上場企業で社外取締役が増加しています。
これまで日本企業の取締役は社内の生え抜きがほとんどで、意思決定が内向きになり過ぎると、かねて批判されていました。
社外取締役の数を増やし、取締役会に社外の多様な意見を反映させようというものです。
そこで、社外取締役の果たすべき役割を投資の意思決定とトップの選任について考えてみます。
投資の意思決定では、採算性があると判断されれば投資を行い、採算性がなければ投資を行いません。
情報量の違いによる若干の相違はあるかもしれませんが、合理的判断をする限り、そこに、社内取締役と社外取締役に本質的な差異は生じないはずです。
違いが生じるとしたら、投資できずに余ったキャッシュの使い方にあります。
社内取締役は入社以来ずっと同じ会社に勤務し、会社に愛着を持ち、多くの仲間が社内にいますから、会社の存続を第一に考えます。
会社の外部環境はどのように変化をするか分かりません。
ですから、社内取締役はまさかのときに備えて、余剰キャッシュをできるだけ蓄え、社内留保を多く持とうという発想をしがちです。
一方、社外取締役は会社内で人生を送ってきたわけではありませんから、株主あるいは一般投資家の利益を社内取締役より強く意識します。
そこで、投資に使い切れない余剰キャッシュが生じれば、社内留保よりも配当等の株主還元を優先することになります。
今まで、日本の企業は社内留保に偏りすぎる傾向があったので、社外取締役の増加が社内留保と株主還元のバランスの改善につながることが期待されます。
企業の消長は何といっても経営トップの能力に左右されます。
したがって、取締役会の最も大きな役割は経営トップの選任にあると言われます。
経営トップの選任においても、社外取締役の役割が増大しています。
我が国において、社外取締役がトップの選任についてアメリカほど重要な役割を果たしていいかどうかには議論のあるところです。
というのは、アメリカと日本では経営者を選抜する環境が大きく違うからです。
アメリカでは経営者は社内外から広く候補者を募り、選ばれることが通例です。
そうした場合、社外取締役が社内外を問わず経営成績を上げる能力を評価して、トップ選任に際して重要な役割を果たすことにそれほど違和感を覚えません。
しかし、日本では多くの会社で社内からの生え抜きの人材をトップに据えます。
そこでは経営能力は当然必要ですが、その他に人柄とか社内の人望といった人格的要素も無視できない要因として存在します。
そうした数字に還元できないその会社特有の人間関係まで社外取締役が把握できるのかという点について、やや疑念が残るのです。
労働市場や経営者市場の流動化が不十分な日本で、社外取締役が経営トップの選任にどのように関与するかは難しい問題です。
アメリカのような経営者選抜方法が一般化すれば、社外取締役の役割は重くなるでしょう。
しかし、社内出身者がトップに選ばれるという状況が続くなら、社外取締役がトップ選任に果たす役割が定着するまでにはもう少し時間がかかるような気がします。
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