インバウンド市場は人口が減少している日本では数少ない成長市場であり、中小企業にとってもビジネスチャンスとなります。
「平成30年版情報通信白書」によると、 訪日外国人旅行者の増加に伴い旅行者の国内における受入環境の整備が急務となっていることが指摘されています。
観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によると、訪日外国人旅行者が旅行中に困ったこととしては「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」が最も割合が高く、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ(観光案内板・地図等)」、「無料公衆無線LAN環境」の順となっています。
こうした中、総務省では観光庁と連携し、地方自治体、民間事業者で構成する「無料公衆無線LAN整備促進協議会」を2014年に立ち上げ、無料Wi-Fi整備の促進、周知・広報等に取り組んでいます。
その一方で訪日外国人による日本滞在中のコミュニケーションやそのための多言語対応が引き続き課題となっています。
また、支払等の決済面での受入環境の整備も重要です。
例えば、訪日外国人旅行者の多くを占める中国人観光客は、支払い手段としてスマホでの決済を利用する傾向が強くなっています。
このような背景から、2016年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」では、主要な商業施設や宿泊施設、観光スポットにおける「100%のクレジットカード決済対応」及び「100%の決済端末のIC対応」などを目標として掲げています。
このように、中小企業においても外国人旅行者の受入体制を整備することで継続的なインバウンド需要を取り込むことがカギとなるのです。
では、インバウンド需要の取り込みに成功している中小企業にはどのような特徴がみられるのでしょうか。
そこで日本政策金融公庫総合研究所が同公庫の融資先の中小企業を対象に2017年8月に実施(公表は2018年1月)した「インバウンドの受け入れに関するアンケート」に基づき、それらの企業の特徴についてみていきましょう。
まず、顧客のなかに外国人観光客がいる企業の割合は、回答企業全体の47.0%を占めています。
1カ月当たりの外国人観光客数をみると「19人以下」の企業が68.0%を占める一方で、「50~99人」が7.4%、「100人以上」が10.3%あることが示されています。
このアンケート調査では1か月あたりの外国人観光客数が「50人以上」の企業の特徴を、「1~49人」や「0人」の企業と比較して考察しています。
まず「50人以上」の企業では、最近3年間の売上高と採算状況がそれぞれ増加傾向、黒字とする企業が半数を占めており、外国人観光客を多く受け入れることで業績を伸ばしている企業が少なくないことがわかります。
また、「50人以上」の企業は、独自にウェブサイトを運営したり外部のサイトを利用したりして情報発信を行ったりするなど、インターネットの活用に積極的な傾向がみられます。
さらに「50人以上」の企業は、クレジットカードやICカード、スマートフォン・携帯電話を使った決済に対応している企業が多く、インバウンドを多く受け入れるにはキャッシュレス決済に対応することが望ましいことが指摘されています。
このようにインバウンド需要の取り込みに成功している中小企業では、情報発信面や決済面で情報通信技術(ICT)を積極的に活用し、受入環境の整備を進めているという特徴がみられるのです。
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