2015年3月31日火曜日

《採用時の誓約書と身元保証書》

4月は新年度の始まり、新入社員が入ってくる企業も多い事でしょう。採用時に提出させる書類として誓約書や身元保証書を求める会社もありますが、注意をする点について見てみましょう。

(誓約書)
誓約書は就業規則やその他の規則を守り上司の指示命令に従い真面目に働く事を誓って約束をする文書です。署名や捺印をするので新入社員の精神的な会社への帰属意識を持たせ拘束を強める役割を果たします。 

誓約書の中身は一般的に次のような事柄が取り上げられます。
1、就業規則や社内規則を遵守する。
2、同僚や上司との協力、職場秩序の遵守
3、配転や人事異動の命令は従う
4、会社の体面を汚すような行為はしない
5、業務上知り得た秘密の漏えい禁止

上記のようなものが多いのですが会社独自の内容があってもかまいません。 但し法的効力は強くありません。ただ約束事ですので書面を提出させ、守らせることが目的であり必要書類と言えるでしょう。

(身元保証書)
身元保証書は使用者と保証人の間で取り交わす契約書です。身元保証書には入社する人が社員としてふさわしい人物であることを保証する側面と、その社員が会社に対し損害を発生させた場合には損害を補てんすると言う金銭面があります。社員の行為で会社が損害を受けて本人には返済できない時に保証人が代わって賠償するものです。

保証期間はどうか 身元保証契約の期間は最長5年です。期間の定めが無い時は3年とされています。更新する場合は最長5年ですが普通、高額な金品を扱う仕事でもなければ真面目に働いてきた人に更新はしないでしょう。

万一本人の業務上不適切で損害が発生したりして保証人責任が生ずる恐れがある時は、使用者はすぐに事実を保証人に報告しておかなければなりません。保証人に責任を追及する場合でも使用者の監督責任が問われます。また、その場合保証人は身元保証契約を解除する権利もあります。100%保証は難しいと言えるかもしれません。書面は本人が保証人に迷惑をかけてはならないと言う抑止力が働く意味では提出させる意義があると言えるでしょう。 




2015年3月17日火曜日

《コラム》相続により取得した資産の耐用年数

 ◆相続により取得した資産の耐用年数
相続又は遺贈により資産を取得した場合には、相続人又は受遺者がその資産を引き続き所有したものとみなして、「取得費」「未償却残高(償却限度額)」「当初の取得日」及び「耐用年数」を引き継ぐものとされる一方で、「減価償却の方法」は引き継がれず、その相続人・受遺者ごとに選択することとされています。

これに関連して、大阪高裁で、相続により取得した賃貸マンションに、中古資産に係る「簡便法」を用いた耐用年数を適用できるか否かが争われていた事件の判決が、平成26年10月に下りました。

◆中古資産の耐用年数は適用不可!
結論としては「被相続人の耐用年数を用いなさい」、すなわち、中古資産の耐用年数は適用できない―という判断でした。

中古資産を取得して事業の用に供した場合の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。この場合に、使用可能期間の見積もりが困難であるときは、次の簡便法よる耐用年数を用いることも認められています。

【中古資産の耐用年数(簡便法)】
(1) 法定耐用年数の全部を経過した資産その法定耐用年数の20%に相当する年数
(2) 法定耐用年数の一部を経過した資産その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数

このケースでは、被相続人が47年の法定耐用年数で賃貸マンションの減価償却を行っていたところ、相続人は相続によりこの財産を取得し、上記の「簡便法」による耐用年数を用いて計算していました。

◆「取得費」と「償却期間」は切り離せない
この判決の理由の一つに「減価償却の趣旨」が挙げられています。 減価償却は「取得費」を費用収益対応原則に基づき、予定された「償却期間」に配分する会計技術です。

したがって、「取得費」と「償却期間」は切り離して考えることはできず、前所有者(被相続人)の取得費は相続人に引き継がれるが、耐用年数は引き継がれないということは、その趣旨にそぐわないということなのです。中古資産の耐用年数は、当初取得時にのみ、その選択の判断ができるということのようです。
 

2015年3月15日日曜日

地方の人口流出止まらず

全国の7割の市町村で人口の転出が転入を上回る「転出超過」の状態であることや、東京都の転入超過が続いていることなどが分かりました。総務省統計局が公表した「住民基本台帳人口移動報告」で明らかになったものです。

統計によると、全国1718市町村のうち、全体の4分の3に当たる1311市町村が転出超過でした。地方の人口流出が深刻化するなか、都市圏でも大阪圏、名古屋圏は2年連続で転出超過となり、東京圏への一極集中に歯止めがかかっていない実情が明らかとなっています。

また、平成26年に転入が転出より多かった都道府県は全国で東京、埼玉、神奈川など7都県。もっとも転出より転入が多かったのは東京の超過数7万3280人で、以下埼玉、神奈川、千葉、愛知、福岡、宮城と続きます。一方、転出超過がもっとも多かったのは北海道の8942人で、以下静岡、兵庫、青森の順。25年に転入超過だった大阪、沖縄はマイナスに転じました。

安倍政権は地方の活性化や東京への一極集中是正を政権の最重要課題に挙げ、27年度税制改正でも地方拠点強化税制の創設など「地方創生」に向けた改正内容を盛り込む見通しです。




2015年3月13日金曜日

2年目のNISAが好調スタート

少額投資非課税制度(NISA)を利用した投資総額が1月だけで2627億円となり、制度が開始した昨年1月以降の単月ベースでは最高を記録したことを日本証券業協会が発表しました。

年が明けて今年分の非課税枠が利用できるようになったことで、口座を持つ投資家たちが新たに投資を始めたことが理由とみられます。
1月単月で新規に約8万口座が開設され、それ以外にも約4万の「開設したまま眠っていた口座」で投資が開始されるなど、利用拡大に向けて制度2年目の好調なスタートを切ったといえるでしょう。

調査は主要証券会社10社を対象に行われました。
これでNISA総口座数は、1月末時点で414万3836口座となりました。
また口座の稼働率も46.8%と、昨年末から1.7ポイント増加しています。

1月のNISA利用が伸びたのは、今年分の非課税枠が新たに開放されたためです。
去年、上限として設定されている100万円いっぱいまで投資をした人も、年が明けた1月からは新たに今年分の100万円を投資運用することができます。
すでに去年からNISA口座を持っていた投資家が活発に動いたことが投資総額増の主因とみられます。

NISAの非課税枠は現在100万円だが、今後120万円に引き上げられる予定となっています。
月10万円ずつの投資で枠を使いきりやすくする狙いで、金融界などからの強い要請を受けて、平成27年度与党税制改正大綱に盛り込まれました。
また20歳未満を対象とする子ども版NISAも創設する予定。
年80万円を限度に、親や祖父母が子どもの名義で投資すれば、将来子どもが受け取る配当や売却益を非課税にします。
政府はNISAの利用を通じてシニア層の持つ金融資産を市場に流したい思惑があり、今後も制度利用を広く促していく考えです。




2015年3月12日木曜日

国税庁:2013事務年度における贈与税の実地調査実態を公表!

国税庁は、2013事務年度(2014年6月までの1年間)における贈与税の実地調査実態を公表しました。

それによりますと、同事務年度において、実地調査は3,786件(前事務年度比17.7%減)行い、そのうち約90%に当たる3,424件(同17.5%減)に申告漏れ等の非違があり、その申告漏れ課税価格216億円(同3.1%減)を把握し、75億円(同18.4%増)を追徴課税しました。

また、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は571万円(同17.7%増)で追徴税額は197万円(同43.8%増)となりました。

なお、贈与税の申告漏れ等非違件数の86.2%と9割近くが無申告事案でした。

申告漏れ財産の内訳をみてみますと、「現金・預貯金等」が約107億円(構成比49.5%)、「有価証券」が約68億円、「土地」が約8億円、「家屋」が約3億円とつづき、生命保険金や金地金などといった「その他」は約31億円となりました。

調査事例では、資料情報から所得税の申告漏れが想定された受贈者Aは、調査の結果、多額の金地金を譲渡し、譲渡益を得ていながら、譲渡所得の申告をしていなかった事例が挙げられております。

そして、この金地金を取得した経緯を調べたところ、親族Bから無償で贈与されたものであることも明らかになり、Aは、Bから贈与された金地金について、贈与税の申告の必要性は認識しながら、故意に申告しなかったことが判明しました。

調査の結果、Aに対して、贈与税の申告漏れ課税価格約3,000万円について追徴税額(加算税込み)約1,800万円、及び所得税の申告漏れ所得金額約1,700万円について追徴税額(同)約720万円が課されました。

国税庁では、相続税の補完税である贈与税の適正な課税を実現するため、資料情報を活用し、相続税調査など、あらゆる機会をとおして生前の財産移転の把握に努めており、無申告事案を中心に贈与税の調査を実施しております。


 

2015年3月10日火曜日

《コラム》小規模企業共済・中退共の利用も 青色事業専従者に対する退職金

◆青色事業専従者に対する退職金
 個人事業者の所得の金額の計算上、青色事業専従者に対する退職金の必要経費算入は認められておりません。
 所得税法では、専従者が受ける給与は給与所得の収入金額とするものとされています。したがって、退職所得の収入金額とされるものは、専従者給与とすることを予定されていないと解されています。

◆専従者が利用できる共済制度
 ただし、直接退職金を支払うことができなくとも、小規模企業共済や中小企業退職金共済(中退共)を利用することが考えられます。
 実はどちらの共済制度も、従来は個人事業者の専従者の加入が認められていなかったものですが、平成23年より加入ができることとなりました。
 この場合、小規模企業共済では専従者を「共同経営者」として、中小企業退職金共済では、専従者を「従業員」として加入することになります。
 そのため、青色専従者の場合は、「共同経営者」か「従業員」かのステイタスを選択せざるを得ないため、重複して加入することはできないこととなります。

◆小規模企業共済制度を利用する場合
 小規模企業共済に加入する場合、青色事業専従者は「共同経営者」として自己が契約する形になります。したがって、その掛金は青色事業専従者の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)を適用して、専従者の所得税額などを減らす形となります。

◆中小企業退職金共済制度を利用する場合
 一方、「従業員」の立場で加入する中小企業退職金共済の掛金は、専従者給与を支払う個人事業者の事業所得などの所得の金額の計算上、必要経費に算入することになります。
 退職金を直接支払う場合には、必要経費算入が認められていないのに、中退共の掛金が必要経費となることに疑問がないわけではないですが、他の従業員がいる場合に、すべての「従業員」が加入(普遍加入)して平等に取り扱われ、「従業員」性が担保されていることが前提となります。
 どちらの制度も受取時には、一時金の場合には、退職所得(任意解約の場合は一時所得)、年金の場合には、雑所得とされます。



2015年3月7日土曜日

【時事解説】簿価利回りではなく時価利回り

 含み損益は単に含み益が多ければ実質自己資本比率が高く経営が安泰、逆に含み損が多いと財務体質が脆弱で経営が危ない、ということを表現しているだけではありません。
 この見方は経営が破綻したときに、債権者が自分の債権保全の有効性を測るため、貸借対照表だけに注目したものです。
 営者がゴーイング・コンサーン(継続企業)として会社を見るときは、含み損益を収益とも関連させて見なければなりません。

 たとえば、AとBの2つの不動産を持っているとします。
 AもBも簿価(取得価格)は10億円で、賃貸料収入は1億円です。
 ところが、時価はAが50億円、Bは5億円で、A不動産には40億円の含み益、B不動産には5億円の含み損が生じています。
 この場合、会社の役に立っている不動産はどちらなのか。
 簿価も賃貸料収入も変わらないので、着目ポイントは含み損益だけになります。
 含み損益だけを見ていると、次のように考えてしまうかもしれません。

「A不動産の時価は簿価の5倍で40億円の含み益があり、お宝のような不動産なのに対し、B不動産は含み損が5億円で財務体質を弱めている。したがって、役に立っているのはA不動産だ。」

 こうした結論に至るのは、取得価格である簿価に強く引きずられた結果です。
 賃貸料収入の簿価利回り(賃貸料収入÷簿価)はAもBも10%(1億円÷10億円)で変わらず、両不動産の資金効率は変わりません。
 変わるのは含み損益だけなのです。

 経営において重要なのは現在の価格である時価と、これから資産が生み出すキャッシュフローです。
 確かに預金や債券であれば取得価格である簿価は重要です。
 それは預金や債券は原債務者が破綻しない限り、額面で償還されることが約束されているからに過ぎません。
 しかし、不動産や株式における取得価格は将来の価格を保証しません。
 取得価格は過去のもので、将来キャッシュフローには何の影響をも与えません。
 経営にとって大切なのは過去の価格(取得価格)ではなく、現在の価格(時価)です。
 したがって、経営効率を判断する利回りも簿価利回りではなく、時価利回りでなければならないのです。

 そこで、両者の時価利回り(賃貸料収入÷時価)を比べると、A不動産は2%(1億円÷50億円)、B不動産は20%(1億円÷5億円)です。
 資金の効率性の優劣は明らかです。Aは時価が高いから資金の効率性が低く、Bは時価が低いからこそ資金を効率的に運用できているのです。

 ROA(Return on Assets 総資産利益率)は利益を総資産で割って算出するもので、会社の資産の効率性を示す重要な指標です。
 会社全体の資産の効率を引き上げるためには、個々の資産の効率性を判断しなければなりません。
 そのとき使用する分母の資産価格は簿価ではなく時価でなければならないのです。

 含み益の大きい資産はそれに応じた高い収益を要求されていることを忘れてはなりません。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)



2015年3月5日木曜日

国税庁:2013事務年度における海外取引調査実態を公表!

国税庁は、2013事務年度(2014年6月までの1年間)における海外取引調査実態を公表しました。 それによりますと、海外取引を行っている者を対象に前年度比12.7%減の2,717件の実地調査を実施し、同4.6%減の総額約461億円の申告漏れ所得を把握しました。 1件平均では同9.5%増の1,698万円でした。

取引区分別にみてみますと、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の25%を占める689件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同18%の488件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同12%の323件となっております。 そのほか、海外で支払いを受ける給与や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので、上記の取引に該当しない「その他」が全体の45%を占める1,217件ありました。

これらの結果、1件あたりの申告漏れ所得が平均で1,698万円見つかりましたが、取引区分別では、「海外投資」で1,889万円、「輸出入」で909万円、「役務提供」で1,510万円、「その他」で1,956万円把握されました。 調査事例として、調査対象者Aは、知人と共同出資して、海外にペーパーカンパニーを設立し、日本における課税を逃れていた事例が挙げられております。

Aは、国内企業の役員を務めていましたが、知人とともに個人的な資産を共同出資し、海外に貿易会社を設立しました。 調査の結果、貿易会社を介する取引についてはAが日本国内で業務を行っているなど、貿易会社は事業実態のないペーパーカンパニーであることが判明し、その取引に係る利益がペーパーカンパニーに留保されている事実を把握したため、留保していた利益について課税されたうえに、ペーパーカンパニーから役員報酬を受け取っていたにもかかわらず、それを申告していない事実も把握されました。 Aに対しては、所得税3年分の申告漏れ所得金額約6,600万円について税額(加算税含む)約2,900万円が追徴されました。



2015年3月3日火曜日

人事関連の事務

◆人事とは雇用される人に関する仕事
人事とは「人に関する事」を行う仕事ですが、仕事の大きな流れとしては人材の採用から始まり、社員を有効に活用、育成してレベルアップしてゆく事で会社の経営目標を達成させる仕組みを生み出し、継続してゆく役割を担っています。仕事に対する社員の意欲を引き出して経営目標を達成する事は重要な事です。一方で社員の働く環境を整備してゆく事も求められています。

◆人的資源の有効活用を推進する
社会保険事務や給与計算、福利厚生等アウトソージングしているところも増えていますが、今人事部に求められるのは経営スタッフとしての企画機能です。個別人事管理はもとより、諸制度の運用、人的資源の活用、あるいはコストの管理等。また、人事部は人事権と言う権限があり、採用、処遇、人事考課、異動、機密事項等重要な事項を扱いますが、現場との意思疎通も大事にしなくてはなりません。

◆人事の主な仕事
1.採用・・・・要員計画を立て、社員、パートタイマー等の採用計画、面接や試験の実施、内定者フォロー、などを行います。
2.配置・異動・・・・新入社員の配置、社員の人事異動の事務処理。
3.教育・研修・・・・教育研修の立案、実施、フォロー、職場単位のOJTの指導、自己啓発等の支援。
4.社会保険事務・労務管理事務・・・・社会保険の加入から退職までの手続きや給付の請求、保険料の徴収、納付等。また、労務管理においては労基法や他の法令に基づく人事管理の運用、就業規則や労使協定の労基署への届出等。
5.賃金に関する事・・・・タイムカードの集計から賃金計算、振込、保険料や源泉税納付、年末調整事務もあります。これらは経理部が行う場合もあります。人事考課や人事評価を行い給与や賞与の査定を行う事もあります。
6.退職・・・・退職、定年、解雇に関する手続きを行います。 

以上のような流れで行われますが、総務部、経理部が行っている場合もあるでしょう。1年間のスケジュールを立てておくと分かりやすいですね。