わが国の経済においては、中長期的に労働力人口(15歳以上で、労働する能力と意思をもつ者の数)の減少が見込まれることから、労働力を「量」の面から補完するだけでなく、個々の労働者の潜在力を磨き上げることで労働の「質」の向上を図ることも求められています。
2014年6月に改訂された日本経済の再生に向けた成長戦略である「日本再興戦略」においては、女性の活躍促進と働き方改革が謳われており、女性の更なる活躍促進への期待が高まっています。女性の年齢別就業率をみると、20代後半から30代にかけて就業率の低下がみられるいわゆる「M字カーブ」が認識されており、いかにして解消するかが重要なポイントの一つとなっています。
「M字カーブ」解消の方法としては、出産、育児によって退職した女性をどのようにして復職させるかということが論点としてあげられますが、企業による女性の雇用だけでなく、女性自らによる起業の推進も求められています。
一方で、女性の起業には、男性の起業とは異なった特徴もみられます。「中小企業白書2012年版」によると、女性が起業する際の課題としては「経営に関する知識・ノウハウの不足」、「事業に必要な専門知識・ノウハウの不足」と回答する割合が男性と比べて高くなっています。また、女性が起業時に欲しかった支援についてみると、「同じような立場の人(経営者等)との交流の場」「経営に関するセミナーや講演会」と回答する割合が男性と比べて高くなっています。
では、女性による起業への支援においては、具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで島根県浜田市において開催されている女性起業支援セミナーの事例をみていきましょう。
島根県浜田市では、起業家支援プロジェクト事業の一環として、「女性のための独立・創業セミナー」を開催しています。これは創業を検討中または創業後まもない女性を対象として、全5回の講義とワークショップ及び個別面談による実践的な指導を行うものです。
セミナーでは参加者が自身の強みを知り事業のイメージを明確にしつつ、事業計画書の策定に向けた取組みが行われます。
メインの講師は女性起業家が務めており、女性起業家としての講師の経験をもとに女性の特性を踏まえた共感型の指導が行われています。また、実際に創業した先輩女性起業家との交流と質疑の場をつくり、起業への意欲を高める内容となっています。このようなセミナーに参加することで、先輩の女性起業家や専門家から経営や事業に関する知識やノウハウを得られるという効果や、同じような立場である参加者同士の交流や意見交換も期待され、その中からお互いに相談に乗ったり助言を与えてくれたりする起業家仲間を見つけられることも可能となるのです。
女性起業家を対象としたセミナーの開催は、女性特有の起業の課題を克服するうえで、重要な役割を果たすことが期待されています。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
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