2018年1月31日水曜日

医療費控除は領収書の添付が不要に!(その2)

その1からの続き

Ⅲ 医療費通知の添付

 医療保険者等の医療費通知の交付を受けた者は、
①各月に交付を受けた「医療保険者等の医療費通知」に記載された自己が負担した社会保険診療分の医療費の合計額と
②「医療保険者等の医療費通知に係る医療費以外(いわゆる自由診療分など)」の医療費について医療費控除適用者自らが作成した控除適用医療費の額等の合計額を
医療費控除の明細書に併せて記載することとされます。

 ただし、医療保険者等の医療費通知に記載された医療費の額は、実際に支払った金額と異なる場合がありますので、領収書等で確認し、修正する必要があります。

おわりに

 前述したⅠからⅢの改正は、平成30年1月1日以後に平成29年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用され、同日前に確定申告書を提出した場合又は同日以後に平成28年分以前の所得税に係る確定申告書を提出する場合については、なお従前の例によることとされます(平成29年改正法附則7①)。

 また、経過措置として、平成29年分から平成31年分までの各年分の所得税に係る確定申告に限り、従来どおり、医療費の領収書の添付又は提示による医療費控除の適用も可能とされています。

 この場合において、その添付又は提示をした領収書に係る医療費については、税務署長の求めの対象外とされます(平成29年改正法附則7②)。

 なお、この経過措置は、一部の医療費についてのみ選択適用することもできますので、社会保険診療分などの医療費については「医療保険者等の医療費通知書」を添付することにより簡素な手続を利用し、それ以外の自費診療分などの医療費については従来どおり医療費に係る領収書を添付することも可能とされます。


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2018年1月30日火曜日

医療費控除は領収書の添付が不要に!(その1)

はじめに

 平成29年度税制改正では、平成30年1月1日以後に平成29年分の所得税の確定申告で医療費控除(セルフメディケーション税制による特例は除きます。)の適用を受ける場合には、原則として医療費の領収書の提出が不要とされ、医療費の明細書を提出することとされます。

 また、社会保険診療分の医療費については、医療保険者から交付を受けた医療費通知(いわゆる健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」など)を添付すれば、医療費の明細の記載も省略することが可能とされます。

 そこで、本稿では、改正された医療費控除を適用する場合における留意点について解説します。

Ⅰ 添付書類等の見直し

 医療費控除の適用を受ける者は、「医療費控除の明細書」及び医療保険者等の「医療費通知」を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととされます(所法120④)。

 この場合において、税務署長は、その適用を受ける者に対し、確定申告期限等から5年間、その明細書等に係る医療費の領収書(「確定申告書の提出の際に、医療保険者から交付を受けた医療費通知を医療費の明細書として添付した場合におけるその医療費通知に係る医療費の領収書」及び「e-taxを使用して確定申告を行った際に、医療保険者から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを医療費の明細書として送信した場合におけるその医療費通知情報に係る医療費の領収書」に該当するものを除きます。)の提示又は提出を求めることができます(所法120⑤)。

Ⅱ 医療費の明細書の意義

 「医療費の明細書」とは、所得税の確定申告書に記載された医療費控除を受ける金額の計算の基礎となる控除適用医療費の額等の記載のある明細書とされます(所法120④一)。

 また、控除適用医療費の額等の記載のある明細書(医療保険者等の医療費通知が確定申告書に添付された場合におけるその書類に記載された控除適用医療費の額等に係るものを除きます。)には、次に掲げる事項を記載することとされます(所規47の2⑧)

①医療を受けた者の氏名
②病院・薬局などの支払先の名称又は氏名
③医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医薬品の購入、その他の医療に区分されたものにチェックマークを記載)
④支払った医療費の額
⑤④のうち生命保険や社会保険などで補填される金額

その2へ続く

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2018年1月29日月曜日

国税庁:e-Taxの利用に関するアンケート調査結果を公表!

 国税庁は、2017年2月から5月にかけて国税電子申告・納税システム(e-Tax)ホームページ及び確定申告書等作成コーナーにおいて実施した「e-Taxの利用に関するアンケート調査」結果(有効回答数4万3,674人)を公表しました。

 それによりますと、利用した手続き(複数回答)は、確定申告時の調査からも「所得税申告」が97.1%と最多、次いで「申請・届出手続き」が7.2%、「納税手続き」が4.8%と続きました。

 e-Taxや確定申告書等作成コーナーを利用するきっかけでは、「国税庁のホームページ」が54.1%と最多、次いで「税務署からの案内文等」が15.6%と続きました。

 また、e-Taxを利用しようと思った理由(複数回答)では、「税務署に行く必要がないから」が85.6%と最多、次いで「税務署の閉庁時間でも申告書等の提出(送信)ができるから」が70.4%、「申告書の作成・送信が容易だから」が61.1%と続きました。

 事前手続きについて「スムーズにできた」との回答割合は、「開始届出書の送信(利用者識別番号の取得)」が69.8%、「事前準備(ルート証明書のインストール、信頼済みサイトの登録)」が68.1%、「電子証明書やICカードリーダライタの取得・設定」が64.5%、「電子証明書の初期登録」が63.2%となりました。

 また、2017年1月から、マイナンバーカードでマイナポータルにログインしますと、e-Taxの利用者識別番号や暗証番号を入力せずに、メッセージボックスの情報確認や、納税証明書、源泉所得税、法定調書などに関する手続きが利用できる「マイナポータルのアカウントによるe-Taxへの認証連携」が始まりましたが、その認知度は15.7%となりました。

 さらに、地方税ポータルシステム(eLTAX)を利用しますと、給与・公的年金等の支払をする事業者が別々に提出する必要があった支払報告書と源泉徴収票を一括作成し、必要な提出先にそれぞれ提出できることの認知度は17.1%となりました。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2018年1月26日金曜日

中小企業の賃上げ動向

 経済産業省より平成29年「企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」の結果が発表されました。

 この調査は大企業と中小企業とを分けて調査され、大企業は2,001社中364社が回答、中小企業・小規模業者30,000社のうち8,310社が回答しました。

◆中小企業7割近くが積極的に賃上げを実施

 平成29年度に常用労働者の賃上げを実施した大企業は89.7%(前年度90.1%)、正社員の賃金を引き上げた中小企業・小規模事業者は66.1%(前年度59.0%)となりました。

 前年と比較すると中小企業が積極的に賃上げを行っている傾向がうかがえます。

◆賃上げをする理由・しない理由

 中小企業・小規模事業者が賃上げを実施した理由についてベスト5は次の通りです。

①人材の採用・従業員の引き留めの必要性(49.2%)

②業績の回復・向上(34.3%)

③他社の賃金動向(21.6%)

④最低賃金引き上げの為(11.4%)

⑤業績連動型賃金制度のルールに従った(9.1%)

 一方で賃金を引き上げていない理由としては「業績回復、向上が不十分」72.6%が最も多く、賃上げを実施していない企業は業績が低迷している事がうかがえます。

 賃上げ額は、正社員1人当たり平均賃金の引き上げを実施した企業での年額をみると100,000円以上が最も多く、従業員規模が小さい企業ほど引き上げ額は大きくなる傾向にあります。

 引き上げ率は1%~2%が最も多く、こちらも従業員規模が小さいほど引き上げ率が高くなっています。

◆月別賃金引き上げ方法等

 引き上げの方法は定期昇給時に上げた企業が約半数と最も多く、賃金表を含む賃金規定を採っている企業は61.0%でした。

 人員計画については人手不足を感じている企業は66.4%であり、正社員の非管理職74.5%、管理職29.1%が不足していると答えています。

 採用方法はハローワークが最も多く78.7%です。

 次いで従業員や知人の紹介、36.9%、求人サイト32.9%と続いています。


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2018年1月25日木曜日

来日外国人興行に際しての報酬払は、源泉税の徴収漏れに注意!

◆来日外国人が行う講演に必要なビザと税務

 世界中で大人気のヨガですが、最近もホットヨガやピラティス教室などが流行っています。

 こうした発祥の地が外国のものは、たとえ同じ内容であっても、本場の人(ヨガの場合はインド人)が講師の講座の方が、有難みも価値も増すように感じられることとなります。

 それに便乗してか、本場の外国人を招いて、1~2か月の間に日本各地を回るツアーも開催されているようです。

 こうした講座の講演者が、日本で働いて報酬を得るためには、興行のビザを取得し、芸能人として税務上扱われて納税することが必要です。

 もし、観光ビザでやってきて、報酬の支払いに際しても何の手続きもせずに支払ってしまうと様々な問題が発生しますので、要注意です。

◆講演主催者が注意すべき税務問題

 来日外国人のこうした仕事は興行の労働許可証がなければ働けません(=報酬を得られません)し、対価も非居住者(=日本に住んでいない人)に対する報酬の支払いとして、20.42%の源泉所得税を天引きしなければなりません。

 また、その源泉税は報酬支払者が支払った日の翌月10日までに国(=税務署)に納付しなければなりません。

 源泉所得税の徴収・納税義務は支払者側にあり、これを忘れると支払者側に源泉所得税未納とその罰金の大きな負担が科されることになります。

 また、本来であれば源泉漏れは受け取った人から還付してもらうのですが、帰国してしまった外国人からは、通常取戻しができず、二重負担となってしまいます。

 十分に注意が必要です。

◆“外国”への支払いは常に源泉税に留意

 外国人・外国会社・外国に居住している人にお金を支払うときには、常に、源泉所得税の問題を考えなくてはなりません。

 他に、卑近な例で言うと、賃貸住宅の家主が外国に居住している人(海外に仕事で駐在している日本人が空き家を賃貸している場合を含む)や外国の法人である場合、家賃の送金に際して源泉税が控除漏れとなっているケースが多いようです。

 なお、“外国”芸能人への報酬や家賃の支払いに際しての源泉税は20.42%が所得税法で決まっている料率です。

 ただし、租税条約で、「政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき個人により行われる場合には免除」等の規定もありますので、租税条約の確認も必須の作業となります。

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2018年1月24日水曜日

平成30年2月の税務

2月13日(火)
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

2月28日(水)
●前年12月決算法人及び決算期の定めのない人格なき社団等の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>

●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>

●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>

●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)

●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>

●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>


○前年分所得税の確定申告(2月16日から3月15日まで)

○前年分贈与税の申告(2月1日から3月15日まで)

○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付


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2018年1月23日火曜日

日露戦争時の織物消費税とは

 日露戦争開始時から第二次世界大戦直後まで課税されていた「織物消費税」について、税務大学校がホームページ上のコンテンツ「税の歴史クイズ」で紹介しています。

 織物消費税は、法定製造場で製造者から織物を受け取る際に、税務署員が標準価格を決定し、受取人がその価格の1割(明治43年時点)を税金として納めるもの。

 日露戦争の戦費調達のための財源として明治37年3月に非常特別税として誕生しています。

 その後も永久税として残り、シャウプ勧告を受けた税制改正で昭和25年1月に廃止となりました。

 課税対象である「織物」の定義は「糸を縦横に交差して織り合わせたもの」。

 税務大学校が「課税された織物はどれか」とするクイズの選択肢に入れた「レースのハンカチ」は、糸と糸を編み合わせたもの、もしくはより合わせたものということで、課税されなかったそうです。

 また、「綿織物」は当初は課税対象でしたが、生活必需品の負担軽減という社会政策から大正15年に非課税になりました。


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2018年1月22日月曜日

「国際観光旅客税」19年1月開始

 政府・与党が2018年度税制改正に向けて検討していた日本からの出国時に1人1回1千円を徴収する新税「出国税」は、「国際観光旅客税」と名称を変更してスタートすることで決着しました。

 自民党内からの提言などを受けて一時は「観光促進税」とすることで検討していましたが、関係者によると、内閣法制局から「名称には課税対象を示す必要がある」と指摘されて「旅客」を入れるように変更したとのことです。

 導入は2019年1月7日から。

 国際観光旅客税は、日本人、外国人を問わず日本を出国する旅行者らから、航空券などの代金に上乗せして徴収します。

 海外から到着して24時間以内に出国する乗り継ぎ客や、2歳未満の子どもは対象から除外。

 政府・与党は当初、19年4月の導入を検討していましたが、中国からの観光客が増える旧正月(2月)前や、日本の年末年始の休暇が終わった後の時期を考慮し、1月初旬に前倒ししました。

 16年の出国数約4100万人(日本人約1700万人、訪日客約2400万人)で計算すると約410億円の財源規模となり、その税収分は観光関連の政策に使います。

 出入国手続きの円滑化や海外での誘致宣伝強化、地域観光資源の整備などを想定していますが、これまで無駄遣いが指摘されてきた特定財源とはせず、一般会計に入れて配分します。

 ただ一般会計だと、観光以外の政策に多く使われる可能性があります。

 そのため、政府は通常国会に観光関連の法案を提出し、財源の多くが観光関連の政策に振り向けられるようにする方針です。


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2018年1月19日金曜日

【時事解説】良いインフレと悪いインフレ その2

記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター

 日銀の異次元の金融緩和で株価は上がり、経済マインドを好転させる効果はあったのですが、これまでのところ、目標であるデマンドプル型のインフレには至っていません。

 日銀はコストプッシュ型でも、とにかくインフレになればいいと考えているのではないかと思います。

 ただ、現在の状況では、コストプッシュ型であるにしろ、マイルドなインフレを起こすことは容易ではなさそうです。

 もしできたとして、それだけで終わっては意味がありません。

 コストプッシュ型インフレでは、生活費が上昇し、庶民の生活は苦しくなるだけだからです。

 コストプッシュ型がデマンドプル型のインフレに転化できるかが次の課題になります。

 最初はコストプッシュ型であっても、それが全般的な賃金上昇に結びつき、国民の心理をインフレマインドに転換させ、好循環のデマンドプル型に発展させられるのかが問われます。

 今までの状況を見れば、消費マインドは落ち着き、世界的にも物価は低落傾向にあり、その可能性は高くないだろうと、思います。

 日銀はコストプッシュ型インフレを起こすこと、そしてさらに、コストプッシュ型インフレをデマンドプル型インフレに転化することの二つの大きな山を越えなければなりません。

 それは二つとも簡単ではありません。

 インフレマインドの醸成には通貨当局の気合が重要だと言ってきた日銀が、インフレ目標の旗を下すことは簡単にはできないでしょうが、日銀がインフレを制御できるかどうかという点について、難しい局面に差し掛かっていることは事実です。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2018年1月18日木曜日

【時事解説】良いインフレと悪いインフレ その1

 インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」の2種類があります。

 良いインフレとは経済全体が活性化して、需要が増大することにより、品物が不足気味になり、物価が上昇するという経路をたどるインフレです。

 これをデマンドプル型インフレと呼びます。

 一方、悪いインフレとは製品を作る際の費用が増加して、生産費用の増大を賄うために物価が上昇するインフレです。

 これをコストプッシュ型インフレと呼びます。

 デマンドプル型は需要側が物価を引っ張り上げるのに対し、コストプッシュ型は供給側が物価を押し上げる形になります。

 デマンドプル型は賃金も上がり、経済が好循環の時に生じるインフレですが、コストプッシュ型だと物価だけが上がり、国民生活は苦しくなります。

 日銀が目指しているインフレは言うまでもなくデマンドプル型です。

 そこで、物価を司る日銀の金融政策について、限界があるとする「反リフレ派」と、限界はないとする「リフレ派」の対立があります。

 反リフレ派は日銀の金融政策はもっぱら金利政策なのだから、ゼロ金利になった段階で、金融緩和の有効性は大きく減退すると主張します。

 一方、リフレ派は、物価は極めて貨幣的現象なのだから、物価の騰落は貨幣を統括する日銀次第でどうにでもなる。

 ゼロ金利になっても、貨幣供給量を増やし、日銀のインフレに対する強い決意を示すことにより、人々の期待インフレ率を高めることができ、期待インフレ率が高まれば、消費意欲の拡大を促し、実際にインフレを起こすことができる、と考えます。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)


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2018年1月17日水曜日

国際課税問題及び租税条約に関するアンケート調査結果を公表!

≪経済産業省≫

 経済産業省は、「国際課税問題及び租税条約に関するアンケート調査」結果(有効回答数2,073社)を公表しました。

 それによりますと、過去6年以内に課税事案が発生した国・地域は、中国(34%)が最多となり、次いでインド(15%)、タイ(5%)と続きました。

 課税事案の措置内容は、「移転価格税制」(47%)が最多となり、次いで「恒久的施設(PE)」(16%)、「ロイヤルティ」(15%)の順となりました。

 「移転価格税制」に関する課税事案の上位3ヵ国のうち、中国では「みなし利益率による増額」(63%)が最多なのに対して、インドネシアやインドでは「不適切な比較対象取引を用いた移転価格税制」(各32%、30%)の方が多くなりました。

 事例をみてみますと、「中国現地法人の利益率が不当に低いことを税務当局に主張され、みなし利益率との差について追徴課税を受けた」(中国)というものがありました。

 税制や執行面で問題があるとされた国・地域では、中国(31%)、インドネシア(13%)、インド(10%)の順となりました。

 また、「恒久的施設(PE)認定に関する課税事案の上位3ヵ国のうち、中国では「出張者・出向者」(53%)、インドネシアでは「駐在員事務所」(100%)、インドでは「子会社・第三者」(67%)が最多となりました。

 事例をみてみますと、「駐在員事務所がPE認定され、日本・インドネシア間の貿易に対して一定の率を乗じて計算した数値をもって、PEに係る所得として認定された」(インドネシア)というものがありました。

 課税措置への対応(複数回答)では、49%が「当初課税措置を受け入れた」となり、次いで「不服申立て」(26%)、「裁判で係争」(20%)、「相互協議」(15%)の順となりました。

 改正・改善が望まれる点として、「税制の複雑さ、頻繁な改正」(19%)、「地域又は税務担当官による執行の差」(18%)、「税還付手続き」(16%)などがあげられました。

 租税条約の改正が望まれる国・地域では、中国(42%)が最多で、次いでインド(33%)、タイ(15%)、インドネシア(10%)、韓国(8%)の順となりました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2018年1月16日火曜日

住宅リフォーム減税の工事証明書は1種類で可能へ!

 すでに住宅リフォーム減税に関する工事証明が1種類の証明書で行えるようになっております。

 これまでは、耐震改修と省エネ改修を行い、所得税と固定資産税の両方の特例措置を受けようとする場合には、住宅耐震改修証明書、増改築等工事証明書、固定資産税減額証明書の3種類の証明書が必要でしたが、2017年4月以降は、増改築等工事証明書(又は住宅耐震改修証明書)の1種類の証明書があれば特例に申請が可能になりました。

 これまでのリフォーム減税に係る工事証明書は、減税を受ける税目や、施行した工事内容によって異なる様式が定められており、複数の減税を申請する場合は手続きが煩雑で、3月までは、耐震改修では住宅耐震改修証明書(所得税)・固定資産税減額証明書、省エネ改修では増改築等工事証明書(所得税)・熱損失防止改修工事証明書(固定資産税)、バリアフリー改修及び同居対応改修は増改築等工事証明書の4種類の指定がありました。

 そこで、住宅リフォーム減税制度の利用促進を図るため、増改築等工事証明書・住宅耐震改修証明書の2種類に統一しました。

 耐震改修に係る特例については、建築士等だけでなく地方公共団体の長も工事証明書の発行が可能なため、その際の工事証明書は、増改築等工事証明書ではなく住宅耐震改修証明書となります。

 2017年度税制改正で創設された「長期優良住宅化リフォーム」も増改築等工事証明書での特例申請となります。

 「長期優良住宅化リフォーム」とは、2017年度税制改正で創設され、既存住宅の長期優良住宅化促進のため、耐震・省エネリフォーム減税の特例を拡充し、同特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の「耐久性向上改修工事」を加えるとともに、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の「耐久性向上改修工事」の費用に相当する住宅借入金等を加えたものです。

 なお、耐震改修や省エネ改修、長期優良住宅化リフォームで、所得税と固定資産税の両方の特例措置を受ける申請をする場合には、それぞれの申請に証明書の写しを用いることはできず、同じ証明書を2通発行する必要がありますので、該当されます方は、あわせてご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2018年1月15日月曜日

従業員が「iDeCo」 加入時に行う事業主の手続

◆改正を契機に加入者増加

 今年1月から改正確定拠出年金法の施行により個人型確定拠出年金(通称iDeCo)は基本的に20歳以上60歳未満のすべての方が任意で加入できるようになりました。

 この改正により、今年に入ってから加入者が大幅に増加しており平成29年6月時点における加入者数は54万9943人と前年比203.8%となっています。

◆iDeCoの仕組み

 iDeCoは、公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金の1つであり、加入者の老後の所得確保の一助となる制度です。

 加入者が自ら定めた掛け金を拠出・運用し、原則60歳以降に掛け金とその運用益の合計額を基に給付額が決定し、受ける仕組みです。

 厚労省では、従業員がiDeCoへの加入を希望した場合に速やかに加入できるよう、事業主への協力を呼び掛けています。

◆事業主が行う事務手続きとは

 企業で働く従業員がiDeCoに加入する際、は事業主が行わなければならない事務手続が発生します。その手続は次の通りです。

(1)事業所登録

 加入者となる従業員(会社員等の2号被保険者)を雇用する事業所は国民年金基金連合会(国基連)に事業所登録を行います。

(2)事業主証明書の記入

 加入を希望する従業員から提出される事業主証明書に必要事項を記入します。

(3)事業主証明(年1回)

 年に1回、国基連加入時に得た情報を基に加入者の確認を行いますが、その際に事業主証明が必要となります。

(4)事業主払込の場合の掛金納付

 加入者が給与天引きで事業主払込を希望した場合は源泉徴収の際に掛け金を控除します。

 そして事業主から国基連に納付します。

(5)年末調整

 所得控除がある為、加入者が個人払込を選択した場合は年末調整が必要です。

 本人から小規模企業共済等掛金払込証明書を提出してもらいます。

 このように従業員が個人型確定拠出年金に加入した場合でも会社として行う事務が発生します。

 申し出があった時は協力をしてあげる事が必要でしょう。


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2018年1月12日金曜日

消費税 新規設立は少し慎重に

 法人の新規設立にあたっては、特別な事情がない限り、なるべく長く期間をとる方向で事業年度、いわゆる決算期を決めます。

 その方が、設立から早めに決算期が到来する煩わしさから解放され、落ち着いて経営に専念できるといったメリットがあります。

●思わぬ落とし穴

 消費税では、新規設立の場合(資本金又は出資金1,000万円以上の法人は除く)には、基準期間がないので設立時の事業年度と翌事業年度は、原則、免税事業者となります。

 なお、基準期間とは、その事業年度の前々事業年度で、免税事業者とは、消費税の納税義務のない事業者を言います。

 しかしながら、消費税の課税事業者を判定するのは基準期間だけでなく、特定期間の課税売上高等で判定する場合もあります。

 特定期間とは、原則、その事業年度の前年事業年度(設立一期)で、前事業年度開始から6か月の期間を言い、そして、その期間の課税売上高が1,000万円を超え、かつ、給与等の支払いが1,000万円を超えていれば、その事業年度は課税事業者となり、消費税の納税義務を負うことになります。

 設立一期目から好業績が予想される法人の場合、この特定期間があることで、本来、翌期は免税事業者であると予期されていたにもかかわらず、課税事業者となってしまう可能性があります。

●特定期間の回避策

 そこで、それを回避するにはどうしたらよいか、ですが、特定期間の要件を外すこと、すなわち、設立一期の事業年度を「短期事業年度」になるように設定することです。

 短期事業年度とは、
(1)設立一期の事業年度が7か月以下の場合、又は(2)設立一期の事業年度が7か月を超え8か月未満の場合であって、設立一期開始の日以後6か月の期間の末日の翌日からその事業年度終了の日までの期間が2か月未満の場合で、これらの期間は、特定期間から除外されています。

 なお、設立一期の後半で、特定期間の存在に気づいたときは、上記(2)の要件を満たすように決算期を変更することで翌期に課税事業者となることを回避できる場合もあります。



2018年1月11日木曜日

同姓同名の別人に固定資産税

 土地や建物の所有者に課される固定資産税を、三重県桑名市が同姓同名の別人に誤って13年間課税していたことが明らかになりました。

 本来の課税対象だった市民が気付き、発覚したとのことです。

 市によると、2004年4月に市民の女性が、固定資産税の納付方法を口座振替に変更した際、市が誤って本人だけでなく同姓同名の女性の固定資産税についても一緒に引き落とすよう設定してしまったそうです。

 その後、自分の固定資産税が引き落とされていないことに気付いた女性が金融機関に相談し、ミスが判明しました。

 約13年間で6万1800円が誤って引き落とされていたといいます。

 市は女性に謝罪の上で全額を返金し、同姓同名の女性にも謝罪した上で改めて本来の税額を請求するということです。

 固定資産税は、自治体側が実際の不動産などの状況を基に税額を計算し、納税者に納付すべき金額を伝えてくる賦課課税方式を採用しています。

 役所が間違えないことを前提としていますが、近年になり多くの自治体で過徴収が発覚。

 過去数十年にわたり数百万円を過徴収している例もあり、全国的な問題となっています。


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2018年1月10日水曜日

軽減税率補助金の期間延長

 中小企業庁は消費税の複数税率対応の補助金制度について、当初予定されていた締め切りを8カ月延長することを明らかにしました。

 補助金は8%と10%の2種類の消費税率に対応するため新たなレジやシステムを導入する企業をサポートするもので、最大200万円を受け取ることができます。

 新たな締め切りは、軽減税率が導入される予定の2019年10月1日の前日である同年9月30日。

 この日までに新たなレジやシステムの導入を終え、その後、事後申請書を提出することが必要です。

 補助金の申請受付そのものの新たな締め切りは、後日別途発表するそうです。

 同補助金は、軽減税率の導入に伴い1台のレジで複数の税率への対応が必要となる事業所があることから、新制度に対応した新たなレジシステムの導入に対して補助金を交付するもの。

 補助される金額は導入にかかったコストの3分の2で、レジ1台当たり20万円が上限となっています。

 ただし導入するのが1台のみで費用が3万円未満であれば4分の3、タブレットなどの汎用端末であれば2分の1。

 また新たに商品マスタの設定や機器設置運搬などに費用がかかる時には、さらに1台あたり20万円を上乗せします。

 どれだけ導入しても、1事業者当たり200万円が上限となります。

 同補助金は当初増税が予定されていた17年4月に向けて16年4月に申請受付を開始しましたが、同年6月の増税延期を受け、現在に至るまで受付を継続しています。


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2018年1月9日火曜日

重複適用の可否 投資促進税制と圧縮記帳

 平成29年度税制改正で中小企業投資促進税制の一部が見直しされました。

 その概要は次のとおりです。

 対象資産から器具備品が除かれ、また、上乗せ措置としてあった特定生産性向上設備等については、新たに創設された中小企業経営強化税制に移行されました。

◆中小企業投資促進税制の税額控除

 特定中小企業者等が特定の機械装置等(以下、設備)をした場合には、その資産の取得価額の7%に相当する金額について税額控除の適用があり、当該控除額が法人税額の20%を超えるときは、法人税額の20%相当を限度として、法人税額から控除することができます。

 なお、特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人(農業協同組合等を除く)以外の法人をいいます。

◆国庫補助金等に係る圧縮記帳

 事業者は、国又は地方公共団体等からの補助金等の交付を受けて固定資産を取得した場合、法人税法上、当該補助金等で取得した固定資産については圧縮記帳の特例が適用できます。

 この特例の概要は、次のとおりです。

 その取得した固定資産の帳簿価額を補助金相当額(圧縮限度額)の範囲内で損金経理により直接減額し、当該金額をその事業年度の損金の額に算入するものです(積立方式も可)。

◆重複適用の可否

 特定中小企業者等も自治体からの補助金を受けて投資促進税制の対象となる特定の設備を取得することがあります。

 この場合、「税額控除」と「圧縮記帳」どちらか一方しか適用できず重複適用ができないのでは、と思ってしまいます。

 しかし、法人税上の圧縮記帳と租税特別措置法上の税額控除との重複適用については、それを禁止する規定がありませんので、重複適用は可能です(特別償却も可)。

 その適用に当たっては、損金算入された国庫補助金等の交付金額(予定額も含む)を控除した金額を取得価額として税額控除限度を計算することになります。

 なお、国庫補助金等交付予定額を控除しない金額を取得価額として税額控除限度額を計算して申告したときは、固定資産の取得の後に国庫補助金等を受けても圧縮記帳はできません。



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2018年1月8日月曜日

年金受給開始70歳超えも選択肢に

◆年金受給開始を70歳超まで選択可能に?

 内閣府の「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」は、公的年金の受給開始年齢を70歳以降まで繰り下げることを可能にする仕組みつくりを盛り込んだ案をまとめました。

 これをもとに年内に長期的な高齢者施策の「高齢社会対策大綱」の改正案を閣議にはかる予定です。

 現在は年金の受給開始年齢は原則65歳です。

 現行法では60歳から70歳の間で開始年齢について「繰り上げ」もしくは「繰り下げ」ができます。

 開始年齢を早めれば65歳から開始するのに比べて最大30%減額、遅くすれば1年ごとに0.7%ずつ増え、最大42%増える仕組みになっています。

 今回の提案では希望すれば70歳を過ぎてからの受給開始が可能になり、その分年金額が増える制度を導入しようと考えています。

◆年内に「高齢社会対策大綱」策定

 骨子案として「すべての高齢者の意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す」とし「年齢区分で人々のライフステージを画一的にくくることを見直すことが必要」としています。

 「意欲ある高齢者が働き続けられ、また就業ができる仕組みを構築できることが基本」であり、併せて「高齢者の低所得を防止」する視点も望まれるとしています。

 60歳の定年後に再雇用される仕組みだけではなく、新たな職域としてそれまでの経験や知識を生かした仕事や社会活動、地域社会のコミュニティ作り、資産活用等も盛り込まれています。

◆高齢者の定義が変わる?

 日本老年学会などは今年の1月に現行法で65歳と定められている「高齢者」の定義を「75歳」以上に引き上げ65歳から74歳は、准高齢者として区分すべきと提言しました。

 同学会は10年前に比べると現在の65歳以上の人の知的・身体能力は5歳から10歳若返っていると判断したということです。

 准高齢者年齢とされた人々は近い将来働くことが通常な年齢となるかもしれません。

 少子高齢化で人口が減る中、政府は多くの高齢者に働き続けてもらいたいとのことでしょう。

 そうすれば年金の財源の安定にもつながるということかもしれません。

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2018年1月7日日曜日

「相続廃除」を認める3つの理由

 オウム真理教の麻原彰晃死刑囚(本名・松本智津夫氏)と妻を、四女の相続人から廃除することを認める決定を、横浜地裁が下しました。

 この「相続人の廃除」は虐待など相当の理由がなければ認められないレアケースです。

 法定相続人のうち配偶者、子、父母は、たとえ遺書などで財産分割の指定がなくても、民法で定められた遺留分によって、最低限の遺産を受け取る権利があります。

 財産を残す本人がどれだけ遺産を分け与えたくなくても、基本的にその取り分をゼロにすることはできないことになります。

 しかし例外もあり、その一つが「相続廃除」です。

 相続廃除は、財産を持つ人本人が、家庭裁判所に申し立てるか遺書に記載することで、特定の相続人を遺産分割協議に参加させないことができます。

 廃除された相続人は遺留分も失い、1円も手にすることはできません。

 しかし民法で定められた遺留分まで奪うという強制的な処分だけに、相続廃除は簡単には認められていません。

 一番多いのは、長年親から暴力などの「虐待」を受けた子どもが、親の相続廃除を申し立てるパターンです。

 虐待でなくても日常的に侮辱的な言葉を投げかけたり、秘密を暴露して名誉を傷つけたりといった「侮辱」行為がある時にも、廃除が認められます。

 そこに加えて、その他の「著しい非行」があった時に、家裁は相続人の廃除を認めます。

 麻原死刑囚について四女から相続廃除の申し立てを受けた横浜家裁は、地下鉄サリン事件など複数の事件を起こしたことや、母親が四女の養育を教団信者に任せていたことなどが、廃除の条件となる「虐待」と「著しい非行」に当たると判断しました。


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2018年1月6日土曜日

相続税調査の8割で問題指摘

 国税当局が平成28年7月~29年6月に実施した相続税の実地調査1万2116件のうち、8割にも上る9930件で申告漏れなどの非違が指摘されたことが国税庁の報告書で明らかになりました。

 申告漏れがこれほど発生するのは、相続税の申告は専門家にとっても難しい手続きであり、また相続人が気付かなかった相続財産が後から出てくることがあるためです。

 相続税関連のミスを防ぐには、申告漏れが発生しやすいポイントを確実に確認するのが近道です。

 申告漏れ財産の代表格には、口座名義人と実際の所有者が異なる「名義預金」が挙げられます。

 被相続人が生前に通帳を管理し、入出金をしていたのであれば、たとえ家族名義の口座でも名義預金と認定され、相続税の課税対象になります。

 昨年度の調査でも多くの相続人が名義預金を指摘され、追徴税額を受けました。

 また、国税当局が近年監視を強めているのが海外財産です。

 海外資産を持つ人への調査は15年前と比べると8倍にまで増え、28年度は917件の実地調査が行われました。

 問題が指摘されたのはそのうち117件。

 調査によって申告漏れなどの問題が指摘される割合は、相続税の実地調査全体でみると82%ですが、海外財産関連の調査では12.8%にまで下がります。

 すなわち、国内にしか財産を持っていない相続人には高確率で問題があると分かった段階で調査に着手する一方、海外財産を持つ相続人には、問題を指摘できるかどうか不確定であっても手当たり次第に調査をしている当局の実態が見て取れます。


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2018年1月5日金曜日

財務省:国際的課税逃れ防止の統一ルールに署名!

 財務省は、日本を含む67ヵ国・地域が「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」(BEPS防止措置実施条約)に署名したことを明らかにしました。

 各国の税制の違いなどを利用した過度な節税策が問題視されるなか、この多国間協定により複数の国にまたがる過度な節税策にまとめて網がかけられるとみられております。

 同多国間協定は、BEPSプロジェクトで策定された税源浸食及び利益移転(BEPS)を防止するための措置のうち租税条約に関連する措置を、同条約の締約国間の既存の租税条約に導入することが目的です。

 同条約の締約国は、租税条約に関連するBEPS防止措置を、多数の既存の租税条約について同時かつ効率的に実施することが可能になります。

 協定は5ヵ国以上が批准した時点で発効され、日本政府は2018年の通常国会で協定承認を目指すとしております。

 現状、過度な節税封じの対策を共有するには、二国間の租税条約の改正が必要ですが、世界中に広がる課税逃れに対抗するには、該当国の数だけ条約改正手続きが必要となり、煩雑で時間もかかります。

 租税条約は世界で3,000ほどあり、個別に改正手続きを進めると10年近くかかると言われましたが、多国間協定により、二国間の条約改正をしなくても課税逃れ対策の統一ルールを適用できるようになります。

 ただし、米国は今回の多国間協定に参加せず、2国間の租税条約などで対応するとしており、統一ルールで足並みをそろえますが、国際的な連携に課題が残っております。

 こうしたなか、財務省は、2018年にもグローバルに活動する企業の節税防止策を強化する方針で、各国の税率の違いを利用した租税回避を防ぐ仕組みを2018年度の与党税制改正大綱に盛り込む方向で調整予定です。

 現状、日本ではグループ間の利子の支払いについて所得の5割まで損金計上が認められますが、財務省はこの割合を1~3割に圧縮して低税率国の子会社への利益移転を防ぐ模様です。

 この他、知的財産を低税率の国の子会社に移す節税策の防止や、過度な税逃れを指南する税理士に開示義務を課す新制度の導入も検討しているといい、多国間協定により、国際的な課税逃れ防止が大きく前進するものとみられております。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年12月1日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2018年1月4日木曜日

「外れ馬券は経費」という判決 競馬好きの貴方に即当てはまるわけではない

◆「外れ馬券は経費」:自動購入ソフトを使っていないケースでも12/15最高裁確定へ

 「『自動購入ソフトを使わない外れ馬券の経費性を巡る問題、札幌国税局vs北海道在住の男性』の判決期日を最高裁裁判長が12月15日に指定したにもかかわらず、『結論を変更するのに必要な弁論が開かれていないため』、約1億9千万円の追徴課税処分を取り消した2審東京高裁判決が確定する見通しとなった」という報道がありました。

 自動購入ソフトを使ってネットで大量の馬券を購入していた大阪の男性の裁判において、馬券購入は「営利目的の継続的行為」で、払戻金は雑所得にあたるとして平成27年3月最高裁が認定し、外れ馬券分を経費と認める判断を示していた判決に続く話です。

◆争点は「経済的活動の実態があるか否か」

 今回のケースでは、「ソフトを使わずにレースごとに結果を予想して馬券を購入」しており、それが「経済的活動の実態があるか否か」というのが争点でした。

 1審(東京地裁)では納税者の負けでした。

 しかしながら、2審(東京高裁)では、「男性は多額の利益を恒常的に上げていた」と判断し、最高裁のケースと「購入方法に本質的な違いはない」とし、外れ馬券分を経費と認めて課税処分を取り消し、納税者の勝ちとなっていました。

 「外れ馬券が経費かどうか」は、「継続的・恒常的に利益を上げるために購入を行っていたかどうか=営利を目的として継続的に行われているかどうか」にあるようです。

◆あなたの外れ馬券は、原則、経費ではない!

 たまの息抜きや射幸心のために競馬を楽しむ人の場合は、外れ馬券は経費となりません。

 万馬券を当てたようなとき(=年間を通して一時所得の特別控除である50万円を超える当たりだった場合)は、そのレースの外れ券だけが経費です。

 すなわち、他のレースの外れ券を万馬券の当たりから差し引くことはできません。

 競馬の当たりも、儲けとして、確定申告して税金を納めなければなりませんので、忘れないようにしましょう。


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2018年1月3日水曜日

棚卸資産の評価方法 届出の棚卸評価をしなかった場合

◆棚卸資産の評価方法の選定・変更

 法人が商品・製品・原材料などの棚卸資産を有することとなる場合には、その事業の種類(又は事業所)ごと・棚卸資産の区分ごとにどのような方法で評価を行うか選択し、その「届出書」を所轄の税務署に提出しなければなりません(提出がない場合には、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」となります)。

 ●期末評価:原価法・低価法
 ●算定方法:個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法

 この棚卸資産の評価方法を変更しようとする場合には、その新たな評価方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、「変更申請書」を所轄税務署長に提出し、承認を受けなければなりません(原則として選択した方法で3年以上継続適用後)。

◆届け出た評価方法で評価しなかった場合

 もし、「届出書」と異なる評価方法により評価を行った場合、どのような形になるでしょうか。

 この場合、法定評価方法である「最終仕入原価法による原価法」(一定の場合、その法人が行った評価方法)により評価することとされています。

 例えば、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「先入先出法」を行っている場合には、税務署の行う更正・決定の場面では、「最終仕入原価法」により評価する場合もあるということになります(一定の場合、届出の「総平均法」で是正も認められます。自主的な修正申告の場合には、この例が多いと思います)。

 一方、「総平均法」の届出を行っている会社が変更手続きを経ないで「最終仕入原価法」を適用して申告した場合には、適法とはいえませんが、結果的には認められることになります。

 ただし、青色申告の取消事由として「選定した評価方法による評価額で行われていない場合」が挙げられているため、高リスクといえます。

◆評価方法を設立第1期目に変更できる?

 設立当初に、ある評価方法で届け出ていたが、最初の申告時に別の評価方法を採用したいという場合では事情が異なります。

 設立後最初に提出する法人税申告書の提出期限内であり、その変更後の評価方法を最初の申告で採用しているときは、当初の「届出書」からの変更が認められています。


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2018年1月2日火曜日

言葉を理解するAI家電の可能性

 最近、人間の言葉を理解する「AI家電」が注目を集めています。

 ヒトが話しかけた内容を理解するので、声だけで家電を操作することができます。

 パネルを見なくても利用できるので、「ノールック家電」、(no-look:操作パネルを見る必要のない家電)とも呼ばれています。

 AI家電の中でも、スマホの次のブームになると期待を集めているのがGoogle Home(グーグルホーム)やAmazon Echo(アマゾンエコー)といったAIスピーカーです。

 外観は小型のスピーカーのような形をしています。

 「テレビをつけて」と語りかけると、わざわざスイッチを押しに行かなくても、AIスピーカーがテレビをつけてくれます。

 自動掃除機がAI対応のもの(お掃除ロボット、ルンバなど)ならば、「掃除して」と話しかけると、AIスピーカーがお掃除ロボットに掃除をするように信号を送り、掃除がはじまります。

 また、AIスピーカーは話すこともでき、天気予報などを訊ねると、AIスピーカーが「今日は晴れのち曇りです」といった具合に答えます。

 着目したいのは、利用回数が増えると使い手の好みを学習する点です。

 音楽ならば、最初は様々なジャンルの音楽を再生しますが、ジャズが好みの人には次第にジャズを多く再生するようになります。

 また、じゃんけんなどの遊びもでき、「楽しい」といった感情を使い手と共有することもできます。

 何年も一緒にいると、やがて家族の一員のような、なくてはならない存在になるのかもしれません。

 現在、AIスピーカーに関する技術は米国が優勢で、グーグルやアマゾンが先行しています。日本ではLINEが独自でAIの開発を進め、健闘している状態です。

 スマホの次にブームになると期待されているAI家電。

 技術の開発競争において、世界全体では米国が優勢な状態にあります。

 米国内で、もっとも先行しているのがグーグルとアマゾンで、日本ではLINEが独自で開発を進め、健闘している状態です。

 LINEは自社のメインサービス「LINE」を強みに、利用者が機器に話しかけた言葉をメッセージとして相手に送る機能を目玉にしています。

 LINEのほかには、ソニーやパナソニックなどがAI家電の開発に取り組んでいます。

 ただ、ソニーとパナソニックは、言葉を理解する部分に関しては、グーグルの技術を用いて、そこに自社独自の技術を加え、新たな製品を提供しようとしています。

 パナソニックは洗濯から衣服の折り畳みまで自動化した洗濯機の製品を欧州の家電見本市に参考展示しました。

 また、ソニーは独自の顔認識技術を用いて、コミュニケーションロボットを開発しています。

 こちらは家族の顔を判別する機能に特徴があります。

 外出先で手持ちのスマホから「家族の様子を教えて」と打ちこむと、「5分前に○○くん(子どもの名前)を見かけました」などと、返事を送ってくれます。

 AIスピーカーはグーグルやアマゾンが先行していますが、自社独自の機能を提供することで、後発企業でもAI家電の分野で十分戦えるといえます。

 今後は、家庭での利用だけでなく、企業からの需要にも期待できます。

 既に、一部の企業では活用がはじまっています。

 ある小売店は店内の案内にAIスピーカーを用いています。

 ほか、会社の受付けなど、様々な分野での活用が期待できそうです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2018年1月1日月曜日

よろず支援拠点による小規模企業支援

 よろず支援拠点は、国による中小企業・小規模事業者に対する総合的な支援機関として2014年6月に各都道府県に設置されました。

 よろず支援拠点による主な支援内容は、①売上拡大等の課題解決策を提示する「経営革新支援」、②資金繰り改善や事業再生等の課題解決策を提示する「経営改善支援」、③どこに相談すべきかわからない事業者に対して的確な支援機関等を紹介する「ワンストップサービス」に大別されます。

 よろず支援拠点には、経営相談に対応する専門家であるコーディネーターが配置され、中小企業・小規模事業者からの経営相談に対するきめ細やかな対応を行っています。

 以下で「小規模企業白書2016年版」に沿って、よろず支援拠点の特徴についてみていきましょう。

 まず、相談者の規模についてみると、創業前の者が約1割、従業員数20人以下の事業者が約7割となっており、小規模企業の占める割合が高いことがわかります。

 次に、よろず支援拠点に配置されている専門家の経歴についてみると、経営コンサルタントが最も多く、他にも民間企業出身者、支援機関出身者など幅広い専門家を揃えていることがわかります。

 相談の解決手法としては、コーディネーターによる直接的なアドバイス以外にも、相談内容に応じて適切な支援機関や専門家を紹介する「ワンストップ支援」や、外部の支援機関等と支援チームを構成して課題解決にあたる「チーム支援」など外部の支援機関の専門家と連携した対応も行っています。

 このように、よろず支援拠点では他の支援機関とも連携しながらとくに小規模企業が抱える様々な経営相談にワンストップで対応することが期待されているのです。

 では、よろず支援拠点においては具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

 ここでは「小規模企業白書2016年版」において、よろず支援拠点の事例として紹介されている老舗菓子店への支援の取組みについてみていきましょう。

 同店は1904年(明治37年)創業の老舗の菓子店で、「まんじゅう」や「もち菓子」、「ようかん」など和菓子を中心に製造・販売しています。

 近年では町内の常連客だけでなく、観光客へと販売を拡大するため、町の歴史や風情を取り入れたオリジナル商品の開発にも力を入れています。

 ここ最近有名菓子店の近隣への出店という環境変化を受け、同店は商工会の経営指導員に対応策を相談しました。

 相談を受けた商工会の経営指導員は、同店が開発したオリジナル商品のブランド化を急ぐ必要があると感じ、商標登録を勧めました。

 しかし、商標登録申請には専門的な知識も必要であるため、よろず支援拠点のコーディネーターに協力を依頼し、発明協会とも連携して同店への支援を開始しました。

 具体的には看板商品の商標登録に向けた支援や、その後の事業展開に向けた支援を商工会とよろず支援拠点とが連携して行っています。

 上記のように相談者の支援に対し専門的に知識が必要な場合は、一つの支援機関だけでは対応できない場合もあります。

 こうした中、相談内容に応じて適切な支援機関や専門家を紹介するといったよろず支援拠点がもつ「ワンストップ支援」の機能を活用することによって、小規模企業が抱える様々な経営課題に対して効果的な解決策を提供することが可能となるのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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