジェクト成功の鍵

 プロジェクトを成功させるには、次の様に、人材・課題解決手段・予算に関する成功要因を確保しなければなりません。

(1)リーダーがプロジェクトテーマの目標達成に志と能力・経験をもち、とりわけプロジェクトとチームメンバーのマネジメントに優れていること。

(2)課題解決に要するキーテクノロジーが適切に選択され、プロジェクトのチームメンバーが、キーテクノロジーを駆使する能力に優れていること(通常は異分野・複数のテクノロジーが必要なことから、それぞれを駆使できるメンバー間の協力関係が確保されていること)。

(3)予算が確保されていること。

(4)上記(1)~(3)と同時に、プロジェクトのリーダー・メンバーにより「基本構想」が策定され、プロジェクトが成功した時の姿が具体的に共有されて上位組織の承認を得ていること。

(5)プロジェクト推進・管理の基本方針が定められていること。

(6)推進プロセスのマネジメントが、リーダーのファシリテーションにより適切になされていること(特にプロセスでの課題解決の成功要因獲得や障害排除へ向けたメンバー間の共創)。

 このように、プロジェクト成功の鍵は広く、人材・テクノロジー・基本構想の確立・推進マネジメントに及びます。


◆経営者・管理者の留意点

 プロジェクトの成功要因は、人材確保に帰結します。

 このような人材確保は、長期人材育成・確保の人事施策によってのみ成功させることが出来ます。

 トップは日頃から上級管理者の協力を得て、事業分野別の中長期人材確保計画を推進したいものです。

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2019年2月5日火曜日

針なし注射器が治療を変える

 近年、医療の現場では、患者の視点に立ち、痛みや負担を和らげる検査や治療が重視されるようになりました。

 従来、医療の現場で用いられる機器は、性能が最も優先順位が高く、たとえば、乳がんや大腸がんなどの検査ならば、がんを見つけることが優先され、患者の苦痛は犠牲になっています。

 結果、病院では痛みや苦痛を伴うことが多くあります。

 やがて、検査や治療器具の性能が高まるに従い、患者の心情に寄り添い、痛みを減らすことが徐々に重視されるようになりました。

 取り組みの一例を挙げると、医療機器のメーカーであるキヤノンや京都大学は乳がん検査時の痛みを抑える技術の開発を進めています。

 現在、乳がんの検査は、乳房を2枚の板で挟み、押しつぶした上でⅩ線画像を撮影する方法が主流です。

 患者からは不評の声が上がっていますが、新技術により、こうした評判も変わりそうです。

 最近、大きな注目を集めているものに、針のない注射器があります。

 注射といえば予防注射をはじめ、針の痛みからくる恐怖心が脳裏にこびりついている人は多いでしょう。

 現在、針がなく、肌にあてるだけで体内に薬を注入できる注射器の開発が進んでいます。

 針で注射するより痛みは格段に少なく、薬剤も均等に広がるので医療事故防止につながるといえます。

 また、使い捨てなので感染症対策にもなります。

 実用化はまだ端緒についたばかりで、米国やドイツ、ドバイ、シンガポールなど、一部の国で認可が下り始めところです。

 日本もいずれ認可が下りる日が来るのではないでしょうか。

 痛みの少ない注射が実現したら、患者としては喜ばしい限り。

 広まる可能性は大いに期待できます。

 針がないのに、どのようにして体内に薬を入れるでしょうか。

 針のない注射器には、いくつか種類があります。

 具体的な方法を紹介すると、注射器から高圧が生じ、高速で気泡を発射。

 気泡がはじける力で皮膚に微細な穴を空けます。

 その後、薬液が高速噴射されて、穴から薬が体内に注入されます。

 薬が皮膚内に浸透するので針が不要になります。

 このときに開ける穴が極めて小さいので、針を使う注射器のような痛みは感じられません。

 一般的に、医療機器に関するビジネスは専門知識が必要になり、参入障壁が高いといわれています。

 ただ、日本の中には、プラスチック部品のメーカーが、針無し注射器の部品製造を手掛けているケースもあります。

 このメーカーは、もともと漆器の製造からはじまり、自動車部品や通信機器などのプラスチック部品の製造を営んでいました。

 注射器とは全く関係のないようにみえますが、同社が有する、プラスチック樹脂の先端に精密な穴を開けるという高い製造技術が針無し注射器の部品として応用されることになったのです。

 今後、高齢化がますます進む中、医療に関する市場はビジネスチャンスの宝庫です。

 参入障壁が高いといわれていますが、実は、自社の技術を活かす場は探せばあるものです。

 なかでも、針なし注射器のような、痛みを軽減させる分野は大きな成長が期待できるため、狙い目でもあります。

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2019年2月4日月曜日

中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上

 中小企業において人手不足が深刻化する中、現有の従業員を生かすべく労働生産性向上に向けて、業務プロセスの見直しによって業務効率化を図ることが求められています。

 以下で、「中小企業白書2018年版」において実施した、「人手不足対応に向けた生産性向上の取組に関する調査」に基づき中小企業における業務プロセスの見直しの現状と課題などについてみていきましょう。

 中小企業における業務見直しの実施状況をみると「部門単位で業務の見直しを行っている」が26.7%、「個々の従業員のレベルで日々工夫しながら業務の見直しを行っている」が24.9%と続いており、多くの中小企業が、業務見直しの取組を行っていることがわかります。

 業務見直しの具体的な取組内容について回答割合の高い順にみると、「業務の標準化・マニュアル化」が40.2%、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」が40.0%、「業務の見える化」が30.6%となっています。

 業務見直しに取り組んだきっかけについて回答割合の高い順にみると、「人手不足対応」が46.5%、「業務に非効率・無駄を感じた」が 41.0%、「働き方改革への取組」が31.4%となっています。

 業務見直しを行うに当たっての課題についてみると、「業務に追われ、業務見直しの時間が取れない」が 50.6%と他の項目に比べて高い割合を示しており、次いで「取組を主導できる人材が社内にいない」24.1%、「取組の目的や目標が上手く設定できない」17.5%の順となっています。

 このように、中小企業における業務プロセスの見直しにおいては、業務見直しの時間の確保に加え、推進役となる人材の不足等、業務見直しを行うための環境整備も課題となっているのです。

 では、中小企業において、具体的にどのような業務プロセスの見直しによる生産性向上の取組がみられるのでしょうか。

 そこで「中小企業白書2018年版」において、業務効率化を実現させ生産性を向上させた企業として紹介されたホテルの事例についてみていきましょう。

 当ホテル(従業員125 名、資本金1億円)は、1963年創業の客室120室のリゾートホテルを運営する事業者です。

 島では少子高齢化と人口減少が進む状況において、同社が今後も人材を確保し続けていくためには、生産性向上を進め労働条件を整備していくことが重要だと考えていました。

 そこで当ホテルでは、外部の経営コンサルタントを活用し業務の見直しを進めました。

 総支配人のリーダーシップのもと、業務改善に意欲的な従業員とコンサルタントで構成するチームを編成して客室整備業務等における既存の業務の無駄を洗い出し、不要業務の廃止や見直しを行いました。

 例えば、一部客室に急須の設置をやめてマグカップとスティック茶に簡略化を行った結果、急須の漂白時間が短縮され、年間で30 時間程度の業務時間の削減につながりました。

 このように業務の必要性を精査し、廃止や見直しを進めることによって、年間で1,800時間もの業務時間の削減効果が得られました。

 さらに、一連の取組をきっかけに従業員が自発的に改善提案を行う風土が広がったことで、個々の従業員の創意工夫が発揮され顧客対応も改善しました。

 このように業務プロセスの見直しを進めることは、業務の効率化だけでなく付加価値向上や人材確保の効果ももたらすのです。

2019年2月1日金曜日

ローン減税の控除期間3年延長

 2019年度の与党税制改正大綱が公表されました。

 消費増税に備えた経済政策の大きな目玉の一つが住宅ローン減税です。

 消費税率が引き上げられる2019年10月から20年末までの間に住宅を購入し、住み始めたマイホームについて、所得税や住民税の控除期間が現行の10年から3年間延長されます。

 現在の住宅ローン控除は、マイホームを購入した時に年末の借入残高の1%に相当する額を10年間、所得税などから控除される制度です。

 最大で1年あたり40万円、10年合計で400万円(長期優良住宅は500万円)が税額控除されます。

 今回の見直しでは、3年間の延長期間は建物価格の2%の金額が3年かけて還付されることとなり、4千万円の建物であれば、3年間の合計で80万円の控除が受けられることになります。

 ただし、①建物価格の2%を3等分した額と、②借入残高の1%の金額を比較して少ない方の額の減額となります。

 このほか増税に備えた対策としては、一定の条件を満たす購入者に一時金を渡す「すまい給付金」の拡充がすでに決定しています。

 現在は最大30万円を配っていますが、消費増税後は最大50万円に拡大されます。

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